労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い

更新日:2026/09/09

入社書類は紙で受け取り、従業員情報は表計算ソフトへ入力し、社会保険の届出には電子申請システムを使う企業があります。

業務ごとに適した方法を選ぶのは自然ですが、その結果、労務情報の保管先や処理先が分散しがちです。住所や扶養家族の変更があるたびに複数の台帳やシステムへ同じ内容を反映する作業が生じ、担当者の負担や転記漏れにつながります。

こうした労務業務を支えるのが「労務管理システム」です。従業員情報の収集・更新から各種手続きまでをシステム上で扱うことで、複数の台帳やツールへ同じ情報を入力する負担を抑えられます。

本記事では、労務管理システムの特徴や主な機能、導入メリット、関連システムとの違いを解説します。

1. 労務管理システムとは

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-1


従業員の入社では、本人情報の収集から労働条件、社会保険・雇用保険、給与・勤怠まで複数の業務がつながります。労務管理システムは、こうした労務業務に必要な情報の収集・更新や申請、承認などを支援するシステムです。

労務管理システムが関わる主な業務と、自社で決める内容は次のとおりです。

業務領域

システムで扱う主な情報・作業

主な関係者・システム

自社で決めること

従業員情報

氏名、住所、扶養、連絡先などの収集・変更申請

従業員、人事・労務担当者、給与計算システム

入力項目、承認者、情報の更新先

労働条件・入退社

労働条件、契約期間、入退社情報の管理

従業員、人事・労務担当者、所属長、勤怠・給与計算システム

法令・労働契約・就業規則に沿った労働条件の設定、明示方法、手続きの担当者

社会保険・雇用保険

資格取得・喪失などの届出に使う情報の管理

人事・労務担当者、社会保険労務士、電子申請環境

加入要件に沿った対象者の把握、届出担当、委託範囲

年末調整

扶養控除等の申告情報の収集、提出状況の管理

従業員、人事・労務担当者、給与計算システム

申告情報の受付方法、給与計算への反映方法

マイナンバー

税・社会保障の手続きに使う個人番号の取得・保管・権限管理

取扱担当者、給与計算・社会保険手続き

利用目的、取扱担当者、安全管理の方法

表のとおり、労務管理システムは従業員からの情報収集や申請・承認、関連業務への情報の受け渡しを支援します。一方、労働条件は法令・労働契約・就業規則に沿って定めた上で、必要な方法により労働者へ明示しなければなりません。手続きの担当者・情報の取扱権限・外部への委託範囲は、利用企業が自社の運用に合わせて定める事項です。

労働契約を締結するとき、使用者には賃金や労働時間など所定の労働条件の明示が義務づけられています。健康保険・厚生年金保険や雇用保険でも、要件を満たす従業員の資格取得などについて所定の手続きを行うのは事業主です。マイナンバーについても、事業者が利用できる事務の範囲や安全管理に関するルールが定められています。

労務管理システムを導入しても、すべての労務業務をシステムだけで完結できるとは限りません。どこまでシステムが支援し、どの業務を担当者や既存システムが担うのかを把握しておくと、導入後の役割分担を具体化できます。

2. 労務管理システムの仕組み

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労務管理システムでは、従業員情報を登録し、担当者による点検・承認を経て、台帳や周辺システム、行政手続きへ引き継ぎます。

段階

主な処理

情報の流れ

1. 情報を登録する

従業員や担当者が入社時・変更時の情報を入力する

登録した情報を点検・承認へ進める

2. 内容を点検・承認する

担当者が内容を確かめ、不備があれば差し戻す

承認した情報を従業員データとして確定する

3. 各機能へ反映する

確定した情報を台帳や周辺システムへ渡す

同じ情報を給与計算や勤怠管理などで利用する

4. 行政手続きへつなぐ

届出データを作成し、対応する方法で申請する

申請後の処理状況や結果を受け取る

全工程

履歴と権限を管理する

操作できる人を制限し、変更や処理の経過を記録する

情報を登録して終わるのではなく、内容を点検・承認し、確定したデータを後続の業務へ引き継いでいくのが基本的な流れです。

ここからは、情報が登録されてから処理結果と履歴を管理するまで、各工程を順に解説します。

2-1. 従業員情報を登録する

最初に、入社時や情報変更時に必要な従業員情報をシステムへ登録します。入力を従業員本人へ依頼する方法と、担当者が登録する方法があり、自社の運用に応じて入力者を決めます。

本人から直接情報を受け取れば、担当者が紙の内容を別の台帳へ転記する作業を減らせます。一方、担当者だけが扱う項目もあるため、誰がどの情報を入力・更新するのかを決め、利用権限へ反映させます。

2-2. 申請内容を担当者が確認する

情報が提出されたら、担当者が内容を点検します。不備があれば申請者へ差し戻し、修正後に再提出してもらい、問題がなければ承認へ進めます。

システム上の入力チェックで形式的な不備を防げても、申告内容の妥当性まで一律に判断できるとは限りません。後続の手続きへ進めてよいかを誰が判断するのか、社内で承認する範囲も決めておく必要があります。

2-3. 承認結果を各機能へ反映する

内容が確定したら、従業員情報を後続の労務業務へ引き継ぎます。同じデータを関連機能で利用することで、業務ごとに同じ内容を入力する作業を減らせます。

給与計算や勤怠管理などの外部システムへ情報を渡す際は、APIやCSVファイルなどを利用します。連携できる項目や相手先、更新のタイミングはサービスごとに異なるため、自社で利用している周辺システムとの接続範囲を確かめます。

2-4. 届出データを出力する

登録した従業員情報をもとに、資格取得・喪失届や扶養異動届などの届出データを作成します。氏名・生年月日・住所・基礎年金番号・報酬情報といった基本情報は、申請書類の各項目へ反映されます。労務管理システム上のデータが正確であるほど、届出作成の手間や入力ミスを減らせます。

対応する手続きで処理が完了すると、行政機関から電子公文書等が発出されます。製品が取得機能に対応している場合は、労務管理システム上から確認・ダウンロードできます。

2-5. 履歴と権限を記録する

誰が情報を閲覧・更新・承認できるのかは、権限設定によってあらかじめ制御します。併せて、従業員情報の変更履歴を記録しておけば、いつ・誰が・どのように変更したのかを後から追跡できます。

