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- グリーフケアの基礎知識や定義を分かりやすく知りたい方
- 看護・介護の現場で患者や家族への接し方に悩んでいる方
- グリーフケアの学び方や必要な資格について知りたい方

グリーフケアとは
グリーフケアは、大切な人との死別だけでなく、病気や離婚、仕事や役割の喪失など、さまざまな喪失体験による悲しみや苦しみに寄り添う支援です。ここでは、グリーフケアの意味や定義、関連する言葉との違い、厚生労働省の資料に示された位置づけについて、わかりやすく解説します。
グリーフケアの概要
グリーフケアとは、簡単にいうと、大切なものを失った人の悲しみに寄り添い、その人らしい生活を送れるよう支えることです。グリーフケアの対象となる喪失は、家族や友人との死別だけではありません。病気による健康の喪失や、離婚、失業、住み慣れた場所を離れることなども対象です。グリーフの感じ方や時間の経過に伴う変化には個人差があり、「いつまでに立ち直るべき」という決まりはありません。グリーフケアでは、悲しみを無理に忘れさせたり励ましたりするのではなく、相手が安心して感情を表現できるよう寄り添います。
グリーフケアの概要
項目 | 内容 |
|---|---|
対象 | 大切なものを失った人 |
目的 | 悲しみに寄り添い、その人らしい生活を支えること |
対象となる喪失 | 死別、病気、離婚、失業、転居など |
大切な姿勢 | 気持ちを否定せず、本人のペースを尊重すること |
グリーフケアの定義
グリーフケアとは、喪失体験によって生じるグリーフ(悲嘆)を抱えた人に対して、精神的・社会的な支援を行う取り組みです。グリーフは誰にでも起こり得る自然な反応です。悲しみや怒り、不安、罪悪感、無力感などの感情に加え、身体の変化として現れることもあります。グリーフケアでは、こうした反応を病気として決めつけず、本人の気持ちや状況を理解したうえで支援を行います。必要に応じて、家族や医療・福祉の専門職が連携して関わるケースも少なくありません。一人ひとりの価値観や生活背景を尊重し、その人に合った支援を行う姿勢が、グリーフケアの基本です。
グリーフケアで大切な考え方
- 喪失による悲しみは自然な反応として受け止める
- 無理に立ち直らせようとしない
- 本人の価値観やペースを尊重する
- 必要に応じて家族や専門職が連携して支援する
- 安心して感情を表現できる環境を整える
グリーフと悲嘆・喪失との違い
「グリーフ」「悲嘆」「喪失」は似た意味で使われることがありますが、それぞれ指す内容は異なります。喪失とは、大切な人や健康、仕事など、自分にとって重要なものを失う出来事そのものを指します。一方、グリーフ(悲嘆)とは、その喪失によって生じる悲しみや怒り、不安、混乱などの心身の反応のことです。グリーフケアとは、その悲嘆を抱える人に寄り添い、安心して日常生活を送れるよう支援することです。つまり、「喪失」が原因となる出来事、「グリーフ(悲嘆)」がその反応、「グリーフケア」がその反応に寄り添う支援という関係です。それぞれの違いを理解することで、グリーフケアの目的や必要性への理解も深まります。
グリーフ・悲嘆・喪失・グリーフケアの違い
用語 | 意味 |
|---|---|
喪失 | 大切な人・物・役割などを失う出来事 |
グリーフ(悲嘆) | 喪失によって生じる心理的・身体的な反応 |
グリーフケア | グリーフを抱える人に寄り添い、必要な支援を行うこと |
厚生労働省の資料に示されたグリーフケアの位置づけ
厚生労働省は「がん対策推進基本計画」のなかで、グリーフケアを「大切な人を失い、残された家族等の身近な者が悲しみを癒やす過程を支える取組」と説明しています。同計画では緩和ケア研修会について、「研修の対象者を医師以外の医療従事者に拡大し、研修会の内容にがん患者の家族、遺族等に対するグリーフケアを盛り込む等の見直しを行った」と記載されています。また「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針」では、研修内容として「アドバンス・ケア・プランニング、家族の悲嘆や介護等への理解、看取りのケア、遺族に対するグリーフケア」が挙げられており、つまり遺族へのグリーフケアは、国のがん対策のなかで医療従事者が学ぶべき内容として位置づけられているといえるでしょう。
