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- バイタルとバイタルサインの違いや基本的な基準値を正しく理解したい方両者の明確な定義の違いをはじめ、体温・血圧・脈拍・呼吸数などの主な項目と一般的な数値の目安が分かり、体調変化を把握する基礎知識が身につきます。
- 介護現場での正しい測定手順や法的な位置づけを確認したい方測定時のポイントやよくあるミスの防止策に加え、介護職によるバイタル測定が医行為に該当するかどうかなどの公的なルールを整理できます。
- BT・BP・SpO2といった略語の意味やカルテの記載方法を知りたい方医療・介護の現場でよく使われる略語や用語の意味を一覧で把握でき、業務での記録作成やスタッフ間でのスムーズな情報共有に役立ちます。

バイタルとは
「バイタル」は医療現場でよく使われる言葉ですが、ビジネスやスポーツなど、医療以外の分野でも用いられています。また、「バイタル」と「バイタルサイン」は同じ意味で使われることがあるものの、厳密には意味が異なります。ここでは、バイタルの意味や語源、バイタルサインとの違い、医療以外での使われ方を解説します。
バイタルの意味と語源
バイタルは、英語の「vital」に由来する言葉です。「生命に関わる」「重要な」「不可欠な」といった意味があります。医療分野では、患者の生命活動や健康状態に関する情報を表す言葉として使われています。医療現場で「バイタルを測る」といった場合は、一般的に、体温・血圧・脈拍・呼吸数などのバイタルサインを測定する行為を指します。一方、医療以外の分野では、「極めて重要な」「欠かせない」という意味で使われます。このように、バイタルは生命に関することだけでなく、物事の重要性を表す言葉としても広く浸透しています。
バイタルの語源と意味
項目 | 内容 |
|---|---|
語源 | 英語の「vital」 |
本来の意味 | 生命に関わる・重要な・不可欠な |
医療での意味 | 生命活動に関わる状態を示す言葉 |
日常・ビジネスでの意味 | 非常に重要なもの・欠かせないもの |
バイタルとバイタルサインの違い
「バイタル」と「バイタルサイン」は、医療現場で同じ意味として使われることもありますが、厳密には異なる言葉です。バイタルは、生命活動や生命維持に関わる状態を広く表します。一方、バイタルサインは「生命徴候」を意味し、患者の状態を客観的に評価するための具体的な指標を指します。一般的な測定項目は、体温・血圧・脈拍・呼吸数です。医療機関や患者の状態によっては、SpO₂や意識レベルなども含まれます。つまり、バイタルは生命活動に関する広い概念、バイタルサインはその状態を測定・観察するための指標です。
バイタルとバイタルサインの違い
項目 | バイタル | バイタルサイン |
|---|---|---|
意味 | 生命活動全般を表す言葉 | 生命徴候を測定する具体的な指標 |
内容 | 概念的な表現 | 体温・血圧・脈拍・呼吸数・意識レベルなど |
用途 | 患者の状態を広く表現する | 健康状態を客観的に評価する |

バイタルサインとは
バイタルサインは、患者や利用者の生命活動、健康状態を客観的に評価するための基本的な指標です。医療・看護・介護の現場では、体調変化や異常を早期に把握する手がかりとして、日常的に測定されています。ここでは、バイタルサインの定義や測定する目的、健康状態の評価に用いられる理由を解説します。
バイタルサインの定義
バイタルサインとは「生命徴候」を意味し、人が生命活動を維持できているかを確認するための基本的な指標です。代表的な項目には、体温・血圧・脈拍・呼吸数があります。医療機関によっては、SpO₂や意識レベルなども含めて全身状態を評価します。バイタルサインの変化は、病状や体調の変化を捉える手がかりになります。そのため、診察や治療方針を判断する医療現場だけでなく、介護施設や在宅医療における日々の体調管理にも活用されています。
主なバイタルサイン
項目 | 確認する内容 |
|---|---|
体温 | 発熱や低体温の有無 |
脈拍 | 脈拍数や脈のリズム |
血圧 | 血液が血管の壁を押す力 |
呼吸数 | 呼吸数や呼吸状態 |
意識レベル | 意識がはっきりしているか |
バイタルサインを測定する目的
バイタルサインを測定する主な目的は、患者や利用者の現在の状態を把握し、変化に早く気づくことです。体温・血圧・脈拍・呼吸数などを継続的に測定することは、病状の改善や悪化を判断する材料になります。また、投薬や点滴、酸素療法などを実施した後の状態を確認したり、手術前後の状態を評価したりする際にも用いられます。介護現場では、自分で体調不良を伝えることが難しい利用者の変化を捉えるためにも測定されます。
