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MBOとは企業買収を指し、M&Aの手法の一つです。株式の取得を目的に実施される施策で、M&AやTOBなどの似たような手法と混同されるケースが多々あります。
本記事では、MBOの概要や類義語、その他の手法との違いやメリットについて解説しています。経営の見直しや強化を検討されている経営者様は、ぜひ最後まで読み進めてください。
<この記事で紹介する4つのポイント>
目次
MBOとは、証券用語で「Management by Objectives」の略称です。
会社の経営陣が自社の株式や一事業部門を買収し、会社の所有権・経営権を取得する手法として用いられています。
MBOは基本的に自社株式の買収を示すため、他社の株式を買収する言葉として使われていません。
主に親会社が子会社やグループ会社、またはそれらの一事業部門を買収し、切り離して独立させることをMBOと呼んでいます。
ビジネスシーンでMBOが必要とされているシーンは、以下のような場面です。
・株式の非公開化 ・上場廃止子会社やグループ会社、または一事業部門の独立 ・M&A |
自社株式の買収は資本の調整や株主還元などとされていますが、MBOの目的は組織全体の目標達成を主としています。
MBOは、1954年にアメリカの経営学者ピーター・ドラッカーが自著で提唱した組織のマネジメント手法です。日本語に訳すと「目標管理」の意味になります。これは組織と従業員がお互いの目標を擦り合わせることで目標を明確にし、目標達成の効率化を図るための概念です。
MBOは、目標達成のための自律・管理・コミュニケーションと、3つの要素を主軸にしています。
目標を管理することで、従業員のスキルアップやモチベーションアップなどの能力開発を促します。それらの行動を通じて、組織全体が方向性を一致させることで、業務の効率化が可能です。
組織と個人が連携し、明確に目標と目標達成までを自律的に管理するプロセスを、MBOのコンセプトとしています。
MBO・TOB・M&Aは、定義や目的の異なる経営戦略の手法です。ビジネスシーンでは目的達成の手段として、それぞれの手法が検討されています。
まず、直訳した用語を比較してみましょう。
用語 | 意味 |
MBO | 目標の管理(Management by Objectives) |
TOB | 株式公開買付け(Take Over Bid) |
M&A | 合併と買収(Mergersand Acquisitions) |
3つは株式取得という点では共通していますが、それぞれの目的やプロセス、ベクトルなどが決定的に異なります。
先述したように、MBOは目標を自律的に管理することで、個人の能力開発などを促して効率良く目標達成を図る概念です。主に自社株の買収で、グループ会社などの独立を目的にしています。
TOBとは、株式の買付価格、買付予定数、買付期間を公告し、商品取引所を介さず売手側の株式を買付する株式公開買付のプロセスです。直訳すると買収入札ですが、主に公開買付を指す言葉として使われています。
融商品取引法では、株式取得の数が3分の1を超える場合には、TOBによって取得すると定められています。一般的な株式取得は商品取引所を通しますが、TOBは市場の外でなければ買付できません。商品取引所で行われない理由は、株価の上昇を抑え、株取引の公平性を保つなどの目的があるためです。
つまり、他社の経営権の獲得など、大量の株式買付のためにTOBが実施されます。
TOBの主な対象は他社の株式です。目的における優先順位は、会社の経営権や特別決議の拒否権獲得であるため、MBOとは方向性が異なります。
M&Aとは、合併と買収が示す通り、複数の企業を統合したり企業を買収したりするのが目的です。基本的に、支配権の移転を伴う合併と買収を指すものの、協力関係を結ぶための提携などを含める場合があります。M&Aの手段としてTOBが用いられるケースがあるため、関連語として登場することもあります。
M&Aは譲受側と譲渡側のそれぞれに目的があり、譲受側は市場の拡大や技術力の獲得など、自社の強化面を重視する傾向です。譲渡側は傘下に入ることで、譲受側の経営改善の機会やブランド力、社会的信用が得られます。
