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- 栄養ケア・マネジメントの基本的な流れや役割を整理したい方スクリーニングからモニタリングまでの5つの手順や、令和6年度の様式変更、多職種連携における管理栄養士の役割を網羅的に確認できます。
- 低栄養リスクの判定基準や栄養ケア計画書の書き方に悩んでいる方BMIや体重減少率などを用いた具体的なリスク分類(高・中・低)の基準やモニタリング頻度、計画書における目標設定のポイントを把握できます。
- 栄養マネジメント強化加算の要件や制度改定の動向を把握したい方加算の算定要件(週3回のミールラウンドやLIFE活用など)をはじめ、減算リスクへの対策や令和8年度介護報酬改定の影響まで詳しく解説しています。

栄養ケア・マネジメントとは
栄養ケア・マネジメントとは、利用者一人ひとりの栄養状態や身体状況を把握し、適切な栄養ケアを継続的に行う取り組みです。ここでは意味と目的、介護施設で重要な理由、管理栄養士の役割を整理します。
栄養ケア・マネジメントの意味と目的
栄養ケア・マネジメントとは、利用者の栄養状態を把握したうえで、必要なケアを計画・実施・評価する一連の取り組みです。体重や食事摂取量、身体状況、疾患、生活状況などを確認し、低栄養のリスクを評価したうえで、一人ひとりに適した栄養ケア計画を作成します。
主に以下のような取り組みを行います。
- 利用者の体重や食事摂取量、身体状況などを把握する
- 低栄養のリスクなどを評価する
- 一人ひとりの状態に応じた栄養ケア計画を作成する
- 計画に沿って栄養ケアを実施する
- 定期的に状態を確認し、必要に応じて計画を見直す
目的は、必要な栄養を摂取してもらうことだけではありません。低栄養の予防・改善や身体機能の維持、疾病の重症化予防などを通じて、利用者ができる限り自立した生活を続けられるよう支援することも大切な目的です。
介護施設で栄養ケア・マネジメントが重要な理由
介護施設の利用者は、加齢や疾患、嚥下機能の低下、食欲不振などによって十分な栄養を摂取できなくなることがあります。低栄養の状態が続くと、筋力や免疫機能が低下する可能性があります。
高齢者の低栄養は、公的統計にも表れています。厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、65歳以上で低栄養傾向(BMIが20kg/m²以下)の者の割合は、男性12.2%、女性22.4%です。男性は年齢が上がるほど割合は高くなり、85歳以上では男性22.8%、女性24.8%に達します。
年齢階級 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
65〜69歳 | 7.8% | 23.5% |
70〜74歳 | 8.7% | 22.0% |
75〜79歳 | 11.2% | 22.0% |
80〜84歳 | 18.2% | 20.5% |
85歳以上 | 22.8% | 24.8% |
同調査では、低栄養傾向の者の割合について「この10年間でみると男女とも有意な増減はみられない」とされています。継続的に一定の割合で存在する課題であることが読み取れます。
介護施設で栄養ケア・マネジメントが重視される理由は、こうした低栄養の予防と早期発見にあります。低栄養は、体重減少や筋力低下だけでなく、褥瘡の発生や感染症への抵抗力の低下、転倒リスクの上昇など、生活全体に影響します。栄養状態の把握は、食事に関する支援にとどまらず、身体機能や生活の質を支える取り組みでもあります。
利用者の状態は日々変化するため、一度栄養ケアを行えば終わりではありません。定期的に栄養状態や食事摂取状況を確認し、その時点の状態に応じて支援内容を見直すことが求められます。
栄養ケア・マネジメントにおける管理栄養士の役割
管理栄養士は、利用者の栄養状態を評価し、適切な栄養ケアを計画・実施する中心的な役割を担います。主な役割は、以下のとおりです。
- 利用者の栄養状態や食事摂取状況を把握する
- 栄養上の課題や低栄養のリスクなどを評価する
- 利用者ごとの栄養ケア計画を作成する
- 食事摂取量や体重などの変化を継続的に確認する
- 必要に応じて食事内容や栄養ケア計画を見直す
- 医師や看護師、介護職などの多職種と情報を共有する
管理栄養士だけで栄養ケアを完結させるのではなく、多職種と連携しながら利用者の状態に応じた支援方法を検討することが重要です。

