勤怠管理システムとは?種類・メリット・選び方を解説

勤怠管理システムとは?種類・メリット・選び方を解説

更新日:2026/08/02

月末のたびに打刻漏れを追い、複数の表計算ファイルを突き合わせていると、勤怠集計に時間がかかるものです。集計の遅れは残業時間の把握や給与計算にも影響するため、勤怠管理の流れそのものを見直したい企業も多いでしょう。

こうした勤怠管理業務を効率化するために使われているのが、勤怠管理システムです。打刻データの自動集計や申請・承認のオンライン化といった機能により、従業員の出退勤記録を起点に、申請・承認や労働時間の集計を一元的に管理できます。ただし、就業ルールや例外勤務の扱い、修正時の承認フローは、導入前に自社で定める必要があります。

この記事では、勤怠管理システムの種類と主な機能、導入によるメリットを解説します。導入前に準備する内容を押さえたうえで、自社の勤務形態や運用に合う製品を選びましょう。

1. 勤怠管理システムとは

1-1. 勤怠管理システムで扱う記録

勤怠管理システムは、従業員の始業・終業や休憩、休暇、時間外労働を記録し、申請・承認、集計、データ出力までを支援する業務システムです。製品によっては、雇用区分や勤務パターンに応じた集計に加え、打刻漏れや未承認申請を検知・通知できます。対応範囲や設定単位は製品・プランによって異なります。

勤怠データを確定するには、打刻時刻と勤務実績だけでは足りません。システム上では、次の情報を結び付けて扱います。

  • 始業・終業・休憩の実績

  • 所定労働時間・休日・締め日などの勤務設定

  • 残業・休暇・直行直帰などの申請内容

  • 上長による承認と差戻しの履歴

  • 修正前後の値と変更した担当者

  • 給与計算や労務管理へ渡す確定データ

これらの情報を集計し、承認を終えた勤怠データは、給与計算や労務管理へ引き渡されます。

1-2. 勤怠管理・労務管理・給与計算の違い

ただし、勤怠管理・労務管理・給与計算は、それぞれ扱う業務とデータが異なります。製品によって対応範囲も変わるため、まずは各領域の役割を分けて把握しましょう。

領域

主な業務

主なデータ

次の工程

勤怠管理

打刻、申請・承認、勤務時間の集計、締め処理

始業・終業、休憩、休暇、時間外労働、修正履歴

給与計算、健康確保措置、労務報告

労務管理

従業員情報、雇用契約、社会保険手続きなどの管理

雇用区分、所属、契約条件、資格情報

勤怠設定、給与計算、各種手続き

給与計算

支給額・控除額の計算、給与明細・賃金台帳の作成

基本給、手当、労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働時間数などの法定項目、保険料、税情報

給与支給、会計処理

勤怠管理システムを理解するため、まずは上記3つの領域について簡単にご説明します。

勤怠管理:勤務実績を記録・集計して確定する

勤怠管理では、始業・終業や休憩の記録に、残業・休暇・直行直帰などの申請内容を加えて勤務実績を集計します。上長による承認や差戻しを経て、給与計算や労務管理に使用する勤怠データを確定する領域です。

打刻漏れや申請内容の誤りを修正した場合は、変更前後の値と、修正した担当者の情報も履歴として管理します。こうして確定した勤怠データは、給与計算や労務報告などの次工程へ引き渡されます。

労務管理:従業員情報と契約条件を管理する

従業員の所属や雇用区分、雇用契約、社会保険の資格情報などを管理します。入社・異動・契約変更にともなう情報を更新し、勤怠管理や給与計算、各種手続きへ連携させる領域です。

たとえば、雇用区分や契約条件が変われば、所定労働時間や休日などの勤怠設定に変更が生じます。労務管理側で情報を更新しても、勤怠管理側に古い設定が残っていれば、変更前の条件で勤務時間が集計されるおそれがあります。

情報を更新する担当者と、勤怠設定へ反映する時期を決めておくことで、締め処理後の修正や差戻しを抑えられます。

給与計算:確定した勤怠を支給額へ反映する

勤怠管理で確定した勤務実績に、基本給や手当、保険料、税情報を組み合わせ、支給額と控除額を算出します。その結果をもとに給与明細や賃金台帳を作成し、給与支給や会計処理を進めます。

2. 勤怠記録で企業が守るべきこと


企業には、従業員の労働時間を適正に把握し、必要な記録を保存する責任があります。勤怠管理システムは、その記録や集計を支える仕組みであり、導入そのものが企業の義務として定められているわけではありません。

まずは、勤怠管理において企業が守るべきことを解説します。

2-1. 始業・終業を客観的に記録する

使用者は原則、対象となる労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録します。確認・記録には、使用者の現認、またはタイムカード・ICカード・パソコンの使用時間などの客観的記録を基礎とする方法を用います。

やむを得ず自己申告制とする場合は、実態調査や補正など所定の措置が必要です。なお、管理監督者など本ガイドラインの適用外となる者についても、健康確保のために労働時間の状況を別途把握する必要があります。

ただ、打刻された時刻がそのまま労働時間になるとは限りません。労働時間に該当するかは、就業規則等の定めのいかんによらず、客観的に見て労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかによって決まります。加えて着替えや清掃、待機、研修なども、業務上の指示や義務付けの状況に応じて個別に判断されます。

参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

2-2. 自己申告と実態の差を補正する

自己申告制を採用する職場でも、従業員の申告を受け取るだけでは十分ではありません。企業は申告方法を周知し、実際の労働時間を正しく申告できる環境を整える必要があります。

とくに申告時間と入退場記録、パソコンの使用時間などから把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合、使用者が実態調査を実施します。また、適正な申告を阻害する目的で時間外労働の上限を設定する運用は認められません。未申告の労働時間が判明したときは、実態に合わせて記録を補正します。残業時間の申告に上限を設け、超過分を記録できない運用も避けなければなりません。

2-3. 賃金台帳と関係記録を保存する

企業は、作成した勤怠記録を必要な期間にわたって保存します。労働者名簿や賃金台帳に加え、出勤簿やタイムカード、始業・終業時刻に関する記録も保存対象です。

労働基準法第109条は、労働関係書類の保存期間を5年と定めています。ただし、2020年4月1日の改正法施行にともなう経過措置により、当分の間は3年とされています。

退職金の請求権は5年で時効となるため、在職中の記録が退職後に必要になることもあります。法定の保存期間の起算日は、タイムカード等は「最後の記入をした日」、労働者名簿は「退職や死亡の日」等と定められています。システム上で電磁的記録として保存する場合は、直ちに画面表示や印字ができ、誤消去を防止する等の法定要件を満たす必要があります。

出典:厚生労働省「賃金台帳等の労働契約関係の書類の保存期間は何年ですか?」

2-4. 健康確保に必要な時間を把握する

労働安全衛生法上の「労働時間の状況」は、長時間労働者への面接指導など、健康確保措置の対象者を把握するための記録です。賃金計算に使う労働時間とは目的が異なるため、勤怠データをどの健康管理業務に利用するかを定めます。

事業者は、タイムカードやパソコンの使用時間など、客観的な方法を基本として労働時間の状況を把握し、作成した記録を3年間保存します。やむを得ず客観的な方法で把握しにくいときは、必要な措置を講じたうえで、労働者の自己申告によって把握することが認められています。また、勤怠管理システムから対象者を抽出する場合、管理監督者や裁量労働制の適用者も含めた対象範囲、集計条件、データの更新時点を担当部署間で共有します。アラートを受け取る担当者に加え、産業医や管理者へつなぐ経路、対応結果の記録先も決めておきましょう。

