CRM戦略とは?メリットと策定の6ステップ、主な施策・業種別の型を解説

更新日:2026/10/27
CRM戦略とは、既存の顧客との関係を長く保ち、取引から得る利益を増やしていくための方針・計画のことです。本記事では、CRM戦略が重要とされる理由やメリット、目的から実行計画までを決める策定手順などを具体的に解説します。
CRM戦略とは?

CRM戦略とは、どの顧客と、どのような関係を築き、そこからどれだけの利益を得るかを決める方針と計画を指します。こうした関係づくりの土台が、顧客ごとの取引や対応の履歴をもとに関係を深めるCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の考え方です。
CRM戦略と混同しやすいものに、CRMシステムとSFA(営業支援システム)があります。それぞれの違いを表にまとめました。
種類 | 位置づけ | 中心となる内容 |
|---|---|---|
CRM戦略 | 方針と計画 | どの顧客に・何のために・どんな働きかけをするか |
CRMシステム | ソフトウェア | 顧客の情報や対応の履歴の記録・共有 |
SFA(営業支援システム) | ソフトウェア(営業部門向け) | 営業活動や商談の進み具合の管理 |
CRM戦略は「どの顧客に何をするか」を決めるもの、CRMシステムとSFAは決めたことを実行するための仕組みです。CRMシステムが「契約後を含む顧客との関係全体」を扱うのに対し、SFAは主に営業部門が「契約までの商談を管理」するために使います。なお、両方の機能を備えた製品もあるため、製品の名称だけで区別せず、どの情報をどこで管理するかで考えると整理しやすくなります。
CRM戦略が重要とされる理由
CRM戦略が求められるのは、新規獲得だけでは売上が伸びにくく、顧客の情報が接点ごとに散らばり、部門ごとに対応がばらつくからです。
新規獲得だけでは売上を伸ばしにくい
成熟した市場では、新しい顧客が見つかりにくく、1件あたりの獲得費用が上がる傾向にあります。そのため、新規獲得だけに頼ると、獲得費用が膨らむぶん利益が残りにくくなります。
一方、既存顧客は自社の商品を知っており、追加購入や契約更新につながる余地を持つ相手です。利用の声は、新しい顧客への提案や商品の改善に生かせます。新規獲得と既存顧客との関係づくりを両輪で進めれば、売上の土台が安定します。
顧客との接点が増えて情報が散らばる
顧客との接点は、営業の訪問やメールのほか、Webサイト、問い合わせ窓口、SNS、セミナーなどに広がりました。
一方で、接点ごとに別々に記録していると、顧客が今どの段階にいて、何に関心があるのかを社内で把握できません。担当者が異動・退職すれば、その人だけが知る顧客の事情が失われるおそれもあります。散らばった情報を顧客ごとにまとめ、どう生かすかを決めるために、CRM戦略が欠かせません。
部門ごとに顧客への対応がばらつく
部門ごとに判断して動くと、顧客は会社として一貫した対応を受けられず、不満をためやすくなります。たとえば、サポート部門が不具合に対応している顧客に、営業部が契約更新を勧め、そこへマーケティング部から別の商品の案内が届けば、顧客は会社の対応がちぐはぐだと感じます。顧客の情報と方針を部門間で共有する仕組みこそが、CRM戦略の土台です。
CRM戦略に取り組むメリット
CRM戦略に取り組むと、顧客との関係性を計画的に深められます。その結果として得られるのが、継続して取引する顧客の増加、顧客の価値にもとづく施策の優先順位づけ、部門をまたいだ同じ顧客像での対応です。
継続して取引する顧客を増やせる
顧客の段階に合わせて働きかけを変えれば、導入直後の顧客の定着や、取引が減ってきた顧客の引き留めに手を打てます。
取引が長く続く顧客が増えれば、毎年の売上を見通しやすくなるうえ、関係が深まった顧客から知人や取引先を紹介してもらえる機会も生まれます。
施策の優先順位を顧客の価値で決められる
顧客ごとの取引額や取引の期間がわかれば、限られた人手と予算をどの顧客に振り向けるかを決められます。そのため、声の大きい顧客や担当者の感覚に頼らず、事業への貢献度で施策を選べます。
部門をまたいで同じ顧客像で動ける
どの顧客を重視し、どの段階で何をするかを全社で決めておけば、営業、マーケティング、サポートの各部門が同じ方針で顧客に対応できます。部門ごとに食い違う案内が届かなくなるため、顧客が会社を信頼して取引を続けやすくなるのが利点です。
CRM戦略の立て方|策定する6ステップ

CRM戦略は、目的・KPI・対象顧客の分類とペルソナ・カスタマージャーニー・施策・実行計画の6つのステップで作ります。
ステップ | 決めること |
|---|---|
