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賞与(ボーナス)は、従業員のモチベーションを高め、頑張りに報いるために企業が支給する特別な給付金です。しかし、法律で義務付けられているわけではないため、支給されるかどうかは企業次第となっています。
この記事では、賞与の種類や計算方法、給与との違いについて詳しく解説します。人事担当者や経営者の方はもちろん、従業員の方にも役立つ情報が満載です。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
賞与とは、給与とは別に企業から従業員に対して支給される一時的な報酬を指します。国税庁では、以下のように賞与を定義しています。
賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいいます。なお、給与等が賞与の性質を有するかどうか明らかでない場合、次のようなものは賞与に該当するものとされます。 (1) 純益を基準として支給されるもの (2) あらかじめ支給額または支給基準の定めのないもの (3) あらかじめ支給期の定めのないもの。ただし、雇用契約そのものが臨時である場合のものを除きます。 (4) 法人税法第34条第1項第2号≪事前確定届出給与≫に規定する給与(他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるものを除きます。) (5) 法人税法第34条第1項第3号に規定する業績連動給与 |
多くの企業では、夏季賞与や冬季賞与として年に2回支給されることが一般的です。加えて、業績に応じて臨時に支給されることもあり、企業によって支給回数や時期が異なります。
賞与の最大の特徴は、企業の業績や従業員個人の貢献度に基づいて金額が決定される点です。全員が一律で同じ額を受け取るわけではなく、個々の成績や会社の業績次第で大きく変動することがあります。また、企業の方針や就業規則により、賞与の有無や支給額が大きく異なります。そのため、従業員は事前に自社のルールをよく確認しておくことが重要です。
賞与は従業員にとって非常に大きな収入源となることが多く、家計や貯蓄計画においても重要な要素です。また、賞与は従業員のモチベーションアップにもつながるため、企業にとっても有効な報酬制度の一つです。
賞与には、基本的に「基本給連動型」「業績連動型」「決算賞与」の3つの種類があります。それぞれに異なる目的や計算方法があり、企業によってどのタイプを採用するかが決まります。ここでは、これら3つのタイプについて詳しく見ていきます。
賞与のタイプ | 主な特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
基本給に連動した賞与 | 基本給に基づいて支給額が決まる | 支給額が安定しており、従業員は支給額を予測できる | 個人の成果が反映されにくい |
業績に基づく賞与 | 企業・部門・個人の成果に応じて支給額が決まる | 成果が反映され、従業員のモチベーションが向上する | 業績次第では支給額が減ったり、支給されなかったりする |
決算による賞与 | 決算時の企業利益に基づいて支給額が決まる | 企業全体の利益に基づいて、公平に分配される | 利益がない年は支給されない |
基本給連動型賞与は、多くの企業で採用されている制度です。基本給を基準に、その何カ月分を賞与として支給する仕組みです。例えば、基本給が30万円の従業員が2カ月分の賞与を受け取る場合、賞与額は60万円となります。
基本給連動型の賞与は、個々の従業員に対する報酬額が事前に明確になるため、従業員にとっても安心感があります。また、企業側にとっても、予算管理や支出計画を容易に行うことができるメリットがあります。
ただし、この方式には課題もあります。個人の業績や成果が必ずしも反映されないため、特に優秀な従業員にとっては不公平に感じる場合があります。
業績連動型賞与は、企業全体や部門、さらには個人の成果に基づいて支給額が変動する制度です。この方式では、会社全体の業績が好調であれば支給額が増え、逆に業績が悪化すれば支給されないこともあります。また、個人の業績が評価されることにより、業績に応じた報酬を受け取ることが可能です。
この方式は、特に成果を上げた従業員にとっては大きな報酬を得るチャンスとなり、モチベーション向上につながります。しかし、会社全体の業績次第では、優秀な従業員でも賞与が減額される、あるいは支給されないという不安定な側面もあり、リスクも伴います。特に、外部環境の影響を受けやすい業種では、企業業績が急激に悪化することもあるため、個人の成果だけでなく、全体の状況も考慮する必要があります。
決算賞与は、企業の決算時期に合わせて支給される特別な報酬です。企業の利益が大きい場合、通常の賞与とは別に支給されることがあります。このタイプの賞与は、企業全体の業績を反映するため、従業員一人ひとりの業績や成果は関係ありません。例えば、企業の利益が非常に大きかった年度には、決算賞与として従業員に一律で支給されることがあります。
企業にとっては、決算賞与を支給することで従業員の士気を高める効果があります。また、従業員にとっても業績が良い年には思わぬボーナスを得ることができる点が魅力です。一方で、業績が低迷した場合には支給が見送られることもあり、安定性に欠けるというデメリットもあります。
賞与の計算方法は、企業ごとに異なる場合があります。主に「基本給×月数」「業績連動型」「等級別」という3つの計算方式が一般的です。ここでは、具体的な数値を用いてそれぞれの計算方法を詳しく説明します。
計算方法 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