出典:厚生労働省「労働安全衛生規則」

2-5. 年次有給休暇を管理する

年5日の取得義務に対応する

年次有給休暇が10日以上付与される労働者には、管理監督者を含め、基準日から1年以内に5日を確実に取得させる必要があります。労働者が自ら請求して取得した日数や、労使協定に基づく計画年休の日数も、この5日に含まれます。

取得が進んでいない労働者へ使用者が時季を指定するときは、本人の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めます。

年次有給休暇管理簿を作成・保存する

企業は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、基準日、取得日数、取得日を記録します。管理簿は対象期間中に加え、その満了後5年間保存するのが原則ですが、経過措置により当分の間は3年間とされています。

付与日が従業員ごとに異なる企業では、取得状況を同じ締め日だけで管理すると、取得義務を負う期間の終わりを見落とすおそれがあります。

システムで取得状況を継続して追う

勤怠管理システムには、付与日や取得実績をもとに、取得義務の対象者、残りの日数、対象期間を一覧表示する製品があります。期限が近い未達者を管理者へ通知できる製品もあり、基準日から1年間の取得状況を継続して追えます。

ただし、正しく集計するには、付与日と取得実績が正確に登録されていなければなりません。導入時には現在の残日数だけでなく、直近の付与日と取得日も移行します。半日単位の休暇は取得日数へ算入し、時間単位の休暇は年5日の取得日数へ算入しない扱いが反映されるかを確かめ、管理簿とシステム上の日数を一致させます。

2-6. システム導入義務と区別する

勤怠管理システムの導入自体が、一律に義務付けられているわけではありません。企業に求められるのは、労働時間を適正に把握し、賃金計算や健康確保措置に必要な記録を残すことです。

システムを導入するかは、現在の方法で正確な記録を続けられるか、打刻との差異を調べられるか、必要な期間にわたってデータを保存できるかで判断します。勤務場所や雇用区分が増え、手作業での管理が難しい企業は、負担が集中している業務からシステム化する範囲を決めるといいでしょう。

3. 勤怠データが確定するまでの流れ


 

勤怠データは、打刻した時点では、まだ給与計算に使える確定値ではありません。勤務実績を集め、就業ルールに沿って集計した後、例外勤務の申請・承認と締め処理を行います。申請・承認と締め処理までを終えた勤怠データを、給与計算へ引き渡します。

工程

主な入力

主な担当

完了の目安

打刻

始業・終業、休憩、勤務場所

従業員

当日の実績が記録されている

自動集計

打刻、勤務予定、就業設定

システム・総務

所定内・時間外・休日等へ区分されている

例外処理

打刻漏れ、休暇、直行直帰、勤務変更

従業員・承認者

未申請・未承認・差戻しが解消している

締め

承認済み実績、修正内容

総務・労務担当者

対象期間の勤怠が確定している

給与連携

確定勤怠、手当用の集計値

総務・給与担当者

項目数・合計値・対象者が一致している

工程ごとの完了条件を決めておくと、給与計算で差異が生じた際に、どの工程まで戻るべきかをたどれます。打刻・設定・申請・連携の順にたどれば、原因がある箇所を特定しやすいです。ポイントを整理します。

3-1. 打刻データを集める

勤怠データの起点は、従業員が記録する勤務実績です。始業・終業と休憩の記録を集め、勤務場所や保有端末に応じて、PC・スマートフォン・ICカード・専用端末などの打刻方法を選びます。

同じ企業内でも、働く場所によって複数の方法を併用できます。たとえば、事業所勤務者は共有端末、在宅勤務者はPC、外出の多い従業員はスマートフォンを使う形です。

複数の方法を併用する際は、二重打刻をどう扱うか、端末間の時刻差をどう処理するかを決めます。通信が途切れた状態で記録された打刻についても、復旧後にデータがどのように反映されるかを把握しておきます。

3-2. 勤務ルールで自動集計する

自動集計の正確さを左右するのは、打刻の量ではなく就業設定です。集めた打刻は、雇用区分や所定労働時間、休憩・休日・締め日などの設定に沿って集計されます。システムが設定済みの条件を一貫して適用するため、担当者が表計算の数式を修正する運用よりも、計算手順を統一しやすくなります。

ただし、自動で算出された値の正否は元の設定に左右されます。変形労働時間制やフレックスタイム制を採用する企業では、代表的な勤務パターンごとの期待値が必要です。日をまたぐ勤務と拠点独自の休日も試算し、その結果を期待値と照合する必要があります。

設定変更では、反映日の決定も欠かせません。就業規則の変更を過去データへ遡って適用すれば、締め済みの集計値まで変わる点に注意が必要です。そのため、適用開始日と再計算の範囲を記録しておく必要があります。

3-3. 例外勤務を申請・承認する

打刻漏れ・休暇・残業・直行直帰・勤務変更など、自動集計だけでは確定できない勤務実績は、申請と承認を経て勤怠データへ反映します。

申請画面の操作性を比べる前に、勤務の種類ごとに申請理由と添付資料を決めます。誰が承認するのか、いつまでに処理するのかも申請単位で設定します。

3-4. 締め後に給与へ渡す

給与連携へ進む前に、未打刻・未申請・未承認・集計エラーを解消します。その後、対象期間の勤怠を締め、確定した勤務実績と手当計算に使う集計値を給与計算へ渡します。

連携方法は、CSVファイルやAPIなど製品ごとに異なります。導入時には、勤怠管理システムの各集計項目を、給与システムのどの項目へ取り込むのかを決めておきます。

連携前には、対象者数とデータ件数、労働日数、時間外・休日・深夜の各時間、休暇・欠勤の区分を照合します。CSV連携では出力列と取り込み先を対応表にまとめ、API連携では更新のタイミングとエラー時の再送方法を確認してください。項目名が同じでも、時間の単位や集計期間が異なれば給与額へ影響するため、テストデータで結果を比較します。

差異が見つかったときは、勤怠側の設定、申請内容、給与側の取り込み条件の順に原因を切り分けます。修正後に再集計・再出力したデータだけを連携し、どの版を給与計算へ使ったのかを記録しておけば、締め直しが発生しても変更経緯をたどれます。

4. 勤怠管理システムの主な機能

勤怠管理システムには、勤務実績の記録から申請・承認、集計、給与システムへの連携までを支える機能があります。製品によって搭載される機能や対応範囲は異なるため、自社の勤務形態と現在の業務に合うものを選びます。

ここでは、勤怠管理システムに搭載される主な機能を紹介します。

4-1. 打刻機能

打刻機能は、従業員の始業・終業や休憩の時刻を記録する機能です。PC・スマートフォン・ICカード・専用端末など、製品によって複数の打刻方法があります。

事業所勤務・直行直帰・在宅勤務など、働く場所に合う方法を使い分けることで、勤務実績を同じシステムへ集約できます。通常勤務に加え、出張や夜勤でも当日中に打刻できる製品もあります。

4-2. 労働時間集計機能

労働時間集計機能は、打刻時刻と勤務設定、申請・承認の内容をもとに、勤務日や締め期間ごとの労働時間を算出する機能です。総労働時間に加え、所定内・所定外、時間外、休日、深夜、休憩など、給与計算や労務管理に必要な区分へ分けて集計します。

