受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順

更新日:2026/09/03

電話やFAX、メールで届く注文を表計算ソフトへ転記していると、数量や納期の入力ミスが起こりやすくなります。注文の進捗が担当者しか分からず、取引先からの問い合わせにすぐ答えられない企業も少なくありません。

受発注管理システムでは、受注から出荷・請求までの情報と、発注から入荷までの情報を一元的に管理します。ただし、製品ごとに扱える工程や例外処理が異なるため、自社の取引条件に合うかを見極める必要があります。

この記事では、受発注管理システムの主な機能や種類、関連システムとの違いなどを解説します。メリットや失敗例、選び方、導入手順まで押さえ、自社に最適な製品を選びましょう。


1. 受発注管理システムとは

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-1

企業間の取引では、顧客から注文を受ける受注業務と、仕入先や外注先へ注文する発注業務が発生します。受発注管理システムは、両方の注文情報と進捗をまとめて管理し、出荷、入荷、請求、支払などの後続業務へつなぐシステムです。

管理領域

注文時に登録する情報

管理する状態

連携する業務

受注管理

注文番号、取引先、商品、数量、希望納期

受付、承認、引当、出荷待ち、完了

出荷、売上、請求

発注管理

発注先、商品・資材、数量、希望納期

発注済み、回答待ち、一部入荷、完納

入荷、検収、仕入、支払

共通管理

商品、取引先、単価、税、締め条件

有効期間、利用可否、変更履歴

在庫、会計、EDI、分析


在庫を扱う取引では、在庫数や仕入納期の変更が受注側の出荷予定へ影響するため、受注と発注を関連付けて管理します。別々の業務のように見えても、受注・発注は在庫を介して一つの流れとしてつながっています。

たとえば、受注した商品を在庫でまかなえず、仕入先から取り寄せる場合、発注側の納期遅延は受注側の出荷予定に影響します。仕入先からの納期回答が変われば、顧客への出荷予定や納品日も再調整が必要です。

受注・発注・在庫の情報が連携していないと、受注側では出荷できると判断していても、実際には在庫を確保できていないといったズレが生じます。受発注管理システムで各情報を関連付けることで、発注の遅れが影響する受注を把握し、顧客への案内や出荷予定の調整へつなげられます。

なお、受注・発注を一つの製品で扱えるかは、システムによって異なります。販売・購買・在庫まで管理したい場合は、各工程をどこまで同じシステムで処理できるかを確かめてください。

2. 受注・発注の業務フロー

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-2

受発注管理は、注文の登録だけで終わりません。見積や取引条件を起点に、在庫、納期、出荷、入荷、請求までデータを引き継ぎ、誰が次の処理を担うかを明確にします。

区分

主な工程

主担当の例

完了確認記録

受注

見積→注文受付→在庫・納期確認→出荷→請求

営業、受注担当、倉庫、経理

受注番号、引当結果、出荷実績、請求番号

発注

必要量算定→発注→納期回答→入荷→検収→仕入

購買、在庫担当、倉庫、経理

発注番号、回答納期、入荷実績、検収結果


自社の流れと比べる際は、各工程の担当者と記録が決まっているかを確かめます。次の工程へ渡す情報が曖昧な箇所ほど、システム導入前にルール化する必要があります。

2-1. 受注業務の流れ

受注業務では、見積と取引条件を確定して注文を受け付け、在庫・納期・与信を照合します。その後、出荷・納品の実績を売上と請求へ引き継ぎます。

2-1-1. 見積と取引条件を確定する

商品・数量・単価・納期・送料・支払条件を見積へ反映します。値引きや特別条件がある場合は、承認済みの内容を受注へ引き継ぎます。

2-1-2. 注文内容を受け付ける

Web画面・EDI・EC・メール・FAX・電話などから届いた注文を登録し、受注番号を発行します。商品・数量・希望納期・納品先などを共通の項目で管理します。

2-1-3. 注文の変更・取消を反映する

注文後に数量や納期が変わった場合は、元の受注データへ変更内容を反映します。変更前後の内容と取引先との連絡記録も残します。

2-1-4. 在庫を引き当てる

現在庫と入荷予定、ほかの注文への引当状況を照合します。出荷に割り当てられる数量を基準に、在庫を確保します。

2-1-5. 納期と与信を確定する

引当可能な在庫や入荷予定をもとに、取引先へ回答する納期を決めます。掛取引では、取引限度額や支払状況も照合します。

2-1-6. 商品を出荷・納品する

承認済みの受注データをもとに商品を集め、検品後に出荷実績を登録します。納品が完了したら、受注データへ実績を反映します。

2-1-7. 売上と請求へ反映する

出荷や検収など、契約内容と会計方針に応じた条件を満たした取引は、売上データへ反映します。売上を計上する時点は、取引内容や適用する会計基準などによって異なります。「収益認識に関する会計基準」では、原則として顧客に支配が移転した時点(検収など)での売上計上が求められます。これらを踏まえ、自社が出荷日・着荷日・検収日などのうち、どの日付を基準にできるかを確認し、適用する条件を定めます。

請求データは、得意先ごとの締日や支払条件にもとづいて作成します。売上計上日と請求書の発行日が一致するとは限りません。受発注管理システムでは両者を分けて管理し、会計システムへ連携する項目とタイミングを確認してください。

2-2. 発注業務の流れ

発注業務では、受注状況や在庫をもとに必要量を算定し、発注先へ注文します。入荷した商品や資材を検収し、在庫と仕入へ反映します。

2-2-1. 必要量を算定する

受注分・在庫不足分・安全在庫・発注単位・調達期間をもとに、発注する数量を算定します。

2-2-2. 発注先を決める

価格・納期・最小発注量・品質・納入実績などを踏まえ、発注先を選びます。

2-2-3. 発注内容を確定する

商品・数量・希望納期・納入先・単価などを発注データへ登録し、発注番号を付けて発注先へ送ります。法令上必要な項目がある場合は、必要事項を記載した発注書や電子データを発行・保存できるようにします。