栄養ケア・マネジメントの基本的な流れ
栄養ケア・マネジメントは、栄養状態の把握から課題の分析、計画の作成、実施、評価・見直しへと進みます。ここでは5つの手順に分けて解説します。
手順①栄養スクリーニングによる低栄養リスクの把握
最初に、栄養スクリーニングで低栄養リスクを把握します。厚生労働省の通知では、入所(院)後遅くとも1週間以内にスクリーニングを行い、その後は3か月ごとの実施が定められています。
主に確認する項目は、以下のとおりです。
- 体重やBMI
- 体重の減少状況
- 食事摂取量
- 食欲の状態
- 疾患や身体状況
- 食事や水分摂取に関する問題
高齢者は加齢や疾患の影響で栄養状態が変化しやすいため、定期的な確認が欠かせません。スクリーニングでリスクが確認された場合、次の栄養アセスメントで詳しく状態を分析する流れです。
なお、スクリーニングは低栄養リスクのある利用者を選び出すための工程であり、入所者全員が対象です。リスクが低いと判定された利用者についても、状態が変わる可能性があるため、3か月ごとの再スクリーニングと1か月ごとの体重測定を通じて変化を捉えます。入所直後は環境の変化によって食事量が落ちることもあるため、1週間以内の初回スクリーニングが定められている点は実務上の要点といえます。
手順②栄養アセスメントによる課題の分析
栄養アセスメントでは、スクリーニングの結果を踏まえ、栄養状態や栄養上の課題をより詳しく分析します。
- 身長・体重・BMIなどの身体計測
- 体重の変化
- 食事や水分の摂取状況
- 咀嚼・嚥下機能
- 疾患や服薬の状況
- 日常生活動作(ADL)
- 食事に関する本人の希望や嗜好
複数の情報を組み合わせ、「なぜ十分に食べられていないのか」「どのような栄養上の課題があるのか」を明らかにします。
手順③栄養ケア計画の作成
明らかになった課題をもとに、利用者一人ひとりに合わせた栄養ケア計画を作成します。なお、様式は令和6年度(2024年度)から刷新されており、現在は別紙様式3-1-1「栄養・摂食嚥下スクリーニング・アセスメント・モニタリング」と、別紙様式3-1-2「栄養ケア・経口移行・経口維持計画書」に整理されています。従来の3様式が一本化された形です。
計画に盛り込む主な内容は、以下のとおりです。
- 利用者の栄養状態や栄養上の課題
- 栄養ケアの目標
- 食事や栄養に関する具体的な支援内容
- 多職種と連携して取り組む内容
- モニタリングの方法や時期
目標を設定する際は、身体状況や生活状況を踏まえ、実現可能な内容にすることが大切です。古い様式を使い続けていないか、施設内の書式を確認しておきましょう。
手順④栄養ケアの実施と多職種による連携
計画に基づき、必要な栄養ケアを実施します。食事量や栄養量だけでなく、食事形態や食事環境も調整します。
職種 | 主な役割 |
|---|---|
管理栄養士 | 栄養状態の評価や栄養ケアの調整 |
医師 | 疾患や治療内容を踏まえた医学的な判断 |
看護師 | 健康状態や服薬、日々の体調変化の把握 |
介護職 | 食事摂取量や食事中の様子、生活状況の把握 |
言語聴覚士など | 咀嚼・嚥下機能に応じた支援 |
各職種が専門的な視点から情報を共有することで、利用者の状態を総合的に把握できます。利用者の栄養状態には、疾患や服薬、身体機能など多くの要因が複合的に影響するためです。
たとえば食欲不振の利用者に対し、介護職が食事中の様子を、看護師が体調や服薬状況を、言語聴覚士が嚥下機能を共有することで、原因が食欲・嚥下・体調のどこにあるかを特定できます。管理栄養士は共有された情報を分析し、食事内容の調整へ繋げます。このように日々の変化を多職種で共有し、柔軟に支援方法を調整することが重要です。
手順⑤モニタリングと計画の見直し
栄養ケアを実施した後はモニタリングを行い、目標の達成状況を確認する流れです。通知では、入所者全員の体重を1か月ごとに測定することが定められています。
モニタリングでは、主に以下の項目を確認します。
- 体重やBMIの変化
- 食事摂取量の変化
- 食欲や食事中の様子
- 咀嚼・嚥下状態
- 身体状況やADLの変化
- 設定した目標の達成状況
栄養状態の改善がみられない場合や新たな課題が生じた場合は、原因を分析して計画を見直します。

栄養ケア・マネジメントにおけるリスク判定の基準