M&Aは自社をターゲットにする場合もありますが、合併や統合の定義や経営権の獲得という観点でMBOとは意味合いが違います。
MBOを実行することにより、次のようなメリットが期待されています。
MBOの主な目的は、自社の株式取得による会社の所有権・経営権の獲得です。自社の所有権の獲得は、実質的にグループ会社の支配権獲得につながります。
株主に経営権が集中することにより、経営方針の一貫性を保ち、主力事業への注力が可能となるでしょう。
短期的な要求は収益の即時性が望める反面、持続的な成長や品質低下、プロジェクトの確実性を下げる可能性があります。
MBOを実施することで、長期的な展望を持ったうえでの会社経営の持続化・継続化・安定化を図ることが可能です。
会社経営は長期的な展望よりも、短期間での成果が求められる傾向にあります。しかしながら、結果的に想定よりも業績が上がらずに、失敗してしまうケースがあります。経営権を集中させたことにより、外部からの短期的な成果の圧力から解放され、経営陣は中長期的な経営展開を目指せます。
MBOは自社の株式取得を行うので、他社による買収のリスクがありません。外部からの干渉や圧力が少なく、経営資源の流出や情報漏洩のリスクを抑えられます。
M&Aの買収と異なり、MBOは子会社やグループ会社などの関連企業を対象としており、買収される側の従業員から理解を得やすいのも特徴的です。経営陣や会社方針の現状維持により、従業員のモチベーション低下リスクを抑えられます。
経営権限が強化されたことにより、マネジメントの強化や迅速な意思決定など、組織全体のパフォーマンス向上が図れます。
MBOの概念から、従業員一人ひとりが目標設定を行うことで、明確な目標による評価の透明性を図れます。結果として、達成度合いに応じた適切な評価に納得を得ることが可能です。
また、経営権の集中によって外部からの影響を受けにくく、柔軟な経営判断と経営の自由度を高められます。
MBOはコンセプトが目標管理であることから、自律的に目標を設定して達成のために行動を起こすものです。個人に主体性を持たせることから、積極的な取組みによる能力やモチベーション向上に期待が持てます。
自社の株式取得は外部に所有権や経営権が移転しないため、会社組織の構成に変化がありません。経営資源や経営陣を含めた人材が変わらないことから、事業と雇用は引き継げます。
会社内部に外部の他社が関与しないため、従業員からの反発が少なくモチベーションを維持できるでしょう。
一般的な株式会社は、複数の株主や投資家を抱えているために、決定や承認に時間がかかります。経営権の集中、統一化で意思決定と実行までの工数を削減することから、MBOの場合は業務が滞ることなくスムーズに進められます。
承認不要で柔軟な決定を行えるようになる結果、会社の重要な意思決定や経営判断をスピーディーに進められるでしょう。
その名が示すように、自社に対して敵対的なものはTOBであるため、ターゲット企業にされた場合には十分な防衛策が必要です。MBOは自社株式と経営権の集中という外部圧力への強化が図れる側面があり、敵対的行動に対して強度の高い防衛力を構築できます。
株式売買のリスクは、自社株の3分の1以上を他社に占有され、経営権や支配権が移転することです。MBOを実施することにより、自社の所有権・経営権・支配権の掌握を強固にすることができます。
TOBは、大量の株式取得を目的として実施される経営戦略です。TOBには友好的TOBと敵対的TOBの2種類があります。敵対的TOBとは、経営陣や取締役会の承認を得ずに、第三者が一方的に株式買収を仕掛けるTOBです。
MBOは自社の株式取得を主としているため、外部からの買収が困難になります。経営権が強化されたことにより、株主である経営陣手動で敵対TOBへの対策を講じやすくなるでしょう。
MBOには、基本の概念を持った4種類の手法があります。それぞれの違いと使い方について解説しましょう。
MEBOとは「Management and Employee Buyout」の略称で、経営者と従業員の共同買収の意味です。MBOが経営陣による買収であるのに対し、MEBOは一部の従業員も参加して買収を行う方法を指します。
簡単に言うと、経営陣と従業員が協力し、会社の株を取得することです。従業員が株の買収に参加することにより、会社の一体化や従業員のモチベーションアップを図れます。
