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BLSとは一次救命処置を意味する救命技術
BLSは、心停止や呼吸停止など生命の危機にある人に対し、その場に居合わせた人が行う処置です。ここでは、BLSの意味と目的、必要になる場面、日本国内で心停止がどのくらい起きているのかを整理します。
BLS(Basic Life Support)の意味と目的
BLS(Basic Life Support)とは、心停止や呼吸停止など生命の危機にある人に対して行う一次救命処置です。救急隊や医療従事者による専門的な治療につなげるまでの間、傷病者の状態に応じて対応します。
BLSで行う主な処置は、以下のとおりです。
- 傷病者の反応や呼吸の確認
- 119番通報とAEDの手配
- 胸骨圧迫(心臓マッサージ)
- 必要に応じた人工呼吸
- AED(自動体外式除細動器)の使用
BLSの目的は、心停止や呼吸停止が起きた人の血液循環や酸素供給を補い、脳をはじめとする臓器へのダメージを抑えることにあります。救急隊が到着するまでBLSを継続し、その後の専門的な治療へ引き継ぐ流れです。
BLSが必要になる代表的な場面
BLSが必要になる代表的な場面は、突然倒れて反応がなくなった人や、普段どおりの呼吸をしていない人を発見したときです。心臓の病気だけでなく、窒息や溺水によって呼吸や心臓の働きが停止する場合もあります。
BLSが必要になる可能性がある場面には、以下が挙げられます。
- 心筋梗塞や重篤な不整脈などによる突然の心停止
- 食べ物や異物などによる窒息
- 海やプールなどでの溺水
- 事故やけがによって意識や呼吸が失われた場合
- スポーツ中などに突然倒れ、反応や正常な呼吸が確認できない場合
こうした状況では、まず周囲の安全と傷病者の反応・呼吸を確認します。そのうえで、必要に応じて119番通報やAEDの手配、胸骨圧迫などを行いましょう。心停止は病院内だけで起こるものではありません。自宅や職場、駅、商業施設、スポーツ施設など、日常生活のさまざまな場所で発生する可能性があります。
判断に迷いやすいのが、死戦期呼吸と呼ばれる状態です。心停止直後には、しゃくり上げるような不規則な呼吸がみられることがあり、これを「呼吸がある」と誤って判断すると、胸骨圧迫の開始が遅れます。普段どおりの呼吸かどうか判断できない場合は、心停止として対応を開始することが基本です。呼吸の確認に時間をかけるより、疑わしい段階で通報と胸骨圧迫に進むほうが優先されます。
日本国内で心停止はどのくらい起きているのか
BLSの重要性は、公的統計からも確認できます。総務省消防庁「令和7年版(2025年版)救急・救助の現況」によると、2024年(令和6年)中に一般市民により心原性心肺機能停止が目撃された傷病者は27,769人でした。このうち一般市民によって心肺蘇生が実施されたのは16,728人で、一般市民が心停止を目撃した事例のうち、その場で心肺蘇生が行われたのは約6割にとどまります。
1か月後の経過は以下のとおりです。
区分 | 対象人数 | 1か月後生存者数(率) | 1か月後社会復帰者数(率) |
|---|---|---|---|
一般市民による心肺蘇生が実施された | 16,728人 | 2,561人(15.3%) | 1,745人(10.4%) |
一般市民による心肺蘇生が実施されなかった | 11,041人 | 873人(7.9%) | 405人(3.7%) |
うち一般市民によりAEDで除細動が実施された | 1,449人 | 777人(53.6%) | 643人(44.4%) |
一般市民によるAED使用例は1,449件にとどまります。この数値は居合わせた人の早期対応の重要性を示すものであり、個別の救命結果を保証するものではありません。
医療従事者だけでなく一般の人にもBLSが重要な理由
BLSは医師や看護師、救急救命士などの医療従事者だけが行うものではありません。心停止は場所や時間を問わず起こる可能性があり、その場に居合わせた一般の人が最初の救助者になるケースもあります。
一般の人がBLSを身につけておく意義は、以下のとおりです。
- 救急隊が到着する前から救命処置を始められる
- 胸骨圧迫により、重要臓器への血流を維持できる
- AEDが必要な場面で速やかに使用できる
- 家庭や職場、外出先での突然の心停止に対応できる
