AI面接とは?選考の仕組みと人の役割、導入時のリスクを解説

更新日:2026/09/03
新卒・中途を問わず求職者からの応募が集中する時期には、面接官の確保や日程調整が追いつかず、選考に時間がかかる企業も少なくありません。こうした採用業務の負担を抑える方法として検討されているのがAI面接です。
ただし、AIが何をもとに評価し、その結果を採用判断へどのように用いるかが曖昧なままでは、採用担当者が評価の妥当性を検証できないでしょう。
この記事では、AI面接の仕組みと主な形式、ほかの選考手法との違い、メリットとリスク、運用上の注意点、サービスを選ぶポイント、導入手順を解説します。
1. AI面接とは
AI面接は、AIを用いて応募者への質問や、回答の記録・分析、面接内容の文字起こし・要約などを支援するサービスです。本記事では、「AIが応募者へ質問する形式」に加え、「人が行った面接の文字起こし・要約をAIが支援するサービス」も含めて解説しています。
AI面接の形式 | インプット | AIが支援する処理 | アウトプット | 採用担当者が行うこと |
AIが面接を実施 | 職務要件、質問、評価軸、応募者の回答 | 質問の提示、回答の記録、文字起こし、分類・分析 | 回答記録、要約、面接記録、スコアなど | 出力内容と職務要件の関係を確認し、次の選考へ進めるかを判断する |
人が行う面接をAIが支援 | 面接時の音声・会話内容など | 文字起こし、要約、面接内容の整理 | 文字起こし、要約、面接記録など | AIが整理した記録を確認し、選考判断や面接後の情報共有に活用する |
評価方法の検証 | 面接結果や評価の運用履歴 | 対応製品では、通過率や評価結果の差異を集計する | 評価方法の検証に用いる記録 | 現在の評価方法を継続するか、修正・停止するかを判断する |
AI面接という言葉が指す範囲は、サービスごとに異なります。導入前に、誰が応募者へ質問するのか、どのデータをAIが分析するのか、どのような結果が出力されるのかを確認しておきましょう。
2. AI面接で質問〜評価結果を得るまでの仕組み

AI面接では、AIが応募者に質問し、回答を記録・分析したうえで、スコアや要約、面接記録などを出力する仕組みがあります。
こうした形を「対話型AI面接」といいます。採用担当者は、AIの出力と職務要件を照らし合わせ、次の選考へ進めるかを判断します。
工程 | 入力 | 処理 | 出力 | 確認者 |
職務要件の設定 | 職務内容、必要な適性・能力 | 質問と評価軸に反映 | 要件表、評価基準 | 採用責任者、現場責任者 |
質問の提示 | 質問、深掘り条件 | 固定質問や追加質問を提示 | 応募者の回答 | 採用担当者 |
回答の記録 | 音声、映像、文章など | 保存、文字起こし | 回答記録 | 採用担当者、情報管理担当者 |
評価結果の作成 | 回答記録、評価軸 | 分析、分類、要約 | スコア、要約、要点検箇所 | 採用担当者 |
人による検証 | 評価結果、職務要件 | 根拠と例外を検証 | 次の選考に関する決定 | 採用責任者 |
ここでは、AIが応募者へ質問し、回答を記録・分析する対話型のAI面接を例に、評価結果を確認するまでの流れを解説します。
2-1. 採用企業が職務要件を設定する
最初に採用企業が定めるのは、対象職種で必要な知識・技能・経験・行動です。求める人物像を抽象的な言葉のままにせず、職務を遂行するうえで評価したい適性や能力を言語化します。
そのうえで、各要件と質問・評価軸の対応は明確にします。現場責任者と採用担当者が要件を共有し、評価の対象にしない情報もあらかじめ定めます。これにより、AIが出した結果を職務との関係から検討できます。
2-2. AIが応募者に質問する
質問の進め方は製品によって異なります。あらかじめ登録した質問を同じ順番で出す形式もあれば、応募者の回答に応じて追加質問をする形式もあります。
追加質問を使う際に採用企業が明確にしたいのは、どの回答に対して何を深掘りするのかという点です。質問が職務と関係のない内容へ広がらないか、想定外の応答で面接が止まらないかを試用環境で確かめます。
2-3. システムが回答を記録する
応募者の回答は、文章や音声、映像などの形で記録されます。音声を文字に変換した記録に加え、回答時間や端末情報を扱う製品もあるため、取得項目は契約前に確認します。