個人データを扱う情報システムでは、担当者ごとにアクセスできる情報の範囲を限定することが求められます。マイナンバーを扱う場合も同様に、事務取扱担当者と特定個人情報ファイルのアクセス範囲を明確に分けて管理する必要があります。

3. 労務管理システムの主な機能

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労務管理システムには、従業員情報の管理を筆頭に、入退社、雇用契約、社会保険、年末調整、マイナンバー、社内申請などを支援する機能が搭載されています。勤怠管理や給与計算まで、同じシステム上で完結する製品もあります。

代表的な機能と、処理後にどの業務へつながるのかを以下にまとめました。

機能

主な役割

主な入力・データ

処理後の状態・受け渡し先

従業員台帳

従業員情報の登録・更新・履歴管理

氏名、住所、扶養、所属、雇用情報

最新の従業員情報、給与・各種手続きへの連携

入退社手続き

本人情報の収集と手続き進捗の管理

入退社日、本人情報、扶養情報など

社会保険・雇用保険、給与・勤怠への引き継ぎ

雇用契約

労働条件に関する文書の作成・配付・記録

労働条件、契約期間、雇用区分

交付・受領状況、契約書の合意記録、契約更新

社会保険

届書データの作成や電子申請

資格、扶養、報酬など

電子申請、処理状況の記録

年末調整

申告情報・証明書類の収集と進捗管理

扶養、保険料控除などの申告情報

給与計算への反映

給与明細

給与・賞与明細の電子配信

確定した給与計算結果

従業員への明細交付

マイナンバー

個人番号の取得・保管・権限管理

個人番号、本人確認情報

税・社会保障に関する所定の事務

申請・承認

身上変更などの申請経路と進捗の管理

申請内容、承認経路

承認結果、差し戻し履歴、従業員情報への反映

勤怠管理

出退勤・休暇・時間外労働などの記録と集計

始業・終業時刻、休暇、申請情報

確定した勤怠実績、給与計算への連携

給与計算

支給額・控除額などの計算

従業員情報、勤怠実績、給与条件

給与計算結果、給与明細への連携

製品・プランによって搭載機能や標準機能・追加契約の区分が異なるため、以下では一般的な労務管理システムの機能を取り上げます。

3-1. 従業員台帳の管理

従業員台帳では、氏名・住所・扶養家族・所属・雇用区分・契約期間などの従業員情報を一元管理します。住所や扶養情報などの変更を受け付け、承認後の内容を台帳へ反映することで、入退社手続きや給与計算などで同じ従業員情報を利用できます。

登録した情報は、従業員ごとの検索や一覧表示に加え、所属変更や身上変更を含む人事・労務手続きの基礎データとして使います。変更前の情報や更新履歴を保持する機能があれば、現在の登録内容と過去の状態も追えます。

3-2. 入退社手続き

入社手続きでは、新入社員から本人情報や扶養情報などを集め、社会保険・雇用保険、給与、勤怠に必要な情報へつなげます。退社時は退職日などの情報を登録し、資格喪失をはじめとする後続手続きの進捗を管理します。

本人による情報入力から担当者による内容の点検、後続手続きへの受け渡しまでを同じ流れで管理することで、入社・退社に伴う複数の処理を追えます。

3-3. 雇用契約書の交付

従業員情報と労働条件をもとに雇用契約書や労働条件通知書などを作成し、従業員へ配付する機能です。交付後は受領状況を記録し、雇用契約書では合意状況も管理します。未対応者や契約更新の対象者も把握できます。

あらかじめ登録したひな型へ従業員ごとの労働条件を反映し、文書作成から配付、対応状況の把握までを一続きで進めます。

3-4. 社会保険の電子申請

従業員情報を使って資格取得届・資格喪失届などの届書データを作成し、電子申請するための機能です。申請後は処理状況を追い、返戻された手続きがあれば内容を修正して再申請します。

従業員台帳に登録した氏名や資格情報などを届書へ利用し、手入力する範囲を減らしながら申請データを作成します。

3-5. 年末調整

従業員から扶養や保険料控除などの申告情報を集め、提出状況や入力内容を管理します。未提出や不備のある申告を担当者が把握し、処理を終えた情報を給与計算へ反映します。

従業員による入力から申告内容の回収、担当者による処理までをオンラインで進め、誰が提出済みで、誰の対応が残っているかを一覧で追います。申告内容を年末調整の計算に使用し、その結果を給与計算へ反映します。

3-6. 給与明細の配信

確定した給与・賞与の計算結果を取り込み、従業員ごとの明細を作成・配信します。従業員は専用画面などから自分の明細を閲覧でき、紙で印刷・配付していた工程をオンラインへ移せます。

なお、給与計算システムから出力したデータを取り込んで明細を作成する方法のほか、給与計算機能からそのまま明細作成へ進めるシステムもあります。給与等の支払明細書を電子交付する際は、原則として、用いる電磁的方法を示した上で従業員の承諾を得ます。

3-7. マイナンバー管理

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従業員などから個人番号を取得し、保管・利用・アクセス権限・操作記録などを管理する機能です。利用する事務や担当者を限定し、保管が不要になった個人番号を削除・廃棄するまでの取扱いを支えます。

3-8. 申請・承認ワークフロー

住所や扶養などの変更を従業員が申請し、上長や人事・労務担当者が内容を承認します。差し戻しや再申請を含む処理状況を記録し、承認された内容で従業員情報を更新します。

申請内容ごとに必要な入力項目や承認経路を設定し、申請者と承認者の間で処理を進めます。身上変更のほか、勤怠などの申請・承認にもワークフローを利用し、承認後の内容を関連する労務データへ反映します。

3-9. 勤怠管理

出退勤時刻の記録に加え、休暇や時間外労働などの申請・承認、勤務実績の集計を行います。未打刻や未承認を処理して勤怠を確定し、そのデータを給与計算へ引き継ぎます。

日々の打刻をもとに勤務日数や労働時間を集計し、休暇の取得状況や勤怠申請と併せて管理します。締め処理までに記録を確定することで、給与計算で使用する勤務実績をそろえます。

