在庫管理システムとは?機能・種類・導入手順を解説

在庫管理システムとは?機能・種類・導入手順を解説

更新日:2026/08/02

倉庫に商品があるはずなのに受注分を確保できない、拠点ごとの台帳が合わないといった悩みは、在庫数だけを追っても解決しません。こうした課題に対して役立つのが在庫管理システムです。

在庫管理システムは、商品や原材料の数量・所在・状態を記録し、入荷から棚卸までの在庫変動を一元的に管理するツールです。倉庫や拠点ごとの在庫情報を適時に更新し、販売・購買・生産などの各業務と正しく連携させることで、在庫の過不足や二重計上を防ぎやすくなります。

本記事では、在庫管理システムの主な機能や種類、周辺システムとの違い、導入のメリットや導入手順まで解説します。

1. 在庫管理システムとは

在庫管理システムは、商品・原材料・部品などの数量、保管場所、状態を記録し、入出庫・引当・棚卸を管理する業務ツールです。業務の動きに合わせて「何が、どこに、どの状態で、いくつあるか」を更新することで、出荷や販売に使える在庫数を把握できます。

管理する物品は業種や業務によって異なります。例えば、卸売業では販売用の商品、小売業は店舗や倉庫の商品、製造業では原材料・部品・仕掛品・完成品が主な管理対象です。また、預かり品のように「自社が所有していない物品」や、返品検品中で販売可否が決まっていない商品を扱うこともあります。

在庫管理システムが扱う主な業務と、次の工程へ引き渡すデータを次の表にまとめました。

領域

主な業務

主なデータ

担当

次の工程

商品管理

商品・単位・保管場所の登録

商品コード、単位、ロケーション

商品管理・倉庫

入荷・保管

入荷管理

入荷予定と現物の照合

入荷日、数量、状態、ロット

購買・倉庫

検品・格納

在庫管理

移動・引当・状態変更

現在庫、引当数、利用可能数

倉庫・営業

出庫・補充

出荷管理

出庫指示と実績の照合

出庫数、出荷日、配送情報

倉庫・物流

売上・配送

棚卸管理

帳簿在庫と実在庫の照合

実数、差異、修正理由

倉庫・経理

在庫確定・会計

重要なのは、各工程の担当者を把握することと、どのデータを次の工程へ引き渡すのかを明確にすることです。

倉庫が入荷を記録しても、販売管理側への反映が遅れると、営業担当者は更新前の在庫数をもとに納品予定を案内してしまいます。必要なデータが次の部門へ届かない場合、在庫情報を業務に生かせません。

そのため、管理範囲を決める際は「数量」と「在庫の状態」を分けて考えます。同じ倉庫にある商品でも、検品前・引当済み・返品検品中といった状態によって、出荷・販売に使えるかどうかが変わるためです。

製品ごとに対応できる業務範囲は異なります。まずは、自社で管理する物品や在庫状態、周辺システムに連携するデータを洗い出しましょう。そのうえで、在庫数量と入出庫だけを管理するのか、販売・購買・倉庫・生産まで一体で管理するのかを決めると、自社に適したシステムを選びやすくなります。

2. 在庫管理の業務フロー

在庫管理の基本的な流れは、商品・ロケーションの登録から始まり、入荷・検品、棚入れ・保管、引当、出庫・出荷へ進みます。在庫移動や返品・廃棄は、通常の流れから分岐する処理です。実地棚卸では、基準時点の現物と帳簿を照合し、承認された差異を在庫情報へ反映します。

在庫管理で行う主な業務と更新時点は、次のとおりです。

区分

業務

主な入力

更新・反映の時点

主な担当

主な例外・保留処理

完了条件

事前設定

商品・ロケーションの登録

商品コード、単位、倉庫、棚番

利用開始前・変更時(在庫数量は変動しない)

商品管理・倉庫

重複コード、廃止場所

正式な更新元と連携先の情報が一致

基本フロー

入荷・検品

入荷予定、現物数量、状態

受領時に入荷を記録し、検品完了後に利用可能数へ反映

購買・倉庫

過入荷、不足、未着、破損、不良

受入れ可否・数量・状態を確定

基本フロー

棚入れ・保管

商品、数量、移動先ロケーション

棚入れ完了時

倉庫

誤格納、仮置き、保管場所の変更

現物とシステム上の所在が一致

基本フロー

引当

受注情報、出庫予定、対象数量

引当・解除の確定時

営業・倉庫

数量変更、注文取り消し、引当解除

引当済み数量と利用可能数を更新

基本フロー

出庫・出荷

出庫指示、実績数量、対象ロット

自社で定めた出庫・出荷の完了時

倉庫・物流

欠品、誤出荷、分納

現物・在庫記録・出荷実績が一致

関連業務

在庫移動

移動元・移動先、商品、数量

移動処理の確定時。拠点間移動では払出し・受入れ時

倉庫

移動中、未着、移動取り消し

移動元・移動先・移動中の状態が一致

例外処理

返品

返品理由、商品状態、数量

検品後に返品商品の状態を確定した時点

倉庫・品質管理

再販不可、補修待ち、保留品

状態別の数量と保管場所を確定

例外処理

廃棄

廃棄理由、数量、承認情報

承認後、現物処分と在庫調整を対応付けて反映

倉庫・品質管理

承認待ち、処分保留

承認・現物処分・数量調整が完了

定期業務

実地棚卸

帳簿数、実数、差異理由

基準時点で実数を記録し、差異承認後に帳簿在庫へ反映

倉庫・経理

未処理伝票、数え直し、調査中

承認済みの差異を帳簿在庫へ反映

各業務では、あらかじめ定めた時点で数量・所在・状態を更新します。受領済み・検品待ち・移動中などの状態を分けずに登録すると、出庫に使えない商品まで利用可能数へ含める恐れがあります。