同じ打刻記録でも、適用する雇用区分や勤務パターン、休憩設定によって結果は変わります。固定勤務、フレックスタイム制、変形労働時間制などに対応する製品もありますが、設定できる清算期間や集計項目は製品ごとに異なります。

時間帯・曜日・勤務場所を条件として、独自の集計項目を作れる製品もあります。早朝勤務や店舗別の勤務時間など、自社が給与計算や配置管理に使う区分を洗い出し、同じ条件で集計できるかを確かめましょう。

集計結果は、打刻だけで確定するものではありません。未申請や未承認、勤務予定との不一致が残っていれば、締め処理の前後で修正が生じます。どの情報がそろった時点で計算され、設定変更後にどの範囲を再集計できるかまで把握しておく必要があります。

4-3. 申請・承認機能

休暇・残業・休日出勤・勤務変更・打刻修正などを申請・承認する機能です。承認された内容は勤怠実績へ反映され、申請から締め処理までの状況を1つの画面で管理できます。

通常は申請の種類ごとに、入力項目や承認経路を設定します。未申請と未承認を分けて表示することで、従業員と承認者、どちらで処理が止まっているかを把握できます。

4-4. 休暇管理機能

休暇管理機能は、有給休暇や代休、振替休日、企業独自の休暇について、付与日・取得日・残日数・有効期限を管理する機能です。製品によっては、全日、半日、時間単位といった取得方法を設定し、従業員と管理者が残数を確認できます。

有給休暇の自動付与に対応する製品では、入社日や基準日、勤務実績など、設定した条件をもとに付与対象を算出します。ただし、付与や失効、繰越の設定範囲、時間単位休暇の管理方法は同じではありません。現在の台帳にある残数に加え、付与日と取得履歴をどこまで移行できるかも調べます。

休暇の申請が承認されたあと、勤務予定や勤怠実績へどのように反映されるかも重要です。申請画面では残数が足りていても、締め処理や給与連携の時点で日数が食い違えば、総務による修正が必要になります。

4-5. シフト・勤務予定管理機能


シフト・勤務予定管理機能は、時間帯ごとに必要な人数をもとに、従業員の勤務予定を組む機能です。作成したシフトはシステム上で従業員へ共有できます。

製品によっては、時間帯ごとの必要人数や従業員の業務習熟度などを設定し、シフトを自動作成できます。希望休や資格情報を作成条件へ反映できるかは、製品ごとに確認します。小売・飲食・介護など、日ごとに勤務時間や配置人数が変わる職場で使われる機能です。

シフトや勤務予定と実際の打刻結果を並べて管理する機能です。予定との差から、遅刻・早退・予定外勤務・勤務変更の申請漏れを把握できます。

予定変更の申請や承認までシステム上で行える製品もあります。締め処理の前に予定と実績の差を調べられるため、月末の修正作業を抑えられます。

4-6. アラート機能

打刻漏れ・長時間勤務・休憩不足・未承認申請などを本人や管理者へ知らせる機能です。不備が発生した段階で通知し、締め処理までの対応を促します。

通知する条件・相手・時点は、内容ごとに細かく設定できます。たとえば、打刻漏れは本人、未承認申請は承認者、期限を過ぎた不備は総務へ通知する運用が可能です。

4-7. 勤怠締め機能

勤怠締め機能は、一定期間の申請・承認と集計を終えた勤怠データを確定し、給与計算や帳票出力へ渡せる状態にする機能です。締め前に、打刻エラーや未承認申請が残っている従業員を検知できる製品もあります。

締められる単位は製品によって異なります。全社を一括で処理するほか、所属・雇用区分・従業員などの単位で対象を分けられる製品もあるため、自社の締め日と担当範囲に合うかを調べましょう。一部の従業員だけ処理が終わっていないときに、完了した部門から締められるかも月次業務に影響します。

締め後の修正方法も確認が必要です。締めを解除して修正するのか、訂正申請を承認してから再び締めるのかによって、担当者の操作と残る履歴が変わります。解除できる権限を限定し、誰が、どの理由で、どの期間を開き直したのかを追える状態にします。

4-8. 帳票出力機能

集計した勤怠データを勤務表や集計表として表示・出力する機能です。対象期間・部門・雇用区分などを指定し、必要なデータを取り出します。CSVファイルとして出力できる製品では、給与計算や労務報告にもデータを利用できます。

4-9. 外部連携機能

外部連携機能は、勤怠管理システムで確定した勤務データを、給与・人事・会計などのシステムへ渡す機能です。勤怠データを給与システムへ取り込めば、勤務時間や休暇日数を手入力する作業を減らせます。

4-10. 権限管理機能

利用者ごとに、閲覧できるデータと操作できる範囲を制限する機能です。従業員・上長・部門管理者・総務担当者・システム管理者などの役割や、所属・雇用区分に応じて権限を設定します。

閲覧・申請・承認・修正・出力・設定変更など、制御できる操作と対象範囲は製品によって異なります。

4-11. 操作履歴管理機能

勤怠データやシステム設定について、誰がいつ変更したのかを記録する機能です。製品によっては、変更者、変更日時、変更前後の値などを確認できます。

打刻修正や設定変更の経緯を追えるよう、変更理由を入力できるか、どの条件で履歴を検索できるかも確認します。保存期間や外部ファイルへの出力可否は、製品や契約内容によって異なります。

5. 勤怠管理システムの提供形態と打刻端末

クラウド型とオンプレミス型は、勤怠管理システムをどこに構築し、誰が保守するかを表す運用形態です。専用端末は打刻に使う機器であり、クラウド型・オンプレミス型とは分類軸が異なります。

実際には、クラウド型やオンプレミス型のシステムに、ICカードリーダーや生体認証機器などの専用端末を組み合わせる構成もあります。それぞれの特徴を分けて捉え、保守・更新・端末管理を誰が担うかを比べましょう。

区分

提供側が主に担う範囲

導入企業が主に担う範囲

主な検討項目

クラウド型

サービス基盤の保守・更新

利用者、権限、端末、社内運用

障害対応、更新通知、データ保管・出力

オンプレミス型

製品保守や更新プログラムの提供

サーバー、ネットワーク、適用作業、バックアップ

保守要員、更新頻度、復旧手順

PC・スマートフォン

Web・アプリの提供範囲

利用端末、アカウント、通信環境

対応OS・ブラウザ、端末紛失、通信断、位置情報

専用端末併用

端末・ソフトの提供範囲

設置場所、通信、端末管理、代替打刻

故障交換、停電・通信断、混雑時の運用

システム選定時は、提供会社と自社の役割をまず分けます。自社で対応する作業を明確にすると、日常運用や障害対応に必要な人員や費用を見積もりやすくなります。

ここからは、システムの提供形態と打刻方式を分け、それぞれの特徴と管理範囲を解説します。

5-1. クラウド型

クラウド型は、提供会社が運用するシステムへインターネット経由で接続する形態です。自社でサーバーを用意する負担を抑えられ、複数拠点や在宅勤務の従業員も同じ環境を利用できます。

サービス基盤の保守や更新は主に提供会社が担います。ただし、利用者の登録や権限設定、退職者のアカウント停止、就業ルールの設定は導入企業側の業務です。従業員が利用するPCやスマートフォンの管理も自社で行います。