なお、「悲しみをなくすことを目標にしない」といった支援の姿勢そのものは、公的機関が統一的に定めたものではありません。学会のガイドラインや現場の実践のなかで共有されている考え方として理解しておくとよいでしょう。
医療・福祉の現場で重視されているとされるポイント
- 悲しみを無理に消そうとしない
- 本人の価値観やペースを尊重する
- 家族への支援も重視する
- 医療・福祉・心理の専門職などと連携する
- 必要に応じて継続的な支援を行う
終末期医療における本人・家族との話し合い
終末期医療の場面では、死別を迎える前から本人と家族に関わることが支援の出発点になります。厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年(平成30年)3月改訂)では、本人による意思決定を基本としたうえで、「家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である」とされています。また、医療・ケアの方針は「多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチーム」と十分に話し合って決定することが示されています。同ガイドライン自体は死別後のグリーフケアを直接扱うものではありません。ただし、本人と家族が繰り返し話し合える環境を整えることは、死別前から続く支援の土台にあたります。
ガイドラインに示されている主な考え方
項目 | 内容 |
|---|---|
意思決定の基本 | 本人による意思決定を基本とする |
家族等の関与 | 家族等の信頼できる者も含めて繰り返し話し合う |
決定の体制 | 多専門職種で構成される医療・ケアチームで検討する |

グリーフケアが必要とされる理由
グリーフは誰にでも起こり得る自然な反応ですが、その影響は心だけでなく、身体や日常生活にも及ぶことがあります。悲しみの表れ方や時間の経過に伴う変化には個人差があるため、一人ひとりに合った支援が求められます。ここでは、グリーフケアが必要とされる理由や対象者、支援を始めるタイミング、長期的な支援が必要となるケースについて解説します。
グリーフ(悲嘆)が心身に及ぼす影響
グリーフ(悲嘆)は、精神的な悲しみだけでなく、身体や日常生活にもさまざまな影響を及ぼすことがあります。気分の落ち込みや不安、怒り、孤独感、罪悪感などの感情が続くことがあります。また、不眠や食欲不振、疲労感、集中力の低下といった身体の変化が現れる人も少なくありません。仕事や家事への意欲が低下したり、人との交流を避けるようになったりすることもあります。日本サイコオンコロジー学会などが作成した「遺族ケアガイドライン 2022年版」では、「死別の悲しみは、愛する対象を失った時の自然な反応であり」「そのような自然な反応は疾患(治療すべきもの)として扱われるべきではない」とされています。つまりグリーフそのものは病気ではなく、喪失に対する自然な反応として理解できるでしょう。一方で、反応が強く長期間続き、生活に支障が出ている場合には、専門的な支援が必要になることがあります。
グリーフで現れやすい主な反応
分類 | 主な反応 |
|---|---|
心の変化 | 悲しみ、不安、怒り、罪悪感、孤独感 |
身体の変化 | 不眠、食欲不振、疲労感、頭痛、集中力の低下 |
行動の変化 | 引きこもる、仕事や家事への意欲低下、人との交流を避ける |
出典:遺族ケアガイドライン―がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン 2022年版|日本サイコオンコロジー学会・日本がんサポーティブケア学会
グリーフケアが必要になる対象者
グリーフケアの対象は、家族や友人との死別を経験した人だけではありません。病気による身体機能の低下や障害、離婚、失業、流産・死産、ペットとの別れ、災害による生活環境の変化など、大切なものを失った人であれば誰でも対象となります。本人だけでなく、家族や介護者、医療・介護従事者など、喪失体験に関わる人もグリーフを抱える場合があります。悲しみの大きさは出来事だけで決まるものではなく、その人の価値観や人生経験によって異なります。そのため、「この程度なら大丈夫」と決めつけず、一人ひとりの気持ちに寄り添う姿勢が求められます。