バイタルサインを測定する主な目的
- 健康状態を客観的に把握する
- 体調の変化に早い段階で気づく
- 治療後の経過を確認する
- 病状の回復・悪化を継続的に評価する
- 医療・介護の安全性を確保する
患者の健康状態を把握できる理由
バイタルサインから健康状態を把握できるのは、体温・循環・呼吸など、生命維持に関わる機能の変化が数値や反応に表れるためです。例えば、発熱は感染症や炎症、血圧の急激な低下は脱水や循環不全などを疑う手がかりになります。また、脈拍や呼吸数の変化から循環・呼吸状態の異常が疑われることもあります。ただし、測定値だけで病気を判断することはできず、症状や既往歴、検査結果と組み合わせた総合的な評価が必要です。意識レベルを含めて各項目を確認することで、必要な検査や治療、看護・介護につなげられます。
バイタルサインからわかること
バイタルサイン | 主にわかること |
|---|---|
体温 | 感染症・炎症・低体温など |
脈拍 | 脈拍数やリズムの変化、循環状態 |
血圧 | 血圧の上昇・低下、ショックなど |
呼吸数 | 呼吸状態の変化や酸素不足の可能性 |
意識レベル | 脳機能や全身状態の変化 |

バイタルの測定項目
バイタルサインは、複数の項目を組み合わせて確認することで、患者や利用者の全身状態を評価します。一つの測定値だけで判断せず、他の項目や症状、普段の状態と比較することが重要です。ここでは、体温・血圧・脈拍・呼吸数に加え、必要に応じて確認される意識レベルやSpO₂について解説します。
体温(BT)
体温(Body Temperature:BT)は、体内の熱の状態を確認するための指標です。体温が高い場合は感染症や炎症など、低い場合は低体温症や循環状態の悪化などが疑われます。主な測定部位は腋窩(わきの下)・口腔・耳などですが、測定部位や使用する体温計によって値が異なるため、同じ条件で測ることが基本です。平熱には個人差があるため、一般的な目安だけでなく、普段の体温と比較して変化を確認します。
体温(BT)で確認するポイント
項目 | 内容 |
|---|---|
略語 | BT(Body Temperature) |
主な測定内容 | 体温 |
わかること | 発熱や低体温、感染症・炎症の可能性 |
主な測定方法 | 腋窩(わきの下)・口腔・耳など |
血圧(BP)
血圧(Blood Pressure:BP)は、血液が血管の壁を押す力を示す指標です。血圧が普段より高い、または低い場合は、体調や循環状態に変化が生じている可能性があります。特に急激な血圧低下は、出血や脱水などを疑う手がかりになります。測定では、心臓が収縮したときの収縮期血圧と、拡張したときの拡張期血圧を確認します。数値は、年齢や基礎疾患、服薬状況、測定時の姿勢なども踏まえて評価することが重要です。継続して測定することで、治療後の経過や病状の変化を把握しやすくなります。
血圧(BP)で確認するポイント
項目 | 内容 |
|---|---|
略語 | BP(Blood Pressure) |
主な測定内容 | 収縮期血圧(最高血圧)・拡張期血圧(最低血圧) |
確認できること | 血圧の上昇・低下、循環状態の変化 |
活用場面 | 病状の経過観察、治療後の変化の確認 |
脈拍(PR)
脈拍(Pulse Rate:PR)は、心臓の拍動に伴って動脈に伝わる脈を、通常は1分間の脈拍数で表したものです。脈拍数だけでなく、脈の強さやリズムが規則的かどうかも観察します。脈拍が普段より速い場合は、発熱・脱水・緊張・運動などの影響が考えられます。反対に遅い場合は、体質や運動習慣、服薬、心臓の状態などが関係している可能性があります。血圧や呼吸数などとあわせて確認することで、循環状態の変化を捉えやすくなります。
脈拍(PR)で確認するポイント
項目 | 内容 |
|---|---|
略語 | PR(Pulse Rate) |
主な測定内容 | 1分間の脈拍数 |
わかること | 脈拍数、脈のリズム、循環状態 |
観察ポイント | 脈拍数・リズム・強さ |
呼吸数(RR)
呼吸数(Respiratory Rate:RR)は、1分間に呼吸した回数を示す指標です。呼吸の速さや深さが変化する場合は、呼吸器疾患や循環器疾患だけでなく、発熱や痛み、精神的な緊張などさまざまな原因が関係します。呼吸は意識すると速さや深さが変わりやすいため、本人に意識させないよう自然な状態で観察します。SpO₂や呼吸の深さ、リズムなどとあわせて確認することで、呼吸状態をより詳しく評価できます。
呼吸数(RR)で確認するポイント
項目 | 内容 |
|---|---|
略語 | RR(Respiratory Rate) |