導入前には、障害が発生した際の連絡方法と復旧方針を把握します。定期メンテナンスの時間帯や、データの保管・バックアップ・出力条件も調べておきましょう。

クラウド型を選ぶ際は、更新方法や事前通知の有無、操作手順が変わったときの案内方法も確認します。更新情報を受け取る担当者と、変更内容を従業員へ伝える流れも決めておきます。

5-2. オンプレミス型

オンプレミス型は、自社が管理するサーバーやネットワークに勤怠管理システムを構築する形態です。既存の社内システムや独自のセキュリティ要件に合わせて、運用環境を設計できます。

サーバーの監視、バックアップ、障害復旧については、自社側が担う範囲が広くなります。更新プログラムが提供された場合も、事前に検証し、本番環境へ適用する時期を決めなければなりません。

オンプレミス型では、サーバーやネットワーク機器の購入・設置工事、ソフトウェアのライセンス取得、初期設定などの費用を確認する必要があります。

ただし、初期費用だけで判断すると、導入後にかかるランニングコストを見落としがちです。サーバーやネットワーク機器の更新費用だけでなく、保守を担当する人員の人件費や、バックアップ環境の整備費用も含めて見積もりましょう。

5-3. PC・スマートフォン

PC・スマートフォン打刻は、従業員が普段使う端末から始業・終業を記録する方式です。固定席のある従業員はPC、外出や在宅勤務の多い従業員はスマートフォンというように、勤務場所に合わせて使い分けられます。ただし、個人端末を業務に使うか、共用端末からの打刻を認めるかは、社内の端末利用方針と合わせて決めます。

導入前には、利用するOSやブラウザ、アプリの有無に加え、ログイン方法と打刻できる場所を確認します。位置情報を使うなら、取得するタイミングと表示範囲を従業員へ説明できる状態にしてください。端末の紛失や通信断が起きたときに、別の端末や事後申請へ切り替えられるかも試しておきます。

5-4. 専用端末併用


専用端末とは、事業所の入口や作業場など、決めた場所で従業員が打刻するための機器です。対応製品を導入することで、ICカードリーダーや指静脈認証機器などの専用端末を、クラウド型またはオンプレミス型の勤怠システムと組み合わせられます。なお、利用できる端末と接続方式は製品・構成ごとに確認が必要です。

この方式は、個人のスマートフォンを業務に使わない職場や、従業員へPCを1台ずつ配布していない現場に適しています。一方、出退勤が同じ時間帯に集中する職場では、端末の前に待ち時間が生じる可能性があります。

試行時には、必要な設置台数と場所を検討しましょう。カード忘れや認証エラーが起きた場合の打刻方法に加え、故障・停電・通信断が発生した際の代替手段も決めておきます。

また、導入後には、カードの発行・交換、端末の清掃、故障時の交換などの作業が発生します。端末価格だけでなく、設置工事・通信回線・交換時の配送を含めて費用を見積もります。

6. 勤怠管理システムの導入手順

 勤怠管理システムを導入する前に、まず現在の就業ルールや勤務パターン、例外時の対応方法をまとめます。その後、要件整理・試行・給与連携の確認・研修を行い、本稼働へ進みます。

以下のように、各工程で次へ進む条件と、問題が生じたときに見直す範囲を決めておきましょう。

工程

主な成果

責任を持つ部門

完了の目安

見直しへ戻る状態

現状把握

就業ルール・勤務パターン一覧

総務・労務

対象者と現行規程が対応している

運用と規程の不一致が残る

要件化

例外処理を含む要件表

総務・現場・IT

各処理の担当と承認経路が決まる

特定担当者しか判断できない

試行

打刻・申請・集計の検証記録

試行部門・導入担当

主要な勤務パターンを再現できる

未処理エラーや手作業が多い

締め検証

給与連携の照合結果

総務・給与担当

旧運用との照合が完了し、差異があれば理由と採用値の根拠を説明できる

対象者・項目・合計値が合わない

研修

役割別手順・問い合わせ経路

総務・IT・各部門

利用者が担当操作を完了できる

質問が特定操作へ集中する

本稼働・改善

修正件数や締め時間の記録

総務・労務

指標が安定し、未処理が残らない

給与確定へ影響する不備が続く

完了条件を満たせない工程があれば、原因に応じて前の工程へ戻ります。たとえば、給与連携で差が出たときは、研修だけで解消しようとせず、要件や勤務設定まで戻って原因を修正します。詳しく見ていきましょう。

6-1. 就業規則と勤務パターンを集める

導入準備では、勤怠計算に関係するルールと勤務パターンを集めます。主な資料は、就業規則・賃金規程・休暇規程・雇用契約書・シフト表です。資料を集めたら、それぞれのルールが誰に、いつから適用されるのかを整理します。

従業員を、正社員・短時間勤務者・アルバイトなどの雇用区分に分けます。続いて、次のような勤務パターンを一覧にします。

  • 固定勤務

  • シフト勤務

  • フレックスタイム制

  • 変形労働時間制

  • 夜勤

  • 在宅勤務

同じ雇用区分でも、拠点によって休日や締め日が異なる場合は、別の勤務パターンとして扱います。誰にどの条件を適用するのかを明らかにすることで、システム設定の漏れを防ぎやすくなります。

6-2. 例外処理を要件表へ落とす

例外処理については、発生条件から給与計算への反映方法までを要件表にまとめます。通常勤務の設定だけを整えても、打刻漏れや直行直帰などを総務が毎回判断する状態では、導入後も手作業が残るためです。

要件表の対象には、次のような処理があります。

  • 打刻漏れや二重打刻

  • 直行直帰や出張

  • 夜勤などの日をまたぐ勤務

  • 休日振替や代休

  • 時間単位休暇

  • 部門や雇用区分ごとに異なる締め日

それぞれの処理について、発生する条件、申請する人、承認する人を決めます。あわせて、勤務実績を示す書類や記録、申請期限、勤怠集計へ反映する方法も記載します。

たとえば直行直帰では、従業員が出退勤時刻を入力するのか、登録済みの予定を勤務実績へ反映するのかを決めます。承認者や申請期限まで定めておけば、担当者によって処理方法が変わる事態を防げます。

システムで扱えない例外が見つかった場合は、対象から外す、代替手順を設ける、追加開発を行うなど、いずれかを選びます。発生頻度と給与計算への影響を踏まえ、導入後も継続できる方法を決めてください。追加開発を選ぶ際は、開発費に加えて、設定変更や保守にかかる負担も見積もります。

6-3. 打刻・申請・集計を試行する

実際の勤務を再現し、打刻から申請・承認・集計まで問題なく進められるかを試行します。画面の操作だけを試しても、現場で発生するエラーや処理の遅れまでは把握できないためです。

試行対象には、勤務パターンや勤務場所が異なる部門を含めます。従業員だけでなく、申請を処理する承認者にも一定期間利用してもらい、打刻から承認までの流れを確認します。総務部門だけで試行すると、現場で利用できる端末や通信環境、承認者に処理が集中した場合の負荷を把握できません。

試行する場面には、通常勤務に加えて次のような処理を含めます。

  • 打刻漏れと二重打刻の修正

  • 残業・休暇・勤務変更の申請と差戻し

  • 夜勤や日をまたぐ勤務の集計

  • 上長不在時の代理承認

  • 通信断後の打刻反映

  • 締め直前に届いた申請の処理

処理の成否に加え、1件あたりの所要時間と迷った画面を記録します。管理者への問い合わせや総務の修正件数も残し、操作説明で解決する問題と、設定や製品機能の見直しが必要な問題を分けます。