グリーフケアの主な対象者
- 家族や友人との死別を経験した人
- 病気や障害による喪失を経験した人
- 離婚や失業など、人生の大きな変化を経験した人
- 流産・死産を経験した人やその家族
- ペットとの別れを経験した人
- 医療・介護従事者や介護を担う家族
グリーフケアはいつから始めるべきか
グリーフケアを始める時期に、決まったルールはありません。喪失を経験した直後から寄り添う場合もあれば、数か月から数年経ってから支援が必要になる場合もあります。「遺族ケアガイドライン 2022年版」では、死別前に喪失を予期して出現する悲嘆を予期悲嘆(anticipatory grief)と呼び、「終末期の患者自身にも出現することがあるが、通常は家族の悲嘆を表す言葉として使用されている」と説明されています。そのため終末期医療では、死別を迎える前から家族への心理的な支援を行うこともあります。一方で、悲しみを無理に話させたり、早く立ち直るよう促したりすることは、相手の負担になる場合があります。その人の気持ちやタイミングを尊重し、必要なときに支援を受けられる環境を整えることが基本となります。
グリーフケアを始める主なタイミング
時期 | 支援内容の例 |
|---|---|
喪失前 | 終末期医療での家族支援や予期悲嘆への対応 |
喪失直後 | 安心して気持ちを話せる環境づくり |
数週間〜数か月後 | 日常生活への適応を支えながら、継続的に見守る |
数年後 | 必要に応じて専門機関や相談窓口につなぐ |
出典:遺族ケアガイドライン―がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン 2022年版|日本サイコオンコロジー学会・日本がんサポーティブケア学会
支援が長期化するケースとは
多くの場合、グリーフは時間の経過とともに少しずつ変化していきます。「遺族ケアガイドライン 2022年版」では、「遺族の約85%は、個人の回復力や支えてくれる人などのリソース(資源)で死別に対処し、通常の悲嘆の経過をたどる」と報告されています。一方、死別後急性期にみられる激しい悲嘆が長期に持続し、強い心理的苦痛や社会機能の障害をきたしている状態は複雑性悲嘆と呼ばれます。同ガイドラインでは、複雑性悲嘆を有する人のうち75.2%がうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの併存疾患を抱えているとしています。
例えば、突然の事故や災害による死別、子どもや配偶者との死別、周囲の理解を得にくい喪失体験などでは、悲しみが長く続きやすい傾向にあります。また、もともと精神的な不調を抱えている人や、相談できる相手がいない人は、孤立によって支援が届きにくくなる場合があります。なお、ICD-11(2019年(令和元年))やDSM-5-TR(2022年(令和4年))では「遷延性悲嘆症」が精神疾患として位置づけられています。ただし該当するかどうかの判断は医師などの専門職が行うものであり、本人や周囲が自己判断するものではありません。日常生活に大きな支障が長期間続いている場合は、一人で抱え込まず、医療機関や心理職、地域の相談窓口などの専門機関へ相談してください。
支援が長期化しやすい主なケース
- 突然の事故や災害による死別
- 子どもや配偶者との死別
- 流産・死産など、周囲に理解されにくい喪失体験
- 相談できる家族や友人が少ない
- 心身の不調が長期間続き、日常生活に支障がある
出典:遺族ケアガイドライン―がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン 2022年版|日本サイコオンコロジー学会・日本がんサポーティブケア学会

グリーフケアの実践方法
グリーフケアでは、相手の悲しみを無理に和らげようとするのではなく、その気持ちに寄り添い、安心して過ごせる環境を整えることが求められます。状況によっては、専門機関による支援が必要になる場合もあります。ここでは、グリーフケアの基本姿勢や傾聴の方法、声かけの考え方、専門機関につなぐタイミングについて解説します。