主な測定内容 | 1分間の呼吸回数 |
わかること | 呼吸の速さや深さ、酸素不足の可能性 |
観察ポイント | 回数・深さ・リズム |
意識レベル・SpO₂が含まれるケース
医療機関や患者の状態によっては、体温・血圧・脈拍・呼吸数に加え、意識レベルやSpO₂もバイタルサインとして確認します。意識レベルは、脳機能や全身状態の変化を確認するための指標で、主な評価方法にはJCSやGCSがあります。実際に、総務省消防庁が公表している「緊急度判定プロトコルVer.3(救急現場)」でも、共通の観察項目として意識レベルが位置づけられ、JCSとGCSの値によって緊急度を判定する基準が示されています。SpO₂は、パルスオキシメータを用いて血液中の酸素化の状態を確認する指標で、呼吸器疾患のある患者や酸素療法を受けている患者の状態確認などに用いられます。
追加で確認される主な項目
項目 | 内容 |
|---|---|
意識レベル | JCS・GCSなどで意識状態を評価 |
SpO₂ | 血液中の酸素飽和度を確認 |
主な目的 | 酸素化や意識状態、全身状態の評価 |
主な測定機器 | パルスオキシメータ |

バイタルの基準値と数値の見方
バイタルサインには一般に用いられる目安がありますが、適切な範囲は年齢や体質、基礎疾患、服薬状況などによって異なります。また、体温・脈拍・呼吸数について、国が「正常値」として統一的に定めた基準はありません。目安から外れているだけで異常と判断せず、普段の測定値や自覚症状、測定時の状況も含めて評価する必要があります。ここでは、公的資料で確認できる数値と、年齢による違い、数値の変化から考えられる状態について解説します。
一般に用いられる基準値の目安
成人のバイタルサインには、臨床で広く用いられている目安があります。ただし、運動直後や食後、入浴後、緊張しているときなどは、一時的に数値が変化することがあります。測定値を確認する際は、測定時の状況もあわせて考慮しましょう。また、持病や服薬によって普段の数値が異なる人もいるため、経過を継続して観察することが大切です。
成人のバイタルサインの目安
項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
体温 | 36~37℃程度 | 公的に統一された基準はなく、平熱には個人差がある |
血圧 | 下記の公的な判定値を参照 | 「正常値」の定義は資料によって異なる |
脈拍 | 60~100回/分程度 | 公的に統一された基準はない |
呼吸数 | 12~20回/分程度 | 公的に統一された基準はない |
SpO₂ | 96~99% | 日本呼吸器学会が示す健康な方の標準値 |
SpO₂について、日本呼吸器学会の一般向け資料「よくわかるパルスオキシメータ」では、「健康な方のSpO₂の標準値は96~99%です」と記載されています。同資料では、プローブを装着してすぐではなく、脈拍が安定する20~30秒後に数値を読むことも示されています。
公的資料で示されている血圧の判定値
血圧については、公的資料で具体的な数値が示されています。厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」の別紙5「健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値」では、収縮期血圧は保健指導判定値が130mmHg以上(受診勧奨判定値は140mmHg以上)、拡張期血圧は保健指導判定値が85mmHg以上(受診勧奨判定値は90mmHg以上)とされています。これらは健診結果を受けて保健指導や受診を勧める際の判定値であり、「正常値」の定義とは異なる点に注意が必要です。
また、同省の生活習慣病に関する情報サイト(e-ヘルスネット)の解説「高血圧」では、診察室血圧における正常血圧は収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満、高血圧は「収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上」と説明されています。測定した場所や資料によって基準の示し方が異なるため、数値を引用する際はどの資料に基づくものかを確認しましょう。
出典:標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)|厚生労働省
出典:高血圧|生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)|健康日本21アクション支援システムWebサイト
高齢者・子どもの傾向の違い