1. 目的を決める | CRM戦略で何を達成するか |
2. KPIを決める | 目的の達成を何の数値で測るか |
3. 対象顧客を分類してペルソナを決める | どの顧客にどれだけ力を入れ、どんな人物像を想定するか |
4. カスタマージャーニーを描く | 顧客がどのような段階を経て取引を続けるか |
5. 施策を企画する | 段階ごとに何をするか |
6. 優先順位を付けて実行計画に落とし込む | どの施策から、誰が、いつ始めるか |
先に施策から考えると、思い付きの案が並ぶだけで、どれを優先すべきか判断できません。表の順に、各ステップの決め方を解説します。
目的を決める
最初に、CRM戦略で何を達成するかを1文で決めます。「既存顧客からの売上を伸ばす」では広すぎるため、「導入1年目の顧客の契約更新率を高める」のように、対象と成果を絞り込みましょう。
目的を経営の目標や事業計画とつなげておけば、社内で説明しやすくなり、後のステップで迷いません。目的が複数あるなら、1年間で最も優先するものを1つ選び、残りは次の年度に回すと施策が分散しにくくなります。
KPIを決める
目的が決まったら、その達成を測る数値としてKPIを決めます。
CRM戦略のKPIには、次の指標がよく使われます。
・LTV(顧客生涯価値):顧客1人(1社)が取引の期間を通じてもたらす利益
・継続率:一定の期間の初めにいた顧客のうち、期間の終わりまで取引を続けた顧客の割合
・解約率:一定の期間に取引をやめた顧客の割合
・リピート率:一定の期間に2回以上購入した顧客の割合
・顧客単価:顧客1人(1社)あたりの平均取引額
このうちLTVは、年間の取引額に利益率と取引が続く年数を掛け合わせて見積もる指標です。年間の取引額が60万円、利益率が30%、取引が平均5年続く顧客なら、LTVは90万円になります(60万円×30%×5年)。
LTVは、1社の獲得と維持にかけてよい費用の上限の目安です。LTVが90万円の顧客なら、獲得と維持にかける費用は90万円より低く抑えます。獲得の費用がLTVを上回る施策は、顧客1社ごとの採算が赤字になり、続けるほど損失が膨らみます。その場合は、施策をやめるか方法を変えましょう。
KPIは、契約更新率やLTVなど複数の指標から選び、「目的にどこまで近づいたか?」を毎月追える形にしておきましょう。進み具合が数値で見えれば、次に打つ手を迷わず決められます。
対象顧客を分類してペルソナを決める
取引額や取引の期間、購入の頻度などで顧客を分類し、どの層に力を入れるかを決めます。よほどリソースが潤沢でない限り、すべての顧客に同じ力はかけられません。
顧客を分類する代表的な方法は、次のとおりです。
・RFM分析:直近の購入日・購入の頻度・購入金額の累計で分ける
・デシル分析:購入金額の多い順に顧客を10等分し、売上への貢献を比べる
・属性による分類:業種や企業規模、地域など、顧客の特徴で分ける
・取引段階による分類:導入直後、利用の定着、取引の減少など、関係の段階で分ける
分類したら、まず「取引額は大きいが減り始めている層」と「取引額は小さいが伸びている層」を探しましょう。減り始めた層には関係を立て直す働きかけを、伸びている層には取引を広げる働きかけをすると、限られた人手を成果につなげやすくなります。
分類が済んだら、重視する層について、具体的な人物像(ペルソナ)にまとめます。BtoBであれば、業種・企業規模・担当者の役割・導入の判断に関わる人・抱えている課題・情報を集める手段などを書き出し、1人の担当者として描きましょう。
ペルソナは、営業やサポートの担当者への聞き取りや取引の記録をもとに作り、想像だけで描かないことが大切です。顧客像がはっきりすると、次のカスタマージャーニーで「この顧客はどこでつまずくか」を具体的に考えられ、部門をまたいで同じ顧客像を共有しやすくなります。
カスタマージャーニーを描く
カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから購入し、使い続け、ほかの人に薦めるまでの段階を、時間の流れに沿って表したものです。
CRM戦略でこれを描くときは、購入後の段階を細かく分けます。BtoBの業務システムを例にすると、段階ごとの接点・課題は次のようになります。
段階 | 主な接点 | 顧客が抱えやすい課題 |
|---|---|---|
認知・検討 | Webサイト、展示会、営業の提案 | 自社に合う商品かがわからない |
購入 | 商談、見積もり | 導入の手間や社内の承認が負担になる |
導入直後 | 導入支援、操作説明会 | 操作を覚えられず使いこなせない |
利用の定着 | サポート窓口、活用セミナー | 一部の機能しか使われていない |