記録する情報が増えるほど、保管やアクセス管理の負担も大きくなります。採用評価に必要な情報と、障害対応のために取得する情報を分け、利用目的と保存期間を設定します。
2-4. AIが評価結果を出す
システムは回答内容を評価軸に当てはめ、スコアや要約、発言記録などを出力します。分析に使う情報と返される結果は製品ごとに異なります。
採用担当者が知りたいのは点数だけではありません。評価画面では根拠となった回答箇所までたどり、人が再検証すべき結果を見分けられることが重要です。根拠箇所や判定理由をどこまで把握できるかは製品によって異なり、その範囲が実務での使いやすさを左右します。
2-5. 採用担当者が結果を確認する
採用担当者は、AIの出力が職務要件と結び付いているかを確かめます。低い評価や例外的な回答については、元の記録まで戻り、質問が適切だったかも含めて見直します。
人による検証は、結果に疑問が生じたときだけ行う作業ではありません。導入初期には人の評価とAIの出力を並べ、差が生じた理由を記録することで、質問と評価軸の改善につなげられます。
3. AI面接の主な形式

AI面接サービスは、製品によってAIの担当範囲が異なります。代表的な形式として、先述した対話型、録画した回答を分析する「録画分析型」、人による面接の記録を補助する「評価支援型」があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
3-1. 対話型AI面接
対話型AI面接では、AIが応募者に質問し、回答内容を受けて面接を進めます。面接官との日程調整を必要とせず、応募者がシステム上で回答するため、初期選考に用いられることが多い形式です。
サービス選定時は、追加質問が提示される条件や回答時間、途中保存の可否を比べます。質問の意図が伝わらない場合にどのような案内を出すのか、人による面接へ切り替える基準があるかも確認したいポイントです。
3-2. 録画分析型
応募者が指定された質問への回答を録画し、システムが後から内容を分析する形式です。製品によっては、採用担当者が録画や文字起こし、評価結果を一つの画面で確認できます。
ただ、録画面接という名称が、AIによる分析を意味するとは限りません。映像・音声のどの情報をAIが扱うのかを確かめ、単なる録画提出と混同しないように配慮が必要です。
3-3. 評価支援型
人が行う面接で、記録作成をAIで補助する形式です。文字起こしや要約、評価記録の作成をAIが支援するため、面接官は応募者との対話に集中しやすくなる利点があります。
一方、要約だけを読むと、発言の前後関係や面接官の質問内容を見落とすおそれがあります。採否に影響する記述は、元の記録まで戻って前後の発言を読み、要約の解釈が適切かを確かめることが欠かせません。
4. AI面接とほかの選考手法・システムの違い

AI面接の位置づけを理解するために、従来の人による選考方法との違いをご説明します。
4-1. 選考手法との違い
比較対象 | インプット | アウトプット | 人の役割 | 主な利用場面 |
AI面接 | 面接での回答 | 回答記録、文字起こし、要約、評価結果など | 出力と元の回答を検証し、次の選考を決める | 初期面接、面接記録・評価支援 |
人による面接 | 応募者との対話、応募書類 | 面接記録、面接官による評価 | 質問、深掘り、説明、評価を担う | 初期・中間・最終面接 |
録画面接 | 応募者が提出した録画回答 | 映像・音声(文字起こし・AI分析の有無はサービスによる) | 録画内容を人が確認・評価する(AI支援の有無はサービスによる) | 初期選考 |
AI適性検査 | 検査課題への回答 | 能力・性格などの検査結果 | 結果と職務要件の関係を検討する | 面接の前後 |
AI面接とほかの選考手法の違いは、応募者から得る情報と、評価に人がどこまで関わるかにあります。
4-1-1. 人による面接
人による面接では、面接官が応募者の回答を聞き、その場で質問を掘り下げます。職務内容や勤務条件を説明し、応募者からの質問に答えることも面接官の役割です。
AI面接を導入する場合も、どの選考段階をAIで支援し、どこから人が対話するかを職種ごとに定めます。なお、初期面接の記録や共通質問をAIで支援し、志望理由の深掘りや条件のすり合わせのみを人が担う手法もあります。
4-1-2. 録画面接