- 家族や友人、同僚など身近な人の緊急事態にも備えられる
救急車を要請しても到着までには一定の時間がかかるため、周囲の人が119番通報やAEDの手配、胸骨圧迫などを速やかに始める必要があります。BLSの基本的な知識や手順を身につけておけば、突然の事態でも行動を取りやすくなります。

BLSとCPR・AED・ACLSの違い
BLSと関連して使われる言葉に、CPR・AED・ACLSがあります。いずれも救命処置に関係しますが、意味や役割には違いがあります。ここでは3つの用語との関係を整理します。
BLSとCPR(心肺蘇生)の違い
CPR(Cardiopulmonary Resuscitation)とは、日本語で「心肺蘇生」と呼ばれ、心停止した人に対して胸骨圧迫や人工呼吸を行う処置です。BLSはCPRだけでなく、傷病者の状態確認や119番通報、AEDの使用までを含めた一連の一次救命処置を指します。
BLSとCPRの主な違いは、以下のとおりです。
項目 | BLS | CPR |
|---|---|---|
日本語 | 一次救命処置 | 心肺蘇生 |
主な目的 | 救命に必要な一連の対応を行う | 血液循環や酸素供給を維持する |
主な内容 | 状態確認、通報、CPR、AEDの使用など | 胸骨圧迫、人工呼吸など |
関係 | CPRを含む包括的な救命処置 | BLSを構成する処置の一つ |
つまり、CPRはBLSに含まれる処置の一つです。別物として区別せず「BLS(全体)の一部がCPR(手技)」と整理すると理解しやすくなります。
BLSにおけるAEDの役割
AED(Automated External Defibrillator)は、日本語で「自動体外式除細動器」と呼ばれる医療機器です。心停止した人の心電図を自動的に解析し、電気ショックが必要かどうかを判断します。電気ショックが必要な場合は、音声や画面の指示に従って操作します。
BLSにおけるAEDの主な役割は、以下のとおりです。
- 心電図を自動的に解析する
- 電気ショックが必要な状態かを判断する
- 必要な場合に電気ショックを行う
- 音声や画面表示によって使用者に操作方法を案内する
AEDは駅や学校、商業施設、スポーツ施設など、さまざまな場所に設置されています。医療従事者に限らず一般の人も使用できるため、BLSでは119番通報や胸骨圧迫とともに、AEDをできるだけ早く準備して使用することが重要です。
BLSとACLS(二次救命処置)の違い
ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)は、医療従事者が専門的な知識や技術を用いて行う高度な救命処置です。BLSが基本的な救命処置であるのに対し、ACLSは心電図の評価や薬剤投与、高度な気道管理などを含む二次救命処置を指します。
BLSとACLSの主な違いは、以下のとおりです。
項目 | BLS | ACLS |
|---|---|---|
意味 | 一次救命処置 | 高度な心血管系の救命処置 |
主な実施者 | 一般の人・医療従事者 | 主に医療従事者 |
主な内容 | 胸骨圧迫、人工呼吸、AEDの使用など | 心電図の評価、薬剤投与、高度な気道管理など |
位置づけ | 基本的な処置で生命を維持し、専門的治療につなげる | 専門的な処置によって状態の安定化を図る |
心停止が発生した際はまずBLSを行い、必要に応じて医療従事者による高度な救命処置へつなげます。BLSとACLSは独立したものではなく、救命プロセスにおいて連続する一連の処置にあたります。

BLSの基本的な手順とアルゴリズム
BLSでは、傷病者を発見してから救急隊や医療従事者に引き継ぐまで、適切な順序で処置を進めることが重要です。ここでは、安全確認からAEDの使用までの基本的な流れを解説します。なお、以下の手順と数値は、日本救急医療財団心肺蘇生法委員会が監修する「救急蘇生法の指針2020(市民用)」の記載に基づきます。
周囲の安全確認から反応・呼吸を確認するまでの流れ
倒れている人を発見した場合は、すぐに近づくのではなく、まず自分自身と傷病者の安全を確認します。車の往来や落下物など、周囲に危険がないことを確認してから傷病者に近づき、反応や呼吸を確認します。
基本的な流れは、以下のとおりです。
- 周囲に危険がないか確認する
- 傷病者に近づき、肩を軽くたたきながら声をかける