運用を始める前に、商品情報とロケーション情報の正式な更新元を決めます。そのうえで、在庫を更新する時点、例外が起きた際の担当者、処理の完了条件まで統一するのが一般的です。

ここからは、在庫管理の業務フローを詳しく解説します。

2-1. 商品・ロケーションを登録する

在庫管理の基礎となるのが、商品とロケーションの登録です。商品コード、名称、管理単位、倉庫、棚番などを登録し、現物とシステム上の情報を対応させます。

同じ商品を「個」「箱」「ケース」で扱う企業は、単位間の換算方法も定めます。換算ルールが曖昧なままでは、同じ数量を入力しても担当者によって単位の意味が変わり、入出庫や棚卸の差異につながります。

また、商品マスターについては、販売管理・購買管理・在庫管理のうち、どのシステムを正式な更新元にするか決めます。商品情報の登録や変更を一つの更新元へ集約し、その内容をほかのシステムへ連携することで、重複コードや名称の食い違いを抑えます。

ロケーションについても、登録・変更・廃止を行う担当者を定めます。保管場所を廃止する際は、既存在庫の移動先と処理手順を決め、現物とシステムの移動が完了してからロケーションを閉じます。

2-2. 入荷と検品を記録する

商品が届いたら、最初に受領した事実を記録します。その後、発注情報や入荷予定と現物を照合し、品目・数量・状態を調べます。期限やロットを管理している商品については、受入れ基準を満たしているかも判定します。

入荷予定数と実数が異なる場合は、過入荷・不足・未着に分けて記録します。予定数に合わせて実績を書き換えると、発注先で不足したのか、受領や検品で誤りが生じたのかを後から追えません。

破損品や不良品は、良品と分けて管理します。検品前の商品は「検品待ち」、受入れ可と判断した商品は「利用可能」といった状態に分け、出庫へ回せる数量を明確にします。

入荷を記録する時点と、利用可能な在庫へ反映する時点を分けることで、倉庫へ届いていても出庫できない商品を利用可能数へ含めずに済みます。

2-3. 棚入れと保管場所を反映する

検品を終えた商品は、指定された棚や保管場所へ移します。棚入れ時には、商品・数量・ロケーションを記録し、現物の所在とシステム上の所在を一致させます。

一時置き場を利用する場合も、商品がどこにあるのかを記録します。仮置きしたまま移動処理が抜けると、現物は倉庫内にあっても、システム上の保管場所から商品を探せません。

誤った棚へ格納した場合は、数量だけを修正せず、移動元と移動先を記録します。棚入れ後に現物とロケーション情報が一致した時点を、この工程の完了とします。

2-4. 引当で利用可能数を管理する

引当は、受注や出庫予定に対して在庫を割り当てる処理です。倉庫内で商品を物理的に取り分ける作業と、必ずしも同じ時点で行うとは限りません。

例えば、現在庫が10個あり、そのうち8個を受注へ引き当てている場合、単純に計算すると新たに利用できる数量は2個です。現在庫、引当済み数量、利用可能数を分け、営業と倉庫が同じ数字を参照できる状態にします。

入荷予定を販売可能数へ含める場合は、入荷予定日や受入れ条件ごとに数量を分けて管理します。まだ入荷していない数量と、すでに倉庫にある数量を同じ扱いにすると、納期回答と実際の出庫時期が合わなくなります。

注文の取り消しや数量変更があった際は、不要になった引当を解除します。解除する担当者と処理時点を定めておけば、現物があるのに利用可能数へ戻らない状態を防げます。

2-5. 出庫・出荷で在庫を更新する

出庫では、指示された商品・数量・ロットと、作業者が取り出した現物を照合します。商品の取り出し、梱包、配送業者への引き渡しは、それぞれ処理の段階が異なります。

バーコードを利用する場合は、読み取り、梱包完了、引き渡し完了のうち、どの時点で在庫を減らすかを統一します。作業者や拠点によって基準が異なると、同じ作業でも在庫が反映される時点に差が生じるためです。

分納や欠品が起きた際は、未出庫分の引当を残すか解除するかを決めます。この処理によって、営業担当者が参照する利用可能数や次回の納期回答が変わります。

出荷の完了条件には、実績数量、在庫数、移動先での受入の更新に加え、販売管理システムへの実績連携も含めます。各処理の進捗を記録すれば、在庫更新や売上処理が止まっている箇所を追跡できます。

2-6. 在庫移動を反映する

商品を別の棚や拠点へ移すときは、移動元と移動先の記録を一連の処理として紐付けます。移動元だけを減らすと在庫が一時的に消え、移動先だけを増やすと二重計上になります。

同じ倉庫内で棚を移す場合、移動処理の完了時にロケーションを更新します。拠点間移動では、移動元からの払出しと移動先での受入れに時間差が生じます。

また、輸送中の商品は移動中在庫として管理するか、移動元から減らす時点と移動先へ加える時点を定めます。移動中の商品を利用可能数へ含める条件も統一しなければなりません。

移動先で数量不足や破損が判明した場合は、元の移動数量に合わせて処理を終えず、未着・不足・破損などの理由を残します。移動元・移動先・輸送中の数量が対応した時点で、移動処理を完了します。

2-7. 返品・廃棄を例外処理する

受け取った返品商品は、検品が終わるまで通常在庫へ戻さず、いったん保留品として分けて管理します。その後、検品で再販可と判断したもの、補修後に利用するもの、廃棄するものなどに分けます。状態別に数量と保管場所を記録することで、販売できない商品を利用可能数へ含める誤りを防げます。