グリーフケアの基本姿勢
グリーフケアの基本となるのは、相手の悲しみを否定せず、その人の気持ちをありのまま受け止めることです。「早く元気になってほしい」という思いから励ましたくなることもあります。しかし、無理に前向きな言葉をかけると、かえって相手を傷つけることがあります。悲しみの表れ方や変化のスピードは人それぞれ異なるため、「こうあるべき」という考えを押し付けない姿勢が求められます。相手が話したいときは耳を傾け、話したくないときは無理に聞き出さないなど、その人のペースを尊重します。安心できる存在であり続けることが、相手にとっての支えにつながります。
グリーフケアの基本姿勢
- 悲しみを否定せず受け止める
- 変化を急がせない
- 相手の価値観やペースを尊重する
- 無理に励ましたり助言したりしない
- 安心して話せる環境を整える
相手の気持ちに寄り添う傾聴の方法
傾聴とは、相手の話を途中で遮らず、評価や否定をせずに最後まで耳を傾けることです。グリーフケアでは、問題を解決することよりも、「話を受け止めてもらえた」と感じてもらうことが重視されます。うなずきや相づちを交えながら相手の言葉を尊重し、「つらかったですね」「そう感じるのは自然なことですね」と気持ちを受け止める言葉を添えるとよいでしょう。反対に、自分の体験談を長く話したり、安易なアドバイスを繰り返したりすることは避けましょう。沈黙も大切な時間と考え、相手のペースに合わせて寄り添う姿勢が求められます。
傾聴で意識したいポイント
心がけること | 避けたいこと |
|---|---|
最後まで話を聞く | 話を途中で遮る |
相づちやうなずきを入れる | 自分の話ばかりする |
気持ちを受け止める | 否定や評価をする |
沈黙も尊重する | 無理に話を引き出す |
適切な声かけと避けたい言葉
グリーフケアでは、相手を励ますことよりも、気持ちに寄り添う言葉を選びます。「何か力になれることがあれば教えてください」「いつでも話を聞きます」といった言葉は、相手が受け取りやすいとされています。一方で、「時間が解決するよ」「元気を出して」「もっと大変な人もいる」などの言葉は、悲しみを軽視されたと感じさせてしまうことがあります。また、「泣かないで」「忘れたほうがいい」と感情を抑え込ませるような言葉も避けましょう。相手の気持ちを尊重し、その人が感じている悲しみを否定しないことが、声かけの基本です。
声かけの例
適切な声かけ | 避けたい言葉 |
|---|---|
「つらかったですね」 | 「元気を出して」 |
「無理をしなくて大丈夫ですよ」 | 「早く忘れたほうがいい」 |
「いつでも話を聞きます」 | 「時間が解決するよ」 |
「何かできることがあれば教えてください」 | 「もっと大変な人もいる」 |
専門機関につなぐタイミング
グリーフは自然な反応ですが、悲しみが長期間続いて日常生活に大きな支障が出ている場合には、専門機関への相談を検討してください。例えば、食事や睡眠がほとんど取れない状態が続く、仕事や学校に行けない、自分を責め続ける、強い絶望感が消えないといった場合が挙げられます。こうした場合は、医療機関や心理職への相談が選択肢になります。また、自傷行為や自殺を示唆する言動が見られる場合は、できるだけ早く専門家につないでください。
高齢者や介護に関わる相談では、市町村が設置する地域包括支援センターも窓口になります。厚生労働省の資料では、地域包括支援センターは「地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援すること」を目的とする機関と説明されています。また同省は、こころの不調に関する電話・SNS相談窓口をまとめたサイト「まもろうよ こころ」を開設しています。本人や家族だけで抱え込まず、精神科・心療内科、カウンセリング機関、地域包括支援センター、自治体の相談窓口などを活用してください。
専門機関への相談を検討したいサイン
- 不眠や食欲不振が長期間続いている
- 日常生活や仕事・学業に大きな支障がある
- 強い絶望感や自責の念が続いている