録画面接は、応募者が指定された質問への回答を録画し、採用担当者が後から閲覧する手法です。録画した映像や音声をAIが分析するかは、利用するサービスによって異なります。
AIによる分析をせず、人が録画内容を評価する形式も録画面接に含まれます。また、AIが録画回答を分析し、要約・評価結果を出力する場合は「録画分析型のAI面接」と呼ばれます。
4-1-3. AI適性検査
検査課題や質問への回答をもとに、応募者の能力・性格などを測る選考手法です。一方、AI面接は、面接で得た回答を記録・分析し、採用担当者による評価を支援します。
両方を利用する場合は、AI適性検査とAI面接で何を評価するのかを分けておきましょう。同じ能力を評価していないかを確認し、結果が食い違ったときは、職務要件や元の回答に戻って再検討する手順を定めます。
4-2. 関連システムとの違い
AI面接とATS(採用管理システム)の違いは、採用工程のどこを支えるかにあります。
項目 | AI面接 | ATS(採用管理システム) |
主な役割 | 面接の質問、回答記録、分析、評価支援 | 応募者情報、選考進捗、連絡履歴の管理 |
主な入力 | 面接での回答 | 応募者情報、選考状況 |
主な出力 | 回答記録、要約、評価結果 | 選考進捗、連絡履歴、集計結果 |
利用場面 | 初期面接、面接記録・評価支援 | 応募受付から入社までの採用活動全体 |
AI面接は面接の実施・記録・評価を支援し、ATSは応募者情報と選考進捗を管理します。
4-2-1. ATS(採用管理システム)
ATSはApplicant Tracking Systemの略で、応募者情報と選考進捗を管理するシステムのことです。応募受付から面接日程、評価、応募者との連絡履歴までを一つの流れで管理します。
AI面接サービスとATSを連携できれば、面接結果を応募者情報に容易に反映できます。ただし、連携できるデータやATS上で参照できる内容は、サービスの組み合わせ次第です。回答記録・要約・評価結果のうち、何を引き継げるかも確認しましょう。
5. AI面接のメリット

AI面接のメリットは、利用する形式によって異なります。
例えば、対話型や録画分析型のAI面接では、応募者が回答できる時間帯を広げ、共通の質問と評価項目に沿って面接を進められます。評価支援型は、文字起こしや要約、評価記録の作成にかかる作業を減らせる利点があります。
ここでは、AI面接サービスを利用する主なメリットを解説します。
5-1. 日程調整を減らし、初期選考を早められる
応募者が都合のよい時間に回答する形式なら、面接官との日程調整を待たずに初期面接へ進めます。採用担当者は面接枠を一人ずつ調整する負担を減らし、選考開始までの待ち時間を短縮できます。
効果を測る際は、応募から面接完了までの日数と日程調整の回数を確認します。ただし、受験期限が短すぎると応募者の負担が増えるため、企業側の選考速度だけを目標にしないことが大切です。
5-2. 応募者への質問と評価項目を統一できる
同じ職種の応募者に共通の質問と評価項目を設定すると、面接官によって質問内容が変わる状態を防げます。各応募者の回答を同じ観点で記録できるため、評価の違いも振り返りやすくなります。
ただし、質問を統一するだけで公平な評価になるとは限りません。質問と評価項目が職務要件に結び付いているか、応募者の状況によって不利が生じていないかを検証することが大切です。
5-3. 評価の根拠を記録として残せる
応募者の回答、文字起こし、要約、評価結果を一つの記録として保存すると、どの回答をもとに評価したのかを後からたどれます。複数の担当者が選考に参加する場合も、次の面接で掘り下げる内容を共有しやすくなります。
5-4. 面接官の業務負担を減らせる
AI面接を活用すると、初期面接の実施や録画内容の確認、面接記録の作成にかかる負担を抑えられます。ただし、軽減できる業務はAI面接の形式によって異なります。
各形式で期待できる効果は次のとおりです。
対話型: AIが初期面接の一部を担当し、面接官が応募者一人ひとりへ対応する時間を減らせる
録画分析型: 録画データの分析結果を参照でき、面接内容の確認や評価にかかる作業を補助できる
評価支援型: 文字起こし、要約、評価記録の作成をAIが支援し、面接後の記録作業を減らせる
工数削減の効果を測る際は、AIに任せた作業時間だけでなく、質問や評価項目の設定、出力結果の点検、社内外からの問い合わせ対応にかかった時間も含め、導入前後の総工数を比べるのがポイントです。