破損・期限切れの商品を廃棄する際は、理由・数量・処理日を記録し、現物の処分とシステム上の数量変更を対応させます。

2-8. 実地棚卸で差異を確定する

実地棚卸では、最初に帳簿在庫と現物を照合する基準時点を定めます。入出庫を続けながら棚卸を行う場合は、基準時点より前の伝票と、その後に発生した伝票を分けて扱います。

差異が見つかったときは、数え直すだけで処理を終えず、原因を調査します。未処理の入出庫、誤ったロケーション、単位換算の誤りがないかを確認し、破損や紛失の可能性も調べます。

差異を確定する際は、修正数量、差異理由、承認者、確定日時を記録します。承認された差異を帳簿在庫へ反映し、基準時点以降の入出庫記録とつなげます。

棚卸後は、差異理由を工程別に振り返ります。同じ原因が繰り返されている場合は、該当する工程の入力方法、更新時点、担当者間の引き継ぎを見直します。

3. 在庫管理システムの主な機能

在庫管理システムの代表的な機能と役割を、次の表にまとめました。搭載される機能や対応範囲は、製品・プランによって異なります。

機能名

どんな機能か?

商品・ロケーション管理

商品情報と保管場所を登録し、どの商品がどこにあるかを管理する

入出庫管理

入荷・出庫・移動・返品・廃棄を記録し、在庫数量と所在を更新する

ロット・期限管理

ロット番号や期限を商品へ結び付け、入荷から出荷までの履歴を追跡する

引当・発注点管理

受注分の在庫を確保し、補充が必要な商品や数量を抽出する

棚卸管理

実際の在庫数を入力し、帳簿在庫との差異を承認・反映する

在庫分析・アラート

欠品・滞留・期限接近などを抽出し、対応が必要な商品を通知する

同じ名称の機能でも、管理できる単位や例外処理、承認、履歴の範囲は製品ごとに異なります。対応範囲を把握したうえで、自社で使用頻度の高い処理をデモで試してください。

在庫管理システムの主な機能について、さらに深掘りします。

3-1. 商品・ロケーション管理

在庫を正しく把握するには、商品と保管場所を一意に識別できるマスターが必要です。商品コードやSKU(在庫を区別する最小の管理単位)、名称、単位に加え、倉庫・区画・棚番などのロケーションを登録し、同じ商品でも保管先ごとの数量と所在を追えるようにします。

現場で商品を別の棚へ移しても、システム側のロケーションが更新されていなければ、帳簿上の総数が合っていてもピッキング時に商品を見つけられません。商品や保管場所の追加・変更を誰が担うかを決め、変更履歴を残せるか、ケースと個数のように複数の単位を扱えるかを確認します。

3-2. 入出庫管理

入出庫管理は、入荷、検品、移動、出庫、返品、廃棄の実績を記録し、在庫数量と保管場所を更新する機能です。予定数量と実績数量を分けて持てる製品では、入荷待ちや出荷準備中の数量を現在庫へ混ぜず、利用できる在庫を把握しやすくなります。

誤入力を訂正するときは、在庫数を直接書き換えるのではなく、取り消しや修正の記録を残せるかがポイントです。返品や廃棄を通常の入出庫と区別し、処理した担当者、日時、理由まで追える運用にすれば、数量が変わった経緯を後から確認できます。

3-3. ロット・期限管理

食品や医薬品、部品などを扱う現場では、同じ商品でも入荷時期や製造単位によって品質管理の条件が変わります。ロット・期限管理では、ロット番号、シリアル番号、製造日、賞味期限・使用期限などを在庫へ結び付け、入荷から保管、出荷までの履歴を追跡します。

期限の近い在庫を先に出荷する運用や、品質問題が起きた際に対象ロットの保管場所・出荷先を確認する場面でも役立ちます。ただし、管理できる項目や期限通知、ロットを指定した引当の可否は製品・プランによって異なるため、自社が追跡したい単位を導入前に決めておきます。

3-4. 引当・発注点管理

引当とは、受注や出庫予定に対して必要な在庫をあらかじめ確保する処理です。現在庫から引当済み数量を分けて管理すると、別の注文へ重ねて割り当てる事態を防ぎ、出荷に利用できる数量を営業部門や倉庫部門で共有できます。

発注点管理では、在庫が設定した水準を下回った商品を抽出し、製品によっては補充の通知や発注数量の提案まで行います。発注点だけを登録しても、調達リードタイムや安全在庫、発注単位が実態とずれていれば適切な補充にはつながりません。季節変動や仕入先の納期も踏まえ、基準値を定期的に見直す運用が欠かせません。

3-5. 棚卸管理

棚卸管理では、システム上の在庫数と現場で数えた実在庫を商品・ロケーション別に突き合わせます。スマートフォンやハンディターミナルから数量を入力できる製品では、紙の棚卸表を回収して転記する工程を減らし、未確認の棚や差異が残る商品を把握できます。

差異が見つかったときは、数え直し、原因の記録、責任者の承認を経て帳簿在庫へ反映します。棚卸中も入出庫を続ける現場では、どの時点の在庫と実数を比較するかが曖昧になりやすいため、対象を一時的に固定するのか、循環棚卸で範囲を分けるのかを事前に決めます。

3-6. 在庫分析・アラート

日々の入出庫と棚卸のデータが蓄積されると、在庫の増減や回転状況を商品・倉庫・期間ごとに比較できます。欠品の恐れがある商品、長期間動いていない在庫、期限が近い商品、棚卸差異が続く品目などを抽出すれば、担当者が優先して対処する対象を把握しやすくなります。

通知機能を使う際は、何を異常とみなすかを数値で定め、通知先と確認頻度を運用へ組み込みます。閾値が厳しすぎると通知が多くなり、反対に緩すぎると対応が遅れます。集計に使うデータの更新時点も含め、現場が対処できる条件へ調整してください。