- 周囲との交流を極端に避けるようになった
- 自傷行為や自殺を示唆する言動が見られる

看護におけるグリーフケアとは
看護におけるグリーフケアは、患者本人だけでなく家族の心の負担にも寄り添う支援です。終末期医療や在宅医療だけでなく、急性期や慢性期などさまざまな医療現場で求められています。ここでは、看護におけるグリーフケアの役割や看護師の視点、現場での実践方法、患者の家族への支援内容について解説します。
看護におけるグリーフケアの役割
看護師は患者や家族と接する時間が長く、グリーフケアにおいて重要な役割を担っています。病気の告知や治療方針の変更、終末期、死別後など、喪失を感じやすい場面では、不安や悲しみに寄り添い、安心して気持ちを話せる環境を整えます。必要に応じて医師や医療ソーシャルワーカー、臨床心理士などの多職種と連携し、適切な支援につなぐことも看護師の役割です。身体的なケアだけでなく、精神的・社会的な側面も含めて患者や家族を支えることが、看護におけるグリーフケアの基本といえます。
看護師に求められる主な役割
- 患者や家族の気持ちに寄り添う
- 安心して話せる環境を整える
- 心身の変化を早期に把握する
- 多職種と連携して支援する
- 継続的な見守りとフォローを行う
看護の視点から考えるグリーフケア
看護の視点では、グリーフは誰にでも起こり得る自然な反応であり、無理に解消させるものではないと考えられています。そのため看護師は、「悲しみを治す」のではなく、患者や家族が安心して悲しみを表現し、自分らしく生活できるよう支えることを目指します。また、患者本人だけでなく、家族全体の心理状態や生活背景、価値観にも目を向けます。年齢や宗教観、文化的背景によってグリーフの表れ方は異なるため、一律の対応ではなく個別性を重視したケアが求められます。相手の思いを尊重しながら信頼関係を築くことが、看護におけるグリーフケアの土台となります。
看護で大切にされる視点
視点 | 内容 |
|---|---|
個別性 | 一人ひとりの価値観や背景を尊重する |
継続性 | 必要に応じて継続的に関わる |
全人的ケア | 心・身体・生活全体を支える |
多職種連携 | チーム医療で支援する |
看護現場での実践方法
看護現場では、日々のコミュニケーションを通じて患者や家族の小さな変化に気づくことが、グリーフケアの第一歩となります。患者や家族が話したいときには傾聴を心がけ、感情を否定せず受け止めます。また、無理に励ましたり前向きな言葉を押し付けたりせず、その人のペースに合わせて関わります。必要に応じてカンファレンスで情報共有を行い、多職種と協力しながら支援方法を検討することも重要になります。さらに、退院後や在宅療養へ移行する際には、地域の支援機関との連携を図り、継続したサポートにつなげることが看護師の役割です。
看護現場で実践されるグリーフケア
- 傾聴を中心としたコミュニケーション
- 表情や言動の変化を観察する
- 患者・家族の意思を尊重する
- カンファレンスで情報共有する
- 地域や関係機関と連携する
患者の家族への支援内容
グリーフケアでは、患者本人だけでなく家族への支援も欠かせません。家族は病気の進行や終末期を通して不安や葛藤を抱えやすく、死別後も深い悲しみを経験することがあります。そのため看護師は、家族が安心して気持ちを話せる場をつくり、必要な情報提供や意思決定の支援を行います。また、患者との時間を過ごせるよう環境を整える配慮も欠かせません。死別後には、必要に応じて相談窓口やグリーフケア外来、自助グループなどを紹介することもあります。家族が孤立しないよう継続的に関わることは、看護における役割の1つです。
患者の家族への主な支援内容
支援内容 | 具体例 |
|---|---|
心理的支援 | 気持ちを傾聴し、不安や悲しみに寄り添う |
情報提供 | 病状や治療、利用できる制度を説明する |
意思決定支援 | 患者・家族の希望を尊重しながら支援する |
死別後の支援 | 相談窓口や自助グループなどを紹介する |

介護におけるグリーフケアとは
介護現場では、利用者本人だけでなく、その家族も病気や身体機能の低下、死別などさまざまな喪失を経験します。そのため、身体介護だけでなく、心のケアを含めたグリーフケアが求められます。ここでは、介護現場でグリーフケアが求められる理由や家族への支援方法、介護職が実践する際の注意点について解説します。