原則として、使用者には、労働日ごとの始業・終業時刻を確認して記録することが求められています。勤怠システムは、その記録と日々の勤怠管理を支える役割を担います。

3-10. 給与計算

従業員情報や確定した勤怠実績、給与条件を取り込み、支給額・控除額などを計算する機能です。計算結果を確定したあとは、給与明細の作成・配信など次の給与業務へデータを引き継ぎます。

基本給や各種手当などの支給項目に加え、社会保険料や所得税などを計算し、市区町村から通知された住民税額を含む控除内容を反映して、最終的な支給額を算出します。確定した計算結果は給与明細に利用し、給与振込や納付に必要なデータの作成へつなげることもできます。

4. 労務管理システムと関連システムの違い

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-5

労務管理・人事管理・勤怠管理・給与計算・タレント管理は、同じ従業員情報を使う場面があっても、中心となる業務が異なります。

比較対象

中心となる業務

主に扱う情報

労務管理システムとの違い

労務管理システム

入退社・雇用契約・労務手続き

従業員情報、雇用契約、社会保険など

雇用に伴う情報管理と手続きが中心

人事管理システム

社員・組織・異動の管理

所属、役職、異動、組織情報など

人員・組織情報の管理が中心

勤怠管理システム

労働時間の記録・集計

打刻、休暇、残業、勤務時間など

日々の勤務実績を扱う

給与計算システム

給与・賞与の計算

勤怠、給与条件、手当、控除など

支給額・控除額の計算が中心

タレント管理システム

人材の評価・配置・育成

評価、スキル、経歴など

人材活用に使う情報が中心

複数のシステムを併用するときは、所属や雇用区分などの共通情報について、更新元とほかのシステムへ渡す時点を決めます。各システムの役割を理解した上で、重なる情報の扱いまで考えると運用の食い違いを防ぎやすいです。続いて、それぞれの違いを解説します。

4-1. 人事管理システムとの違い

人事異動や組織改編を管理する場面では、人事管理システムが中心になります。労務管理システムとは、扱う従業員情報が重なる部分もあります。

  • 人事管理システム: 所属・役職・異動・組織構成などを管理し、人員配置や組織運営に活用する

  • 労務管理システム: 入退社・雇用契約・社会保険など、雇用に伴う情報管理と手続きを支える

所属や雇用区分などを両方で使うなら、どちらで情報を確定するかを決めます。異動や組織変更についても、登録時と施行日のどちらで反映するのかを定めておけば、同じ従業員の情報の食い違いを防げます。

4-2. 勤怠管理システムとの違い

勤怠管理システムの中心となるのは、日々の勤務実績の記録と労働時間の集計です。入退社や社会保険などを扱う労務管理システムとは、対象業務が分かれます。

  • 勤怠管理システム: 出退勤・休暇・残業などを記録し、勤務時間を集計する

  • 労務管理システム: 従業員情報や雇用条件を管理し、入退社や社会保険などの手続きに利用する

両システムを連携するときは、従業員番号や雇用区分など、共通して使う情報の対応関係を決めます。勤怠データを給与計算へ渡すなら、締め処理との前後関係も定め、確定した勤務実績を後続業務で利用します。

4-3. 給与計算システムとの違い

給与計算では、勤怠や給与条件などの情報を受け取り、給与・賞与の金額へ反映します。一方、労務管理システムは、その前段となる従業員情報や雇用に伴う手続きを中心に扱います。

  • 給与計算システム: 勤怠や給与条件をもとに給与・賞与を計算し、手当や控除を反映する

  • 労務管理システム: 従業員情報を管理し、雇用に伴う各種手続きを支える

別々のシステムを使うなら、給与計算へ渡す情報と確定時点を決めます。本稼働前には一部の従業員データを使い、更新した情報が給与計算へ正しく反映されるかを試しておきましょう。

4-4. タレント管理システムとの違い

評価やスキル、経歴といった情報を、配置や育成へ活用するのがタレント管理システムです。労務管理システムは、雇用に伴う従業員情報と手続きを扱います。

  • タレント管理システム: 評価・スキル・経歴などを蓄積し、人材配置や育成に活用する

  • 労務管理システム: 雇用に伴う従業員情報を管理し、入退社や社会保険などの手続きを支える

従業員番号や所属など、双方で利用する情報は連携対象にできます。評価やスキル情報まで一律に共有せず、異動時の所属更新や人材配置など、実際の業務で必要な項目を選びます。

5. 労務管理システムの提供形態

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-6

労務管理システムの主な提供形態は、クラウド型とオンプレミス型です。大きな違いは、システムを動かすサーバーなどの基盤を誰が管理するかにあります。

比較項目

クラウド型

オンプレミス型

システム基盤

提供会社が管理する環境を利用

自社または委託先が管理する環境に構築

サーバー・基盤の保守

提供会社が担当

自社または保守委託先が担当

システム更新

提供会社が標準環境へ反映

自社側で時期を決めて検証・適用

個別改修

提供される設定・連携機能などの範囲で対応

自社要件を踏まえた設計・改修を組み込みやすい

主な費用

利用料、導入支援、追加機能など

ライセンス、サーバー、保守、更新など

障害対応

提供会社がサービス側を復旧し、利用企業は社内への連絡や代替手順を進める

自社または保守委託先が基盤を含めて復旧

システム変更時

契約条件に沿ってデータを取得し、次の環境へ移行

自社で保有するデータを新しい環境へ移行

クラウド型では、提供会社が管理する環境をインターネット経由で利用します。一方のオンプレミス型では、自社または委託先が管理する環境にシステムを構築します。この違いから、更新や保守、個別改修、障害対応を担う範囲に差が生じます。

5-1. クラウド型

クラウド型は、提供会社が管理するシステム環境へインターネット経由でアクセスして利用する形態です。労務管理システムでは、完成したソフトウェアをサービスとして利用するSaaS型が該当します。

サーバーなどのサービス基盤や標準環境の保守・更新は提供会社が担うため、利用企業が自社で基盤を構築する必要はありません。利用企業は、従業員アカウントや権限、申請経路など、自社で使う範囲の設定と運用を担います。

また、標準環境を複数の利用企業へ提供するサービスでは、自社だけで更新時期やシステム全体の仕様を決めることはできません。自社独自の業務を組み込む際は、設定項目や外部システムとの連携など、提供されている方法で対応できるかを確かめます。