こうして課題と対応結果をまとめれば、本稼働へ進むかどうかを試行結果にもとづいて決められます。

6-4. 給与連携と締め処理を検証する

給与連携の検証では、勤怠データを給与システムへ正しく渡せるかに加え、差異やエラーが出た際に担当者が修正できるかまで試します。勤怠システム内の集計が合っていても、給与計算へ反映できなければ月次業務は完了しません。

初回は、旧運用と新システムで同じ期間の締め処理を行い、次の項目を検証します。

検証段階

主な確認内容

完了の目安

項目の対応

従業員コード、勤怠項目、時間の単位、欠勤・休暇の区分、締め対象期間

勤怠側と給与側の項目が対応表にまとまっている

集計結果の照合

対象者数、労働日数、総労働時間

数値が一致しているか、差異の理由と採用値の根拠を説明できる

内訳の照合

時間外・休日・深夜の各時間、休暇残数

項目ごとの差異と計算根拠を説明できる

エラー時の再処理

締め解除、データ修正、再集計、給与システムへの再連携

担当者が一連の操作を完了できる

給与確定後の訂正

社内の連絡先、訂正手順

誤りが見つかった際の対応方法が決まっている

数値に差が出た場合は、新システムの結果に一律に合わせません。旧運用と新システムの計算条件をたどり、どの項目や設定で差異が生じたのかを調べます。

本稼働へ進むには、データを取り込めるだけでは不十分です。数値の一致、または差異の理由と採用値の根拠を確認し、担当者が締め解除から修正・再連携まで実行できる状態を完了条件とします。

6-5. 部門別の研修を実施する

研修内容は、利用者の役割に合わせて分けます。すべての機能を1度に説明すると、利用者が自分に必要な操作を把握しにくくなるためです。

従業員向けの研修では、打刻や各種申請の基本操作を中心に説明します。あわせて、役割ごとに必要となる操作範囲も整理し、それぞれの立場で何を行うのかを明確にします。

  • 承認者:申請内容の確認、承認・差戻しの操作

  • 総務:各種設定の変更、締め処理、給与連携の対応

  • IT部門:アカウントの作成・変更・削除、障害発生時の対応

また、通常の操作に加えて、実務で発生しやすい例外的なケースについても手順を確認します。

  • 打刻を忘れた場合の修正方法

  • 申請を取り消す際の操作手順

  • 承認者が不在の場合の対応方法

  • 端末が故障した場合の代替手段

問い合わせ窓口を一本化する場合は、総務とIT部門が回答する範囲を内部で決めておきます。利用者は1つの窓口へ連絡し、窓口側が内容に応じて担当部門へ引き継ぐ体制にすると、問い合わせ先を探したり複数の部署へ連絡したりする負担を抑えられます。

また、研修後は、確認テストや試行用の操作を通じて、利用者が自分の担当操作を完了できるかを確かめます。操作につまずく利用者には追加説明を行い、同じ箇所で迷う人が多い場合は、説明資料や操作手順の見直しが必要です。

6-6. 本稼働後の修正件数を追う

本稼働後は、初月の給与計算を終えただけで導入完了と判断せず、修正件数や締め処理にかかる時間を継続して記録します。具体的には、打刻修正・未申請・差戻し・締め直し・問い合わせの件数を、部門別や勤務パターン別に集計してください。発生傾向を分けることで、設定・研修・承認体制のどこに原因があるのかを絞り込めます。

修正件数が多い場合も、すべてを現場の不慣れと決めつけないようにします。ただ、同じ申請操作で迷う利用者が続くなら、画面の案内や操作手順を見直します。特定の雇用区分だけ集計結果が合わない場合は、勤務設定へ戻って原因を調べます。

システムの提供会社へ相談する際は、問題が発生した条件と操作の手順を具体的に伝えます。どの操作で、どのような結果になったのかを共有すると、設定・操作・製品機能のどこに原因があるかたどりやすくなります。

7. 勤怠管理システムのメリットとは?

勤怠管理システムを導入すると、締め作業の短縮や打刻不備の早期修正、複数拠点のデータ集約が可能になります。月の途中で残業超過の兆候を把握し、部門別の労働時間を経営判断に活用できる点もメリットです。

ただし、どの効果が大きく表れるかは、現在負荷が集中している工程と導入後の運用によって変わります。現状の作業、システムへ任せる処理、期待する変化を結び付け、それぞれにKPIを置きましょう。

現状

システムへ任せる処理

期待する変化

主なKPI

効果が出にくい条件

月末集計が長い

勤務ルールによる集計

締め作業の短縮

締め完了までの時間

設定外の例外が多い

打刻漏れが多い

不備の抽出・通知

締め前の修正

未打刻・督促件数

通知後の担当が不明

拠点ごとに管理

データの一元化

確認先の集約

回収ファイル数・集計時間

拠点ルールを統一できない

残業を月末に把握

途中時点の集計・警告

超過兆候の早期把握

警告後の是正件数

管理者が対応しない

効果を報告できない

指標の継続集計

投資効果の可視化

削減工数・修正率

導入前の基準値がない

効果測定の基準値は、導入直前の1回だけで決めず、繁忙期を含む複数の締め期間から取ります。従業員数や入退社数が大きく変わった月は、総作業時間と従業員1人あたりの時間を併記すると、条件の違いを踏まえて比べられます。

また、導入後に発生した問い合わせ対応や設定変更も、運用工数として記録します。システム化後に残った手作業まで含めることで、実際に削減できた負担と、今後見直すべき工程を経営層へ説明できます。

ここからは、勤怠管理システムの導入メリットを深掘りします。

7-1. 締め作業を短縮できる

紙の出勤簿や表計算を使っていると、月末に記録の回収と転記が集中します。担当者は勤務時間を計算したあと、不備のある従業員や部門へ問い合わせなければなりません。

勤怠管理システムで打刻、申請、勤務設定をつなげると、日々蓄積された記録をもとに集計できます。月末に行っていた転記や計算を減らせるため、締め作業の短縮につながります。

ただし、未打刻や未承認が締め日まで残ると、集計後の修正が発生します。給与連携に必要な項目がそろっているかも含め、締め作業を工程別に測りましょう。記録回収、不備修正、承認催促を分け、集計と給与連携に使った時間も個別に残します。

7-2. 打刻の不備を早く見つけられる

月末になってから打刻漏れに気付いた場合、従業員は数週間前の勤務を思い出さなければなりません。本人と承認者の認識が食い違えば、事実関係の照合にも時間がかかります。

勤怠管理システムで打刻漏れや二重打刻を日次で抽出し、本人や承認者へ通知すれば、記憶が新しいうちに修正できます。月末に問い合わせを集中させず、締め前に不備を減らせるのは大きなメリットです。

ただ、通知後の対応者と期限が曖昧なままでは、不備が放置されます。未打刻件数と修正までの時間を追い、再発率も調べましょう。特定部門へ不備が偏る場合は、不備の発生状況を端末配置や勤務開始手順と照らし合わせ、原因を調べます。

7-3. 複数拠点の勤怠記録を一元化できる

店舗や営業所ごとに勤怠の提出方法が異なると、本部は複数のファイルを回収し、形式をそろえて集計し直す必要があります。在宅勤務者が別の方法で申告している場合は、確認先も増えてしまいます。