介護現場でグリーフケアが求められる理由
介護現場では、利用者や家族がさまざまな喪失を経験するため、グリーフケアが欠かせません。例えば、加齢や病気によってこれまでできていたことができなくなることは、利用者にとって大きな喪失体験です。家族も介護による生活の変化や将来への不安、終末期や死別などを通して深い悲しみを抱える場合があります。介護職は利用者や家族と日常的に接する機会が多く、小さな変化に気づきやすい立場にあります。そのため、身体的な介護だけでなく、心理的な負担にも配慮しながら寄り添うことが求められます。利用者や家族が安心して介護を受けられるよう、心のケアにも目を向けた関わりを心がけましょう。
介護現場でグリーフケアが求められる理由
- 身体機能や健康の喪失を経験するため
- 家族が介護負担や将来への不安を抱えやすいため
- 終末期や死別を迎える場面が多いため
- 介護職が利用者や家族と継続的に関わるため
- 利用者や家族の生活の質(QOL)にも関わる支援であるため
利用者の家族への支援方法
介護では、利用者だけでなく家族への支援も求められます。家族は介護の負担や将来への不安、自責の念など、さまざまな感情を抱えることがあります。介護職は家族の話に耳を傾け、気持ちを否定せず受け止めます。また、介護サービスや制度についてわかりやすく説明し、必要に応じて相談窓口を紹介することも支援の1つです。終末期には家族が利用者と穏やかな時間を過ごせるよう環境を整えます。死別後も、地域の相談機関やグリーフケアに関する情報を提供することも重要な役割です。
利用者の家族への主な支援
支援内容 | 具体例 |
|---|---|
傾聴 | 不安や悩みを丁寧に聞く |
情報提供 | 介護制度やサービスを案内する |
心理的支援 | 気持ちを受け止め安心感につなげる |
死別後の支援 | 相談窓口や地域資源を紹介する |
介護現場での注意点
介護現場でグリーフケアを実践する際は、介護職自身の価値観を押し付けないよう注意します。悲しみの感じ方や時間の経過に伴う変化は人それぞれ異なるため、「早く元気になってほしい」「前向きに考えましょう」といった言葉が相手の負担になることもあります。また、介護職自身も利用者との死別によってグリーフを経験することがあり、精神的な負担を抱える場合があります。そのため、職場内で情報共有や相談を行い、必要に応じて上司や専門職の支援を受けることも欠かせません。利用者や家族だけでなく、支援する側の心の健康にも配慮しながらグリーフケアを実践しましょう。
介護現場で意識したいポイント
- 相手の価値観やペースを尊重する
- 無理に励ましたり助言したりしない
- 一人で抱え込まず多職種と情報共有する
- 家族への継続的な声かけを行う
- 介護職自身のメンタルケアも大切にする

グリーフケアを学ぶ方法と資格
グリーフケアは、医療や介護の専門職だけでなく、家族や地域で支援を行う人にとっても役立つ知識です。専門資格を取得する方法だけでなく、研修や講座、書籍などを通じて基礎から学ぶこともできます。ここでは、グリーフケアに関する資格の種類や取得するメリット、学習方法、資格がなくても実践できる支援について解説します。
グリーフケア資格の種類
グリーフケアには必須の国家資格はなく、民間団体を中心とした資格や認定制度が用意されています。資格ごとに対象者や学習内容は異なりますが、グリーフの基礎知識や傾聴、支援方法などを学べる点は共通しています。また、医療・介護・福祉の専門職向けだけでなく、一般の方でも受講できる講座も多く用意されています。資格取得そのものが必須ではありませんが、知識を整理し、支援を考えるための学習機会として活用されています。資格を選ぶ際は、学習内容や認定団体、受講形式などを確認し、自分の目的に合ったものを選びましょう。
代表的なグリーフケア関連資格・学習制度
種類 | 特徴 |
|---|---|
民間資格 | グリーフケアの基礎知識や支援方法を学べる |
認定講座 | 初心者でも受講しやすく実践的な内容が多い |
医療・介護向け研修 | 専門職向けに臨床現場での対応を学べる |