更新の検討 | 営業の定期訪問、利用状況の報告 | 費用に見合う効果が出ているか判断できない |
推奨 | 事例の取材、紹介の制度 | 他社に薦めるきっかけがない |
自社のカスタマージャーニーを描くときは、商品に合わせて段階ごとの接点と課題を書き出しましょう。営業やサポートの担当者に顧客がつまずいた場面を聞き取ると、実態に近い図になります。
施策を企画する
施策は、カスタマージャーニーで書き出した段階ごとの課題を解く形で考えます。たとえば、導入直後に使い方で迷う顧客が多いなら、操作の説明会を開きます。更新の前に費用を気にする顧客が多いなら、利用の成果をまとめた報告を届けましょう。
施策ごとに、どのKPIを動かすためのものかを書き添えておくと、後の効果測定で迷いません。施策の数を増やすより、1つの段階に効く施策を確実に実行するほうが、成果は出やすくなります。
優先順位を付けて実行計画に落とし込む
候補に挙がった施策は、KPIへの効果と実行の手間を比べて優先順位を付けます。効果が大きく手間の少ないものから始め、担当者・開始の時期・効果を測る時期を実行計画にまとめます。
一度に多くの施策を始めると、どれが効いたのかがわかりません。実行計画には、施策を止める基準も書き込みます。一定の期間でKPIが動かなければ止めると決めておけば、効果の薄い施策を続けずに済みます。
CRM戦略の主な施策

CRM戦略の施策は、顧客が今どの段階にいるかで選びます。導入直後なら定着の支援、取引が減ってきたら引き留めと、段階ごとに打つ手が変わるからです。
代表的な5つの施策を、対象顧客・主な接点・KPIで比べてみます。
施策 | 対象顧客 | 主な接点 | 追うKPI |
|---|---|---|---|
導入初期の定着支援 | 購入や契約の直後の顧客 | 説明会、使い方の案内メール、担当者の訪問 | 利用開始率、初期の問い合わせ件数 |
利用の拡大(アップセル・クロスセル) | 利用が定着した顧客 | 定例の打ち合わせ、活用の提案、関連商品の案内 | 顧客あたりの売上、追加の契約数 |
解約の予防 | 利用が減っている顧客、更新が近い顧客 | 利用状況の報告、担当者からの連絡 | 解約率、契約更新率 |
休眠顧客の掘り起こし | 一定期間取引のない顧客 | 新商品やキャンペーンの案内、再訪問 | 再購入率、再開した取引の数 |
優良顧客との関係強化 | 取引額が大きく、長く続く顧客 | 専任の担当者、優待、意見交換の場 | 継続率、紹介の件数 |
施策を選ぶときは、まず取引が減っている段階がないかを調べ、あればそこから手を付けます。新規顧客は増えているのに更新率が下がっているなら、解約の予防や定着支援が先です。既存顧客の取引は安定しているものの伸びていない場合は、利用の拡大や優良顧客との関係強化を優先します。
自社の更新率や取引額の推移から、どちらの状況に近いかをつかんだうえで施策を選びましょう。
メールや電話で連絡する施策では、個人情報保護法のルールに沿って、個人情報を利用目的の範囲内で使っているか、特定電子メール法にもとづき広告メールを送る相手から原則として事前に同意を得ているか、配信停止を申し出た相手に送らない仕組みをどう整えるかを先に決めておかなければなりません。同意を得た記録や配信停止の受付状況の管理、権限設定・バックアップといった安全管理の確認点は、CRMの解説記事で紹介しています。
CRM戦略を成功させるポイント

部門をまたいで目的とKPIを共有し、小さく試しながら進め、戦略に合うツールを選べば、CRM戦略は成果につながりやすくなります。
部門をまたいで目的とKPIを共有する
戦略の目的とKPIは、マーケティング部や営業部に加えて、サポート部門や経理部門と共有しましょう。CRM戦略は、一部の部門だけでは実行できません。サポート部門は問い合わせを、経理部門は請求や入金を通じて顧客と接しており、それぞれが持つ情報が施策の判断に欠かせないためです。
共有したら、月に1回などの頻度で数値を一緒に振り返る場を設けます。部門ごとに指標の定義が違うと数値の解釈が割れるため、振り返る前に指標の定義をそろえておきましょう。
小さく試して効果を検証する
最初から全顧客に施策を広げると、効果が出なかったときの損失が大きくなります。まず一部の顧客で試し、実施した顧客としなかった顧客のKPIを比べてから広げましょう。
試す期間は、メールの反応のように早く動く指標なら、短い期間でも判断しやすくなります。更新率のように契約が一巡しないと判断できない指標は、その周期に合わせて期間を取るのが基本です。
効果のあった施策を残し、なかった施策は内容を変えるか止めます。この判断を繰り返すことで、戦略の精度が高まっていきます。
戦略に合うCRMツールを選ぶ