2-2-4. 回答納期を管理する

発注先から受け取った回答納期を発注データへ登録します。希望納期との差がある場合は、在庫計画や受注側の納期へ反映します。

2-2-5. 商品・資材を入荷する

商品や資材が届いたら、発注番号をもとに商品・数量・納期を照合し、入荷実績を登録します。分納の場合は、入荷した数量を実績として登録し、未入荷分を残数量として管理します。

2-2-6. 検収する

入荷した商品・数量・品質が発注内容と一致しているかを照合します。検収結果と差異の内容を発注データへ記録し、検収結果を仕入計上や債務管理へ反映します。

2-2-7. 在庫と仕入へ反映する

検収が完了した明細を在庫数量と仕入データへ反映します。これらは、発注番号・入荷実績・検収結果を関連付けて管理します。

3. 受発注管理システムの主な機能

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-3

受発注管理システムの主な機能には、マスター管理、受注・発注登録、価格・納期・承認管理、在庫連携・引当管理、発注残・入荷管理、帳票・EDI・通知、集計・分析があります。

機能

主な役割

製品選定時に確かめる点

マスター管理

商品、取引先、価格、単位などの基礎情報を管理する

有効期間、取引先別条件、変更履歴

受注・発注登録

注文データを作成し、外部データを取り込む

対応する注文経路、重複防止、エラー処理

価格・納期・承認管理

注文条件を適用し、必要な承認を行う

条件の優先順位、承認経路、代理承認

在庫連携・引当管理

在庫状況を注文へ反映し、必要数を確保する

更新頻度、倉庫別在庫、重複引当の防止

発注残・入荷管理

未入荷の数量と納期を管理する

分納、部分入荷、遅延、取消

帳票・EDI・通知

帳票を発行し、取引先や周辺システムと情報を交換する

データ形式、送受信方法、失敗時の再処理

集計・分析

件数、処理時間、誤り、受注残・発注残を集計する

指標の定義、集計時点、改善担当者


いずれも代表的な機能ですが、必要性と搭載範囲は製品や業務によって異なります。各機能の特徴を一つひとつ見ていきましょう。

3-1. マスター管理機能

商品や取引先、価格など、受注・発注処理の基礎となる情報を管理する機能です。通常、商品マスターには、商品コード、名称、規格、単位、税区分、発注単位などを登録します。取引先マスターでは、請求先や納品先、締日、支払条件、利用できる注文経路などを管理します。

取引先別単価や期間限定価格を扱う場合は、適用開始日と終了日も設定します。過去の注文へ現在の条件が反映されないよう、古い情報を上書きせず、変更履歴を残せるかを確かめてください。

3-2. 受注・発注登録機能

注文データを作成し、後続の出荷・入荷・請求・支払へ引き渡す機能です。見積や過去の注文から受注データを作成するほか、Web画面、CSV、API、EDIなどから注文を取り込む方法があります。発注側では、在庫不足や受注内容をもとに発注データを作成します。

外部から注文を取り込む際は、取引先コード、商品コード、数量、日付形式などを確認します。同じ注文を二重に登録しないための判定や、エラーの原因・修正担当者を画面上で追えるかも、日々の処理を安定させるうえで重要です。

3-3. 価格・納期・承認管理機能

取引条件に応じた金額や納期を注文へ反映し、必要な承認を経て処理を進める機能です。注文金額は、取引先別単価、数量別単価、期間限定価格、送料などの条件をもとに計算します。

複数の価格条件が重なる場合、どの条件を優先するかを設定します。手作業で価格や納期を変更した際に、変更理由を記録できるかも確かめてください。

製品によっては、見積金額や値引率、申請者の所属などに応じて承認経路を変えられます。承認期限や代理承認に対応できるかも確認してください。

3-4. 在庫連携・引当管理機能

現在庫や入荷予定、すでに注文へ割り当てた数量をもとに、受注へ利用できる在庫数を管理する機能です。受注時に必要な数量を確保することで、同じ在庫を複数の注文へ重複して割り当てるリスクを軽減できます。

3-5. 発注残・入荷管理機能

発注した数量のうち、まだ入荷していない数量と納期を管理する機能です。一部だけ入荷した場合は、発注明細を入荷済みと未入荷に分け、残りの数量と回答納期を更新します。

発注残が長期間動いていないときは、購買担当者へ通知し、仕入先への問い合わせや代替調達へつなげます。未入荷数だけでなく、遅延日数や影響を受ける受注と関連付けられると、優先して対応する注文を判断しやすくなります。

3-6. 帳票・EDI・通知機能

見積書、注文書、納品書などを発行し、取引先や周辺システムへ情報を渡す機能です。帳票は印刷やメール送信のほか、取引先向けの画面から共有できるシステムもあります。

EDI(電子データ交換)に対応する製品では、定められた形式に沿って、注文や納期回答などの取引データを企業間でやりとりできます。

ただし、「EDI対応」と記載されていても、自社や取引先が使う形式に対応できるとは限りません。対応する標準、メッセージの種類、接続方法、利用費用、送受信に失敗した際の再処理方法を確かめてください。

また、EDIやメールを用いた注文データの授受は、電子帳簿保存法における「電子取引」に該当します。取引データを電子データのまま要件を満たして保存する法的な義務があるため、システムが同法の保存要件に対応しているかも重要な選定基準となります。

3-7. 集計・分析機能

受注・発注業務で蓄積したデータを集計し、処理の遅れやエラーが発生している箇所を把握する機能です。受注件数、処理時間、納期回答までの時間、誤入力、キャンセル、受注残、発注残などを集計します。

集計結果を活用する際は、指標の定義と集計時点をそろえます。たとえば、受注残や発注残は、取消済み・保留中の注文を含めるかによって数値が変わるため、対象範囲を決めたうえで比較してください。

4. 受発注管理システムの種類

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-4

受発注管理システムには、BtoB型、EC受注型、業種特化型、クラウド型、オンプレミス型があります。対象とする取引や業種、システムの提供形態によって種類が分かれます。