大学・専門機関の講座 | より専門的・学術的に学べる |
資格取得のメリット
グリーフケアの資格を取得すると、悲しみを抱える人への関わり方を体系的に学べます。感覚や経験だけではなく、心理学やコミュニケーションの知識に基づいた支援方法を学べるため、根拠を持って関わり方を考えやすくなります。また、医療・介護・福祉分野では、利用者や家族への関わり方を見直すきっかけにもなります。転職やキャリアアップで知識をアピールできる場合もありますが、資格を取得しただけで適切な支援ができるわけではありません。学んだ知識を現場で実践し、経験を積み重ねることが前提となります。
資格取得の主なメリット
- グリーフケアを体系的に学べる
- 傾聴や支援方法の知識が身につく
- 医療・介護現場での対応を考える手がかりになる
- 自己学習やキャリアアップのきっかけになる
- 関わり方の根拠を整理しやすくなる
研修・講座・書籍で学ぶ方法
資格を取得しなくても、グリーフケアについて学ぶ方法は数多くあります。医療機関や学会、自治体、民間団体が開催する研修やオンライン講座では、基礎知識から実践的な支援方法まで幅広く学べます。また、初心者向けの入門書や専門職向けの実践書など、目的に応じた書籍も充実しています。近年は動画教材やオンラインセミナーも増えており、自宅で学習しやすい環境が整ってきています。まずは信頼できる情報源で基礎を学び、その後に研修や実践を通じて理解を深めていくという進め方が一般的です。
グリーフケアの学習方法
学習方法 | 特徴 |
|---|---|
研修会 | 実践的な内容を学びやすい |
オンライン講座 | 自宅で受講でき、時間を調整しやすい |
書籍 | 基礎知識から専門知識まで幅広く学べる |
学会・セミナー | 最新の知見や事例を学べる |
資格がなくても実践できる支援
グリーフケアは、資格がなくても実践できる支援です。家族や友人、職場の同僚など、身近な人が相手の気持ちに寄り添い、丁寧に話を聞くことも、グリーフケアの1つです。基本となるのは、悲しみを否定せず、無理に励ましたり解決しようとしたりしないことです。一方で、強い精神的苦痛が長期間続いている場合や、日常生活に支障が出ている場合には、自分だけで対応しようとせず、医療機関や心理職など専門家へつなぐ判断も求められます。資格の有無に関係なく、「寄り添うこと」と「必要な支援につなげること」がグリーフケアの基本といえるでしょう。
資格がなくてもできるグリーフケア
- 相手の話を最後まで丁寧に聞く
- 気持ちを否定せず受け止める
- 無理に励ましたり助言したりしない
- 必要なときに相談窓口や専門機関を紹介する
- 相手のペースを尊重しながら継続的に見守る

グリーフケアを行う際の注意点
グリーフケアでは、相手に寄り添うことが基本ですが、対応を誤るとかえって相手を傷つけてしまうことがあります。また、支援を続ける中で支援者自身が精神的な負担を抱えることも少なくありません。ここでは、グリーフケアを行う際に知っておきたい注意点や、支援者自身のセルフケア、専門機関へつなぐ判断の目安について解説します。
悲しみの表れ方には個人差がある
グリーフの感じ方や表れ方には個人差があり、「普通はこうする」という基準はありません。涙を流して悲しみを表現する人もいれば、感情を表に出さず普段どおりに過ごす人もいます。また、悲しみだけでなく、怒りや不安、罪悪感、無力感として表れることも少なくありません。時間の経過に伴う変化にも個人差があり、数か月で落ち着く人もいれば、数年にわたって悲しみと向き合う人もいます。そのため、「もう立ち直る頃だ」と決めつけず、一人ひとりの価値観や生活背景を理解しながら寄り添います。支援者は比較や評価をせず、その人らしい悲しみの表現を尊重しましょう。
グリーフに個人差が生まれる要因
要因 | 具体例 |
性格 | 感情を表現しやすい人・しにくい人 |
喪失体験 | 死別、病気、離婚、失業など |
家族・生活環境 | 支えてくれる人の有無、生活状況 |
価値観・文化 | 宗教観や人生観、文化的背景 |
支援者自身のセルフケア