5-5. 拠点・部門間の評価運用を統一できる
複数の拠点や部門で同じ職種を採用する企業では、共通の質問と評価軸を設定することで、拠点ごとに評価項目が異なる状態を減らせます。拠点別の通過率や見直し率を比較する場合は、職種、募集時期、応募者層、件数などの条件をそろえ、差が生じた原因を確認しましょう。
6. AI面接のリスクとは

AI面接には、評価の偏りや根拠の不透明さ、職務と関係のない情報が評価に使われるリスクがあります。利用環境やシステム障害によって、応募者が受験を完了できない事態にも備えなければなりません。
問題が起きた際に評価を見直し、選考を続けられるよう、人による検証と代替手段を運用に組み込みます。ここでは、AI面接サービスの利用にともなうリスクを解説します。
6-1. 評価に偏りが生じる
AIによる評価は、学習データや質問・評価軸の設計に影響されます。それにより、属性や話し方、言語環境の違いによって評価が偏る可能性があります。
偏りを把握するには、職種や選考段階ごとに通過率をまとめ、人による評価との差や例外的な結果を記録する必要があります。
6-2. 評価結果の根拠を説明できない
スコアだけが表示され、どの回答が評価に影響したのか分からないサービスでは、採用担当者が結果の妥当性を検証できません。職務要件との関係を説明できない評価を、そのまま採否に用いるのはリスクがあります。
契約前のデモで、評価結果から根拠となった回答箇所へ戻れるかを試しましょう。判定理由や評価軸との対応について、提供事業者がどこまで説明できるかも把握しておきます。
6-3. 職務と関係のない情報を扱う
映像や音声には、表情・服装・背景・話す速度・声質などの情報が含まれます。職務要件との関係を説明できない情報まで評価に使うと、公正な選考を損なうおそれがあります。
評価に使う情報は、職務要件と結び付く項目に限定します。評価に使わない情報もサービスが取得する場合、取得目的・保存期間・閲覧権限を定めて管理してください。
6-4. 応募者の環境や特性が評価に影響する
通信環境や使用端末によって音声・映像が途切れると、回答内容が正しく記録されないおそれがあります。視覚・聴覚・発話の特性や使用言語、AIとの対話への慣れも、応募者の回答に影響する要因です。
その結果、本来の職務能力と関係のない評価差が生じる可能性があります。推奨環境や練習画面、問い合わせ窓口を案内し、AI面接の受験が難しい場合は、人による面接などの代替手段を用意しましょう。
6-5. 通信・システム障害で選考が止まる
回答中の通信切断やAI面接サービスの障害によって、応募者が受験を完了できないことがあります。再受験や期限延長の条件が決まっていない場合、応募者への案内や日程の再調整に時間がかかります。
契約前に、回答がどこまで保存されるか、途中から再開できるか、受験期限を変更できるかを把握してください。障害が長引いた際に再受験や人による面接へ切り替える条件と、判断を担う担当者も定めておきましょう。
6-6. AIの評価結果を過信する
評価根拠を確認できるサービスでも、AIのスコアを客観的な結論として扱うと、誤った評価や例外的な回答を見落とすおそれがあります。評価結果は、設定した質問・評価軸や分析に用いるデータの影響を受けるためです。
不合格につながる結果や根拠が不十分な結果は、人が元の回答まで戻って検証します。応募者からの異議や例外に対応する手順を設け、最終的な採用判断を担う責任者も決めておきます。
7. AI面接を運用する際の注意点

AIが評価結果を出す形式では、その結果だけを根拠に採否を決めないようにします。質問と評価軸が職務要件に沿っているかを人が検証し、取得する個人情報も採用選考やAI面接の実施に必要な範囲に限定しましょう。
注意点 | 起こり得る問題 | 導入企業が行う対応 | 残す記録 | 見直す時点 |
質問と評価軸 | 職務と関係のない情報が評価に影響する | 質問と評価軸を職務要件に対応させ、採用担当者と現場責任者が点検する | 要件表、質問票 | 職務変更時 |
取得データ | 不要な個人情報を取得したり、定めた目的以外に利用したりする | 取得するデータを限定し、項目ごとに利用目的を定める | データ項目表 | 機能変更時 |