種類

分類の基準

主な特徴

BtoB型

対象とする取引

企業間の見積、注文、納期回答、出荷状況などを管理する

EC受注型

対象とする注文経路

自社ECやモールなど、複数の販路から入る注文をまとめて管理する

業種特化型

対応する業種

業界固有の項目や業務手順を備えている

クラウド型

提供形態

インターネットを通じてシステムを利用する

オンプレミス型

提供形態

自社が管理するサーバーやネットワーク環境へ構築する

これらはそれぞれ重複する特徴を持つ場合もあります。BtoB取引に対応したクラウド型や、特定業種向けに構築されたオンプレミス型など、複数の特徴を組み合わせた製品もあります。

ここでは、受発注管理システムの種類ごとの特徴と、適している企業の傾向をご紹介します。

4-1. BtoB型

BtoB型は、企業間の見積、注文、納期回答、出荷状況などを管理する種類です。取引先ごとに異なる価格、締日、納品先、販売単位などを設定し、それぞれの取引条件を注文へ反映できます。

この種類は、取引先ごとに価格や注文条件を分けている卸売業、メーカー、商社に向いています。また、電話・FAX・メールで受けている注文をWebへ移行し、受注後の処理手順をそろえたい企業にとっても有力な選択肢です。

4-2. EC受注型

自社ECやモールなど、複数の販路から入る注文をまとめて管理する種類です。注文情報、在庫、出荷状況を1つの画面へ集約し、倉庫や配送システムへ引き渡します。

EC受注型は、複数のECサイトを運営し、販路ごとに注文処理や在庫更新を行う小売・通販事業者に向いています。法人向け販売では、取引先別価格や掛払い、見積・承認などの対応可否も確認してください。

4-3. 業種特化型

業種特化型は、特定の業界で必要となる項目や業務手順を備えた種類です。たとえば、食品業の賞味期限・ロット、製造業の図番、建材業の現場別納品など、業界固有の情報を管理できます。

食品業や製造業、建材業など、一般的な商品・数量・金額だけでは取引を管理できない企業で活用されます。ただし、業界向けの製品であっても、自社独自の帳票や処理まで標準機能に含まれるとは限りません。分納、返品、代替品などの例外もデモで再現し、自社の業務に対応できる範囲を確かめてください。

4-4. クラウド型

クラウド型は、インターネットを通じて、提供会社が用意したシステムを利用する種類です。対応製品では、複数の拠点や取引先が同じシステムへ接続し、注文情報や処理状況を共有できます。

拠点や取引先をまたいで受発注情報を共有したい場合は、クラウド型を利用することで同じ環境から業務を進められます。ただ、利用者アカウントやアクセス権限、業務データ・マスターなど、利用企業が管理する範囲は製品・契約によって異なります。提供会社との責任分界と、社内で管理を担う担当者を確認してください。

4-5. オンプレミス型

オンプレミス型は、自社が管理するサーバーやネットワーク環境にシステムを構築する種類です。既存システムとの連携や、自社固有の取引条件に合わせた個別開発を行えます。

既存の基幹システムと密接に連携させたい企業や、独自の業務手順を維持したい企業では、オンプレミス型の設計自由度を生かせます。その分、機器の保守、システムの更新、バックアップ、障害対応について、自社で担う範囲と保守ベンダーへ委託する範囲を決める必要があります。構築時の要件だけで決めず、導入後の運用を担う人員と費用も見込んでおきましょう。