グリーフケアでは、相手の悲しみに寄り添い続けることで、支援者自身も精神的な負担を感じることがあります。特に医療・介護・福祉の現場では、何度も喪失体験に接するため、疲労感や無力感、気持ちの落ち込みが生じることも少なくありません。そのため、自分一人で抱え込まず、同僚や上司、多職種と情報共有を行います。また、十分な休息や趣味の時間を確保し、自分の心身を整えることもセルフケアの1つです。支援者自身が心身の状態を保つことは、支援を継続していくための前提となります。
支援者が意識したいセルフケア
- 一人で悩みを抱え込まない
- 上司や同僚と相談・情報共有する
- 十分な睡眠や休息を取る
- 趣味やリフレッシュの時間を確保する
- 必要に応じて専門家へ相談する

まとめ
グリーフケアとは、大切な人との死別や、病気、失業、生活の変化など、何らかの喪失体験によって生じるグリーフ(悲嘆)を抱えた人に寄り添い、その人らしい生活を支える取り組みです。
悲しみは誰にでも起こり得る自然な反応であり、無理に立ち直らせようとしたり、感情を否定したりしてはいけません。グリーフケアの基本は、相手の価値観やペースを尊重し、安心して感情を表現できる環境を整えることです。医療・福祉の現場では、多職種連携を通じた継続的な支援が重視されています。
また、日常生活に大きな支障が長期間続く場合は専門機関への相談が重要です。資格の有無にかかわらず、身近な人が話に耳を傾ける「傾聴」も大切な支援の1つです。相手の悲しみを否定せず、「そばにいる」という姿勢で寄り添うことが、その人にとっての大きな支えとなります。
よくある質問
Q.グリーフケアとは簡単にいうと何ですか?
グリーフケアとは、大切な人や健康、仕事などを失った人の悲しみに寄り添い、その人らしい生活を送れるよう支援することです。厚生労働省「がん対策推進基本計画」では、グリーフケアを「大切な人を失い、残された家族等の身近な者が悲しみを癒やす過程を支える取組」と説明しています。死別だけでなく、病気や離婚、失業などさまざまな喪失体験が対象になります。
Q.グリーフケアはいつから始めますか?
グリーフケアを始める時期に決まりはありません。「遺族ケアガイドライン 2022年版」では、死別前に喪失を予期して出現する悲嘆を予期悲嘆(anticipatory grief)と呼び、通常は家族の悲嘆を表す言葉として使用されていると説明されています。そのため終末期医療では、死別を迎える前から家族への支援を行うこともあります。喪失直後だけでなく、数か月から数年後に支援が必要になるケースもあります。
出典:遺族ケアガイドライン―がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン 2022年版|日本サイコオンコロジー学会・日本がんサポーティブケア学会
Q.グリーフケアの資格は必要ですか?
グリーフケアを行うために必須の国家資格はありません。家族や友人として寄り添うことも、グリーフケアの1つです。一方で、医療・介護・福祉の現場で専門的な知識を深めたい場合は、民間資格や研修、講座を受講することで、支援の考え方や方法を学ぶことができます。
Q.看護師はどのようなグリーフケアを行いますか?
看護師は、患者本人や家族の不安や悲しみに寄り添い、安心して気持ちを話せる環境づくりを行います。また、終末期医療では死別前後の家族支援や、医師・医療ソーシャルワーカー・臨床心理士など多職種との連携も役割の1つです。厚生労働省「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会の開催指針」では、研修内容として「家族の悲嘆や介護等への理解、看取りのケア、遺族に対するグリーフケア」が挙げられており、医師・歯科医師と協働する医療従事者も参加することが望ましいとされています。
Q.グリーフとグリーフケアの違いは何ですか?
グリーフとは、喪失によって生じる悲しみや怒り、不安などの心身の反応を指します。一方、グリーフケアは、そのグリーフを抱える人に寄り添い、安心して生活を続けられるよう支援することです。つまり、グリーフは「悲嘆そのもの」、グリーフケアは「その悲嘆を支えるための支援」という違いがあります。
[メディルン]編集部
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