バイタルサインの数値の傾向は、年齢によって異なります。子どもは、年齢が低いほど脈拍数や呼吸数が成人より多い傾向にあります。一方、高齢者は、加齢に伴う身体機能の変化に加え、基礎疾患や服薬の影響を受けることがあります。そのため、年齢別の目安だけで判断せず、本人の普段の測定値や状態と比較することが大切です。
年代別の特徴
対象 | 特徴 |
|---|---|
成人 | 一般的な目安を参考に評価する |
高齢者 | 基礎疾患や服薬の影響を受けやすい |
子ども | 脈拍数・呼吸数が成人より多い傾向がある |
共通 | 普段の測定値との違いも判断材料になる |
バイタルサインの変化から考えられる状態
バイタルサインが普段の値や一般的な目安から大きく外れている場合は、体調に変化が起きている可能性があります。例えば、発熱がある場合は感染症や炎症、血圧が急激に低下した場合は脱水や循環状態の悪化などが疑われます。また、脈拍数や呼吸数の増加には、発熱・運動・緊張・痛みなど、さまざまな要因が関係します。ただし、測定値だけで病気を断定することはできません。症状や既往歴、他の検査結果も含めて総合的に評価し、必要に応じて医療機関を受診してください。
バイタルサインの変化から考えられる主な状態
バイタルサイン | 数値の変化から考えられる例 |
|---|---|
体温 | 感染症や炎症、低体温症など |
血圧 | 血圧の上昇・低下、脱水など |
脈拍 | 発熱・脱水・緊張、不整脈など |
呼吸数 | 呼吸数や呼吸の深さの変化、発熱や痛み、酸素不足など |
SpO₂ | 酸素化の低下、低酸素状態など |
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バイタル測定の方法
バイタルサインの測定値は、測定方法や姿勢、周囲の環境などによって変化することがあります。できるだけ正確な数値を得るためには、患者や利用者を安静にし、測定機器を適切に使用することが大切です。ここでは、測定前に確認するポイントや各項目の測定方法、よくあるミスを解説します。
測定前に確認すべきポイント
バイタルサインを測定する前に、患者や利用者の状態と測定環境を確認します。運動直後や食後、入浴後などは一時的に数値が変化しやすいため、できるだけ安静な状態で測定します。測定前には目的や手順を説明し、不安や緊張を和らげることも大切です。測定機器が正常に作動しているか確認し、毎回同じ条件で測定することで、経過を比較しやすくなります。
測定前のチェックポイント
- 患者や利用者が安静な状態か確認する
- 運動・食事・入浴の直後はできるだけ避ける
- 測定の目的や手順を説明する
- 測定機器に異常がないか確認する
- 毎回できるだけ同じ条件で測定する
各項目の正しい測定方法
バイタルサインには、項目ごとに適切な測定方法があります。体温は使用する体温計に応じた位置へ正しく当てます。血圧は、腕を心臓と同じ高さに置き、測定中に動かしたり会話したりしないようにします。脈拍は、1分間の脈拍数に加えて、リズムや強さも観察の対象です。呼吸数は、本人が測定を意識すると変化しやすいため、自然な呼吸を観察します。SpO₂の測定時は、指先にパルスオキシメータを装着し、数値が安定してから読み取るのが基本です。
各項目の測定方法
項目 | 主な測定方法 |
|---|---|
体温 | 測定部位に体温計を正しく当てる |
血圧 | 腕を心臓の高さに保って測定する |
脈拍 | 脈拍数・リズム・強さを確認する |
呼吸数 | 自然な呼吸を1分間観察する |
SpO₂ | パルスオキシメータを指先に装着する |
パルスオキシメータを使用する際の注意点
パルスオキシメータについては、厚生労働省が2022年(令和4年)2月3日付の事務連絡で、一般社団法人電子情報技術産業協会が作成した「パルスオキシメータの適正広告・表示ガイドライン」を周知しています。同ガイドラインでは、血中酸素飽和度の測定値の理解には呼吸生理学的な基礎的理解が必要であること、医師の指導なくパルスオキシメータの数値によって疾患の自己判断を行わないことが示されています。さらに、正しい位置に装着して静止することや、マニキュア・ジェルネイルなどを外して測定するよう求めています。あわせて、測定値が実際の値から数%程度ずれる可能性や、長時間の装着による低温やけど・皮膚炎のリスクについても注意喚起されています。
測定時によくあるミスと注意点
バイタルサインは、姿勢や測定機器の装着方法、測定時の行動によって数値が変動しやすくなります。例えば、血圧測定時に足を組んだり、会話をしたりすると、血圧が普段より高く測定されることがあります。また、呼吸数を測定する旨を伝えると呼吸が変化するケースも多いため、脈拍の測定に続けて自然な呼吸を観察するとよいでしょう。測定値だけで状態を判断せず、表情・顔色・呼吸の様子・自覚症状などもあわせて確認します。