5-2. オンプレミス型

オンプレミス型は、自社または委託先が管理する環境へ労務管理システムを構築して利用する形態です。サーバーや周辺環境を自社側で管理するため、既存システムとの接続や独自の業務要件を設計へ反映する余地を持たせられます。

一方、サーバーやミドルウェアの保守、バックアップ、監視、障害からの復旧、システム更新も自社側の管理範囲に入ります。実際の作業を保守会社へ委託するなら、自社と委託先がそれぞれ担う内容を決めます。

更新時期を自社で計画できるため、既存システムへの影響を検証してから適用できます。その分、検証環境や担当者、保守体制も自社側で用意する必要があります。

6. 労務管理システムの費用

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-7

労務管理システムの費用は、システムの利用料だけでは決まりません。クラウド型では利用人数や機能範囲に応じた利用料が中心となり、オンプレミス型ではライセンスやサーバーなどの導入費用も発生します。

さらに、追加機能、既存システムとの連携、データ移行、導入支援などを利用すると費用が加わります。自社で必要な機能と利用人数を決めた上で、導入時と運用開始後に発生する費用を把握しておきましょう。

費用項目

主な内容

費用確認のポイント

システム利用料

月額・年額の利用料、ライセンス料

利用人数、契約プラン、利用機能

初期導入

初期設定、環境構築、導入支援

自社で対応する範囲と提供会社へ依頼する範囲

追加機能

勤怠、給与、年末調整などの追加機能

基本料金に含まれる機能と追加契約

システム連携

API連携、データ連携、個別対応

既存の給与・勤怠などとの接続方法

データ移行

従業員情報や履歴の移行

移行するデータ量と変換・修正の必要性

保守・支援

保守、問い合わせ、運用支援

契約料金に含まれる支援と別料金の支援

社内作業

要件設定、データ準備、テスト、教育

導入担当者と利用者に必要な工数

ここからは、労務管理システムの費用の基礎知識を解説します。

6-1. クラウド型は利用料が中心になる

クラウド型では、自社でサーバーを購入してシステムを構築する代わりに、月額または年額の利用料を支払う形が中心です。利用人数や契約するプラン、追加する機能をもとに料金を設定するサービスがあります。

例えば、SmartHRは、従業員数や要望を踏まえて個別に見積もりを行う方式で、労務手続きの電子化や年末調整、入退社手続きなどの機能範囲によっても費用が変動します。単なる人数課金ではなく、導入する業務範囲に応じて最適なプランが設計される点が特徴です。

マネーフォワード クラウドの人事労務サービスでは、サービスごとに従量課金の基準が異なります。給与では、その月に給与計算の確定処理を行った従業員数が基準です。人事管理・社会保険・勤怠・年末調整・マイナンバーでは、その月に登録されている在籍中の従業員数を基準とし、各サービスはクラウド上で連携できます。

6-2. オンプレミス型は導入時の費用も把握する

オンプレミス型では一般に、ソフトウェアのライセンス費用に加え、自社でサーバーやネットワーク機器などの環境を用意するための初期費用がかかります。導入後の保守やアップデート、機器更改を担うのは、自社または保守委託先です。運用中は、これらの作業に伴う継続費用も発生します。

導入時の費用と運用開始後の保守・更新費用を合わせて見積もるのが基本です。費用構成は、買い切り・サブスクリプションといった契約形態や、既存環境を利用できるかによって異なります。

6-3. 追加機能や導入支援にも費用がかかる

基本プランだけで必要な業務をすべて扱えるとは限りません。勤怠管理や給与計算などを追加したり、外部システムとの連携や導入支援を利用したりすると、基本料金とは別に費用が発生することがあります。

見積もりを取る前に、自社で必要な機能と支援内容を挙げておくと、基本料金だけでは把握できない費用も含められます。

6-4. 導入後に残る社内工数も費用として捉える

導入時には、従業員データの整備や移行作業、権限・承認フローの設定、動作確認のテスト、従業員への周知など、実際の運用開始までに多くの社内作業が発生します。

また本稼働後も、問い合わせ対応や権限の変更、設定内容の見直し、他システムとの連携エラー対応など、継続的な運用作業が必要になります。こうした社内対応にかかる時間も含めて費用として捉えることで、システム利用料だけでは見えない導入前後の負担を正しく評価できます。

7. 労務管理システムを導入するメリット

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労務管理システムを導入すると、従業員情報の転記や紙の配布・回収を減らし、手続きの期限や進捗を一つの環境で管理できます。具体的な導入メリットを解説します。

7-1. 情報転記を減らせる

住所や扶養情報などを一度登録し、そのデータを従業員台帳や後続の手続きで利用すれば、同じ内容を何度も入力する作業を減らせます。

給与や勤怠など別のシステムと連携する際も、登録済みの従業員情報を受け渡せれば、担当者による再入力を減らせます。

7-2. 従業員から直接情報を集められる

住所変更や入社手続き、年末調整などでは、従業員本人が必要な情報を入力する運用に切り替えられます。担当者は紙やメールから情報を書き写す作業を減らし、提出状況や入力内容への対応に時間を使えます。

その際、入力方法への問い合わせが増えないよう、操作案内や入力例、問い合わせ先などを用意しておきましょう。

7-3. 期限を管理できる

手続きに期限を設定できるシステムでは、締め切りが近い業務や未対応の手続きを通知できます。担当者個人の予定表だけに頼らず、期限が迫っている案件をチームで把握できます。

7-4. 申請状況を追跡できる

申請・承認をシステム上で進めると、申請中・承認待ち・差し戻し・完了などの状態を一覧で追えます。処理が止まっている申請と、次に対応する担当者が一目で分かります。

7-5. 紙の配布・回収を減らせる

従業員がパソコンやスマートフォンから申請・入力できれば、申請書や年末調整書類などを紙で配布・回収する工程を減らせます。

離れた拠点や外出の多い従業員からもオンラインで情報を受け取り、提出状況をシステム上で管理できます。

7-6. 複数拠点で様式を統一できる

拠点ごとに異なる申請書や入力項目を使っている企業では、共通の申請フォームを設定することで、同じ項目を使った運用へ統一できます。

すべての手続きを一律にする必要はありません。勤務形態や社内ルールに違いがある部分は拠点ごとの設定を残し、共通化できる項目だけをそろえましょう。

7-7. 拠点ごとの進捗を把握できる

各拠点が同じシステムで手続きを進めれば、本社の人事・労務担当者も提出状況や処理の進捗を一つの画面で把握できます。拠点ごとに進捗表を作成して集計する作業も減らせます。