応募者への説明 | 応募者がAIの利用方法やデータの取扱いを把握できない | AIの利用、取得するデータ、利用目的、保存期間、問い合わせ先を説明する | 案内文、説明記録、同意が必要な取扱いでは同意記録 | 案内変更時 |
評価の検証 | AIの評価が職務要件と対応しているか判断できない | 評価項目と職務要件の関係を調べ、人の評価との差や例外を記録する | 検証記録 | 定期、評価条件の変更時 |
人による見直し | 根拠をたどれない結果が採否に反映される | 再検証の対象、担当者、対応期限を決める | 再検証記録 | 採否判断前、異議・例外発生時 |
委託先管理 | データの漏えいや不適切な再委託が発生しても把握できない | 安全管理措置、再委託条件、保存・削除方法を点検する | 契約書、点検記録 | 契約前、定期点検時、契約更新・終了時 |
注意事項を規程に記載するだけでは、選考の現場で同じ対応を続けられません。誰が、どの結果を、いつ見直すのかまで手順に落とし込み、実施内容に対応する記録を残します。
7-1. 職務要件から質問を作る
厚生労働省は、応募者の適性・能力に基づく公正な採用選考を求めています。AI面接においても、質問と評価軸は対象職種の職務内容から作り、本人に責任のない事項や職務と関係のない情報を評価に持ち込まないようにしましょう。
出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」
7-2. 取得するデータと利用目的を限定する
AI面接では、サービスが取得できる情報をそのまますべて集めないようにします。回答、映像、音声、端末情報などの取得項目を一覧にし、採用評価や本人確認、障害対応などの利用目的と対応させてください。
個人情報の利用目的は、応募者がデータの取扱いを予測できる程度まで具体化します。保存場所、アクセスできる担当者、保存期間、削除方法も定め、サービスの機能が変わった際は取得項目と利用目的を見直しましょう。
7-3. AIの利用とデータの取扱いを応募者へ説明する
応募者には、選考のどの工程でAIを使い、取得したデータを何に利用するのかを説明します。AIの出力を個人の評価に用いる場合は、AIを利用している旨を伝え、最終的には人による判断をする運用にします。
応募者への案内には、取得するデータ、利用目的、保存期間、問い合わせ先を記載します。専門用語に偏らず、応募者が自分の情報の使われ方を把握できるようにしてください。
7-4. AIの評価が職務要件に沿っているか検証する
提供事業者が公表する精度や評価方法が、自社の採用でも同じように機能するとは限りません。対象となる職種や選考工程を限定し、AIの評価項目が対象職種で求める適性・能力と対応しているかを検証します。
AIの結果と人の評価との差、通過率、再検証した割合、例外の発生状況は、運用上の変化を捉える指標として職種別に記録してください。モデルや質問、評価軸、職務内容が変わった際は、変更後の条件で改めて調べましょう。
7-5. AIの評価を人が再検証する
AIの結果だけで採否を決めず、人が元の回答と評価根拠を見直せる手順を定めます。特に、不合格に影響する結果や根拠をたどりにくい結果、例外的な回答、応募者から異議があった結果は再検証の対象です。
再検証の担当者と対応期限を決め、元の回答やAIの出力を閲覧できる権限を付与します。評価を変更した場合は理由も記録し、同じ問題が続くときは質問や評価軸、AIを利用する選考工程を見直してください。
7-6. 委託先を監督する
AI面接サービスの提供事業者に応募者の個人データの取扱いを委託しても、導入企業には委託先を監督する責任が残ります。契約前に、安全管理措置、再委託の有無と条件、データの保存場所、事故が起きた際の連絡手順を契約書や運用資料で確かめてください。
8. AI面接の導入を検討すべき企業

AI面接は、初期面接の実施や日程調整に負担を抱える企業で活用を検討できます。一方、導入後も安定して運用するには、職務要件に沿った共通質問を作り、AIの評価結果を人が検証できる体制が必要です。
ここでは、AI面接によって改善を見込める採用課題と、導入前に整えておきたい社内体制を解説します。
8-1. 応募者が多い企業
応募者数の増加にともなって、初期面接や記録作成の負担が膨らんでいる企業には、AI面接を活用する余地があります。応募数や面接の実施件数、面接官の拘束時間を確認すると、作業が集中している工程を特定できます。