5. 販売管理・在庫管理・EDI・EC管理との違い

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-5

受発注管理システムは、販売管理や在庫管理、EDI、EC管理と一部のデータを共有します。ただし、各システムでは中心となる目的と管理範囲が異なります。

複数のシステムを連携する場合は、各データの正式な更新元と、情報を受け渡す方向を決めておきましょう。

以下は、各領域を独立したシステムとして分ける場合の中心範囲の例です。製品によって管理範囲は重なります。

対象

主な目的

主なデータ

受発注管理との関係

受発注管理

注文と進捗を管理する

見積、注文、納期、受注残、発注残

注文データを後続工程へ渡す

販売管理

見積・受注・出荷・売上・請求・入金を管理する

見積、受注、出荷、売上、請求、債権、入金

製品によって受発注管理と重なる。分ける場合は出荷・売上実績などを連携する

在庫管理

在庫の数量と所在を管理する

入出庫、引当、棚卸、ロット

引当結果と入出庫実績を交換する

EDI

企業間で取引データを交換する

注文、納期回答、出荷情報

取引先とのデータ受け渡しを担う

EC管理

ECの注文や販売チャネルを管理する

注文者、決済、配送、商品情報

EC注文を受注データとして渡す


1つの製品が複数の領域を兼ねることもあります。製品名や機能名だけで区別せず、どのシステムが情報を更新し、次の工程へ何を渡すのかを把握しておきましょう。

5-1. 販売管理との違い

販売管理と受発注管理は、どちらも受注情報を扱いますが、中心となる管理範囲が異なります。

  • 販売管理:見積・受注・売上・請求・入金など、販売活動と金銭の流れを管理する

  • 受発注管理:注文の受付から出荷・入荷までの進捗と、受注残・発注残を管理する

別々のシステムを使う場合は、出荷実績を販売管理へ渡す時点や、返品・売上訂正を反映する流れを定めます。取引先や商品情報をどちらで更新するかも統一しておきましょう。

5-2. 在庫管理との違い

在庫管理と受発注管理は、在庫情報の管理と利用という点で役割が分かれます。

  • 在庫管理:倉庫や拠点ごとの在庫数量・所在・入出庫・棚卸・ロットを管理する

  • 受発注管理:在庫情報を利用して、注文への引当・納期回答・補充発注を行う

両方のシステムから在庫数を更新すると、数量に差が生じるおそれがあります。在庫の正式な更新元を1つに決め、引当結果や入出庫実績を受け渡す流れを構築します。

5-3. EDIとの違い

EDIと受発注管理は、取引先とのデータ交換と、社内での注文処理をそれぞれ担います。

  • EDI:注文・納期回答・出荷情報などの取引データを企業間で交換する

  • 受発注管理:受信した注文を社内で処理し、納期や受注残・発注残などの進捗を管理する

EDIで受け取った注文は、商品コードの変換や重複判定を経て受注データへ登録します。形式エラーや送受信の失敗が発生した際の再処理方法も定めておきましょう。

5-4. EC管理との違い

EC管理と受発注管理は、扱う販売チャネルと注文後の管理範囲に違いがあります。

  • EC管理:オンライン店舗やモールの商品掲載・注文・決済・配送を管理する

  • 受発注管理:EC以外の注文も含め、取引条件・納期・受注残などの進捗を管理する

EC注文を受発注管理へ連携する場合は、注文番号・商品コード・配送先・キャンセル状態の対応をそろえます。注文内容を修正するシステムも統一し、二重登録や重複出荷を防ぎましょう。

6. 受発注管理システムのメリット

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-6

受発注管理システムを導入すると、注文情報の転記を減らし、受注・発注の進捗を部門間で共有できるようになります。また、入力ミスや処理漏れの早期発見、取引記録の検索にも役立ちます。

ただし、得られる効果は、注文経路やマスター情報、取引先の利用状況、周辺システムとの連携によって変わります。導入前に改善したい業務を定め、稼働後は共通の条件で効果を測りましょう。

ここでは、受発注管理システムの導入メリットを紹介します。

6-1. 電話・FAX・メールの転記を減らせる

取引先がWeb画面から注文を入力したり、EDIやCSVで注文データを送ったりすれば、受注担当者による転記を減らせます。発注側でも、受注情報や在庫情報を引き継いで発注データを作成できるため、商品名や数量の再入力を抑えられます。

電話やFAXによる注文が残る場合は、システムへの登録方法と担当者を定めます。システム外で受け付けた注文も同じ受注データとして管理できる流れが必要です。

6-2. 注文・納期・発注残を共有できる

注文番号を基準に、受付・承認・引当・出荷・入荷の状況を共有できます。営業や購買の担当者は、ほかの部門へ問い合わせなくても、注文の進捗と次の工程を把握できます。

しかし、「処理中」のような曖昧な定義では、担当者や対応期限が不明確になります。「承認待ち」「納期回答待ち」「出荷準備中」など、実際の業務に沿って状態を定義し、更新する担当者も決めておきましょう。

6-3. 入力ミスと処理漏れを見つけやすくなる

必須項目や入力形式、重複、取引条件を登録時に検査すると、商品コードの誤りや数量の未入力を早い段階で発見できます。承認待ち・納期未回答・未出荷・未入荷の注文を一覧化すれば、処理が止まっている工程も把握できます。

その際、システムで検知できる範囲と、人が照合する範囲は分けておきます。異常が見つかった際に、誰が内容を修正し、次の工程へ進めるのかも運用ルールに含めてください。

6-4. 取引記録を検索しやすくなる

見積・注文・納期回答・出荷・入荷・返品の記録を同じ取引番号へ関連付けると、注文から完了までの経緯を追えます。担当者が不在でも、変更日時や取引先への回答内容を記録から把握できるのが利点です。

検索に使う番号や項目は、部門間で統一しておきましょう。取引先名や商品名の表記がそろっていない場合は、必要な記録が蓄積されても検索結果が分散してしまいます。

6-5. 出荷・請求・仕入への再入力を減らせる

受注情報を出荷や売上、請求へ引き継げば、後続工程で商品・数量・取引先を入力し直す作業を減らせます。発注側でも、発注・入荷・検収の実績を仕入データへ反映することで、購買・倉庫・経理の間で同じ情報を利用できます。

6-6. 取引条件や承認手順を統一できる

取引先別の単価・支払条件・納期条件や、値引き・発注金額に応じた承認手順をシステムへ登録できます。担当者ごとの判断に頼らず、共通の条件に沿って受注・発注処理を進められます。

例外的な条件を扱う場合は、承認者と記録する内容も定めます。通常取引と例外取引を分けて管理することで、承認漏れや条件の取り違えを抑えられます。

7. 受発注管理システムの導入で起こりやすい失敗・兆候

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-7

受発注管理システムの導入では、機能不足だけが失敗の原因になるとは限りません。取引先の参加条件、価格や単位、分納、システム連携、承認・権限のルールを決めないまま設定を始めると、稼働後も手作業や個別対応が残ります。

導入前には、通常の注文に加え、訂正、取消、分納、連携エラー、承認者不在などの例外も試す必要があります。稼働後に現れやすい兆候と、早期に把握する方法、最初に対応する担当者を以下にまとめました。

失敗の兆候

早期に把握する方法

最初に対応する担当者

システム外の注文が減らない

注文経路別の件数とシステムの利用状況を集計する

受注責任者

価格・単位の手修正や請求差異が多い

単価変更、数量換算、請求差異、差戻しを記録する

営業管理担当者、経理担当者、マスター管理者

分納・部分入荷後の残数が合わない

注文数量、入出荷実績、残数を明細単位で照合する

受注担当者、購買担当者、倉庫担当者

システム上の在庫と倉庫の実数が合わない

商品・倉庫・在庫状態ごとの差異を集計する

在庫管理担当者、倉庫担当者

売上・仕入の重複や計上漏れが発生する

会計連携の件数・金額と、エラー・再送履歴を照合する

経理担当者、IT管理者

承認待ちの注文が滞留する

承認期限の超過件数と代理承認の利用状況を追う

各部門長

異動・退職者の権限が残る

利用者の所属情報と付与された権限を照合する

システム管理者、各部門長


兆候を見つけた担当者が、1人で問題を解決する必要はありません。最初の連絡先と復旧を担う責任者を分け、業務停止や取引先への影響が大きい問題から対応します。

7-1. 取引先の運用に合わない

自社にとって使いやすくても、取引先が必要な端末を用意できない、入力項目が多い、社内承認に合わないといった理由で利用が進まない場合があります。その結果、Web注文とFAX注文が併存し、受注担当の転記が残ります。