8. システムの導入前に起こりやすい失敗

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システム選定が終わっても、そのまま本稼働へ進めるわけではありません。導入直後の準備が不十分なまま運用を開始すると、手続きの遅れや給与計算の誤り、データ連携の不整合といった問題が後から発生します。

ここでは、法令対応の役割分担・初期設定・既存データの整備・移行方法といった観点から、システム導入時に起こりやすい失敗例をご紹介します。

8-1. 導入だけで法令対応を完了させようとする

労務管理システムは、届出データの作成や電子申請などを支援します。ただし、必要な手続きや対象者を判断し、法令で定められた期限までに届け出る責任までシステムへ移るわけではありません。

例えば、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届は、事業主が事実発生の日から5日以内に提出する決まりがあります。雇用保険の被保険者資格取得届も事業主が提出し、期限は被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。

システムの選定・導入時には、制度を把握する担当者、設定を行う担当者、変更内容を承認する責任者をあらかじめ定めておきます。

参考:日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」

参考:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」

8-2. 初期設定を十分に検証しない

雇用区分や締め日、承認経路、連携項目などの設定を誤ると、その値を使う後続業務にも影響が及びます。本稼働前には、設定した内容が自社の運用どおりに処理されるかを実際の条件で試します。

通常の従業員だけで試験を終えず、自社で該当する条件も含めて検証します。

例えば、次のようなケースです。

  • 短時間勤務

  • 複数拠点

  • 休職

  • 再雇用

試験の前に「どうなれば正しいか?」という期待結果をあらかじめ決めておき、実際の結果と比較します。差が出た場合は設定を修正し、同じ条件で再度試験を行います。

8-3. 既存データの不備を残したまま移行する

既存の従業員データに誤りがあれば、その内容を新しいシステムへ引き継ぐおそれがあります。同じ従業員の重複登録、退職者の在籍扱い、住所や所属の表記揺れなどは、移行前に修正しておきます。

併せて、移行するデータと除外するデータを決め、必須項目や取り込み形式に合っているかを点検します。CSVなどで一括登録する際は、システムごとに入力形式が定められているため、現在のデータをそのまま取り込めるとは限りません。

移行後に大量の修正を残さないためにも、元データの状態を把握し、必要な修正を終えてから移行作業へ進みます。

8-4. 全データを一度に移行する

最初から全データを取り込むと、不備が見つかったときに影響する範囲も広がります。まず一部のデータで移行を試し、問題がないことを確かめてから対象を広げます。

試行後は、少なくとも次の項目を旧環境と比べます。

  • 移行した件数

  • 必須項目の値

  • 代表的な従業員の情報

  • 集計結果

不一致や取り込みエラーがあれば、元データや変換方法を修正して再度試します。本稼働後の修正を前提にせず、移行結果が想定どおりになった段階で全件移行へ進みましょう。

9. 労務管理システムを導入するデメリット

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-10

労務管理システムを導入すると、初期設定やデータ移行、利用者への案内など、新たな作業も発生します。本稼働後も利用料や権限管理などの負担が残り、システムだけでは処理できない業務への対応も必要です。

導入によって減る作業だけを見ず、新しく発生する負担まで把握しておくと、自社でどこまで対応する必要があるかを見積もれます。

9-1. 初期設定やデータ移行に工数がかかる

導入時は従業員情報を新しいシステムへ移し、権限や承認経路、既存システムとの連携などを設定します。現在の台帳に重複・欠損・表記の違いがあれば、移行前の修正も必要です。

既存システムから出力したデータをそのまま取り込めるとは限りません。実際にfreee人事労務でも、データの出力形式と取込形式が一致せず、取込用の形式へ合わせる作業が必要になると案内されています。

設定後は一部のデータで移行を試し、従業員情報や承認経路が想定どおりに反映されるかをテストします。データ量や現在の管理方法を踏まえ、こうした準備に必要な担当者と期間を確保しておきましょう。

出典:freee人事労務ヘルプ「freee人事労務の事業所間でのデータ移行方法」

9-2. 利用開始後も費用が発生する

クラウド型の場合、システムを使い続ける間は利用料が発生します。利用人数が増えたり、必要な機能やオプションを追加したりすると、契約内容の変更に伴って費用が増えることもあります。

オンプレミス型でも、導入時のライセンスやシステム基盤に加え、保守や更新に費用がかかります。費用の内訳は6章で把握し、導入後も継続して負担できる金額かを見積もっておきましょう。

9-3. 利用者への案内や操作習得が必要になる

従業員本人が入社情報や住所変更などを入力する運用では、人事・労務担当者に加え、従業員もシステムを操作します。承認を行う上長には、申請の受け取り方や差し戻し方法などを伝える必要があります。

そのため、本稼働前にはログイン方法、入力手順、申請方法、問い合わせ先などを利用者へ案内してください。操作に慣れるまで問い合わせが増えることも想定し、従業員向けの案内と管理者側の対応方法を用意しておきましょう。

9-4. システム化しても手作業が残ることがある

労務管理システムを導入しても、すべての業務が自動で完了するわけではありません。契約する機能の範囲外にある業務や、既存システムと自動連携できない工程は、担当者による入力・出力などが残ります。

また、申請内容の点検や個別の例外対応、権限管理など、担当者が担う作業も残ります。導入後の工数を見積もる際は、減らせる作業と社内に残る作業の両方を確認します。

9-5. 障害や通信トラブルへの備えが必要になる

システムを労務業務の中心にすると、障害が発生した際に申請や従業員情報へアクセスできなくなる可能性があります。特にクラウド型では、サービス側の障害に加え、自社ネットワークの不具合によってもシステムに接続できない状況が起こり得ます。