共通の勤怠管理システムへ記録を集約すれば、本部は拠点別の進捗や未処理を同じ基準で把握できます。報告形式をそろえることで、ファイルの回収・転記にかかる作業も減らせるでしょう。

7-4. 残業超過の兆候を早く把握できる

勤怠管理システムで月の途中までの労働時間を集計すれば、一定の基準に近づいた従業員を抽出できます。超過が確定する前に、管理者が業務量や勤務予定を見直しやすくなります。

ただし、警告を送るだけでは残業への対応は進みません。管理者は、担当業務を組み替えるのか、別の従業員を配置するのかを判断します。必要に応じて納期を調整し、実施した対応も記録します。

その際、警告対象者数だけでなく、警告から対応までの日数と翌月の再発状況を追いましょう。警告後に是正が行われているかまで測ることで、残業管理が機能しているかを評価できます。

7-5. 労働時間を経営判断に活用できる

勤怠管理システムに蓄積された労働時間を部門や勤務形態ごとに集計すれば、残業の偏りや締め作業の負荷を同じ条件で比較できます。締め時間、修正件数、未承認件数、給与連携後の差異、問い合わせ件数などを継続して追うことで、運用を見直すべき部門を判断しやすくなります。

ただし、数値が減っただけで改善したとは判断できません。たとえ修正件数が減っていても、従業員が申請自体を行わなくなった結果であれば、業務品質が改善したとはいえないでしょう。未処理の残件や締め後の訂正も併せて追い、数値が変化した理由まで確認してください。

8. 勤怠管理システム導入前に決める運用条件


勤怠管理システムを導入する前に、勤務制度、例外勤務、修正権限、障害時の代替手段、個人データの管理範囲を運用条件として整理します。これらが曖昧なまま設定を進めると、導入後も手作業による修正や総務への問い合わせが残ります。

ここでは、勤怠管理システムの導入前に決めておきたい運用条件を解説します。

8-1. 複雑な勤務制度を先に洗い出す

最初に、全従業員へ共通する就業ルールと、雇用区分や拠点、職種ごとに異なるルールを分けます。そのうえで、固定勤務、シフト勤務、フレックスタイム制、変形労働時間制、短時間勤務の対象者を制度別に特定します。

制度名だけを並べても、システムの設定条件は決まりません。始業・終業時刻、休憩、休日、清算期間を制度ごとに具体化します。締め日、申請期限、遅刻・早退の扱いも同じ一覧へまとめましょう。

同じ従業員へ複数のルールが適用される場合は、どのルールを優先するのかを定めます。適用開始日も記録し、人事異動や雇用区分の変更時に設定を切り替えられる状態にします。

現在使っていない勤務パターンは、初期設定へそのまま移しません。対象者の有無と将来の利用予定を調べ、残す制度と廃止する制度を分けます。古い設定を減らすことで、従業員による誤選択や管理者の設定ミスを防げます。

8-2. 端数処理と例外勤務を定義する

勤怠管理システムには、労働時間を一定の単位で丸める端数処理機能があります。ただし、システムに搭載されている機能を、そのまま自社のルールとして採用できるとは限りません。

静岡労働局は、1日ごとに一定時間未満の労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わない運用は、労働基準法違反になると示しています。たとえば、1日の時間外労働のうち15分未満を切り捨て、残業代を支払わない設定が該当します。

総務部門は、実際の労働時間を適切に把握し、その時間に基づいて賃金を計算できるように設定します。端数処理機能の有無だけで決めず、現在の就業ルールや給与計算の方法と照らし合わせる必要があります。

早出や残業、着替え、朝礼、直行直帰についても、労働時間として扱う条件を明文化します。実際の勤務状況によって判断が変わる項目は、社内の責任者や専門家と協議し、申請方法と承認者まで決めておきましょう。

出典:静岡労働局「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」

8-3. 修正権限と承認経路を決める

勤怠実績について、誰が、どの項目を、いつまで修正できるのかを権限ごとに定めます。従業員が実績を直接書き換える運用は避け、本人が修正を申請し、上長が承認したあと、必要に応じて総務が内容を調べる流れにするのが一般的です。

修正期間や項目は、本人、承認者、総務で分けます。締め後の変更は給与計算へ影響する可能性があるため、通常の修正申請とは別の手順を用意し、最終的な承認者も決めておきます。

また、承認者が長期不在になる部門では、代理承認者と切替条件を設定します。人事異動の際は、組織変更日と承認経路の更新日をそろえ、旧上長に残っている申請を誰が引き継ぐのかも明確にします。

8-4. 通信断時の記録方法を用意する

通信障害やサービス停止に備え、打刻できない間の記録方法と、復旧後にシステムへ反映する手順を決めます。紙の記録票、端末内への一時保存、復旧後の本人申請などから、自社の勤務場所で実行できる方法を選びましょう。

代替手順には、記録する項目と提出期限を明記します。記録内容を承認する人と、復旧後にシステムへ再登録する担当者も定めます。

この際、複数人が同じ勤務実績を再登録すると、二重入力が生じます。システムへ反映する担当者を一本化し、代替記録と登録後のデータを照合する方法まで決めておきます。

8-5. 個人データの管理範囲を定める


勤怠システムで収集する個人データについて、利用目的、閲覧できる人、保存期間、削除方法を定めます。収集する項目は利用目的と対応させ、業務に必要な範囲を明確にしましょう。

位置情報や生体認証を利用する場合、取得する必要性と利用範囲に加え、製品が保存するデータの種類と安全管理措置も確認します。どの場面で何のために取得するのかを、従業員へ説明できる状態にしてから運用を始めます。

9. 勤怠管理システムの導入を検討すべき企業

勤怠管理システムが必要かどうかは、従業員数だけでは決まりません。少人数の企業でも、勤務制度が複雑で、勤怠の修正や問い合わせに多くの時間を取られているなら、導入を検討する段階です。

一方、勤務形態が単純で、現在の方法でも正確な記録と集計を無理なく続けられている企業は、管理方法を急いで変える必要はありません。まずは締め作業や修正対応にかかっている時間を測り、運用ルールの変更だけで改善できるかを検討します。

次のような状況が複数重なり、社内運用を見直しても負担が残る場合は、勤怠管理システムの導入をおすすめします。

現在の状況

確認する数値

業務への影響

検討前に試すこと

締め作業が長い

回収から確定までの時間、担当人数

給与計算の開始が遅れる

催促期限と提出方法を統一する

勤務制度が複数ある

制度数、手作業の計算件数

設定漏れや計算差異が起きる

制度と対象者を確定する

打刻場所が分散している

拠点数、未提出・転記件数

本部での回収負担が増える

提出項目と締切をそろえる

例外処理が属人化している

問い合わせ件数、担当者別の修正数

判断待ちや引継ぎ漏れが生じる

判断基準を文書化する

ここからは、導入を検討したい4つの目安をご紹介します。

9-1. 締め作業に時間がかかる

月末の勤怠締めが長引き、未提出者への催促や表計算の修正に追われている企業では、締め作業の負担が大きくなっています。

最初に、勤怠の回収・問い合わせ・修正・承認・集計・給与連携へ費やした時間を、工程ごとに記録します。どの作業に時間がかかっているかを把握すれば、システムで処理したい工程と、社内ルールを改めるべき工程を分けられます。