機能の多さより、自社の戦略を実行するのに要る機能がそろっているかでCRMツールを選びましょう。具体的には、戦略で決めたKPIを測れるか、顧客の分類や段階を管理できるか、施策に使う接点と連携できるかを比べます。導入の前には、戦略で決めた顧客の分類や段階をツールの画面で再現できるかを試しておきましょう。CRMシステムの選び方は、費用や安全管理の観点も含めてCRMの基本を解説した記事で紹介しています。
CRM戦略の業種別の4つの型
CRM戦略で力を入れる段階は、業種によって異なります。月額で契約が続くサービスなら更新の前、通販なら2回目の購入というように、取引がどう続くかで重視する段階が変わるからです。
業種の型 | 重視する段階 | 主な施策 |
|---|---|---|
BtoBの継続課金サービス | 導入直後と契約更新の前 | 定着支援、利用状況の報告、解約の予防 |
BtoBの製造・卸 | 継続的な発注と取引の拡大 | 定期的な訪問、関連商品の提案、発注の傾向の分析 |
BtoCの通販 | 2回目の購入と休眠の防止 | 購入後のフォローメール、会員向けの特典、休眠顧客への案内 |
BtoCの店舗型サービス | 再来店と来店の間隔 | 会員カードやアプリでの来店記録、次回の予約の案内 |
業種を問わず、「取引が途切れやすい場面」に力を入れる点は変わりません。
たとえば、継続課金サービスでは、導入直後に使いこなせなかった顧客ほど、更新の時期に費用に見合う効果を感じられず解約を選びやすくなります。継続課金サービスは解約が売上に直結するため、導入直後と更新前に力を入れる型です。
重視する段階と打つべき施策は、取引がどう続くかで決まります。表から自社に近い型を選び、その型の施策から手を付けましょう。
まとめ:CRM戦略は目的とKPIから組み立てよう
CRM戦略は、顧客との関係を長く保ち、取引から得る利益を増やすための方針と計画です。CRMシステムを入れる前に、どの顧客に何をするかを決めておかなければ、成果にはつながりません。
最初の一歩は、自社の顧客のうちどの段階で取引が減っているかを、手元のデータで調べることです。減っている段階がわかれば、目的とKPIを決めやすくなります。戦略が固まったら、決めたKPIを測れて顧客の段階を管理できるツールを選びましょう。
ツール選定でお悩みの担当者の方は、ぜひCRMツールの比較記事や、BIZNAVIのCRMのサービス一覧をご覧ください。
CRM戦略についてよくある質問
CRM戦略について、よくある質問にお答えします。
CRM戦略とCRMシステムの導入はどちらが先?
戦略が先です。目的やKPI、対象顧客が決まらないと、システムに何を記録してどう分析するかを決められません。すでにシステムがある場合は、蓄積したデータで戦略を組み立て直し、足りない管理項目を追加しましょう。
顧客数が少ない会社にもCRM戦略は要る?
必要です。顧客数が少ない会社ほど、1社や1人の顧客を失ったときの影響が大きくなります。
表計算ソフトで顧客の一覧と取引の履歴を管理し、重視する顧客と施策を決めるだけで、関係づくりに一貫性が生まれます。顧客との距離が近い会社なら、その強みを仕組みとして残しておく意味は小さくありません。
CRM戦略の効果はいつ判断すればよい?
効果が表れるまでの期間は、施策の種類で異なります。メールの開封や問い合わせの件数は早い段階で動きが見える一方、更新率や継続率は契約の周期が一巡しないと判断できません。
施策ごとに、効果を測る時期を先に決めておきましょう。判断までは、利用率や問い合わせの件数など早く動く指標を追えば、手応えをつかめます。
CRM戦略とCRMマーケティングの違いは?
CRM戦略は、どの顧客とどのような関係を築くかを決める全社の方針と計画です。CRMマーケティングは、その方針にもとづいて顧客データを使い、メールや会員向けの施策などで顧客に働きかけるマーケティング活動を指します。戦略で対象と目的を決め、マーケティングで実行するという関係です。

BIZNAVI編集部
株式会社DYMが運営する、法人向けサービスの比較・検索メディア「BIZNAVI byDYM」の編集部。 勤怠管理・会計・生産管理などの業務システムやSaaSに加え、営業代行・Web制作・記事作成代行・SNS運用代行といった業務支援サービスまで、幅広い領域の法人向けサービスを調査・比較し、導入検討に役立つ情報を発信している。 各サービスの機能や料金、提供形態、導入実績などの公開情報をもとに、目的や条件に応じて比較しやすい形で整理することを重視してコンテンツを制作。企業が抱える業務課題や実際の活用シーンを踏まえ、自社に合ったサービス選びと、検討から意思決定までをスムーズに進めるための情報提供を行っている。