測定時によくあるミス
ミス・注意点 | 影響 |
|---|---|
運動や移動の直後に測定する | 血圧や脈拍数などが変動しやすい |
測定中に会話をする | 血圧や脈拍数が変動しやすい |
呼吸を意識させてしまう | 呼吸数が正確に測れない |
機器を適切な位置に装着していない | 正確な測定値が得られない可能性がある |
数値だけで判断する | 患者の状態を見落とす可能性がある |

バイタルが重要とされる理由
バイタルサインは、患者の生命活動を客観的に把握するための基本的な情報です。数値の変化から体調の悪化や回復の経過を捉えられるため、医療・看護・介護の現場で広く活用されています。ここでは、体調変化の把握に役立つ理由や、診断・治療、看護・介護で重視される理由について解説します。
体調変化に早く気づける
バイタルサインを継続して測定し、普段の値と比較することで、体調の変化を早い段階で捉えやすくなります。病気やけがによる変化は、自覚症状がはっきり現れる前に、体温・血圧・脈拍・呼吸数などに表れることがあります。例えば、感染症では発熱や脈拍数の増加、脱水では血圧の低下や脈拍数の増加がみられる場合があります。こうした変化を早期に把握することで、必要な観察や対応につなげられます。
バイタルサインから気づける主な変化
バイタルサイン | 気づける変化の例 |
|---|---|
体温 | 発熱、低体温 |
血圧 | 血圧の上昇・低下、循環状態の変化 |
脈拍 | 脈拍数やリズムの変化、脱水など |
呼吸数 | 呼吸数や呼吸の深さの変化、酸素不足など |
SpO₂ | 酸素化の低下、低酸素状態など |
診断や治療方針の判断材料になる
バイタルサインは、医師が患者の状態を評価し、検査や治療の必要性を判断する際の材料になります。問診や検査結果とバイタルサインを組み合わせることで、患者の状態を多角的に評価できます。また、投薬や点滴、酸素療法などを実施した後の状態を確認するためにも、継続的な測定が行われます。数値が急激に変化した場合は、再測定や診察、追加検査、治療内容の見直しなどが検討されます。
バイタルサインが活用される場面
- 診断の補助
- 重症度の評価
- 治療方針を検討する際の参考
- 投薬や治療後の経過確認
- 緊急対応の必要性の判断
看護・介護で継続的な観察が求められる
看護や介護では、患者や利用者の状態を継続的に観察することが、安全なケアにつながります。高齢者や慢性疾患のある方は、自覚症状がはっきりしないまま体調が変化することがあります。そのため、状態に応じて定期的にバイタルサインを測定し、普段との違いを確認します。介護職が測定値や本人の様子を記録しておくと、異常が疑われる際に看護師や医師へ具体的な情報を共有できます。
継続的な観察が重要な理由
理由 | 内容 |
|---|---|
体調変化の把握 | 普段との違いに気づきやすい |
経過観察 | 回復や悪化の状況を把握できる |
情報共有 | 医師・看護師・介護職が共通認識を持てる |
早期対応 | 必要な受診や処置につなげやすい |
安全なケア | 患者・利用者に適切な支援を提供できる |
介護職によるバイタル測定の法的な位置づけ
介護現場でのバイタル測定については、国の通知で位置づけが整理されています。厚生労働省医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」(2005年(平成17年)7月26日、医政発第0726005号)の別紙では、「原則として医行為ではないと考えられるもの」として、次の行為が挙げられています。
- 水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、および耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること
- 自動血圧測定器により血圧を測定すること
- 新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
これらは一定の条件のもとで医行為に該当しないと整理されたものであり、どのような状態の人にも自由に実施してよいという意味ではありません。利用者の状態が安定していることなどが前提となるため、判断に迷う場合は看護師や医師へ確認してください。
出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)(◆平成17年07月26日医政発第726005号)|厚生労働省
バイタルが活用される場面