8-2. 共通質問を設計できる企業
共通の質問と評価軸を設定するには、対象職種に必要な適性・能力を職務要件として明確にする必要があります。採用担当者と現場責任者が職務要件を共有できれば、AIの出力も同じ基準に沿って検証できます。
8-3. 評価結果を人が検証できる企業
AIの出力を採用判断に用いる以上、結果を検証する担当者と、質問・評価方法を見直す責任者の配置が必要です。人による評価との差や例外的な結果を継続して調べることで、評価のずれを把握できます。
8-4. 面接日程の調整負担が大きい企業
応募者と面接官の予定が合わず、初回面接までの期間が延びている企業にもAI面接が適しています。応募者が指定された期間内に回答できる形式なら、面接日時を何度も調整する作業を減らせます。
9. AI面接サービスを選ぶポイント

AI面接サービスを選ぶ際は、最初に対象職種で評価する適性・能力と、その根拠に用いる情報を定めます。さらに、評価結果の根拠と妥当性、応募者への対応、個人情報の管理、ATS連携、導入後の支援を同じ条件で比較します。
評価軸 | 実際に試すこと | 確認する資料 | 導入の基準 |
評価に使う情報 | 取得項目と評価項目を対応させる | データ項目表、評価仕様 | 各項目と職務要件の関係を説明できる |
評価結果の根拠 | 評価画面から根拠となる回答へ戻る | 画面仕様、説明資料 | 判定理由と回答の対応を読み取れる |
妥当性と偏り | AIと人の評価を自社職種で比べる | 検証資料、更新履歴 | 許容する差と再検証の条件を定められる |
応募者への対応 | 障害、再受験、代替面接の流れを試す | 運用手順、支援範囲 | 応募者へ一貫した案内ができる |
個人情報の管理 | 保存、削除、再委託の条件を調べる | 契約書、安全管理資料 | 自社の管理方針を満たす |
ATS連携 | 結果送信とエラー時の処理を試す | 連携仕様、操作手順 | 該当する応募者へ結果を反映できる |
導入・運用支援 | 初期設定と本稼働後の支援範囲を調べる | 支援一覧、見積書 | 自社で継続できない作業を補える |
ここからは、AI面接サービス選定時に意識したいポイントを解説します。
9-1. 評価に使う情報を特定する
まず、サービスが取得する情報と、そのうち採用評価に使う情報を分けます。回答内容や音声、映像、行動データなど、項目ごとに用途を区別してください。
評価項目は職務要件と対応させ、関係を説明できない項目は対象から外します。評価項目を変更できないサービスでは、対象職種に適用してよいかを先に判断します。
9-2. 評価結果の根拠を読み取れるか試す
自社で用意した回答を評価画面で開き、スコアや要約から根拠となった回答箇所へ戻れるかを試します。根拠となる回答をたどれない場合、採用担当者による評価結果の検証が難しくなります。
判定理由と評価軸、回答内容がどのように対応しているかを読み取り、疑問がある場合に提供事業者から説明を受けられる範囲も把握しておきましょう。
9-3. 妥当性と偏りの資料を調べる
提供事業者の検証資料では、対象となった職種・人数・期間・使用データを読み取ります。自社の採用条件と異なる場合は、資料に示された結果をそのまま当てはめられません。
限定運用では、AIと人の評価差に加え、評価結果と職務要件の関係を検証します。モデルや評価方法が更新された際の再検証方法も把握し、利用を見直す条件をあらかじめ定めておきましょう。
9-4. 応募者への対応方法を比べる
推奨環境や練習画面、問い合わせ方法を各社で比べます。再受験と代替面接に加え、障害時の案内も比較すべき項目です。応募者が提供事業者へ直接連絡するのか、採用企業が受け付けるのかによって社内負担が変わります。
試用時には、通信切断や途中終了を実際に起こし、どこから再開できるかを確かめます。応募者向けの案内文を自社で修正できるかも、選定時の重要な条件です。
9-5. 個人情報の管理条件を見極める
契約書と安全管理資料から、データの保存場所・保存期間・アクセス権を把握します。再委託の条件や事故発生時の連絡経路、映像・音声を閲覧・出力できる範囲も確認します。
また、契約終了後にデータを削除する時点と、削除完了を把握する方法も調べます。データを国外のサーバーへ保存したり、国外の事業者・再委託先が個人データを取り扱ったりする場合は、保存場所と取扱体制の確認が必要です。