リスク判定では、BMIや体重の変化、食事摂取量など複数の情報を確認し、総合的に評価します。ここでは公的な様式例に示された基準を整理します。
低栄養リスクを低・中・高に分類する基準
厚生労働省が示す様式例では、低栄養状態のリスクを次の基準で判定します。
項目 | 低リスク | 中リスク | 高リスク |
|---|---|---|---|
BMI(kg/m²) | 18.5〜29.9 | — | 18.5未満 |
体重減少率 | 変化なし(減少3%未満) | 1か月3〜5%未満/3か月3〜7.5%未満/6か月3〜10%未満 | 1か月5%以上/3か月7.5%以上/6か月10%以上 |
血清アルブミン値 | 3.6g/dL以上 | 3.0〜3.5g/dL | 3.0g/dL未満 |
食事摂取量 | 76〜100% | — | 75%以下 |
栄養補給法 | — | 経腸栄養法・静脈栄養法の実施 | — |
褥瘡 | — | — | 褥瘡あり |
体重減少率は、1か月・3か月・6か月のいずれの期間で見るかによって基準が異なる点に注意が必要です。特定の項目だけを見るのではなく、複数の情報を組み合わせて評価することが大切です。
たとえばBMIが18.5以上で一見低リスクでも、直近1か月で5%以上の体重減少があれば高リスクと判定されます。逆に、もともとBMIが低くても体重が安定していれば評価は変わります。このように、一時点の数値と経時的な変化の両方を見ることが本判定のポイントです。なお、血清アルブミン値を測定していない施設では、その他の項目で総合的に判断します。
リスク区分別のモニタリング頻度
モニタリングの頻度は、リスク区分によって定められています。
対象 | モニタリングの頻度 |
|---|---|
低栄養状態の高リスク者 | おおむね2週間ごと等、適宜 |
経口移行加算・経口維持加算の算定者 | おおむね2週間ごと等、適宜 |
低栄養状態の低リスク者 | おおむね3か月ごと |
入所者全員 | 体重は1か月ごとに測定 |
「2週間ごと」は全利用者に一律適用するものではなく、高リスク者や経口移行・維持を検討中の利用者を対象としています。リスクレベルに応じて間隔を設定し、計画書に明記したうえで継続的に状態を把握しましょう。

栄養ケア計画の作り方と見直しの判断
栄養ケア計画は、課題を整理し、目標や具体的な支援内容を明確にするために作成します。ここでは目標設定の方法と記入例、見直しの判断基準を解説します。
長期目標・短期目標を設定する方法
長期目標には中長期的に目指す状態、短期目標にはその達成に向けて一定期間で取り組む具体策を落とし込みます。
目標 | 設定例 |
|---|---|
長期目標 | 適切な栄養状態を維持し、現在の身体機能を保つ |
短期目標 | 食事摂取量を増やし、必要なエネルギー量を確保する |
短期目標 | 体重減少を防ぎ、現在の体重を維持する |
短期目標 | 本人が食べやすい食事形態で安定して食事を摂取する |
「栄養状態を改善する」などの抽象的な表現では、達成状況を客観的に評価できません。食事摂取量や体重といった、具体的な数値・指標の活用が効果的です。
栄養ケア計画の記入例と書き方のポイント
記入する際は、栄養上の課題と目標、具体的な支援内容に一貫性を持たせることが重要です。食事摂取量が低下している利用者を例にすると、以下のように整理できます。
項目 | 記入例 |
|---|---|
栄養上の課題 | 食欲低下により食事摂取量が減少し、体重も減少傾向にある |
長期目標 | 必要な栄養を摂取し、安定した栄養状態を維持する |
短期目標 | 食事摂取量を増やし、体重減少を防ぐ |
支援内容 | 嗜好を考慮して食事内容を調整し、摂取状況を確認する |
モニタリング | 食事摂取量や体重、食欲の変化を定期的に確認する |
定型的な内容をそのまま当てはめるのではなく、アセスメント結果や本人の希望を反映して個別性のある計画にすることがポイントです。
栄養ケア計画を見直す時期と判断基準
計画は、モニタリングや再評価の結果を踏まえて見直します。特に、以下のような変化がみられた場合は見直しを検討します。
- 体重が増加・減少した
- 食事摂取量が大きく変化した
- 食欲が低下した
- 咀嚼・嚥下機能に変化がみられた
- 疾患や身体状況に変化があった
- 食事形態を変更する必要が生じた
- 設定した目標を達成した、または達成が難しいと判断された
定期的な見直し時期を待つのではなく、問題が生じた場合は速やかに修正することが大切です。