4. 在庫管理システムの提供形態と入力方式

在庫管理システムを探していると、クラウド型やオンプレミス型と並んで、バーコードやRFID(無線による自動認識技術)が紹介されることがあります。ただし、これらは同じ内容を比べる区分ではありません。

クラウド型・オンプレミス型は、システムの運用環境を決める提供形態です。そしてバーコード・RFIDは、商品や保管場所を識別し、在庫データを取り込むための自動認識方式です。

つまり、クラウド型とバーコードを組み合わせることも、オンプレミス型とRFIDを組み合わせることもできます。

区分

方式

向く条件

事前確認

主な費用

提供形態

クラウド型

複数拠点から利用したい

通信、障害時運用、データ出力

初期設定、利用料、連携

提供形態

オンプレミス型

自社環境でシステムを運用・管理したい

設備、保守、更新、遠隔利用

サーバー、構築、保守

入力方式

バーコード

対象を一件ずつ指定して読み取りたい

ラベル、読取距離、端末動線

ラベル、読取端末

入力方式

RFID

複数タグを非接触でまとめて読み取りたい

タグ、電波環境、読取精度

タグ、リーダー、設置

提供形態を選ぶときは、設置環境、通信条件、保守体制を比べます。入力方式については、対象物の材質や数量、読み取る件数、作業者の動線をもとに検討してください。

ここでは、在庫管理システムの主な提供形態・入力方式をご紹介します。

4-1. 提供形態|クラウド型

クラウド型は、サービス提供会社が用意した基盤へ、インターネットを通じて接続する形態です。利用権限とネットワーク環境を整えれば、店舗や倉庫など複数の拠点から共通の在庫データを参照できます。

この形態はネットワーク経由で利用するため、通信できない時間帯の運用ルールを事前に決めておく必要があります。障害発生時の入出庫をどのように記録するか、復旧後に誰がデータへ反映するかまで明確にしておきます。

さらに利用端末と接続元の制限、バックアップ方法、復旧目標は、契約書や仕様書で比べます。契約終了時のデータ出力に加え、機能追加や料金改定が契約へどのように反映されるかも把握してください。

4-2. 提供形態|オンプレミス型

オンプレミス型は、自社の管理下にあるサーバーやネットワーク上へシステムを構築・運用する形態です。既存の設備や業務にどこまで合わせられるかは、製品や契約内容によって異なります。導入後は、自社で担う保守・更新の範囲が広くなりやすいため、運用体制をあらかじめ整えておく必要があります。

保守対象は、サーバーなどのハードウェア、OS(基本ソフトウェア)、データベース、アプリケーションです。自社で対応する範囲と、外部の保守会社へ委託する範囲を決めたうえで、更新費用や担当者を決めます。障害対応や定期的な更新まで含めて、継続して運用できる体制を整えられるかがポイントです。

4-3. 入力方式|バーコード

バーコードは、線やマス目の組み合わせで情報を表し、読取機器で商品や保管場所を識別するコードです。商品やロケーションに付けたコードを読み取ることで、入出庫や棚卸の対象を記録します。

商品コードと棚番を順に読み取る運用では、「何を、どこへ動かしたか」を記録できます。商品と保管場所をコードで特定するため、作業者が入力する項目も減らせます。

なお、バーコードには一次元・二次元などの種類があります。使用するコード体系に、在庫管理システムと読取端末の双方が対応しているかを確認してください。

4-4. 入力方式|RFID

RFIDは、ICタグに記録した情報を電波で読み取る方式です。対象物へ直接触れずに読み取れるため、箱の中の商品に取り付けたタグを箱を開けずに読み取る運用や、複数の商品をまとめて識別する業務で使われます。ただし、読み取りの可否や精度は、タグの種類、周波数帯、対象物の材質、周囲の電波環境によって変わります。

5. 販売管理・WMS・生産管理・ERPとの違い

在庫管理システムと周辺システムは、扱うデータや機能が一部重なります。システムの名称だけで役割を決めず、中心業務、主に管理するデータ、在庫管理との受け渡しを基準に比べます。

システム

中心業務

主に管理するデータ

在庫管理との受け渡し

重なる領域

販売管理システム

見積・受注・売上・請求

受注、売上、請求

受注・出荷指示と出荷実績

商品、受注、引当、出荷

WMS(倉庫管理システム)

倉庫内作業の管理

ロケーション、在庫状態、作業指示、作業進捗、作業実績

入荷・格納・出庫・棚卸実績

数量、所在、入出庫

生産管理システム

計画・手配・工程・製造実績

品目、BOM(部品表)、工程、製造実績

材料払出、仕掛、完成品入庫

材料・仕掛・完成品

ERP(統合基幹業務システム)

基幹業務の統合

販売、購買、会計などの取引データ

在庫数量・金額と各業務データ

販売、購買、会計、在庫

この区分は、すべての製品に一律で当てはまるものではありません。販売管理に在庫機能が含まれる製品や、WMSと在庫管理が一体になった製品もあります。自社で使う製品ごとに機能範囲とデータの更新元を定めれば、連携の役割も明確になります。

5-1. 販売管理システムとの違い

販売管理システムは、見積・受注から売上・請求までの販売取引を管理します。一方、在庫管理システムは、受注へ引き当てる数量や、入出庫によって変化する在庫の数量・所在・状態を管理します。

両者を分けて導入する場合、主に受注・引当・出荷に関する情報を連携します。

5-2. WMSとの違い

在庫管理システムは、数量・所在・状態を中心に管理しますが、WMSは、これらの在庫情報と作業指示を結び付け、入荷・棚入れ・ピッキング・検品・梱包・出荷の進捗と実績を管理します。