主要な取引先には、契約前に画面や注文手順を試してもらいます。注文頻度やIT環境の異なる取引先を含め、登録時間、問い合わせ内容、利用できない理由を記録します。代替受付を残す場合も、その対象範囲と運用を終了する条件を定めておきます決めます。

7-2. 価格・単位・締め条件がずれる

取引先別単価、数量別単価、ケースと個数の換算、締日などが正しく移行されないと、注文時の金額と請求額が食い違います。担当者がその場で金額を修正する運用が増えるほど、同じ誤りを繰り返しやすくなります。

移行前に、条件名、適用先、有効期間、優先順位を一覧にします。代表的な条件に加え、月途中の価格改定や特別値引きも試し、旧システムの計算結果と照合します。差が出た場合に修正するマスターと承認者を明確にします。

7-3. 部分入荷・分納へ対応できない

発注数量の一部だけ入荷したり、1つの受注を複数回に分けて出荷したりする取引では、残数管理が欠かせません。全数完了しか登録できない運用だと、未出荷分が消えたり、同じ明細を二重計上したりするおそれがあります。

試行では、10個のうち6個を先に入荷する、複数倉庫から分けて出荷する、残りを取り消すといった処理を実行します。在庫、受注残・発注残、売上・仕入、請求へ反映される数量を明細単位で照合します。

7-4. 在庫・会計連携で差異が残る

受発注、在庫、会計の各システムで同じデータを更新すると、処理時点や修正内容がずれます。連携が失敗した注文を人が再登録した結果、二重に在庫や売上へ反映されるケースにも注意が必要です。

項目ごとに正本、更新元、連携方向、更新頻度を決めます。設計した上で、日次で件数と金額を照合し、差異が生じた際の対応担当者と対応を明確にします。

7-5. 承認・権限が複雑になる

現行の承認経路をすべてそのまま設定すると、条件分岐が増え、担当者が申請先を把握できなくなる場合があります。異動や退職後も古い権限が残れば、不要な閲覧や誤った承認につながります。

金額、値引率、粗利、緊急度など、承認が必要な理由を明確にし、似た経路は共通化します。閲覧、登録、変更、承認、出力の権限を役割ごとに分け、定期点検と異動時の変更期限を運用へ組み込みます。

8. 受発注管理システムの導入が向く企業・後でもよい企業

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-8

受発注管理システムは、複数の経路から注文を受け付け、取引条件や例外処理の管理に負担が生じている企業に適しています。ただし、商品情報や取引条件が整理されていない場合は、システム選定より先に現行業務を整える必要があります。

導入の適否は、企業規模や注文件数だけでは決まりません。注文経路、取引条件、例外処理の頻度、導入後の運用体制をもとに判断します。

企業の状況

導入判断

理由・先に行うこと

Web・EDI・EC・メール・FAX・電話など、注文経路が分散している

導入に向く

注文受付と進捗を共通の番号・状態で管理できる

取引先・商品・拠点が多い

導入に向く

取引条件や商品情報、拠点ごとの進捗をまとめて管理できる

分納・返品・納期変更などの例外処理が多い

導入に向く

担当者・承認状況・処理履歴を注文ごとに追える

担当者への問い合わせで進捗を把握している

導入に向く

受注残・発注残や次の工程を部門間で共有できる

注文件数が少なく、現行の台帳で支障が少ない

導入を急がなくてもよい

導入費用と削減できる作業量を比べる

商品コードや取引条件が統一されていない

先に業務を整える

マスター情報と更新ルールを整理する

導入責任者や運用担当者を置けない

先に体制を整える

要件決定・データ更新・設定変更の責任者を決める


以下では、導入効果が出やすい企業と、導入前に業務・管理体制を整えたい企業に分けて解説します。

8-1. 導入効果が出やすい企業

注文情報が複数の台帳や担当者に分かれている企業では、受発注管理システムによって受付方法や進捗管理を統一できます。特に、次のような状況では導入効果が表れやすくなります。

8-1-1. 注文経路が分散している企業

Web・EDI・EC・メール・FAX・電話など、複数の経路から注文を受け付けている企業は、受発注管理システムによる一元管理のメリットを実感しやすいでしょう。

注文を台帳へ転記する運用では、受付漏れや二重登録が起こりやすく、受付後の進捗も経路ごとに分かれます。受付番号と処理状況を共通化すれば、注文の入口が異なっても同じ流れで管理できます。

8-1-2. 取引先・商品・拠点が多い企業

取引先ごとの価格や納品条件、商品単位、拠点別の在庫を扱う企業では、共通マスターによる管理の効果が表れます。

同じ商品や取引先が異なる名称・コードで登録されていると、受注・発注時に参照する条件が部門ごとに変わります。取引先・商品情報を共通化すれば、各部門が同じ条件を使って処理できます。

8-1-3. 例外処理が多い企業

分納・返品・緊急出荷・単価訂正・納期変更などが多い企業では、変更履歴を注文単位で管理する仕組みが必要です。

例外処理を別の台帳やメールで管理すると、承認状況や対応の経緯が分散します。元の受注番号・発注番号に変更内容や担当者を関連付ければ、通常処理から例外対応まで一続きで追えます。

8-1-4. 進捗把握が担当者への問い合わせに依存している企業

注文の進捗を担当者へ問い合わせなければ分からない企業では、受注残・発注残と処理状況を部門間で共有する効果が表れます。

各注文の担当部門や現在の状態、回答・出荷・入荷の予定日を共有すれば、営業・購買・倉庫が同じ情報を参照できます。担当者が不在でも状況を引き継げるため、社内確認や取引先への回答が止まる事態を防げます。

8-2. 導入前に業務・体制を整えたい企業

現行管理で大きな支障がない企業や、受発注業務の基準が決まっていない企業は、専用システムの導入を急ぐ必要はありません。先に業務量や管理ルール、導入後の責任体制を整理します。