そのため、期限のある手続きや緊急性の高い業務については、システムが利用できない場合の受付方法や連絡手段をあらかじめ決めておくことが重要です。

10. システム稼働後の運用で起こりやすい失敗

本稼働後は、旧来の申請方法が残る、承認が途中で止まる、異動や退職後も権限が残るといった問題が起こります。

10-1. 新旧の申請経路が併存する

新しいシステムを導入しても、従業員や承認者へ運用ルールが伝わっていなければ、紙やメールによる申請が残ります。新旧の経路が併存すると、どの情報が最新なのか分からなくなり、労務部門の転記や問い合わせ対応も続きます。

本稼働前後には、役割に応じて必要な内容を案内します。

  • 従業員: 申請方法、提出期限、差し戻し後の対応

  • 承認者: 承認期限、不在時の対応

  • 管理者: 設定変更、問い合わせ対応の窓口

開始後は旧様式が残っている業務や部門を把握し、案内内容を見直します。旧様式の受付終了日も示し、新しい申請経路へ切り替えていきます。

10-2. 承認・差し戻しが滞る

承認待ち・差し戻し後の未対応が続けば、後続の手続きも遅れます。誰がいつまでに処理するのかを決め、不在時に対応する担当者も定めておきます。

本稼働後は、処理が長く止まっている申請を把握します。特定の承認者や申請で滞留が続くなら、承認経路や期限の伝え方を見直し、同じ問題が繰り返されない運用へつなげます。

10-3. 異動・退職後も権限を残す

管理者権限を付与したまま更新しないと、異動や退職後も業務上不要な情報へアクセスできる状態が残ります。従業員の異動・退職や担当変更、外部委託の終了に合わせて、アクセス権限も変更・削除します。

11. 労務管理システムの導入適性

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-11

労務管理システムを導入するかどうかは、従業員数だけでは決まりません。現在の労務業務で、手入力や情報収集、期限・進捗管理にどれだけ負担がかかっているかを基準に考えます。

今は大きな問題がなくても、採用や拠点の増加によって手続き件数が増える予定がある企業は、今後の業務量も含めて判断しましょう。ここでは、労務管理システムの導入適性をケース別に解説します。

11-1. 手入力や転記が多いか

従業員から受け取った住所や扶養情報を、台帳・給与・勤怠などへ何度も入力しているなら、労務管理システムを導入する余地があります。

同じ情報を入力する回数と転記にかかる時間を把握すれば、システムで減らせる作業を具体化できます。

11-2. 期限や進捗を追う負担が大きいか

入退社や各種申請の期限を担当者個人の予定表で管理し、未処理案件をメールや電話で追っている企業も、労務管理システムの導入を検討する余地があります。

システム上で期限や処理状況を管理すれば、誰の対応を待っているのかを複数の担当者で追えます。現在、期限超過や進捗確認にどれだけ時間を使っているかを把握してみましょう。

11-3. 従業員からの情報収集に手間がかかっているか

入社手続きや住所変更、年末調整などで、紙やメールを使って従業員から情報を集めている企業も導入を検討しましょう。

配布、回収、未提出者への連絡、担当者による再入力に時間がかかっているなら、従業員本人がシステムへ入力する運用へ変えることで減らせる作業があります。

11-4. 拠点や部門ごとに運用が分かれているか

拠点や部門ごとに異なる申請書や台帳を使っていると、本社側で内容をそろえたり、進捗を集計したりする作業が増えます。

共通の入力項目や申請経路を使える業務が多い企業ほど、システムへ集約する効果を出せます。ただし、勤務形態や承認体制など拠点固有の運用は残す必要があります。

11-5. 今後、手続き件数が増えるか

現在の業務量だけで判断せず、今後の採用計画や拠点増加も見ておきます。従業員が増えれば、入退社や身上変更、年末調整などで扱う情報と手続きも増えます。

現在は表計算や紙で対応できていても、今後の件数では担当者だけで追い切れないと考えられるなら、負担が大きくなる前に導入を検討してください。

11-6. 現行運用のままで問題なく回せているか

手続き件数が少なく、転記や進捗管理にも大きな負担がなく、期限や処理品質を保てている企業は、導入を急ぐ必要はありません。

システムを入れると、初期設定やデータ移行、従業員への案内など新しい作業も発生します。現在の負担と導入後に減らせる作業を比べ、システム化する意味がある業務から検討します。

12. 労務管理システムに求める要件の決め方

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-12

労務管理システムの導入を決めたら、製品を比較する前に、自社がシステムへ求める条件を具体化します。

要件

自社で定める内容

導入目的

改善したい業務と導入後に目指す状態

対象業務

システムへ移す業務と現行運用に残す業務

必要な機能

対象業務を完了するために必要な機能

システム連携

連携先、受け渡すデータ、連携する方向

利用者・権限

利用する人と閲覧・入力・承認できる範囲

予算・導入時期

想定する費用と本稼働を始める時期

導入目的・対象業務・必要な機能・既存システムとの連携・利用者と権限・予算と導入時期まで定めておくと、各製品を同じ基準で評価できます。続いて、要件の定め方を項目ごとに解説します。

12-1. 導入目的を明らかにする

まずは、どの業務を改善するためにシステムを導入するのかを明確にします。「労務業務を効率化したい」といった広い目的だけで終わらせず、入社手続きの処理時間、転記回数、期限超過など、導入前後で変化を追える項目まで具体化してください。

現在の件数や作業時間も記録しておくと、導入後にどの程度変わったのかを評価する基準になります。

12-2. 対象業務を絞り込む

入退社、身上変更、社会保険、年末調整などから、システムへ移す業務を選びます。現在の負担が大きい業務や、転記・回収・進捗管理が多い業務を優先すると、導入する範囲を定めやすくなります。

既存システムや手作業に残す工程も併せて決めます。システムへ移す部分だけに着目すると、その前後に残る作業を見落とすため、業務の開始から完了までを一続きで捉えます。

12-3. 必要な機能を洗い出す

対象業務を進めるために必要な機能を洗い出します。例えば、入社手続きを対象にするなら、本人情報の収集、従業員台帳への登録、雇用契約、社会保険・雇用保険への受け渡しなど、実際の工程に沿って必要な機能を挙げます。