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栄養ケア・マネジメントに関する加算と減算
介護保険施設では、入所者の状態に応じた栄養管理が基本サービスとして求められています。ここでは関連する加算と減算を整理します。
栄養管理に係る減算と基本サービスとしての位置づけ
栄養ケア・マネジメントは、低栄養状態のリスクにかかわらず、入所者全員に対し、各入所者の状態に応じて実施することとされています。必要な栄養管理を実施していない場合は、「栄養管理に係る減算」として1日につき14単位が所定単位数から減算されます。
この減算は令和3年度(2021年度)の介護報酬改定で新設され、3年間の経過措置が設けられていました。経過措置は令和6年(2024年)3月31日をもって終了しており、令和6年4月からは完全に適用されています。
減算を防ぐためには、以下の点を確認しましょう。
- 必要な栄養士または管理栄養士を配置しているか
- 入所者の栄養状態を適切に把握しているか
- 入所者ごとの状態に応じた栄養管理を計画的に実施しているか
- 栄養ケアに必要な記録や評価を適切に行っているか
なお、令和3年度改定では、それまでの栄養マネジメント加算(14単位/日)が廃止され、基本サービスに包括されました。減算の14単位と、旧加算の14単位は別のものである点に注意してください。
栄養マネジメント強化加算の算定要件
栄養マネジメント強化加算は、入所者ごとの継続的な栄養管理を強化して実施した場合に算定できる加算です。加算単位は1日につき11単位で、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院などが対象となります。
主な算定要件は、以下のとおりです。
要件 | 内容 |
|---|---|
管理栄養士の配置 | 常勤換算で入所者数を50で除して得た数以上(常勤管理栄養士を1人以上配置し給食管理を行っている場合は70で除して得た数以上) |
多職種による計画作成 | 低栄養状態にある、またはそのおそれのある入所者について多職種が共同して栄養ケア計画を作成する |
食事の観察 | 食事の観察(ミールラウンド)を週3回以上行う |
情報の提出と活用 | 入所者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出(LIFE)し、継続的な栄養管理の実施に活用する |
食事の観察は「定期的に」ではなく「週3回以上」と回数が定められています。この点は算定要件の中核であり、実施記録の有無まで含めて確認が必要です。
栄養に関連するその他の加算
栄養マネジメント強化加算以外にも、栄養に関連する加算が複数あります。
加算 | 単位数 |
|---|---|
経口移行加算 | 28単位/日 |
経口維持加算(Ⅰ) | 400単位/月 |
経口維持加算(Ⅱ) | 100単位/月 |
療養食加算 | 6単位/回 |
退所時栄養情報連携加算 | 70単位/回 |
退所時栄養情報連携加算は令和6年度改定で新設された加算で、厚生労働大臣が定める特別食を必要とする入所者、または低栄養状態にあると医師が判断した入所者が対象です。このほか、再入所時栄養連携加算も設けられています。
算定日数の上限や回数制限などの細目は加算ごとに定められています。実際に算定する際は、告示および留意事項通知の該当条文で要件を確認してください。
LIFEへの情報提出と活用
栄養マネジメント強化加算では、入所者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出し、継続的な栄養管理の実施に活用することが要件に含まれています。この仕組みがLIFE(科学的介護情報システム)です。
提出して終わりではなく、フィードバックされた情報を施設内の栄養管理に生かすことまでが求められます。実務では、以下の点を確認しておきましょう。
- 提出する項目と提出時期を把握しているか
- 入力する情報の元となる記録が整っているか
- フィードバック票を多職種で共有しているか
- フィードバックの内容を計画の見直しに反映しているか
- 提出漏れや期限超過が生じていないか
情報を提出していても、フィードバックの活用記録がなければ、要件の充足を証明できません。
加算を算定する際に確認しておきたい注意点