バイタルサインは、病院・クリニックだけでなく、介護施設や在宅介護、健康診断、家庭での健康管理にも活用されています。測定する目的は、体調変化の把握や治療後の経過観察、日々の健康管理など、場面によって異なります。ここでは、バイタルサインが活用される代表的な場面を解説します。
病院・クリニックでの活用
病院やクリニックでは、診察前や処置・治療の前後、入院中などにバイタルサインを測定します。測定値を症状や検査結果などと組み合わせることで、病状の評価や緊急性の判断、治療方針の検討に役立てます。また、手術前後や薬の投与後には、バイタルサインを継続的に測定し、患者の状態や治療後の変化を確認します。
病院・クリニックでの活用例
- 診察前の健康状態の確認
- 病気の重症度の評価
- 手術前後の経過観察
- 投薬や治療後の経過確認
- 入院患者の継続的な状態管理
介護施設・在宅介護での活用
介護施設や在宅介護では、利用者の体調変化を把握するために、必要に応じてバイタルサインを測定します。特に高齢者は、体調の変化を自覚しにくい場合や、自分で症状を伝えることが難しい場合があります。発熱や血圧の変化、SpO₂の低下などがみられた場合は、本人の症状や普段の測定値も確認し、必要に応じて看護師や医療機関へ連絡します。
介護現場での活用例
活用場面 | 目的 |
|---|---|
日常的な健康チェック | 体調変化の把握 |
デイサービス利用時 | 利用可否の判断 |
訪問介護・訪問看護 | 健康状態の確認 |
医療機関への報告 | 異常時の情報共有 |
健康診断や日常生活での活用
バイタルサインは、健康診断や日常生活での健康管理にも活用されています。健康診断では、血圧や脈拍などの測定結果を、問診や血液検査、尿検査などの結果とあわせて健康状態の評価に用います。自宅では、体温計や血圧計などを使い、日々の測定値を記録することも健康管理に役立ちます。普段の測定値を記録しておくと、いつもと異なる値がみられた場合に受診の検討や生活習慣の見直しにつなげられます。
日常生活で活用されるバイタルサイン
測定項目 | 主な活用目的 |
|---|---|
体温 | 発熱や体温変化の確認 |
血圧 | 日々の血圧管理 |
脈拍 | 運動時や安静時の体調確認 |
SpO₂ | 酸素化の状態の確認 |
測定値の記録 | 健康管理・受診時の参考情報 |

バイタルに関する略語一覧
医療・看護の現場では、バイタルサインを簡潔に記録・共有するため、BTやBPなどの略語が使われます。ただし、使用する略語や表記方法は医療機関によって異なる場合があります。記録を確認する際は、それぞれの略語が何を示しているのかを理解しておきましょう。ここでは、代表的なバイタルサインの略語や関連する用語、カルテでよく使われる記載方法について解説します。
BT・BP・PR・RRの意味
バイタルサインを記録する際は、体温をBT、血圧をBP、脈拍をPR、呼吸数をRRと表すことがあります。これらの略語は、病院やクリニック、介護施設などで使用され、カルテや看護記録、申し送りなどに記載されます。それぞれの意味を理解しておくと、カルテや看護記録の内容を読み取りやすくなります。
代表的なバイタルサインの略語
略語 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
BT | Body Temperature | 体温 |
BP | Blood Pressure | 血圧 |
PR | Pulse Rate | 脈拍 |
RR | Respiratory Rate | 呼吸数 |
SpO₂・JCS・GCSなど関連する略語
基本的なバイタルサインの略語に加え、酸素化や意識レベルを表す略語もカルテや看護記録で使用されます。SpO₂は、パルスオキシメータで測定する経皮的動脈血酸素飽和度を表し、酸素化の状態を確認する際に用いられます。意識レベルの評価には、日本で広く使われるJCS(Japan Coma Scale)や、国際的に用いられるGCS(Glasgow Coma Scale)があります。バイタルサインとあわせて確認することで、意識状態や酸素化を含めて全身状態を評価できます。
関連する主な略語
略語 | 意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
SpO₂ | 経皮的動脈血酸素飽和度 | 呼吸状態・酸素化の評価 |
JCS | Japan Coma Scale | 意識レベルの評価 |
GCS | Glasgow Coma Scale | 意識障害の重症度評価 |
HR | Heart Rate | 心拍数(施設によって使用) |
T | Temperature | 体温(BTの代わりに使われる場合もある) |
カルテでよく使われる記載方法