基本給×月数 | 基本給に月数を乗じて計算 | 支給額が安定している従業員にとって金額を予測 しやすい |
業績連動型 | 企業の業績や個人の評価に 基づいて算出 | 年ごとに変動する可能性があるインセンティブ効果を 期待できる |
等級別 | 従業員の役職や等級に応じて設定 | 役職や責任に応じて金額が決まる従業員の モチベーション向上に効果がある |
なお、2021年に日本経済団体連合会が実施した「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」によると、業績連動方式を導入している企業の割合は 55.2%でした。2016年から6年連続で5割を超えており、賞与の計算方法のなかでもメジャーな方法であることが分かります。
この方式では、賞与の支給額は基本給の何カ月分として計算されます。例えば、基本給が25万円で、賞与が基本給の3カ月分であるとすると、以下のように計算します。
計算式:
基本給25万円 × 3カ月分 = 75万円
この場合、賞与額は75万円となります。基本給に連動しているため、支給額が安定しているのがこの方式の特徴です。多くの企業で採用されており、従業員にとっては予測しやすい賞与計算方法です。
業績連動型の計算方法では、企業の業績や個人の業績評価に基づいて支給額が決まります。例えば、企業の業績が好調で、個人の評価も高い場合は支給額が大きくなる可能性があります。
仮に、評価基準により個人の賞与評価が「A」とされ、賞与のベース額が50万円だとします。また、会社全体の業績により支給率が120%だとした場合の計算式は、以下の通りです。
計算式:
50万円 × 1.2 = 60万円
この場合、支給額は60万円となります。個人の評価と企業の業績に応じて変動するため、支給額は年ごとに大きく変わる可能性があります。
等級別の賞与計算方法では、従業員の役職や等級に応じて支給額が決まります。例えば、等級が高いほど賞与額も高く設定されることがあります。
仮に、従業員Aの等級が「3」で、等級に応じた支給額が50万円であったとします。等級が上がるにつれて賞与の基準額も増え、等級「5」の従業員Bには70万円が支給されるというように、役職や責任に応じて報酬が決まります。
このように、等級別の賞与は役職や責任に応じた報酬体系で、従業員全体のモチベーションを高める効果があります。
賞与の支給時期は、企業によって異なります。多くの企業では年に1~2回、夏と冬に支給されることが一般的です。例えば、7月に夏季賞与、12月に冬季賞与として支給されることが多く、年末に向けての支出や計画に対して大きなサポートとなります。
また、企業によっては年度末や決算期に合わせて臨時ボーナスや決算賞与が支給されることもあります。決算賞与の場合、3月決算の企業であれば、その直後の4月や5月に支給されることが一般的です。このように、賞与は企業の方針や業績次第で支給のタイミングが異なるため、従業員はあらかじめ支給時期を確認し、計画的な資金管理を行うことが求められます。
賞与からは、法律に基づき所得税や社会保険料が控除されます。これらの控除は通常の給与と同様に計算され、賞与の金額に応じて変動します。
賞与は給与と同様に課税対象になります。税率は賞与支給前月の給与などを基準に決まり、賞与額が高いほど税率も高くなります。所得税は会社が賞与から天引きして納付するので、従業員の手取り額は所得税控除後の金額になります。年末調整の対象にはならないので、翌年の確定申告で精算が必要な場合もあります。
所得税の算出方法は、通常の場合、前月の給与の10倍を超える賞与が支払われた場合、前月に給与の支払いがない場合という3つのケースで異なります。以下に、それぞれの計算方法と計算例をまとめました。
【通常の場合】
計算方法 | 具体例 |
---|---|
1. 前月の給与から社会保険料等を差し引く 2. 算出率の表から税率を求める 3. 与から社会保険料等を差し引いた金額に上記で算出した税率を乗じる | 前月の給与が285,454円、賞与の金額が389,559円、扶養親族等の数が3人の場合の算出方法は、以下の通りです。 1. 給与と扶養人数をもとに、算出率の表から税率を確認する。この場合、税率は2.042%となる 2. 賞与の金額389,559円に2.042%を乗じると、所得税額は7,954円となる |
【前月の給与の10倍を超える賞与が支払われた場合】
計算方法 | 具体例 |
---|---|
1. 賞与から社会保険料等を差し引いた金額を6で割る(賞与の計算期間が6か月を超える場合は、12を使用する) 2. 上記で算出した金額に、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を加える 3. 上記で算出した金額をもとに、月額表から税額を確認する 4. 上記の税額から前月の給与に対する源泉徴収税額を差し引く 5. 上記で算出した税額に6を乗じる(賞与の計算期間が6か月を超える場合は、12を使用する) | 前月の給与が166,531円、賞与の金額が1,668,062円、扶養親族等の数が1人の場合の算出方法は、以下の通りです。 1. 1,668,062円を6で割る 2. 上記で算出した278,010円に、前月の給与166,531円を加える 3. 上記で算出した444,541円と、扶養人数をもとに、月額表から税額を確認する。この場合は、16,950円 4. 月額表から、給与166,531円で扶養人数が1人の場合の税額を確認する。この場合は、1,930円 5. 上記で算出した16,950円から1,930円を差し引き、6を乗じると、所得税額は90,120円となる |
【前月に給与の支払がない場合】
計算方法 | 具体例 |
---|---|