9-6. ATSとの連携を検証する
まず確認したいのは、AI面接サービスとATSを連携できるかどうかです。対応していれば、回答記録・要約・評価結果などを、連携仕様の範囲で応募者情報に反映できます。デモや無料体験では、どの項目を送信できるか実際に試してください。併せて、採用担当者の転記をどこまで減らせるか、次の選考担当者が必要な結果を参照できるかを検証します。
連携前には、応募者IDなど、面接結果を正しい応募者にひも付ける項目を決めます。両方のサービスで更新する情報については、どちらの登録内容を基準とするかも定めてください。
9-7. 導入・運用支援の範囲を把握する
提供事業者の支援範囲は、初期設定に加え、質問設計や評価軸の作成、担当者教育、限定運用まで含めて比べます。自社で担う作業と提供事業者へ依頼する作業を分け、導入時の役割を明確にしておきましょう。
10. AI面接の導入手順

AI面接は、導入課題と対象職種を定め、職務要件から質問・評価軸を作る流れで導入します。
工程 | 主な成果物 | 主な確認者 | 完了条件 | 見直しへ戻る状態 |
導入課題の設定 | 現状値、改善目標 | 採用責任者 | 改善する工程・指標・測定期間が確定している | 導入前の状態を測定できない |
職務要件の決定 | 職務要件表 | 採用責任者、現場責任者 | 必要な適性・能力と評価対象外の情報に合意している | 職務内容と評価項目を結び付けられない |
質問と評価軸の作成 | 質問票、採点基準、再検証条件 | 採用責任者、現場責任者 | 質問・評価軸・職務要件の対応が確定している | 職務と関係のない項目や曖昧な基準が残る |
リスク評価 | リスク一覧、対策、停止条件 | 採用・法務・情報管理担当者 | 個人情報・偏り・応募者対応・障害への対策と責任者が決まっている | 重大なリスクへの対策を用意できない |
限定運用 | 応募者向け案内、検証記録 | 採用責任者 | 評価差・運用負荷・応募者への影響を検証している | 評価の偏りや受験上の問題を解消できない |
本稼働の決定 | 本稼働判定記録、改善計画 | 最終承認者 | 継続条件・見直し時点・停止判断の責任者が決まっている | 評価の妥当性や継続運用の体制を確保できない |
各工程では、成果物を作成した時点と、責任者が内容を承認した時点を分けます。見直しに戻る状態に該当した場合は、対象職種や質問・評価軸、運用方法を修正してから再度試します。以下、各工程の進め方を解説します。
10-1. 導入課題を決める
選考期間や日程調整、初期面接、記録作成のうち、AI面接で改善したい工程を特定します。現在かかっている日数や作業時間を把握し、どの負担をどの程度改善するのかを目標として定めます。
その際、改善したい工程と目標値、効果を確認する期間を具体的に定めます。課題や目標が明確でなければ、必要な機能や導入後に確認すべき成果を判断できません。
10-2. 職務要件を定める
対象職種の業務内容をもとに、評価する適性・能力と、採用評価に使わない情報を定めます。採用担当者と現場責任者が内容をすり合わせ、職種ごとの違いも職務要件表へ残します。
対象職種を広げるほど、要件の作成と評価結果の検証にかかる負担も増えます。最初は職務内容が明確で、共通の質問を作れる職種に対象を絞り、評価方法を検証できる範囲から始めてください。
10-3. 質問と評価軸を作る
職務要件ごとに質問と採点基準を作り、どの回答を何の根拠で評価するかを対応させます。追加質問を使う場合は、深掘りする条件も定めます。
作成した質問は複数の担当者で確認し、応募者が質問の意図を理解しやすい表現になっているかを確かめます。短い回答や質問と関係のない回答も想定して試し、AIの出力を人が再検証する条件・手順を決めておきましょう。
10-4. リスクを評価する
評価の根拠をたどれるか、特定の属性や応募者群に不利な結果が偏っていないかを確認します。あわせて、個人情報の取扱い、応募者の受験環境、障害発生時の対応、委託先の管理体制も点検します。
リスクごとに、発生した場合の影響と具体的な対策をまとめます。対応責任者に加え、利用範囲を縮小・停止する条件も定め、問題が起きた際に速やかに判断できる体制を整えておきましょう。
10-5. 応募者へ説明して限定運用する
限定運用を始める前に、応募者へAI面接を利用することと、取得する情報の内容を説明します。問い合わせ先や障害時の対応に加え、AI面接での受験が難しい場合に利用できる代替手段も案内してください。