- 反応があるかを確認する
- 反応がなければ周囲に助けを求める
- 胸や腹部の動きを見て、普段どおりの呼吸があるか確認する
呼吸の確認に時間をかけすぎないことが重要です。普段どおりの呼吸がない場合や判断に迷う場合は心停止を疑い、119番通報とAEDの手配、胸骨圧迫へ速やかに移ります。
119番通報とAEDを手配する方法
傷病者に反応がない場合は、大声で周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を行います。協力者がいる場合は、「119番通報をお願いします」「AEDを持ってきてください」など、相手を指定して具体的に依頼すると役割分担が明確に伝わります。
119番通報とAED手配の基本手順は以下のとおりです。
- 周囲へ助けを求める
- 1人目の協力者に「119番通報」を依頼
- 2人目の協力者に「AEDの手配」を依頼
- 協力者が不在の場合は自ら119番通報
- 通信指令員の指示に従い処置を開始
携帯電話やスマートフォンから通報する場合は、可能であればスピーカー機能を使用すると、通信指令員から指示を受けながら胸骨圧迫などを行えます。AEDが到着するまで何もせずに待つのではなく、必要な場合は速やかに胸骨圧迫を開始しましょう。
胸骨圧迫(心臓マッサージ)の正しい方法
胸骨圧迫は、心停止した傷病者の脳や心臓などに血液を送り続けるために行う処置です。傷病者を仰向けに寝かせ、胸の中央にある胸骨の下半分に手の付け根を置き、その上にもう一方の手を重ねます。肘を伸ばし、傷病者の胸に対して垂直に力が加わるように圧迫します。
成人に対する胸骨圧迫の要点は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
圧迫する位置 | 胸骨の下半分 |
圧迫の深さ | 胸が約5cm沈み込む深さ |
圧迫のテンポ | 1分間に100〜120回 |
圧迫の解除 | 圧迫するたびに胸を十分に元の位置へ戻す |
中断 | 胸骨圧迫の中断をできるだけ少なくする |
指針では「傷病者の胸が約5cm沈み込むように強く、速く、絶え間なく圧迫します」とされ、テンポは1分間に100〜120回と示されています。救助者が複数いる場合は、疲労によって圧迫の質が低下しないよう、適宜交代しながら続けます。
なお、この指針については、2026年(令和8年)8月にJRC蘇生ガイドライン2025に準拠した改訂7版(救急蘇生法の指針2025 市民用)が発行されています。研修や手順書を整備する際は、最新版の記載を確認してください。
人工呼吸を組み合わせる場合の手順
人工呼吸の方法を習得しており、実施する意思がある場合は、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせて心肺蘇生を行います。指針では、胸骨圧迫と人工呼吸の回数を30対2とし、この組み合わせを救急隊員と交代するまで繰り返すとされています。
基本的な手順は、以下のとおりです。
- 胸骨圧迫を30回行う
- 頭部後屈あご先挙上法などで気道を確保する
- 傷病者の鼻をつまむ
- 胸の上がりが確認できる程度に約1秒かけて息を吹き込む
- 人工呼吸を2回行ったら、すぐに胸骨圧迫を再開する
人工呼吸ができない場合や、行うことにためらいがある場合は、胸骨圧迫を継続します。人工呼吸を行う場合も胸骨圧迫の中断時間をできるだけ短くし、速やかに圧迫を再開することが重要です。
AED到着後の操作と心肺蘇生を継続する流れ
AEDが到着したら、心肺蘇生をできるだけ中断せずに使用の準備を進めます。AEDは音声や画面によって操作方法を案内するため、その指示に従って使用します。複数の救助者がいる場合は、一人が胸骨圧迫を続け、もう一人がAEDを準備すると効率的です。
AED到着後の基本的な流れは、以下のとおりです。
- AEDの電源を入れる
- 傷病者の胸を露出させる
- AEDの図に従って電極パッドを胸に貼る
- 心電図の解析中は傷病者から離れる
- 電気ショックが必要な場合は、誰も触れていないことを確認してショックを行う
- 電気ショック後は、すぐに胸骨圧迫を再開する
- AEDの指示に従い、心肺蘇生を継続する
AEDから「ショックは不要」と指示された場合も、必要に応じてすぐに胸骨圧迫を再開します。AEDは2分おきに自動的に心電図解析を始めるため、その案内に従って処置を続けます。傷病者に普段どおりの呼吸や目的のある動きがみられる、または救急隊に引き継ぐまで、心肺蘇生を継続します。