1. 賞与から社会保険料等を差し引いた金額を6で割る(賞与の計算期間が6か月を超える場合は、12を使用する) 2. 上記の金額を月額表に当てはめて、税額を求める 3. 上記で算出した税額に6を乗じる(賞与の計算期間が6か月を超える場合は、12を使用する) | 賞与の金額が769,300円(計算期間6か月)、扶養親族等の数が1人の場合の算出方法は、以下の通りです。 1. 賞与の金額769,300円を6で割る。この場合は、128,216円 2. 上記で算出した税額128,216円と、扶養人数1人を月額表に当てはめて、税額を求める。この場合は、530円 3. 530円に6を乗じると、所得税額は3,180円となる |
賞与からは、支払った社会保険料の金額について控除を受けられます。国税庁のホームページでは、社会保険料の控除の対象となるものとして、以下のものを紹介しています。
・健康保険、国民年金、厚生年金保険および船員保険の保険料で被保険者として負担するもの ・国民健康保険の保険料または国民健康保険税 ・高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料 ・介護保険法の規定による介護保険料 ・雇用保険の被保険者として負担する労働保険料 ・国民年金基金の加入員として負担する掛金 ・独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料 ・存続厚生年金基金の加入員として負担する掛金 ・国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、恩給法等の規定による掛金または納金等 ・労働者災害補償保険の特別加入者の規定により負担する保険料 ・地方公共団体の職員が条例の規定によって組織する互助会の行う職員の相互扶助に関する制度で、一定の要件を備えているものとして所轄税務署長の承認を受けた制度に基づきその職員が負担する掛金 ・国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律の公庫等の復帰希望職員に関する経過措置の規定による掛金 ・健康保険法附則または船員保険法附則の規定により被保険者が承認法人等に支払う負担金 ・租税条約の規定により、当該租税条約の相手国の社会保障制度に対して支払われるもの(我が国の社会保障制度に対して支払われる当該租税条約に規定する強制保険料と同様の方法ならびに類似の条件および制限に従って取り扱うこととされているものに限ります。)のうち一定額 |
社会保険料の金額は、賞与額から1,000円未満を切り捨てた金額(標準賞与額)に各保険料率をかけて算出します。ただし、標準賞与額には上限があり、それを超える部分は保険料がかかりません。また、雇用保険料は賞与額に直接保険料率をかけて計算します。
賞与には多くの利点がありますが、従業員は賞与に関するいくつかの注意点を理解しておく必要があります。
賞与は法律上の義務ではないため、支給されないこともあります。また、賞与額は企業業績や個人の貢献度などによって左右されるため、前年度より低くなる可能性もあります。賞与が支給されない、前年度よりも下がるリスクがあることを考慮し、賞与を前提にした大きな支出には注意が必要です。
また、賞与は翌年の住民税額に影響を与える場合があります。賞与が多い年は、翌年の住民税額が増加するため、影響を予測し、税金対策を行う際に賞与額を考慮することが大切です。
法律上、企業が賞与を支給する義務はありません。給与は毎月の支払いが法的に義務付けられていますが、賞与については企業の裁量によるため、業績が悪化した場合などには賞与が支給されないこともあります。特に、賞与が高額な企業であっても、経済的な理由や業績不振により賞与がゼロとなるリスクがあります。したがって、賞与を期待しすぎず、常に給与だけで生活計画を立てることが重要です。
ただし、就業規則や労働契約で支給が約束されている場合、従業員はその支給を求める権利があります。もし、約束された賞与が支給されない場合、従業員は未払い賃金を請求することが可能です。
賞与の支給額は、企業の業績や個人の貢献度に左右されるため、固定的な金額ではありません。企業の業績が悪化すれば、賞与が減額されることもあり、逆に業績が好調であれば増額されることもあります。特に、業績連動型の賞与制度を採用している企業では、この傾向が顕著です。したがって、賞与を前提にした大きな支出を計画する際には、リスクを考慮する必要があります。
賞与の金額が大きくなると、翌年の住民税額に影響を与えることがあります。賞与が多い年は、翌年の住民税額が増加するため、その影響を予測しておくことが大切です。特に、住民税は翌年に徴収されるため、賞与が多い年の翌年に予想外の税負担が発生することもあります。従業員は、税金対策を行う際に賞与額を考慮に入れる必要があります。
賞与は、企業の業績や個人の貢献度に応じて支給される特別な報酬です。賞与には「基本給連動型」「業績連動型」「決算賞与」の3つの主な種類があり、それぞれに異なる支給条件や計算方法が適用されます。賞与の支給額は多くの場合、企業の方針や業績に大きく依存しており、必ずしも支給が保証されているわけではありません。
また、賞与は所得税や社会保険料の控除対象となり、手取り額は控除額を差し引いた後の金額となります。さらに、翌年の住民税にも影響を与える可能性があるため、賞与が多い年には税金対策を十分に行うことが必要です。
賞与は求職者が確認する項目のひとつです。賞与を支給することで応募者の増加を期待できるため、まだ支給していないという場合にはこれを機に支給を検討してみるとよいでしょう。
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