運用対象は、一部の職種や選考段階に絞ります。AIの出力と人による評価を比べ、評価差が生じた理由を記録します。採用担当者の作業時間や応募者からの問い合わせ、受験中に生じた問題も検証対象です。
通信障害や運用上の問題が起きた場合は、事前に定めた条件に沿って再受験や人による面接へ切り替えます。評価方法と応募者対応の両方を見直し、問題を解消できる状態になってから本稼働へ進みましょう。
10-6. 本稼働へ移るか判断する
本稼働へ進む前に、評価の妥当性と運用負荷を検証します。応募者対応を続けられ、評価や運用の検証記録を保存し、改善手順を実行できる体制も必要です。導入課題で設定した指標が改善していても、偏りや重大な苦情が残るなら展開を止めます。
本稼働後も、職務・質問・モデルを変更した時点で再検証することが欠かせません。見直す時点と停止を決める責任者を運用規程に記載し、導入時の検証記録とともに保存します。
11. AI面接のよくある質問
AI面接の導入前には、AIの評価を採否へどう反映するか、応募者へ何を説明するかといった疑問が残ります。ここでは、AI面接・AI面接サービスにおけるよくある質問をまとめました。
11-1. AIだけで採否を決めてよい?
AIの評価・要約だけを根拠に採否を決める運用は避けましょう。採用担当者が元の回答と職務要件を確認し、とりわけ不合格に影響する結果、根拠をたどりにくい結果を見直せるようにします。
11-2. 応募者の表情を評価に使える?
表情をそのまま評価に使うことには、慎重な判断が必要です。表情と職務に必要な能力・適性との関係を明確に説明し、検証できない場合は、評価項目に含めるべきではありません。
職務と関係のない表情や印象が、採否に影響しないように運用することが重要です。
11-3. 応募者へ説明する必要がある?
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」では、AIの出力を特定の個人の評価に用いるとき、AIの利用を本人へ通知することが推奨されています。最終判断は、人が合理的に行うことを前提とされています しています。個人情報については、取得するデータと利用目的を具体化し、取得方法に応じて利用目的を明示・通知または公表してください。
11-4. 通信障害で再受験できる?
再受験の可否や条件は、サービスの機能と導入企業の運用によって異なります。途中保存、再開できる地点、再受験、期限延長の条件を事前に定め、応募者向けの案内に記載してください。
11-5. 選考後にデータを削除できる?
削除できるデータの範囲や時期は、サービスと契約条件によって異なります。映像、音声、文字起こし、要約、評価結果のうち、どのデータが削除対象となるかを契約前に決めておきましょう。
11-6. 評価結果に異議を申し立てられる?
AI評価に関する問い合わせや異議の受付方法は、導入企業によって異なります。窓口を設けるなら、担当者と回答期限に加え、人が評価を再検証する手順も定めておきましょう。対応記録を残し、同じ問題が続くときは質問や評価軸を見直してください。
12. まとめ
AI面接には複数の形式があり、サービスによってAIが担当する工程や出力内容が異なります。導入時は、対象職種と選考工程を絞った限定運用から始めます。
気になるサービスが見つかったら、各社の資料で評価に使う情報、費用、連携機能、支援範囲を比較します。試用環境では自社の選考を再現し、応募者と採用担当者の双方が支障なく利用できることを確かめたうえで、導入の可否を判断してください。

BIZNAVI編集部
株式会社DYMが運営する、法人向けサービスの比較・検索メディア「BIZNAVI byDYM」の編集部。 勤怠管理・会計・生産管理などの業務システムやSaaSに加え、営業代行・Web制作・記事作成代行・SNS運用代行といった業務支援サービスまで、幅広い領域の法人向けサービスを調査・比較し、導入検討に役立つ情報を発信している。 各サービスの機能や料金、提供形態、導入実績などの公開情報をもとに、目的や条件に応じて比較しやすい形で整理することを重視してコンテンツを制作。企業が抱える業務課題や実際の活用シーンを踏まえ、自社に合ったサービス選びと、検討から意思決定までをスムーズに進めるための情報提供を行っている。