JRC蘇生ガイドライン2025で押さえておきたいポイント
BLSの方法は、蘇生に関する研究をもとに定期的に検討され、ガイドラインとしてまとめられています。ここでは、改訂の理由と、JRC蘇生ガイドライン2025の位置づけを整理します。
蘇生ガイドラインが定期的に改訂される理由
蘇生ガイドラインが定期的に改訂されるのは、新たな研究成果や科学的根拠を評価し、推奨内容を維持するか変更するかを検討するためです。心肺蘇生やAEDの使用に関しては世界各国で研究が続けられており、その結果が反映されます。
ガイドライン改訂では、主に以下のような点が検討されます。
- 新たに公表された研究や科学的根拠
- 心肺蘇生の方法や質に関する研究成果
- AEDなどの救命処置に関する知見
- 救命率や神経学的転帰などに関するデータ
- 実際の救命現場での実施しやすさ
国際的にはILCOR(International Liaison Committee on Resuscitation:国際蘇生連絡委員会)が継続的に蘇生科学を評価しています。日本では、その国際的な科学的知見を踏まえ、日本蘇生協議会(JRC)が国内の状況に応じた蘇生ガイドラインを作成しています。
JRC蘇生ガイドライン2025の位置づけと構成
JRC蘇生ガイドライン2025は、日本蘇生協議会が5年ぶりに改訂し、2025年(令和7年)10月に公開しました(書籍版は2026年7月発行)。ILCORの科学的知見に基づき、推奨の強さと確実性をGRADEで評価している点が大きな特徴です。
一次救命処置に関しては、第1章で次の項目が扱われています。
- 市民用BLSアルゴリズム
- 医療用BLSアルゴリズム
- アルゴリズムの科学的背景
- 異物による気道閉塞の解除
- 溺水による心停止
改訂版では「緊急心血管治療」「わが国の疫学とシステムの現状」「救命処置に関する倫理と法」の各章が新設されました。手順だけでなくアルゴリズムの科学的背景も理解しておくと、現場での適切な判断に役立ちます。
最新ガイドラインを実践する際の注意点
ガイドラインが改訂されても、心停止を認識し、119番通報やAEDの手配を行い、胸骨圧迫を開始してAEDを使用するという基本的な流れが不要になるわけではありません。改訂点だけを追うのではなく、継続して推奨されている内容もあわせて確認することが大切です。
実践する際の注意点は、以下のとおりです。
注意点 | 内容 |
|---|---|
基本手順を優先する | 心停止を疑ったら、通報や胸骨圧迫、AEDの使用を速やかに行う |
変更点だけに注目しない | 継続して推奨されている処置も確認する |
対象者を確認する | 成人・小児・乳児などによって推奨される対応が異なる場合がある |
最新情報を確認する | JRCなど信頼できる機関が公表する最新のガイドラインを参照する |
実技でも学ぶ | 講習を通じて胸骨圧迫やAEDの操作を練習する |
BLSは緊急時に実際に行動できることが重要です。ガイドラインの変更点を覚えるだけでなく、基本的な処置を繰り返し確認しておきましょう。

BLS講習・研修で学べる内容と受講するメリット
BLSは手順を知識として覚えるだけでなく、実際に体を動かして練習することが大切です。ここでは、講習で学べる内容と、実技を経験する意義を整理します。
BLS講習・研修で身につけられる知識とスキル
BLS講習・研修では、心停止した人を発見してから救急隊や医療従事者へ引き継ぐまでに必要な知識と技術を学びます。講習によって内容は異なりますが、傷病者の状態確認や胸骨圧迫、人工呼吸、AEDの使用などを実践的に学べる点が共通しています。
主な学習内容は、以下のとおりです。
- 周囲の安全確認と傷病者の反応・呼吸の確認
- 119番通報や周囲への協力要請
- 適切な位置・深さ・テンポで行う胸骨圧迫
- 人工呼吸の方法
- AEDの基本的な操作方法
- 気道異物による窒息への対応
- 救急隊などへ引き継ぐまでの対応
講義で手順や注意点を理解したうえで実技を行うことで、BLSの一連の流れを把握しやすくなります。講習を選ぶ際には、対象者や学べる内容、修了要件を事前に確認しておくとよいでしょう。
消防機関が実施する救命講習の種類と時間