どちらも数量やロケーション、入出庫実績を扱うため、製品によっては機能範囲が大きく重なります。

5-3. 生産管理システムとの違い

生産管理システムと在庫管理システムの違いは、生産工程を管理するか、在庫の数量や状態を管理するかにあります。

生産管理システムは、生産計画や製造指示、工程進捗、製造実績を中心に管理します。一方、在庫管理システムは、材料・仕掛品・完成品の数量・所在・状態と、その変化を中心に扱います。

5-4. ERPとの違い

ERPと在庫管理システムの違いは、管理業務の範囲です。在庫管理システムは、在庫の数量・所在・状態と入出庫を中心に扱います。対するERPは、販売・購買・会計・在庫などの基幹業務を部門横断で管理し、各取引データを関連付けます。

ERPにも在庫を管理する機能があるため、在庫管理システムとの違いは機能一覧だけでは判断できません。ERPで入出庫や在庫数まで管理するのか、倉庫の作業と在庫を専用システムで管理し、その実績をERPへ連携するのかによって、システムの構成が変わります。

6. 在庫管理システムのメリット

ここからは、各メリットを詳しく解説します。在庫管理システムを導入すると、利用可能な在庫数や商品の所在、在庫の動きを共通の情報として管理できます。担当者が個別に台帳を照合する作業を減らし、欠品や滞留、棚卸差異への対応を進められるのがメリットです。

メリット

どんな変化があるか

利用可能な在庫数を把握できる

新たな注文へ割り当てられる数量が分かり、納期回答の根拠をそろえられる

滞留在庫を発見できる

長期間動いていない商品を抽出し、値下げや移送などの対応へ進められる

棚卸差異を早く把握できる

差異に関係する処理履歴をたどり、原因を絞り込める

拠点在庫を共有できる

各拠点の余剰と不足を把握し、重複発注や緊急補充を見直せる

ロット履歴を追跡できる

特定ロットの保管場所や出荷先をたどり、調査範囲を絞れる

ただし、入出庫や在庫移動の記録が遅れると、システム上の数量と現物にずれが生じます。導入時には、誰がどの処理をいつ記録するのかを決め、日々の更新ルールまで統一する必要があります。ポイントを整理します。

6-1. 利用可能な在庫数を把握できる

現在庫と受注済みの引当数量を照らし合わせると、新たな注文へ割り当てられる数量を把握できます。入荷予定も管理できれば、営業担当者は倉庫へ問い合わせる回数を減らし、在庫情報をもとに納期を案内しやすくなります。

また、受注内容の変更やキャンセルが発生した際は、引当数量も更新する必要があります。変更・解除を反映する時点を社内でそろえ、利用可能数へ遅れなく反映できる運用を決めておきます。

6-2. 滞留在庫を発見できる

商品別の入出庫履歴や最終出庫日をもとに、長期間動いていない在庫を抽出できます。担当者の経験だけに頼らず、共通の条件で対象商品を洗い出せる点がメリットです。

滞留とみなす期間は商品の特性によって異なります。季節商品や長期間保有する保守部品まで一律に扱わず、商品群ごとに抽出条件を設定します。

6-3. 棚卸差異を早く把握できる

入出庫、保管場所の移動、返品・廃棄の履歴を棚卸結果と照らし合わせると、差異に関係する処理を絞り込めます。未処理の伝票や誤ったロケーションをたどれるため、原因調査や再棚卸の負担を抑えられます。

棚卸日に未入力の処理をまとめて修正すると、差異が発生した時点を追えません。現物を動かした時点でシステムにも記録し、未処理の伝票を把握できる運用を整えます。

6-4. 拠点在庫を共有できる

各拠点の在庫を共有すると、余剰在庫を不足している拠点へ振り替えるかを検討できます。全社では在庫が足りているのに、各拠点が同じ商品を重複して発注する状況も見直せます。

移動中の在庫を管理できる製品では、移動元からの出庫、輸送中、移動先での受入れを分けて記録できます。商品コードや数量の管理単位が拠点ごとに異なる場合は、在庫を集約する前に対応関係や換算方法をそろえておきます。

6-5. ロット履歴を追跡できる

入荷時のロット情報を保管場所の移動や出荷まで引き継ぐと、特定ロットの所在や出荷先を追跡できます。

ロットに期限を登録している場合は、期限が近い商品の抽出にも活用できます。問い合わせを受けた際は、対象となる保管場所や出荷先を絞り込めます。

追跡を途中で切らさないため、拠点間移動や返品でも同じ識別情報を引き継ぎます。コードの置き換えや再入力が発生する場合は、変更前後の情報が対応する形で記録します。

7. 在庫管理システム導入後に起こりやすい失敗

在庫管理システムは、必要な機能を備えていても、更新元や入力時点などの運用ルールが曖昧だと在庫差異になる可能性があります。返品や拠点間移動などの例外処理、現場での操作、周辺システムとの連携監視も、稼働前に設計しておきたいところです。

ここでは、在庫管理システムの導入後に起こりやすい失敗例と、それを防ぐための対策を解説します。 


7-1. 更新元が統一されていない

販売管理システムや在庫管理システム、表計算ソフトで同じ情報を更新すると、どの数値が最新か分からなくなります。担当者ごとに参照する台帳が異なり、営業が案内した在庫数と倉庫の現物に差が出る原因にもなります。

商品情報や在庫数量など、データ項目ごとに正式な更新元となる正本を定めます。修正は正本で行い、ほかのシステムへ反映する流れに統一したうえで、更新担当者と承認条件も決めてください。

7-2. 入力が遅れる

入荷や出庫の実績を後からまとめて入力すると、日中に参照する在庫データは現物より古くなります。この時間差によって欠品や二重引当のリスクが高まり、後から数値を合わせても、その間に行われた判断には反映できません。