たとえば、提出方法や締切が部門ごとに異なるため催促が増えているなら、先にルールを統一します。それでも回収や集計、修正に時間がかかる場合は、勤怠管理システムで改善できるかを検討してください。

9-2. 勤務制度が複数に分かれる

制度の追加や人事異動のたびに表計算の式を直し、対象者ごとに計算条件を切り替えている企業では、設定変更が担当者の作業に依存しています。正社員・パートタイマーなどの雇用区分に加え、シフト勤務・フレックスタイム制・変形労働時間制などを使い分けていると、設定漏れや計算差異も起こりやすくなります。

まず、雇用区分・拠点・職種ごとに適用する勤務制度をまとめます。清算期間や休憩の付与、休日の扱いも書き出し、誰にどの条件を適用するのかを決めてください。

そのうえで、自社の勤務条件を設定できるシステムを検討します。通常勤務と例外勤務のテストデータを使い、対象者ごとの集計結果が合うかを導入前に調べましょう。

9-3. 打刻場所が分散している

店舗・工場・営業所・在宅勤務など、打刻する場所によって記録方法が異なる企業では、本部が勤怠データを集め直す負担が生じます。紙の記録やメール、拠点ごとの表計算ファイルが別々に届く運用では、提出状況の把握や集計前の転記にも時間がかかります。

本部が未提出者への催促やデータの転記を毎月行っているなら、勤怠記録を共通の基盤へ集約できるシステムを検討してください。

製品を選ぶ前に、各勤務場所の通信環境と、パソコン・共用端末・個人端末のどれを利用できるかを調べます。スマートフォン打刻だけを前提にすると、個人端末を業務で使わない従業員は打刻できません。

現場ごとに利用できる打刻方法を選び、その記録を本部で同じ形式に集約できるかが、システム選定のポイントになります。

9-4. 例外処理が属人化している

遅刻や早退、直行直帰、休日出勤、締め後訂正の扱いを、特定の担当者しか判断できない企業も、導入検討の段階にあります。担当者の経験に依存した運用では、繁忙期や不在時に処理が滞り、同じ申請でも部門によって扱いが変わる原因になります。

この課題は、システムを導入するだけでは解消しません。まず、頻繁に発生する問い合わせと修正理由を集め、申請者・承認者・総務がどこまで対応するのかを決めます。

処理方法が固まったら、その内容を申請経路や権限として設定できる製品を選びます。共通の手順をシステムへ反映することで、担当者による処理の差や引継ぎ漏れを抑えられます。

10. 勤怠管理システムを選ぶ5つのポイント


勤怠管理システムは、自社の勤務制度や例外処理を正確に反映できる製品から選びます。機能数や月額料金だけで比べると、導入後も手作業や追加費用が残る可能性があります。

選定軸

自社条件

確認する資料・証拠

試行内容

未解決事項

総額費用

人数、拠点、必要機能

見積書、料金条件

年間費用を試算

人数増加時の単価

操作性

打刻場所、利用端末

デモ環境、画面資料

打刻・申請・承認

例外時の操作

外部連携

給与・人事の項目

連携仕様、出力見本

テストデータの照合

エラー時の復旧

セキュリティ

権限、保存、委託条件

契約書、体制資料

権限とログを確認

再委託や終了時処理

導入支援

設定担当、移行期限

支援範囲、窓口条件

問い合わせを試す

追加費用と対応時間

資料に「対応可能」と記載されていても、設定条件や実際の操作方法までは分かりません。実際の勤怠データを使い、従業員、承認者、総務担当者が一連の操作を試したうえで評価しましょう。具体的な評価ポイントをまとめます。

10-1. 総額費用と削減できる工数を比べる

総額費用は、月額料金に加え、導入から運用までに発生する支出を含めて算出します。初期設定、専用端末、外部連携、データ移行、研修、オプションにかかる費用を見積書へ反映してもらいましょう。

利用人数によって料金が変わるシステムの場合、現在の従業員数だけで試算すると、採用や拠点追加後に予算を超える可能性があります。想定する人数ごとの年間費用を算出し、最低利用期間や解約条件も契約前に把握します。

また、費用と比較する工数は、現在の作業実績をもとに算出します。勤怠データの集計や転記、不備の確認・修正、未承認者への催促、給与システムへの連携など、作業を工程ごとに分けてください。そのうえで、システム導入後も残る作業時間を見積もり、導入によって削減できる時間を算出します。

このとき、「自動化されるはず」という想定だけで計算すると、費用対効果の根拠が弱くなります。例外勤務の照合や未承認者への連絡が残る場合は、その時間を導入後の運用工数として計上してください。

10-2. 現場の端末で打刻・申請・承認を試す

実際にシステムを使う従業員、承認者、総務担当者が、システムのUIや操作性を試します。管理者向けの説明画面を見るだけでは、現場で生じる操作上の負担までは分かりません。

テスト段階では、普段使用するスマートフォンやパソコン、打刻端末を使います。通信環境も実際の勤務場所に合わせ、打刻から休暇・残業の申請、上長の承認、差戻しまでを一連で行いましょう。

その際、ITツールに慣れた担当者だけで評価すると、ほかの従業員がつまずく箇所を把握できません。年齢層や勤務場所、利用端末の異なる従業員にも参加してもらいましょう。

従業員側の操作が簡単でも、承認者が申請を処理しにくい、総務担当者が対象者を探しにくいといった問題があれば、管理部門の負担は残ります。打刻から締め処理までを通して試し、特定の利用者へ負担が偏っていないかを評価してください。

10-3. 給与・人事連携の項目とエラー時の動きを試す

給与計算システムや人事システムとの連携は、受け渡す項目を1つずつ照合します。製品資料に「連携可能」と記載されていても、自社が必要とする項目や形式に対応しているとは限りません。

まず、自社が受け渡す項目を次のように分けます。

  • 従業員情報:従業員コード、所属、雇用区分

  • 勤務条件:所定時間、休日

  • 給与計算値:普通残業、深夜、欠勤、休暇

各項目について、名称、データ形式、桁数、単位が連携先と一致するかを調べます。名称が似ていても、集計方法や出力形式が異なるときは、変換や手修正が必要です。

また、API・CSV連携では、未登録コードや不正値を含むデータでエラー時の動きを試します。エラー表示場所、修正後の再送方法、二重登録の防止策も確認しましょう。入社・退職・異動・休職・復職を含むデータで連携を試し、どのデータを基準にするか、どの頻度で更新するかも決めます。

10-4. 勤怠データの管理体制と契約条件を調べる

勤怠データの保護は、システムの機能、提供会社の管理体制、契約条件を合わせて評価します。勤怠システムには、氏名や所属に加え、出退勤時刻、休暇、勤務場所など、従業員の働き方に関する情報が蓄積されるためです。

主に調べる項目は、次の5点です。

  • 利用者と管理者の認証方法、権限の分け方

  • 通信時と保存時の保護、操作ログの取得範囲

  • データの保管場所、バックアップ、復旧手順

  • 再委託先の管理、事故発生時の連絡経路

  • 契約終了時のデータ出力、返却・削除方法

デモでは、一般従業員、部門管理者、総務管理者のアカウントを用意し、それぞれが閲覧できる範囲を試します。異動や退職が発生した際に、誰がどの画面から権限を削除するのかも把握しましょう。

管理者による操作を、どのログで、どの範囲まで追跡できるかも確認します。資料に必要な情報が記載されていない場合は、提供会社へ確認し、その回答を契約書や仕様書に明記できるかを尋ねましょう。