一般の人がBLSに相当する内容を学ぶ代表的な機会が、消防本部などが実施する救命講習です。総務省消防庁の「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(令和4年(2022年)3月31日消防救第105号による改正後)では、講習の種類と時間が次のように定められています。
講習の種類 | 講習時間 | 主な対象 |
|---|---|---|
普通救命講習I | 180分 | 主に成人を対象とした心肺蘇生法等 |
普通救命講習Ⅱ | 240分 | 一定の頻度で心停止者に応急の対応をすることが期待・想定される者 |
普通救命講習III | 180分 | 主に小児、乳児、新生児を対象とした心肺蘇生法等 |
上級救命講習 | 480分 | 成人・小児・乳児・新生児を対象としたより高度な応急手当 |
同要綱では、eラーニング等で座学60分を受講した場合、おおむね1か月以内に対面の実技を受講することで修了証を交付できるとされています。勤務先からBLSプロバイダーコースを指定されていない場合は、まず居住地や勤務先の地域の消防本部が実施する救命講習を確認するとよいでしょう。講習の実施日程や申込方法は消防本部ごとに異なります。
実技講習でBLSを学ぶメリット
BLSは緊急時に迅速な判断と行動が求められるため、知識を学ぶだけでなく実技を経験しておくことが大切です。実技講習では、訓練用の人形やAEDトレーナーなどを使用し、実際の場面を想定しながら手順を練習できます。
実技講習で得られることは、以下のとおりです。
- 胸骨圧迫の位置や姿勢を実際に確認できる
- 胸骨圧迫を繰り返す際の身体的な負担を体験できる
- AEDの操作手順を実際に練習できる
- 一連の流れを身につけやすい
- 指導者から改善点について助言を受けられる
体を動かして練習すれば、知識だけでは気づけない課題や、継続的な胸骨圧迫による身体的負荷を実感できます。胸骨圧迫は継続すると疲労で質が低下しやすいため、実技で負担を体験しておくことに意味があります。
医療・看護の現場でBLS研修が重要な理由
医療・看護の現場では、患者の容体が急変し、心停止などの緊急事態に遭遇する可能性があります。そのため、医師や看護師をはじめとする医療従事者には、必要な場面で迅速にBLSを開始できる知識と技術が求められます。
医療・看護の現場でBLS研修が行われる主な理由は、以下のとおりです。
理由 | 内容 |
|---|---|
急変時への対応 | 心停止などが発生した際に、速やかに初期対応を開始するため |
手技の確認 | 胸骨圧迫やAEDなどの基本的な手技を繰り返し確認するため |
チーム連携 | 応援要請や役割分担など、複数人で対応する流れを確認するため |
知識・技術の維持 | 定期的な研修によって手順や技術を再確認するため |
医療現場では、複数のスタッフが連携して救命処置を行うことがあります。BLS研修を通して、基本的な手技に加えて役割分担や連携方法も確認しておくと、患者の急変時にチームとして行動しやすくなります。
BLSの手技は一度習得しても、実施する機会がなければ手順やテンポの感覚が徐々に薄れていきます。JRC蘇生ガイドライン2025では、一次救命処置について市民用と医療用のアルゴリズムが分けて示されており、医療従事者には医療用アルゴリズムに沿った対応が想定されています。自施設の急変時対応マニュアルが最新のガイドラインに沿った内容になっているか、研修の機会にあわせて確認しておくことが大切です。院内での実施体制やAEDの設置場所、応援要請の手順は施設ごとに異なるため、手技の確認と同時に自施設のルールを把握しておきましょう。

BLSプロバイダーコースの内容と受講方法
BLSプロバイダーコースは、一次救命処置の知識と実技を体系的に学ぶ講習です。ここでは、代表的なコースの概要と、選ぶ際の確認事項を解説します。
BLSプロバイダーコースとは
BLSプロバイダーコースは、心停止など生命に関わる緊急事態を認識し、一次救命処置を行うための知識と技術を学ぶコースです。代表的なものとして、AHA(American Heart Association:アメリカ心臓協会)が提供するBLS Provider Courseがあります。
AHAのBLSプロバイダーコースでは、主に以下のような能力の習得を目指します。