機能名だけを並べず、どこまでシステム内で処理したいのかまで定めるのがポイントです。これにより、各製品の機能を評価するときに不足している工程を把握できます。

12-4. 連携が必要なシステムを把握する

給与計算や勤怠管理、人事管理などを別のシステムで運用するなら、労務管理システムとどの情報を受け渡すのかを確認します。氏名・所属・雇用区分など、連携が必要な項目とデータを渡す方向を挙げておきます。

併せて、どのシステムの情報を更新元とするのかを定めます。同じ従業員情報を複数のシステムで個別に更新すると内容がずれるため、変更後の情報をどこから各システムへ渡すのかを決めます。

12-5. 利用者と権限の範囲を定める

従業員、上長、人事・労務担当者、情報システム部門、外部の社会保険労務士など、システムを利用する人を挙げ、それぞれが行う操作を定めます。

権限は、閲覧・入力・承認・出力・管理などの操作単位で考えます。個人データを扱う事業者には安全管理措置が求められ、外部へ取扱いを委託するときも委託先への必要かつ適切な監督が必要です。

導入前の段階では詳細な画面設定まで作り込まず、誰がどの情報を扱う必要があるのかを定めます。実際の権限設定と動作テストは導入工程で行います。

12-6. 予算と導入時期を設定する

予算はシステムの利用料だけで考えず、初期設定、データ移行、連携、導入支援など、自社で必要になる費用まで含めて上限を設定します。自社担当者が導入準備に使う時間も把握しておくと、導入全体に必要な負担を見積もれます。

導入時期は、契約日だけで決めません。データ移行、設定、テスト、従業員への案内を終えたあとに本稼働できる日程を設定します。年末調整や大量入社など自社の繁忙期とも重ねて見ておきましょう。

13. 労務管理システムを選ぶポイント

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-13

上記で定めた要件を使い、比較対象となる労務管理システムを評価します。総費用・操作性・既存システムとの連携・セキュリティ・導入後の支援を同じ条件で比べ、代表的な業務を最後まで進められるかを試します。

評価軸

資料・提案で確認する内容

試行で試す内容

選定条件の例

総費用

利用料、追加機能、連携、導入支援

導入後に残る社内作業

想定期間の総費用が予算内

操作性

対応端末、入力支援、権限別の画面

申請、差し戻し、承認

代表利用者が一連の操作を完了できる

連携性

連携先、対象項目、頻度、エラー対応

実データによる取込・出力

必要なデータを正しく受け渡せる

セキュリティ

認証、権限、ログ、委託先、障害対応

権限制御、ログ取得

不要な閲覧・出力を制限できる

導入・運用支援

設定、移行、教育、問い合わせ、終了時対応

問い合わせへの対応

自社が必要とする段階で支援を受けられる

各社へ伝える利用人数・対象業務・必要な機能をそろえると、条件の差を比べられます。労務管理システムを選ぶポイントは、以下のとおりです。

13-1. 総費用と削減工数を比べる

費用は月額・年額の利用料だけで判断せず、導入から一定期間の運用までを同じ期間で見積もります。必要な追加機能、システム連携、データ移行、導入支援などを含め、実際に利用する条件で総額を出します。

併せて、転記や紙の配布・回収から減らせる作業と、導入後も残る問い合わせ対応や権限管理などの工数を見積もります。費用だけが安い製品を選ぶのではなく、自社の業務負担がどこまで変わるかも含めて比べます。

13-2. 実際の業務で操作性を試す

実際に利用する従業員や承認者に、デモを操作してもらいます。入社情報の登録、住所変更、申請、差し戻し、承認など、自社で発生する代表的な業務を最初から最後まで進めます。

その際は、操作に迷った箇所や説明が必要だった場面を記録します。画面の印象だけで評価せず、日常的に利用する人が必要な処理を完了できるかを基準にします。

13-3. 既存システムとの連携を検証する

既存システムとの連携は、接続先の製品名だけでは判断できません。必要なデータ項目、受け渡す方向、更新するタイミング、エラー発生時の処理まで見ます。

試行できる環境があるなら、自社で使う代表的なデータを取り込み、件数や主要項目が正しく受け渡されるかを検証します。エラー発生時にどこまで自動で処理され、担当者にどの作業が残るのかも選定時に把握しておきます。

13-4. セキュリティ体制を評価する

労務管理システムは従業員の個人データを扱うため、システムの機能に加えて提供会社の安全管理と利用企業側の管理範囲を評価します。個人データの取扱いを委託する企業には、委託先の選定と必要かつ適切な監督が求められています。

主な確認項目は次のとおりです。

  • 認証方法とアクセス権限

  • 通信・保存データの保護

  • 操作ログ

  • バックアップと障害対応

  • 委託・再委託の範囲

  • データを保管する国・地域

  • インシデント発生時の連絡方法

第三者認証の有無だけで評価を終えず、自社が必要とする安全管理を契約と運用の両面で満たせるかを見ます。

13-5. 導入後の支援内容を見極める

導入後の支援内容は、初期設定やデータ移行、本稼働後の問い合わせやトラブルへの対応まで確認します。サポートの受付時間と連絡方法、対応範囲を把握し、自社で対応する作業との分担を明らかにします。

見落としがちですが、契約終了時の支援内容も選定時に見ておきます。取得できるデータの範囲と形式、別システムへ移せる状態で出力できるか、サービス側に残るデータの取扱いまで尋ねてください。

14. 労務管理システムの導入手順

労務管理システムとは?機能・メリット・費用・関連システムとの違い-14

導入する製品が決まったら、導入体制と日程を組み、データ移行・設定・テストへ進みます。必要に応じて新旧の運用結果を比べたあと、本稼働へ移行し、稼働後も処理時間や問い合わせなどを追います。

工程

主な担当

主な作業

次へ進む条件

体制・日程

導入責任者、労務、IT

役割と日程を設定

担当者と実施日程が確定

データ準備

労務、データ管理者

重複・欠損の修正、項目対応

移行対象と変換方法が確定

設定

労務、IT、提供会社

権限、承認、通知、連携

代表的な設定をレビュー済み

テスト

利用者、承認者、導入チーム

通常業務と例外処理を実行

重大な不具合が残っていない

新旧比較

労務、現場

必要に応じて新旧の結果を比較

主要な結果に問題がない

本稼働

導入責任者、運用担当者

新システムへ切り替え

移行・設定・利用案内が完了

稼働後

運用責任者

指標と問い合わせ、設定を見直す

継続して改善できる体制がある

要件表、項目対応表、権限一覧、テスト結果、利用者向け資料は、導入責任者が追える場所へ保管します。設定を変更したときは関連する資料も更新し、現在の運用内容と記録がずれない状態を保ちます。ここからは、労務管理システムの導入手順を解説します。