対策として、在庫を更新する時点と、システムへ反映するまでの許容時間を工程ごとに定めます。作業中の入力が難しい場合は端末の配置や一時保存の方法を見直し、未処理件数と滞留時間を管理者が追える状態にします。

7-3. 例外処理が漏れる

通常の入荷と出荷だけを要件にすると、返品・廃棄・分納・拠点間移動などがシステム外へ残ります。表計算ソフトや口頭で処理した内容が反映されず、棚卸で初めて差異に気づく事態につながります。

過去の履歴から頻度の高い例外や影響の大きい例外を洗い出し、入力、承認、在庫状態の変更、周辺システムへの反映までの流れを決めます。製品デモでは、例外処理を登録した後の在庫状態まで試してください。

7-4. 現場で入力されない

入力項目や画面遷移が多いと、現場では登録の後回しや代理入力が起こりやすくなります。その結果、現物が動いた時点と記録時点に差が生じ、処理した担当者も追いにくくなります。

操作試験には、日常的に入出庫や棚卸を行う人も参加させます。手袋、照明、通信状況、端末の持ち運びを含む実際の作業条件で試し、操作に迷った箇所や処理時間を画面設定と手順へ反映します。

7-5. 連携エラーを見逃す

周辺システムとの連携では、一部項目の欠落やデータの重複が起こる場合があります。通知先や再処理の担当者が決まっていないと、在庫管理システムと販売・会計側のデータに差が残ります。

連携項目、送信方向、更新時点、エラー内容を一覧にし、監視担当者と再処理の手順を決めます。送信側と受信側の件数や数量を照合し、障害中に手入力したデータが復旧後に二重反映されない流れも定めてください。

8. 在庫管理システムの導入を判断するポイント

在庫管理システムの導入は、現在起きている課題と、運用ルールの整備状況から検討します。

現在の状態

導入の考え方

先に行うこと

複数拠点の在庫をまとめて把握できない

導入を優先して検討する

在庫照会や拠点間移動にかかる時間を把握する

欠品・滞留在庫を継続して追えていない

欠品・滞留の把握を目的に導入を優先して検討する

発生件数や影響額を商品群ごとに記録する

棚卸差異の調査で月次締めが遅れる

日々の入出庫管理を含めて導入を検討する

差異が生じる工程と調査時間を特定する

商品コードや更新ルールが部門ごとに異なる

システム選定より先に運用を整える

コード体系と正式な更新元を決める

管理対象が少なく、担当者と更新時点が明確

直ちに導入する必要性は高くない

照合時間と差異件数を記録し、現行運用で対応できる範囲を把握する

複数拠点の在庫をまとめて把握できず、欠品や棚卸差異への対応が日常業務を圧迫している企業は、導入の優先度が高いといえます。

反対に商品コードや更新ルールがそろっていない企業は、システム選定より先に運用基盤を整えます。管理対象が少なく、差異の原因を現行の方法で追えている企業なら、導入の優先度は下がります。

8-1. 導入を優先して検討したい企業

8-1-1. 複数拠点の在庫が分散している

倉庫や店舗ごとに台帳が分かれ、全社在庫の把握に集計が必要な企業は、システムによる一元管理を検討します。

移動中の商品を追えないと、欠品した拠点で追加発注する一方、別拠点には在庫が残る事態が起こります。在庫照会の時間や緊急移送の件数を把握し、負担の大きい拠点から導入範囲を決めます。

8-1-2. 欠品・滞留在庫を追えていない

欠品件数や滞留期間を継続して把握できず、担当者の経験で発注している企業も導入を検討したい状態です。

引当済み数量や入荷予定が別管理になっていると、在庫一覧だけでは受注へ回せる数量を判断できません。欠品や廃棄の件数、過剰在庫の金額を商品群ごとに記録し、改善を優先する範囲を決めます。

8-1-3. 棚卸差異の調査に時間がかかる

棚卸差異の調査や再集計によって月次締めが遅れている企業は、日々の入出庫管理を含めて導入を検討してください。棚卸日に数量だけを修正しても、差異が生じた工程を特定できず、同じ調査が繰り返されてしまいます。

8-2. 導入前に運用基盤を整えたい企業

8-2-1. 商品コードや更新ルールがそろっていない

同じ商品を部門ごとに異なるコードや数量単位で管理している場合は、コード体系とデータの対応関係を見直します。

商品コードとロケーションについて、それぞれ管理責任者と正式な更新元を決めます。段階的に統一する場合は、変換ルールと移行期限まで定めます。

8-3. 現時点では導入を急がなくてよい企業

8-3-1. 管理対象が少なく更新ルールが明確である

商品数や保管場所が限られ、担当者と更新時点が明確で、差異の原因も追えている企業は、直ちにシステムを導入しなくてもよいでしょう。

まず、照合や集計にかかる時間と差異の発生件数を記録し、運用改善によって減らせる作業を見積もります。管理対象や担当者が増え、照合時間や差異件数が増え始めた段階で、システム化を再検討します。

9. 在庫管理システムを選ぶ5つのポイント

在庫管理システムを選ぶ際は、費用や機能数に加え、自社の業務を最後まで処理できるかを試します。通常の入出庫だけで終えず、返品・拠点間移動・棚卸差異の修正も共通のシナリオに含めてください。