なお、ISMS認証やプライバシーマークは、取得の有無だけでなく、認証・付与の対象範囲も確認します。勤怠サービスの運営組織が対象に含まれているかを公開情報で照合し、自社固有の要件については、契約内容と社内の運用手順で対応できるかを確かめてください。

10-5. 初期設定から本稼働後までの支援範囲を把握する

勤怠管理システムの導入では、自社の勤務制度や申請経路を設定し、テストを終えてから本稼働へ移ります。製品を比べる際は、導入準備から本稼働後まで、提供会社がどこまで支援するのかを把握しましょう。

初期説明、設定代行、データ移行、操作教育、テスト支援のうち、どこまでが契約料金に含まれるのかを確認します。あわせて、自社で用意する資料、設定作業を担当する側、問い合わせできる期間も確認してください。

また、「導入支援付き」と記載されていても、初期説明だけの場合と、設定代行やテスト支援まで含む場合があります。自社の勤務パターンと代表的な例外処理を提示し、標準機能で設定できる範囲と個別対応になる範囲を分けてもらいましょう。

個別対応が必要な場合は、追加費用と納期を確認します。導入後に自社で設定を変更できるのか、提供会社への依頼が必要なのかも聞いておきたいところです。

法的判断や就業規則の整備が支援対象に含まれない場合は、社内の責任者や専門家へ相談する範囲を分けます。提供会社へ依頼する設定作業と、自社が判断する就業ルールを混同しないようにしましょう。

引継ぎ資料に設定理由を残す

本稼働までに、勤務設定、承認経路、権限、給与連携の項目対応、例外勤務の処理手順を資料へ残します。設定値だけでなく、なぜその内容を採用したのかも記録してください。

製品の操作マニュアルだけでは、自社固有の就業ルールと設定の対応までは分かりません。テストで残った課題と暫定対応も同じ保管先へまとめ、担当者が交代しても設定の経緯をたどれる状態にします。

問い合わせ履歴を社内で共有する

提供会社へ問い合わせた内容は、質問、回答、変更した設定、影響を受ける従業員や対象期間とともに記録します。回答を受けて社内で決めた内容は、提供会社の回答と分けて残しましょう。

同じ問題が再発した際に、以前の対応をそのまま適用できるとは限りません。現在の設定と対象条件を確かめたうえで履歴を参照し、必要に応じて提供会社へ再度問い合わせる流れにします。

11. 勤怠管理システムのよくある質問


最後に、勤怠管理システムに関するよくある質問にお答えします。

11-1. 終了時に勤怠データを出力できる?

多くの製品では勤怠実績を出力できますが、対象項目と形式、取得できる期間は同じではありません。

まず、出退勤時刻や集計値を確かめます。申請・承認の内容、修正履歴、従業員マスターも取り出せるかを続けて確認してください。画面から一括出力できるのか、提供会社への依頼や追加費用が必要なのかも重要です。

契約終了が決まってから調べると、移行期間中に必要なデータを準備できないおそれがあります。選定時に出力見本を受け取り、別の表計算ソフトで読めるかを試しましょう。解約後の閲覧期限と削除時期も契約条件に含めておくと、移行計画を立てやすくなります。

11-2. 有給休暇の残数を移行できる?

製品に移行機能があれば、有給休暇の残数や付与日を登録できます。ただし、時間単位・半日単位の扱い、基準日、繰越、失効、過去の取得履歴まで移せるかはシステムごとに異なります。残数だけを入れる方式では、後から付与根拠や取得経緯を確認しにくくなる点にも注意が必要です。

移行前に旧台帳を照合し、従業員ごとに付与、取得、残数が一致しているかを確認しましょう。少人数のデータで試行したあと、全件を移し、旧台帳と新システムを突き合わせます。

11-3. 修正履歴を確認・出力できる?

修正履歴を持つ製品でも、画面で確認できる項目や出力範囲には差があります。

変更日時、変更者、変更前後の値、申請理由、承認者を追えるかを確認してください。管理者による直接修正と、従業員の申請を経た修正を区別できると、月次点検に活用しやすくなります。

デモでは実際に打刻を修正し、どの履歴が残るかを確かめます。保存期間を確認し、検索条件と一括出力の可否は実際に試しましょう。

11-4. 障害・通信断時にどう記録する?

製品側の障害や勤務場所の通信断に備え、代替の記録方法を社内で定めます。紙や所定のファイルへ始業・終業、休憩、勤務場所を記録し、復旧後に本人申請と上長確認を経て登録する流れが一般的です。端末に一時保存する機能があれば、保存範囲と同期時の重複処理を試します。

11-5. 複数の締め日に対応できる?

複数の締め日に対応する製品はありますが、設定できる単位を確認する必要があります。雇用区分、所属、個人のどの単位で締め日を持てるか、異動で締め日が変わる月をどう処理するかを調べます。給与計算側の締め日や支給日との対応関係も併せて確かめましょう。

11-6. 導入期間をどう見積もる?

導入期間は、対象部門や勤務制度の数、データ移行の範囲、試行運用の有無によって変わります。製品の標準的な期間だけで判断せず、要件整理、初期設定、データ移行、試行、研修、本稼働の各工程に分けて見積もりましょう。

あわせて、自社が用意する資料と提出期限、提供会社の設定支援範囲、差異が出た際に前工程へ戻る条件も確認します。複数の勤務制度や締め日がある企業は、代表部門で試行する期間まで含めて計画する必要があります。

11-7. 導入担当はどの部門が担う?

総務・労務部門に任せきりにせず、給与担当、IT部門、試行する現場の責任者も導入に参加します。総務は就業ルールと申請・承認を整理し、給与担当は連携項目と締め結果を照合します。IT部門はアカウント、端末、ネットワーク、セキュリティを確認し、現場責任者は実際の勤務に沿って操作できるかを試します。

導入責任者は、部門間で決まらない事項の判断者と期限を定めます。問い合わせ先に加え、要件変更の承認者、本稼働へ進むかを決める責任者、稼働後の設定変更を引き継ぐ担当者まで明確にしてください。役割を導入前に分けておけば、設定や試行が特定部門で止まりにくくなります。

12. まとめ

勤怠管理システムは、打刻の収集から給与計算への連携までを支える仕組みです。月末の集計や不備対応を減らすには、製品を選ぶ前に就業ルールと例外処理を固め、現在の運用負担を把握しておく必要があります。

現在の課題

資料・デモで試す内容

社内で決める内容

締め作業が長い

自動集計、未処理一覧、給与出力

提出期限と承認責任者

勤務制度が複雑

勤務パターン、例外設定、適用日

制度の対象者と適用条件

拠点が分散している

打刻方法、通信断時の処理

利用端末と代替記録の手順

修正が属人化している

申請経路、権限、変更履歴

修正基準と点検担当者

システム選定を始める前に、就業規則と雇用区分別の勤務パターン、例外処理や勤怠帳票、給与連携項目などを整理しておきます。集計時間・修正件数・問い合わせ件数を記録すれば、導入前後の比較がしやすくなります。

まずは締め作業と例外処理を洗い出し、社内で判断基準と担当者を決めます。そのうえで、削減したい業務とシステムに任せる範囲を整理し、必要な勤務パターンや処理をデモで確認しましょう。本記事を参考に、自社の勤務形態や運用に最適な勤怠管理システムを選んでください。


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