- 心停止など生命に関わる緊急事態を速やかに認識する
- 質の高い心肺蘇生(CPR)を実施する
- 適切な人工呼吸・換気を行う
- AEDを早期かつ適切に使用する
- 複数の救助者で連携して救命処置を行う
コースには、インストラクターから直接指導を受ける対面形式のほか、オンライン学習と実技講習を組み合わせた形式もあります。受講する際は、勤務先などから指定されているコースや修了要件がないか、事前に確認することが大切です。
コースで学ぶ内容と受講対象者
BLSプロバイダーコースでは、成人だけでなく小児や乳児を含め、緊急事態に対応するための知識と技術を学びます。手順を覚えるだけでなく、実際の状況を想定して判断・行動する力を身につけることが目的です。
主な学習内容と対象者は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
|---|---|
心肺蘇生 | 成人・小児・乳児に対する質の高いCPR |
AED | AEDを早期に使用する重要性と操作方法 |
人工呼吸・換気 | 適切な呼吸・換気の方法 |
気道異物 | 窒息などの気道異物への対応 |
チーム対応 | 複数人で救命処置を行う際の連携 |
主な対象者 | 医師、看護師、救急隊員などの医療・救急関係者や医療系教育課程の受講者など |
BLSの知識が業務上必要な職種は幅広いため、受講対象に該当するか迷う場合は、コースを実施する団体や勤務先に確認するとよいでしょう。
BLS講習・研修を選ぶ際の確認ポイント
BLSに関する講習や研修は複数の団体で実施されており、対象者や学習内容、受講方法が異なります。単に「BLSを学べるか」で選ぶのではなく、受講目的に合う内容か確認することが重要です。
講習・研修を選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 自分の職種や経験が受講対象に含まれているか
- 必要なBLSの知識や実技を学べるか
- 対面・オンラインなど希望する受講方法に対応しているか
- 実技練習やスキル評価が含まれているか
- 修了証や修了カードなどが発行されるか
- 修了資格などに有効期間が設定されているか
- 勤務先や所属施設が指定する講習の要件を満たしているか
業務上の要件として受講する場合は、申し込み前に、勤務先が指定するコースや認定団体、修了要件を確認しておくことが大切です。
オンライン学習と実技講習の違い
BLSの学習方法には、教室で講義と実技を受ける方法のほか、オンライン学習と実技講習を組み合わせる方法があります。AHAのHeartCode BLSでは、オンラインで知識を学習した後、実際に心肺蘇生などを行うハンズオンセッションを受けるブレンディッドラーニングが採用されています。
主な違いは、以下のとおりです。
項目 | オンライン学習 | 実技講習 |
|---|---|---|
主な目的 | BLSの知識や手順を理解する | 救命処置の技術を身につける |
学習内容 | CPRやAEDなどに関する知識 | 胸骨圧迫、人工呼吸、AED操作など |
進め方 | 自分のペースで進めやすい | 決まった日時に会場などで実施する |
確認できること | 手順や判断に関する理解 | 圧迫方法や処置の実践 |
オンライン学習だけで修了できるか、別途実技講習が必要かはコースによって異なるため、受講前に修了条件を確認してください。

まとめ
BLS(Basic Life Support)は、日本語で「一次救命処置」と呼ばれます。反応や呼吸の確認から通報・AEDの手配、胸骨圧迫や人工呼吸までの一連の対応を指し、胸骨圧迫や人工呼吸自体を指す「CPR」はその一部にあたります。医療従事者が行う高度な処置であるACLSとは、救命の流れのなかで連続する関係にあります。
手順は、周囲の安全確認から始まり、反応と呼吸の確認、119番通報とAEDの手配、胸骨圧迫、AEDの使用へと進みます。指針では胸骨圧迫の深さは胸が約5cm沈み込む程度、テンポは1分間に100〜120回、人工呼吸を行う場合は30対2と示されています。
蘇生ガイドラインは定期改訂されており、最新の「JRC蘇生ガイドライン2025」が公開されています。改訂点のみならず基本手順も再確認するとともに、講習やプロバイダーコースで定期的に実技を体験しておくことが重要です。
よくある質問
Q.BLSって簡単にいうと何ですか?