カルテや看護記録では、略語の後に測定値と単位を記載する方法があります。例えば、「BT 36.6℃、BP 118/72mmHg、PR 72回/分、RR 16回/分、SpO₂ 98%」のように記録します。また、意識レベルは「JCS 0」や「GCS E4V5M6」などの形式で記載されます。数値だけでなく、測定時の姿勢、酸素投与の有無、症状、表情、普段との違いなども記録すると、患者の状態をより正確に共有できます。
カルテ記載例
項目 | 記載例 |
|---|---|
体温 | BT 36.6℃ |
血圧 | BP 118/72mmHg |
脈拍 | PR 72回/分 |
呼吸数 | RR 16回/分 |
酸素飽和度 | SpO₂ 98% |
意識レベル | JCS 0/GCS E4V5M6 |

まとめ
バイタルは、英語の「vital」に由来し、医療分野では生命活動や健康状態に関わる情報を指す言葉です。バイタルサインは「生命徴候」を意味し、体温・血圧・脈拍・呼吸数を中心に、必要に応じてSpO₂や意識レベルを加えて患者や利用者の状態を客観的に評価する指標を指します。
数値の見方には注意が必要です。体温・脈拍・呼吸数について国が統一的に定めた「正常値」はなく、臨床で用いられている目安と、公的資料に示された判定値は性質が異なります。血圧については、厚生労働省の健診・保健指導プログラムで保健指導判定値と受診勧奨判定値が示されており、e-ヘルスネットでは正常血圧と高血圧の定義が解説されています。SpO₂の標準値は学会資料に示されています。
測定にあたっては、安静な状態で毎回同じ条件を保ち、機器を正しく装着することが基本です。パルスオキシメータについては、数値だけで疾患を自己判断しないよう国の事務連絡で周知されています。また、介護職による体温測定・自動血圧測定器による血圧測定・パルスオキシメータの装着は、一定の条件のもとで原則として医行為ではないと整理されています。測定値だけで判断せず、本人の様子や普段との違いとあわせて確認し、必要に応じて看護師や医師へ相談してください。
よくある質問
Q.バイタルとはどういう意味ですか?
バイタルとは、英語の「vital(生命に関わる・重要な)」に由来する言葉です。医療現場では、患者の生命活動や健康状態に関する情報を指します。医療現場で「バイタルを測る」といった場合は、一般的に体温・血圧・脈拍・呼吸数などのバイタルサインを測定することを意味します。
Q.バイタルサインとは何ですか?
バイタルサインとは、「生命徴候」を意味し、人が生命活動を維持できているかを確認するための基本的な指標です。代表的な項目は、体温(BT)・血圧(BP)・脈拍(PR)・呼吸数(RR)です。医療機関や患者の状態によっては、SpO₂や意識レベルなどもあわせて確認します。これらの数値は、体調変化の把握や、治療後の経過を確認する際の判断材料になります。
Q.バイタルチェックとは何をすることですか?
バイタルチェックとは、体温・血圧・脈拍・呼吸数などのバイタルサインを測定し、健康状態を確認することです。必要に応じて、SpO₂や意識レベルなども確認します。測定値を記録し、普段の値や前回の結果と比較することで、体調変化の把握や治療後の経過観察に役立てます。
Q.バイタルと健康診断は何が違いますか?
バイタル測定は、その時点の体温・血圧・脈拍・呼吸数などを確認し、現在の状態を把握するものです。一方、健康診断は、問診や身体測定、血液検査、尿検査、胸部X線検査などを組み合わせ、健康状態や病気のリスクを総合的に確認する目的で行われます。バイタル測定は健康診断の検査項目に含まれることがありますが、健康診断そのものを指す言葉ではありません。
Q.介護職員がバイタルを測定してもよいのですか?
厚生労働省医政局長通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」(2005年(平成17年)7月26日、医政発第0726005号)の別紙では、腋下での体温計測および耳式電子体温計による外耳道での体温測定、自動血圧測定器による血圧測定、新生児以外で入院治療の必要がない人に対するパルスオキシメータの装着が、「原則として医行為ではないと考えられるもの」として挙げられています。ただし、これは一定の条件のもとでの整理であり、利用者の状態によって判断が異なる場合があります。実施の可否や測定値の評価については、看護師や医師へ確認してください。
出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)(◆平成17年07月26日医政発第726005号)|厚生労働省
[メディルン]編集部
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