14-1. 導入体制と日程を組む

導入責任者を置き、業務要件を扱う人、システム設定を担う人、最終的に承認する人を定めます。労務・給与・情報システム・現場部門など、導入する業務に関係する担当者を参加させましょう。

日程には、データ準備、設定、テスト、従業員への案内に必要な期間を含めます。年末調整や大量入社など自社の繁忙期と重なるなら、担当者や従業員への負荷も考えて開始時期を調整します。

14-2. 移行データを準備する

旧台帳から移すデータについて、重複・欠損・古い情報・表記の違いを修正します。新旧システムの項目対応を作り、所属コードや雇用区分、日付など変換が必要なデータの扱いも定めます。

履歴については、どこまで新システムへ移し、どこから過去データとして保管するのかを決めます。試験移行では、一部のデータを使って件数や主要項目を検証してから、本番環境への移行に進みます。

14-3. 権限・承認・連携を設定する

事前に定めた利用者と権限の大枠をもとに、実際のシステムへ閲覧・入力・承認・出力・管理などの権限を決めます。申請内容に合わせて承認経路を登録し、必要なら代理承認や通知も設定します。

給与計算や勤怠管理などと連携するなら、対象項目、データを渡す方向、実行する時点、エラー発生時の処理を設定します。管理者に加え、一般従業員や上長のアカウントでも操作し、権限外の情報へアクセスできないことを検証しましょう。

14-4. 代表業務と例外処理をテストする

本稼働前には、入社・住所変更・扶養変更・退社など、自社で発生する代表的な業務を最初から最後まで実行します。正常に進む処理に加え、差し戻し・上長不在・添付不備・連携エラーなど、実務で起こり得る例外もテストします。

テストでは、実行した条件、期待する結果、実際の結果、修正内容を記録します。期待した結果にならなかった項目は、原因を修正して同じ条件でもう一度試し、重大な問題が残っている間は本稼働へ進みません。

14-5. 新旧の処理結果を比較する

新旧システムを一定期間並行して使うなら、同じ対象を処理し、件数や主要なデータ、後続システムへの反映結果を比べます。対象業務と期間を限定すると、二重作業を増やしすぎずに差を把握できます。

結果が一致しないときは、元データ、新システムの設定、連携処理、操作のどこで差が生じたのかを追います。原因を修正したあと再実行し、問題が解消してから旧運用の停止へ進みます。

14-6. 本稼働へ移行する

テストや必要な新旧比較を終え、重大な問題が残っていないことを導入責任者が承認したら、本稼働へ移行します。切り替え前には、移行データ、権限、連携設定、問い合わせ先、利用者への案内がそろっているかを最終確認します。

稼働直後は問い合わせや設定修正が集中することを想定し、担当者と連絡経路を決めておきます。システム停止時に受け付ける必要がある業務についても、代替手順と復旧後の登録方法を用意します。

14-7. 稼働後の指標と設定を見直す

本稼働後は、処理時間・差し戻し・期限超過・問い合わせ・連携エラーなどを追い、導入前の値と比べます。想定した改善につながっていない業務があれば、申請経路・権限・画面案内・従業員への説明などを見直します。

組織変更や業務ルールの変更があれば、システム設定と関連資料も更新します。担当者の異動・退職時には権限を変更し、現在の利用者と設定が一致した状態を保ちます。

15. 労務管理システムのよくある質問

最後に、労務管理システムでよくある質問にお答えします。

15-1. 勤怠管理システムと併用できる?

勤怠管理システムとの併用はできますが、データを連携できる範囲や方法は組み合わせによって異なります。従業員番号・所属・雇用区分など、自社で共有したい項目について、更新元と連携方向まで確かめてください。

15-2. 電子申請に対応できる?

社会保険の資格取得届などは、e-Govや市販の労務管理ソフトを使ってオンラインで申請できます。労務管理システムを選ぶ際は、自社で利用する手続き名を挙げ、対応範囲と申請後の処理状況・結果をどこで把握できるかまで尋ねましょう。

15-3. マイナンバーを扱える?

マイナンバーをシステムで扱う際は、利用する事務と事務取扱担当者を定め、アクセスできる特定個人情報ファイルの範囲を限定する必要があります。製品選定では、アクセス制御・利用状況の記録・保存・削除に必要な機能を自社の運用に沿って確かめます。

15-4. 解約後にデータを出力できる?

解約後に出力できるデータや利用できる期間は、サービスや契約内容によって異なります。契約前に、従業員情報・申請履歴・添付書類など必要なデータについて、出力形式・期限・費用と解約後のアクセス可否を確認してください。

15-5. 障害時に手続きを続けられる?

システムへ接続できないときに備え、期限のある手続きや緊急性の高い業務には代替手順を決めておきます。一時的な受付方法・連絡先・復旧後の再登録まで定め、サービス停止中も必要な業務を続けられる状態にしておきましょう。

15-6. 小規模企業にも必要?

導入の必要性は従業員数だけで決めず、手続き件数・転記量・担当者の負担・今後の増員予定から判断します。現在の運用で期限や処理品質を保てているなら導入を急がず、負担の大きい業務から試す方法も検討できます。

16. まとめ

労務管理システムは、従業員情報の収集から申請・承認、台帳や届出用データへの反映までを支援します。勤怠管理や給与計算との役割を分け、項目ごとの更新元と連携方向を決めてから製品を比べてください。

導入前に確認するのは、現行業務の件数と工数、対象業務・権限・例外処理・停止時対応です。比較する製品は同じ要件と代表データで試し、操作性・連携結果・総費用・支援範囲を比べてください。実務を最後まで完了でき、担当者と従業員が無理なく使い続けられるかを最終基準とします。公式資料やサービス詳細ページで対応範囲・総費用・導入支援を確かめ、必要に応じて資料を請求してください。

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