BLSとは「Basic Life Support」の略で、日本語では「一次救命処置」と呼ばれます。簡単にいうと、心停止など命に関わる状態の人を発見した際に、救急隊や医療従事者による専門的な治療へつなぐために行う基本的な処置です。
BLSには、主に以下の対応が含まれます。
- 傷病者の反応や呼吸の確認
- 119番通報や周囲への協力要請
- 胸骨圧迫(心臓マッサージ)
- 必要に応じた人工呼吸
- AEDの手配と使用
BLSは医療従事者だけが行うものではありません。実際、2024年(令和6年)に一般市民により心原性心肺機能停止が目撃された傷病者は27,769人にのぼります。一般の人も救命処置が必要な場面に遭遇する可能性があるため、基本的な手順を知っておくことが大切です。
Q.BLSと心肺蘇生(CPR)は同じですか?
BLSと心肺蘇生(CPR)は、厳密には同じ意味ではありません。CPRは「Cardiopulmonary Resuscitation」の略で、心停止した人に対して胸骨圧迫や人工呼吸を行い、血液循環や酸素供給を維持するための処置を指します。一方、BLSはCPRを含めた、より広い範囲の処置を意味します。
BLS | CPR |
|---|---|
一次救命処置全体を指す | 心肺蘇生を指す |
反応・呼吸の確認などを行う | 胸骨圧迫などを行う |
119番通報やAEDの手配・使用も含む | BLSを構成する処置の一つ |
「BLSのなかにCPRが含まれている」と考えると理解しやすいでしょう。
Q.BLSとACLSはどちらを先に受講すべきですか?
両方を学ぶ場合は、一般的にBLSで基本的な処置を身につけてから、ACLSへ進むと理解しやすいでしょう。BLSでは質の高い心肺蘇生やAEDの使用などを学び、ACLSではそれらを基礎として、より高度な心血管系の救命処置を学ぶためです。
それぞれの主な内容は、以下のとおりです。
- BLS:胸骨圧迫、人工呼吸、AEDの使用、チームでの救命処置など
- ACLS:心停止への高度な対応、心電図の評価、薬剤の使用、気道管理など
ただし、コースによって受講条件や事前に求められる知識・資格は異なります。ACLSの受講を検討する場合は、実施団体が定める受講条件や事前学習の内容を確認したうえで申し込みましょう。
Q.BLS講習は医療従事者以外でも受講できますか?
医療従事者以外でも受講できるBLS関連の講習はあります。ただし、「BLS講習」という名称で実施される講習にはさまざまな種類があり、対象者や内容、難易度は実施団体によって異なります。
代表的なのが、消防本部などが実施する救命講習です。総務省消防庁の実施要綱では、主に成人を対象とする普通救命講習Iが180分、小児・乳児・新生児を対象とする普通救命講習IIIが180分、より高度な内容を扱う上級救命講習が480分と定められています。医療資格がなくても受講でき、心肺蘇生の方法やAEDの使用、気道異物による窒息への対応などを学べます。
一方、医療従事者や救急対応に携わる人を主な対象とした専門的なBLSコースもあります。受講を検討する際は、医療資格の有無だけで判断せず、対象者や受講条件、学習内容を確認しましょう。
Q.BLSの資格や認定に有効期限はありますか?
BLSそのものは処置の名称であるため、「BLS」という国家資格が存在するわけではありません。一方、BLSに関する講習を修了すると、実施団体やコースによって修了証や認定カードが発行される場合があります。
有効期限は受講するコースによって異なります。AHA(American Heart Association)は、コース修了カードについて「発行された月の末日から2年間有効」と定めており、BLSを含むコースが対象です。
受講する際は、以下の点を確認しておきましょう。
- 修了証や認定カードが発行されるか
- 有効期限が設定されているか
- 更新や再受講が必要か
- 勤務先が指定する要件を満たしているか
出典:Course Card Information | American Heart Association CPR & First Aid
[メディルン]編集部
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