8-2-1. 注文件数が少なく現行管理で支障が少ない企業

注文件数が少なく、取引先・商品・処理手順も固定されている企業では、現在の台帳で業務を管理できる場合があります。

処理漏れや入力ミスがほとんどなく、進捗も把握できているなら、専用システムによって削減できる作業は限られます。導入費用や管理工数と、削減できる作業量を比べて判断しましょう。

8-2-2. 商品情報や取引条件が整理されていない企業

商品コードや取引先情報、価格・納期・承認条件が統一されていない企業は、システム選定より先にマスターと運用ルールを整える必要があります。

部門や拠点ごとに異なる情報をそのまま移行すると、重複や表記の違いが新しいシステムにも残ります。正式に扱う情報と更新担当者を定め、同じ条件で受注・発注できる状態を作ってください。

8-2-3. 導入責任者や運用担当者を置けない企業

要件決定やデータ管理を担う担当者を置けない企業は、製品を選ぶ前に導入・運用体制を整える必要があります。

導入時には、対象業務や設定内容を決める責任者が必要です。本稼働後もマスター更新やエラー対応を続けられるよう、部門ごとの担当範囲と承認者を明確にしておきましょう。

9. 受発注管理システムを選ぶポイント

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-9

受発注管理システムは、自社の通常取引と例外取引を一連の流れで処理できるかを基準に選びます。受注や発注を登録できても、返品、分納、取消、連携エラーが発生するたびに手作業へ戻る製品では、導入後に業務が分断されるためです。

主な選定ポイントは次のとおりです。

選定ポイント

主に調べる内容

比較時に行うこと

判断の目安

業務への適合性

対象工程、取引条件、例外処理

通常取引、分納、返品、取消を再現する

自社で定めた手順に沿って処理を完了できる

総費用と導入効果

初期・継続・追加費用、社内工数、改善指標

総費用を試算し、現行業務との処理時間や修正件数を比べる

総費用が予算内に収まり、導入効果を継続して測定できる

操作性

利用者の役割、端末、注文経路

社内担当者と取引先が実際に操作する

主要業務を定めた時間内に完了し、担当者間で引き継げる

システム連携

項目、方向、頻度、エラー処理

取込み、更新、連携失敗、再送を試す

必要な情報を正しく反映し、失敗したデータを復旧できる

セキュリティ・データ管理

認証、権限、ログ、事故対応、データ保管

権限変更やログの検索・出力を試す

自社の管理方針と契約条件を満たす

拡張性・契約条件

利用者や取引先の追加、契約変更、終了時の対応

利用範囲を広げた場合の費用と手順、終了時の条件を調べる

追加・変更・終了に必要な費用と作業を把握できる

導入・運用支援

移行、設定、教育、取引先案内、問い合わせ対応

自社データを使い、運用管理者も操作する

提供会社と自社の担当範囲、実施期限が決まっている

表に挙げた項目は、公式資料だけで判断せずにデモ、自社データを使った試行、契約条件を組み合わせて確認しましょう。ここからは、選定ポイントについて詳しく解説します。

9-1. 通常取引と例外取引を最後まで処理できる製品を選ぶ

自社で件数の多い通常取引に加え、分納、返品、取消、価格修正などの例外取引を処理できる製品を選びます。受注・発注の登録だけで判断せず、自社が管理する工程の開始から終了まで、本番に近いデータで操作してください。

処理の途中で表計算ソフトやメールへ戻る場合は、導入後も手入力や二重管理が残る原因となります。システム外で行う作業も記録し、担当者が定めた手順で一連の業務を完了できるかを評価することが重要です。

9-2. 導入から運用までの総費用で比較する

製品の費用は、初期費用や月額利用料だけで決めず、導入準備から運用までにかかる総額で比較します。TCO(総保有コスト)には、データ移行、外部連携、教育、保守、社内管理者の作業時間も含めてください。

導入効果は、転記時間、修正件数、納期照会、未処理件数、在庫差異など、自社が改善したい指標で測ります。同じ期間の費用と業務の変化を比べ、予算内で改善目標を達成できる製品かを判断します。

9-3. 社内担当者と取引先が操作できる製品を選ぶ

操作性は、導入担当者だけで評価せず、受注、購買、倉庫、経理など、実際の利用者が試して判断します。取引先がシステムから注文する場合は、可能な範囲で代表的な取引先にも参加してもらいましょう。

デモでは、注文や納期回答、分納、返品などを本番に近い条件で操作します。入力にかかった時間、迷った箇所、誤入力の検知、担当者不在時の引継ぎを記録し、日々の業務を無理なく続けられるかを確認してください。

9-4. 必要なデータを連携し、エラーを復旧できる製品を選ぶ

システム連携の柔軟性は、API、CSV、EDIへの対応表記だけで判断できません。商品、取引先、価格、注文、在庫、出荷、請求ごとに、どのシステムを正式な更新元とし、いつ・どこへ情報を渡すのかを確認します。

導入前には、通常の取込みや更新に加え、通信失敗、データの重複、再送も試してください。エラーの原因を把握し、失敗したデータだけを復旧できる製品なら、連携停止後の二重登録や反映漏れを抑えられます。

9-5. 自社のセキュリティ基準を満たす製品を選ぶ

受発注管理システムでは、取引先、価格、数量、納期などを扱います。利用者認証、役割別権限、暗号化、操作ログ、バックアップなどが、自社の管理方針を満たすか確認してください。

また、管理画面で退職者の利用停止、権限変更、操作ログの検索・出力を実際に試します。事故時の調査・復旧・通知・取引先対応を誰が担うかは、サービス仕様、利用規約、契約、適用法令を確認したうえで明確にします。

9-6. 利用範囲の拡大と契約終了時の条件を確認する

利用者・取引先・拠点・機能を追加した場合の費用と手続きを確認します。最低利用期間やプラン変更の条件に加え、解約時に出力できるデータ、保存期間、削除時期も比較してください。