ポイント

自社条件

確認資料

確認する内容

判断基準

追加確認

費用対効果

対象拠点・利用者・端末

見積書、料金表

費用とKPIの試算

同じ期間で投資を判断できる

追加費用

現場操作

通常・例外の作業動線

デモ環境、操作資料

完了時間、迷った箇所

現場が所定時間内に完了できる

端末・通信

システム連携

正本、項目、更新時点

連携仕様書

連携対象の件数・数量の一致、必要に応じて金額の一致

エラーを検知・再処理できる

個別開発

権限・ログ

在庫修正、原価、個人情報

セキュリティ資料

役割別操作の可否

必要最小限の権限にできる

保存期間

導入支援

移行、研修、初回棚卸

作業範囲、見積書

自社と委託先の分担

本稼働までの責任が明確

追加支援

連携仕様、権限とログ、移行支援も同じ条件で比べます。各製品で同じ商品データと作業手順を使えば、追加設定や支援が必要な箇所をそろえて評価できるでしょう。

9-1. 費用対効果

費用対効果は、初期費用と月額料金に加え、端末・ラベル・連携開発・データ移行・教育・保守まで含めて評価します。利用者数や拠点数が増えた場合の料金、導入準備と並行運用にかかる社内工数も分けて見積もってください。

総費用は、欠品件数・在庫金額・廃棄件数・棚卸工数・照会時間などのKPIと照らし合わせます。導入前の現状値を測り、本稼働後も同じ定義で追える指標を選びます。売上の増減だけを効果とすると、ほかの要因を切り分けられません。

9-2. 現場操作

現場操作は、画面の印象より、入出庫や棚卸を所定の時間内に完了できるかで評価します。通常処理に加え、返品・拠点間移動・棚卸差異の修正まで、実際に使う端末と想定する作業動線で試してください。

デモでは、完了時間、画面遷移、手入力する項目を記録します。エラー表示や承認までの流れも試し、現場担当者が迷った箇所は、設定・研修・運用のどこで解消するかを決めます。

9-3. システム連携

システム連携は、機能の有無だけで判断できません。商品・受注・引当・出荷・在庫評価ごとに、連携する項目と方向、更新時点、正式な更新元となる正本を一覧にします。

また、デモでは、在庫管理システムから送ったデータが、販売・会計システムへ同じ件数と数量で取り込まれるかを照合します。金額も連携する場合は、合計金額の一致まで確かめます。

未登録の商品コードなど、エラーになるデータも使って試してください。エラーが誰へ通知され、誰が修正し、どの処理から再開するのかまで決めておきます。

9-4. 権限・ログ

在庫数量の修正や原価情報、顧客・仕入先情報は、担当者の役割に応じて扱える範囲を分けます。閲覧・登録・変更・承認・出力・削除の権限をどこまで設定できるかは、製品やプランによって異なります。

認証方法と操作ログの記録対象、保存期間を比べます。管理者権限を共有せずに運用できるか、異動や退職時に権限を削除できるかも試してください。さらにバックアップ、障害時の復旧、契約終了時のデータ出力については、製品の機能と自社の運用体制を併せて把握します。

9-5. 導入支援

商品・ロケーションの整備から在庫残高の移行まで、契約に含まれる作業を把握します。端末設定・現場研修・並行運用・初回棚卸の支援範囲と、自社と提供会社の分担も見積書へ反映させてください。

データ形式、試行移行の回数、再取込の条件も比べます。初回棚卸では移行した残高と現物を照合し、差異の調査と修正を誰が担うかを決めます。支援の終了時点と、本稼働後の問い合わせ先も契約前に定めておきましょう。

10. 在庫管理システムの導入手順

在庫管理システムは、対象在庫とKPIを定め、商品・ロケーションの正本と例外処理を整えてから、データ移行と試行へ進めます。最初から全拠点を切り替えず、範囲を限定して現物と記録が一致するかを照合します。

工程

主な作業・成果物

主な担当

次へ進む基準

対象・KPI決定

対象一覧とKPI基準値を作成する

在庫管理・経営

対象範囲と算定方法が承認されている

正本整備

商品・ロケーションマスターを整える

商品管理・倉庫

重複・欠損・単位の不一致が解消されている

要件化

標準業務と例外処理を定義する

倉庫・販売・購買

重要な処理をシステム上で完了できる

連携設計

連携項目・更新時点・責任分担を定める

IT・各業務部門

エラー発生後の再処理まで実行できる

データ移行

マスターと在庫残高を移行し、差異表を作る

IT・在庫管理

差異が許容範囲内に収まり、原因を説明できる

並行運用

限定拠点で代表業務を試行する

対象拠点

現場が主要な処理を継続して実行できる

棚卸・連携照合

現物・在庫データ・連携結果を照合する

倉庫・経理・IT

重大な差異や未処理が残っていない

本稼働判断

合否判定と切り戻し手順を記録する

責任者・経営

責任者が本稼働を承認している

稼働後改善

KPIと運用課題を定期的に振り返る

運用責任者

改善内容と担当者が決まっている

上記表をもとに、在庫管理システムの導入手順を解説します。

10-1. 対象在庫と改善KPIを決める

最初に、導入対象となる商品群、拠点、業務を定めます。欠品が多い商品や滞留在庫の影響が大きい商品、棚卸差異が頻発する拠点など、課題と導入効果を対応させられる範囲から始めます。

KPIには、欠品件数、在庫金額、棚卸差異、照会時間などの現状値と算定方法、集計期間を設定します。在庫量の削減だけを目標にすると欠品が増える恐れがあるため、在庫効率と供給状況の両方を追える指標を組み合わせます。

10-2. 商品・ロケーション正本を整える

対象範囲が決まったら、商品マスターとロケーションマスターを点検します。商品コード、名称、数量の管理単位、倉庫、棚番、在庫状態を照合し、重複コードや廃止商品、存在しないロケーション、単位換算の不一致を移行前に修正します。

併せて、正本となるシステムや部門と、追加・変更を担う責任者を定めます。申請、承認、連携先への反映を一つの手順へまとめ、販売側と倉庫側が同じ商品を別コードで登録する事態を防ぎます。