算定要件を満たしていても、記録や情報共有が不十分な場合は、適切に算定できない可能性があります。算定前には、以下の点を確認しましょう。
- 管理栄養士の配置基準を満たしているか
- 多職種で栄養ケア計画を作成・共有しているか
- 週3回以上の食事観察を実施し、記録が残っているか
- 入所者の状態を継続的にモニタリングしているか
- LIFEへの情報提出とフィードバックの活用を適切に行っているか
- 算定に必要な届出や記録に漏れがないか
特に食事観察は、実施したこと自体だけでなく、観察を踏まえて食事内容や形態をどう調整したかまで記録しておくことが望ましいといえます。
令和8年度介護報酬改定と栄養関連加算の扱い
制度改定の状況も押さえておく必要があります。令和8年度(2026年度)介護報酬改定の改定率は+2.03%です。
項目 | 内容 |
|---|---|
改定率 | +2.03% |
審議報告 | 令和7年(2025年)12月23日、社会保障審議会介護給付費分科会 |
栄養関連加算への影響 | 栄養マネジメント強化加算などの見直しは含まれない |
同改定は処遇改善と食費の基準費用額の見直しに絞られたものであり、栄養関連加算の要件等は令和6年度改定の内容が踏襲されます。
ただし、食費の基準費用額は改定対象となるため、給食部門の運営に関する確認は不可欠です。施行時期は資料によって記載が分かれているため、最新の告示で確認してください。

栄養ケア・マネジメントを実施するときの注意点
書類を整えるだけでなく、利用者の栄養状態の維持・改善につながる支援を実践することが重要です。
書類作成そのものを目的にしない
栄養ケア計画やアセスメントなど多様な記録を作成しますが、書類の作成・保存自体は目的ではありません。重要なのは、記録した情報を実際のケアへ還元することです。
- アセスメント結果と栄養上の課題が結びついているか
- 課題に対応した具体的な目標が設定されているか
- 目標に沿った栄養ケアが実施されているか
- モニタリングの結果が次の支援に反映されているか
- 多職種が必要な情報を確認・共有できる内容になっているか
計画と実際のケアが一致しているかを継続的に確認しましょう。
実地指導などで問われるのも、書類の有無ではなく記録内容と実際の支援の連動性です。たとえば「食事形態を調整する」と計画にあれば、調整の記録と摂取状況の変化まで確認できる必要があります。記録は支援の根拠であり、次の判断材料です。作成に追われて利用者に向き合う時間が減っては本末転倒なため、必要な情報を過不足なく残す運用ルールを整えましょう。
一人ひとりの状態に合わせて計画を立てる
同じ低栄養リスクを抱えている利用者でも、その原因や必要な支援は異なります。食欲低下が原因の場合もあれば、疾患や咀嚼・嚥下機能の低下、食事の好みなど、複数の要因が影響している場合もあります。
- 栄養状態や低栄養リスク
- 疾患や身体状況
- 食事摂取量や食欲
- 咀嚼・嚥下機能
- 本人の嗜好や食習慣
- 日常生活動作(ADL)
- 本人や家族の希望
これらを総合的に評価し、実現可能な目標と支援内容を設定します。画一的な栄養ケアではなく、生活状況まで含めた個別の評価が求められます。
制度改定と最新の通知を確認する
介護報酬や算定要件、各種様式は制度改定ごとに見直されるため、古い情報での対応は運用トラブルの原因になります。
- 介護報酬改定の内容
- 加算・減算の算定要件
- 厚生労働省が示す告示・通知
- 介護報酬改定に関するQ&A
- LIFEに関する通知や提出方法
- 栄養ケアに関する様式や記載方法
特に様式の刷新は見落としやすいポイントです。令和6年度の様式一本化を踏まえ、施設内の書式が最新版に更新されているか定期的にチェックしておきたいところです。

栄養ケア・マネジメントで管理栄養士が施設に貢献できること
管理栄養士は、栄養の専門知識を生かして利用者の健康状態や生活の質を支える役割を担います。
低栄養の早期発見と食事の楽しみの両立
日頃から栄養状態を確認することで、体重減少や食事摂取量の低下といった変化を早期に発見し、必要な栄養ケアにつなげられます。同時に、利用者が食事を楽しめるよう支援することも重要な役割です。
- 本人の嗜好を考慮して食事内容を工夫する
- 咀嚼・嚥下機能に合わせて食事形態を調整する
- 食事量や提供方法を見直す
- 食事を摂りやすい時間帯や環境を検討する
- 食事摂取量を確認し、必要に応じて栄養補給方法を検討する