将来の利用拡大と別製品への移行まで含めて見積もると、導入後に想定外の費用や作業が生じるリスクを抑えられます。

9-7. 導入後も運用を続けられる支援がある製品を選ぶ

初期設定、マスター移行、外部システム連携、操作教育、取引先案内などをどこまで提供会社に依頼できるかを比較します。代行の有無や範囲、追加費用、対応期間も整理してください。

本稼働後は、問い合わせ対応、設定変更、エラー発生時の復旧支援を受けられる範囲を調べます。提供会社へ依頼する作業と社内管理者が担う作業を明確にし、無理なく運用できる製品を選びましょう。

10. 受発注管理システムの導入と運用

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-10

受発注管理システムの導入は、要件を整理する「導入準備」、製品を検証してデータを移す「選定・移行」、実際の利用を始めて改善する「本稼働・改善」の順に進めます。

各段階で責任者と完了条件を定め、次の工程へ影響する問題を残したまま進めないことが基本です。

段階

主な実施内容

主な責任者

完了条件

残す記録

導入準備

目的、対象範囲、取引条件、データ連携を決める

導入責任者、各部門の責任者

必須要件と未決事項の扱いが決まっている

KPI一覧、要件表、データ対応表

選定・移行

製品を試し、必要なデータを移行する

導入チーム、現場利用者、データ責任者

必須要件を実行でき、移行結果が受入基準を満たしている

評価表、移行結果、受入記録

本稼働・改善

小規模稼働、未処理の点検、条件変更、エラー改善を行う

運用責任者、システム管理者

重大な問題がなく、継続して運用できる

KPI、エラー記録、変更履歴


重大な課題は解消してから次の段階へ進みます。軽微な課題を残す場合は、担当者・対応期限・暫定的な処理方法を決めて記録してください。

10-1. 導入準備

導入準備では、改善したい業務と対象範囲を定めます。取引条件やデータの管理方法、必要に応じて取引先の参加方法もこの段階で整理します。

10-1-1. 目的とKPIを決める

受注登録時間の短縮や納期回答の迅速化など、改善したい課題を具体化します。現状値と目標値、測定担当者、集計周期を定め、導入前後の変化を同じ条件で測れるようにします。

10-1-2. 対象範囲を定める

対象となる部門・拠点・商品・取引先・注文経路を決めます。受注だけを先行するのか、発注や在庫連携まで含めるのかも明確にしてください。

システムで処理する範囲と、手作業で引き継ぐ範囲を業務図へ整理します。対象外とする取引の管理方法も決めておきましょう。

10-1-3. 取引条件と例外を整理する

取引先別の価格・数量単位・送料・締日・支払条件・納品先を整理します。分納・返品・取消・緊急注文など、通常の流れから外れる処理も洗い出してください。

例外処理は名称を挙げるだけで終わらせず、発生条件、入力する情報、承認者、後続工程への反映方法まで1件ずつ整理します。

たとえば、分納後に残数を取り消す取引では、未出荷数量を閉じる担当者と、在庫・売上・請求へ反映する時点を決めます。返品後に再出荷する場合は、元の注文との関連付けや請求額の修正方法も必要です。誰がどの画面で処理を完了させるのかが決まっていれば、例外が起きるたびにメールや別台帳へ戻る事態を減らせます。

10-1-4. データの更新元と連携方法を決める

商品・取引先・価格・在庫・注文など、各データを正式に管理・更新するシステムを決めます。連携する項目と更新方向、連携する時点もデータ対応表へまとめます。

エラーが起きた際の修正先と、再処理を担う担当者も定めておきましょう。

10-1-5. 取引先が利用する場合の参加条件を定める

取引先がWeb画面やEDIなどを利用する場合は、現在の注文方法と利用環境を整理し、移行する時期を決めます。利用開始に必要なアカウントや接続設定、問い合わせ先、開始日も案内してください。

新しい注文方法を利用できない取引先については、メールやFAXなどの受付を残すかを決めます。

取引先側の切り替えは、アカウントを発行した時点では完了していません。先行する取引先には、初回注文、訂正、納期回答、取消まで実際の手順で試してもらい、問い合わせが生じた箇所を記録します。

利用開始後もメールやFAXが届く場合、注文の受付番号を照合し、同じ注文を二重に登録しない担当者と手順を決めます。取引先側の準備が整わないまま一斉に切り替えず、注文頻度や利用環境に応じて対象を広げるとスムーズです。

10-2. 製品選定とデータ移行

要件が固まったら、自社の取引を使って候補製品を試します。選定後は必要なデータを移行し、現場部門が業務を続けられるかを判定します。

10-2-1. 公式資料・デモ・試行で検証する

要件表をもとに、機能・料金・セキュリティ・契約条件を確認します。デモや試行では、自社の注文や分納、返品などの取引を使って処理を再現してください。

比較結果は、各要件を「標準機能で処理できる」「設定で対応できる」「追加開発が必要」「システム外で処理する」に分けて残します。

システム外に残す処理については、入力先、証跡、承認、システムへ戻す時点を決めます。候補製品ごとに同じ取引データと完了条件を使えば、画面の印象に左右されず、必要な業務を最後まで処理できるかで比べられます。

10-2-2. マスター移行と受入テストを行う

本稼働後に使用する取引先・商品・価格などのマスターを優先して移行します。未完了注文を移行対象とする場合は、旧環境と新環境の対応関係も整理してください。

重複や欠損を修正したうえで、件数・金額・代表的な取引を旧環境と照合します。移行結果はIT担当者だけで判断せず、データを日常業務で利用する部門も点検しましょう。

受入テストでは、移行した件数と合計金額に加え、取引先と納品先、商品と単位、未完了注文と残数のひも付きを点検します。データの並びや合計が一致していても、価格の適用期間や注文状態がずれていれば、本稼働後の計算や処理順に影響します。

差異が見つかったときは、元データの不備、項目対応の誤り、取込失敗、更新時点のずれに分けて記録し、修正後に同じ条件で再取込を行ってください。現場部門が代表取引を完了でき、照合結果を承認した時点を移行完了とします。