10-3. 入出庫と例外処理を要件化する

標準業務は、入荷、検品、格納、引当、出庫・出荷、棚卸の流れに沿って定義します。各工程について、誰が入力し、どの状態になれば処理が完了するのかを要件表へ記載します。

分納、返品、廃棄、拠点間移動、棚卸差異など、実際に発生している例外処理も対象です。システムで処理できない例外には代替手順と記録先を定め、現在の帳票や重複承認を残す必要があるかも見直します。

10-4. 連携項目と責任部門を決める

販売、購買、会計、生産などの周辺システムと連携する項目を定めます。具体的には、商品情報、受注データ、引当結果、出荷実績ごとに、送信元・送信先・更新時点を対応させます。在庫金額を管理対象とする場合は、正式な更新元も明確にします。

連携エラーが起きた際は、システムの復旧、データ内容の判定、修正、再処理を担当する部門を分けます。IT部門と業務部門の役割を切り分け、エラーを検知してから正しいデータへ戻すまでの手順を定めてください。

10-5. マスター・在庫残高を移行する

整備した商品・ロケーションマスターと、基準日時点の在庫残高を新システムへ移行します。ロット、期限、在庫状態、引当残を管理する場合は、合計数量だけで終わらせず、明細単位の対応も照合します。

移行後は、件数と合計数量を旧データと比べ、差異を一覧化します。在庫金額を管理対象とする場合は金額も照合してください。

10-6. 限定拠点で並行運用する

代表的な商品と例外処理を含む拠点を選び、新システムを限定した範囲で試行します。通常の入出庫に加え、返品、拠点間移動、棚卸差異、連携エラーまで実行し、現場が作業を止めずに処理できるかを確かめます。

旧来の業務方法と並行して照合する場合は、期間と記録の保存方法を事前に定めます。見つかった課題には担当者と期限を設定し、修正後に同じシナリオを再実行してから次の工程へ進みます。

10-7. 棚卸差異と連携結果を照合する

本稼働前には、実地棚卸などを通して新システムの在庫数量と現物を照合します。差異があれば、移行データ、日々の入出庫、ロケーション、数量の管理単位、未処理の状態に分けて原因を切り分けます。

周辺システムとの連携結果も、件数や数量で照合します。在庫金額を連携する場合は、金額も照合の対象にします。許容する差異の内容と上限を事前に定め、原因を説明できない重大な差異や、再発する連携エラーが残る場合は本稼働を見送ります。

10-8. 本稼働・切り戻し条件を決める

本稼働の可否は、棚卸差異、未処理件数、連携エラー、現場での操作状況が合否条件を満たしたかで判断します。在庫管理責任者、経理、ITが結果を共有し、予定日だけを理由に切り替えず、責任者の承認を経て本稼働へ進みます。

重大な障害に備え、旧システムへ切り戻す条件と、停止中に紙や一時ファイルで記録する代替運用も定めます。判断者、連絡先、復旧後にデータを反映する順番を決め、現場ごとに処理が分かれる状態を防ぎます。

10-9. 稼働後にKPIと運用を見直す

本稼働後は、欠品、滞留、棚卸差異、入力時間、未処理件数を定期的に振り返ります。導入前と同じ定義でKPIを比べ、改善していない項目は、業務手順、システム設定、利用者教育のどこに原因があるかを分析します。

11. 在庫管理システムのよくある質問

ここでは、導入前に解消しておきたい疑問にお答えします。

11-1. 商品・保管場所を追加・変更できる?

商品や保管場所を追加・変更できる製品はありますが、操作できる範囲や権限は製品・プランによって異なります。商品コードや管理単位を変える際は、過去の履歴や連携先への影響に加え、廃止した情報を履歴付きで利用停止にできるかも確かめます。

11-2. バーコード機器も必要?

バーコード機器は必須とは限らず、パソコンやスマートフォンから入力できる製品があります。現場で手入力できる処理量と既存端末の対応状況を確かめ、専用機器の費用やラベル管理の作業も含めて判断してください。

11-3. 障害時に入出庫をどう記録する?

システム停止中も入出庫を続ける場合は、商品、数量、処理時刻、担当者を紙や一時ファイルへ記録します。復旧後の入力担当と重複処理を防ぐ手順を定め、連絡先や代替運用とともに手順書へ残しておきます。

11-4. 契約終了時にデータを出せる?

出力できる項目や形式、対象期間は製品・契約によって異なります。商品・在庫残高に加え、ロケーション、ロット・期限、入出庫履歴を関連付けた状態で取り出せるか、作業費や依頼期限とともに契約中に試します。

11-5. ロット・期限情報を移行できる?

ロット・期限情報を移行できる製品はありますが、対象項目や取込形式は共通ではありません。商品コードの対応関係を定め、在庫残高とロット別数量の一致を照合したうえで、現在庫と保存が必要な過去履歴を分けて移行します。

11-6. 棚卸中も入出庫を続けられる?

棚卸中に入出庫を続けられるかは、製品の機能と棚卸方法によって変わります。実数を数えた時点と帳簿在庫の基準時点を合わせ、作業中に発生した入出庫の記録方法と反映手順を事前に決めておきます。

12. まとめ

在庫管理システムの選定は、現在の在庫業務を書き出すところから始めます。対象となる商品と拠点を決め、商品・ロケーションの更新元、入出庫の更新時点、返品・廃棄の処理方法をそろえます。欠品や棚卸差異など、導入後に測るKPIも決めておきましょう。

要件が固まったら、周辺システムとの連携、権限、データ移行、並行運用の条件を質問表へまとめます。複数製品を同じシナリオで試し、機能や操作性、支援範囲を比べながら、自社の在庫業務に最適なシステムを探してみてください。


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