食事は栄養摂取の手段であると同時に、日々の大きな楽しみです。本人の希望や生活習慣を尊重しつつ栄養状態の維持・改善を図ることが、結果として生活の質の向上につながります。
実務経験が管理栄養士のキャリアに生きる理由
栄養ケア・マネジメントの実務では、評価から計画作成、実施、モニタリング、見直しまで一連の業務を経験できます。培いやすい能力は、以下のとおりです。
- 栄養状態を評価するアセスメント能力
- 利用者に合わせた栄養ケアを考える力
- 栄養ケア計画を作成・評価する能力
- 多職種と円滑に連携するコミュニケーション能力
- 利用者や家族に分かりやすく説明する力
- 状態の変化に応じて支援内容を調整する力
こうした経験は、介護施設をはじめ、医療機関や在宅分野で栄養管理に携わる際にも生かせます。特に、加算の算定要件を理解したうえで運用を組み立てた経験は、制度と実務をつなぐ視点として評価されやすい部分です。栄養ケア・マネジメントの実務経験を積むことは、管理栄養士として専門性を高め、活躍できる分野を広げることにつながります。

まとめ
栄養ケア・マネジメントは、利用者の栄養状態を把握し、栄養ケアを計画・実施・評価する一連の取り組みです。介護保険施設では基本サービスとして位置づけられており、低栄養状態のリスクにかかわらず入所者全員に対して実施することとされています。
流れは、スクリーニング、アセスメント、計画作成、実施、モニタリングと見直しの5段階です。入所後遅くとも1週間以内にスクリーニングを行い、その後は3か月ごとに再スクリーニング、体重は全員1か月ごとに測定します。モニタリングは高リスク者がおおむね2週間ごと、低リスク者がおおむね3か月ごとです。
栄養マネジメント強化加算(1日11単位)の主な要件は、管理栄養士の配置、多職種連携での計画作成、週3回以上の食事観察、LIFEへの情報提出です。未実施の場合は1日14単位の減算対象となり(経過措置は令和6年3月で終了)、適切な運用が不可欠です。改定の有無にかかわらず様式や通知が更新される場合もあるため、常に最新の告示を確認しましょう。
よくある質問
Q.栄養ケア・マネジメントは介護施設で義務ですか?
介護老人福祉施設や介護老人保健施設、介護医療院などでは、入所者の栄養状態を維持・改善するため、状態に応じた栄養管理を計画的に行うことが求められています。栄養ケア・マネジメントは基本サービスとして位置づけられており、実施していない場合は1日14単位の減算対象となります。
ただし、すべての介護サービスに同一の基準が適用されるわけではありません。施設やサービスの種類によって基準や加算の要件が異なるため、該当する運営基準を確認することが重要です。
Q.栄養ケア計画はどのくらいの期間で見直しますか?
モニタリングの結果を踏まえて見直します。低栄養状態の低リスク者はおおむね3か月ごと、高リスク者はおおむね2週間ごとを目安にモニタリングを行い、その結果を計画に反映します。
体重や食事摂取量が大きく変化した場合、栄養状態が改善または悪化した場合、疾患や咀嚼・嚥下機能に変化があった場合などは、定期的な見直し時期を待たず、速やかに計画を修正することが大切です。
Q.低栄養高リスクの場合は2週間ごとのモニタリングが必要ですか?
通知では、低栄養状態のリスクが高い利用者について、おおむね2週間ごと等、適宜モニタリングを行うこととされています。経管栄養法から経口栄養法への変更など、栄養補給方法の変更を検討している利用者も同様です。
一方、低リスク者はおおむね3か月ごとが目安です。「2週間ごと」をすべての利用者に一律で適用するものではなく、リスク区分に応じて間隔を設定し、計画に記載して運用します。
Q.栄養ケア・マネジメントは管理栄養士以外でも担当できますか?
栄養ケア・マネジメントは管理栄養士だけで完結するものではなく、医師や歯科医師、看護職員、介護支援専門員などの多職種が連携して進めます。栄養マネジメント強化加算でも、多職種が共同して栄養ケア計画を作成することが要件とされています。
一方、栄養状態の評価、栄養上の課題の整理、食事や栄養補給方法の検討、モニタリングと評価といった業務では、管理栄養士が専門的な立場から中心的な役割を担います。各職種がそれぞれの専門性を生かして支援することで、利用者の状態に応じた栄養ケアにつながります。
[メディルン]編集部
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