10-3. 本稼働と運用改善

本稼働は対象を限定して始め、問題を解消しながら利用範囲を広げます。稼働後は、取引条件の変更や未処理注文、利用状況、エラーを継続して管理します。

10-3-1. 小規模稼働から始める

最初は一部の部門・拠点・取引先で実際の注文を処理します。入力時間やエラー、旧手順へ戻った理由を記録し、修正後に同じ取引を再試行してください。重大な問題がないことを確かめてから、対象を広げます。

本稼働へ切り替える前に、旧環境での最終受付時刻、新環境で最初に処理する注文、切り替え中の注文を記録する場所を決めます。切り替え後は、旧環境に残った未完了注文と新環境の受付件数を照合し、二重登録や抜けがない状態を確認してください。

さらに、業務を止める重大な問題と、暫定手順で継続できる問題を分け、稼働継続を決める責任者も明確にします。重大な問題が生じた場合に旧手順へ戻す条件、戻した後の注文を新環境へ反映する方法まで用意すると、切り替え時の混乱を抑えられます。

10-3-2. 取引条件の変更を管理する

価格改定・商品の追加・締日の変更などは、社内の申請・承認手順に沿って管理します。価格や締日など取引先との契約条件を変更する際は、契約に応じて通知・合意の要否を確認し、未完了注文へ適用する条件と反映日を記録します。

10-3-3. 未処理・受注残・発注残を点検する

取込エラー・承認待ち・納期未回答・未出荷・未入荷を定期的に点検します。各注文に担当者と対応期限を設定し、長期間残る取引を放置しない運用を整えます。

未処理件数だけを集計すると、同じ注文が長く残っているのか、一時的に件数が増えたのかを区別できません。受付日、最終更新日、停止理由、次の担当者を記録し、期限を過ぎた注文は原因別に分類します。

取引先からの回答待ちと、自社の承認・連携エラーを分けると、自社側で解消すべき滞留を見つけやすくなります。処理を再開した後は、出荷・入荷・請求など後続工程まで進んだかを追い、未処理一覧から消えただけで完了としない運用が必要です。

10-3-4. 利用率とエラーを改善する

利用状況は、対象注文のうちシステム内で処理を完了した割合など、自社の目的に合う指標で測ります。利用が進まない場合は、操作の難しさや二重入力、処理できない例外が残っていないかを調べます。

たとえ利用率が上がっても、担当者がシステム外で処理した結果だけを後から登録していれば、転記や確認の負担は減りません。注文経路別の登録時刻、修正件数、連携エラー、例外処理で別台帳へ戻った件数を併せて見ましょう。

エラーは発生件数だけで終わらせず、原因、影響した注文、復旧までの時間、再発の有無を記録してください。同じ原因が続く場合は、入力規則、マスター、連携方法、担当者の手順のどこを直すかを決め、改善後に同じ取引を再実行します。

11. 受発注管理システムのよくある質問

受発注管理システムとは?受注・発注業務をつなぐ仕組みと導入手順-11

導入後の運用やシステム連携を含め、事前に解消しておきたい疑問にお答えします。

11-1. 取引先へ利用を依頼するときの注意点は?

取引先へ受発注管理システムの利用を依頼する際は、相手側の環境や社内手順、費用負担を確認します。一方的に切り替えると注文が滞るおそれがあるため、対象となる取引、開始日、利用条件、必要な端末、問い合わせ先を事前に伝え、準備期間を設けてください。

システムを利用できない取引先への代替受付と、受け付けた注文を社内で登録する手順も決めておきます。

11-2. 障害中の注文をどう受け付ける?

システム障害に備え、電話や専用メールなどの代替窓口を決めておきます。障害中に注文を受けた担当者は、受付日時、取引先、商品、数量、希望納期を記録してください。復旧後は、同じ注文がシステムへ届いていないか照合してから登録し、障害時の記録と注文番号をひも付けます。

11-3. 終了時に取引記録を出力できる?

電子帳簿保存法により、電子取引のデータは一定期間の保存が義務付けられています。

出力できるデータやファイル形式、対象期間、費用は、製品や契約によって異なります。自社が保管する注文情報に加え、変更履歴、操作ログ、添付ファイルまで取得できるかを契約前に調べましょう。

11-4. 返品と分納をどう扱う?

返品が発生した場合は、元の注文や出荷実績とひも付けて、返品数量や理由を記録します。受け入れた商品は、状態に応じて在庫へ戻すか不良品として分け、必要に応じて売上や請求額も修正します。

分納する場合は、出荷済み数量と未出荷数量、残りの商品を届ける予定日を明細ごとに管理し、取引先への納期回答へ反映します。

11-5. 既存の取引先・商品データを移行できる?

取引先や商品、価格などを移行できる製品はありますが、対象項目や対応形式は製品によって異なります。移行前に、現在使っているコードや単位と、新しいシステムの項目との対応関係を整理してください。

11-6. 在庫管理や会計システムと連携できる?

連携できるシステムや方法は製品によって異なります。注文、出荷、売上、請求のうち、どのデータをどの時点で渡し、変更があった際にどちらのシステムを更新元とするかを決めます。連携が途中で止まった場合に備え、エラーの通知先と再送・再登録の手順も用意してください。

11-7. 担当者ごとに操作権限を分けられる?

製品によっては、閲覧、登録、変更、承認などの権限を、部署や担当者ごとに設定できます。担当業務に必要な範囲だけを付与し、注文内容や取引先別価格を閲覧できる人を限定します。

12. まとめ

受発注管理システムを導入しても、取引条件や例外処理が整理されていなければ、確認や手修正は残ります。導入効果を得るには、受注から出荷・請求までと、発注から入荷・仕入までの流れを整理し、どの情報を誰が更新するかまで決める必要があります。

すべての業務を1度に切り替える必要はありません。まずは代表的な取引を使い、価格計算や分納を試しましょう。最初から完成形を目指さず、試行と修正を重ねながら、自社に合う運用へ整えていきましょう。

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