EBOとは「Employee Buy Out」の略称で、従業員が自社の株式を買い取り、会社の経営権や事業を買収することを指します。
MBOやMEBOは経営陣と従業員の共同買収であるのに対し、EBOは基本的に従業員による買収です。主に事業承継を目的としており、経営権を従業員が引き継ぐために実施されています。
近年は企業の後継者不足が問題化しており、事業の長期化における課題となっています。EBOによって後継者不足を解消するのみでなく、企業の経営方針や社内の風習を維持できたり、従業員からの反発が生まれにくかったりするのが特徴です。
MBIとは「Management Buy In」の略称で、投資家・ファンド・金融機関などが、企業や事業を買収することを指します。
自社の株式を買収するのは、経営陣や従業員ではなく外部の人間です。会社の独立や集中化を目的にするMBOとは異なり、MBIは投資の専門家達が経営権を獲得します。Buy Inは商品先物用語で「買戻し」を意味しており、MBIは経営管理者の買戻しという意味です。
MBIの主な狙いは企業の価値を高めることで、目的達成後に経営陣が自社を買戻すか、専門家が経営権を保有し続けるかは、状況によって異なります。
経営陣は会社再建や事業拡大、長期的安定化などを目的に自社株を売却します。一方で、専門家達は経営権や、キャピタルゲインの獲得などを目的としているのが特徴です。
BIMBOとは「Buy-In Management Buyout」の略称で、MBOとMBIを組み合わせた手法です。既存の経営陣と外部の出資者が共同で株式を購入し、双方が協力して会社経営を行うことを目的としています。
MBIは基本的に外部の人間に経営権が移ります。BIMBOは旧経営陣も一部の株を保有し、引き続き経営に関与するため、完全な売却というわけではありません。
BIMBOは経営権を外部と内部で共有してリスク分散し、外部から持ち込まれた知識や技術を活用します。結果として、会社の成長を図る経営戦略として用いられます。
MBOを実施する場合、自社の株式を買い取るための土台作りから始めます。流れ的にはM&Aと同じなため、経営権が変わらないM&Aと言えるでしょう。
MBOの基本的な流れを解説します。
まず、MBOでは自社株を取得するための子会社を設立します。設立された子会社はSPC(Special Purpose Company)と呼ばれ、特別目的会社の意味が示すように、MBOを目的とした子会社です。
SPCは最終的にMBO対象企業と合併するため、株式取得のために設立されるケースが増えています。そのため、MBO対象企業の価値を算定する専門家が必要です。
設立されたSPCは、株主から株式を買収するための資金調達を行います。
SPCを設立する主な理由は、資金調達の効率化とリスク分散などが狙いです。
設立されたSPCは法人格を持ち、資金と負債を独立管理します。資金調達時の資金の独立管理が可能となり、負債の責任をMBO対象会社が直接的に背負うことは基本的にありません。
資金調達が完了したあとは、合併対象の既存株主から株式を取得をします。株式取得はTOBで実施されるケースが多いです。
MBO対象企業の株式を取得したら、対象企業を子会社化させます。子会社化した対象企業は自社株を保有しているため、SPCと子会社の合併によって自社の株式は全て自社の経営陣に戻ってくるという算段です。
以上がMBOの流れになります。
MBOには、成功までのプロセスにいくつかの注意点があります。各注意事項を確認しながら、円滑にMBOを進めてください。
上場企業がMBOを実施したとき、証券取引所の要件によって株式譲渡制限にかかる場合があります。
もしも株式非公開になった場合、公開市場での資金調達が不可能になり、株式取得の手段が減ってしまうリスクがあるのです。
株式会社にとって市場は主要な資金調達の場であるため、その後の資金繰りが困難になる可能性が高くなります。
対象株式会社の株式を買い取るとき、両社の利害による相違で対立に発展するケースがあります。
基本的に経営陣は株式を安く買いたいと考え、既存株主は高く売りたいと考えるのが一般的です。利益相反関係の発生により、対立に発展して双方に合意がなければMBOが成立しないリスクを背負います。
MBO成功のためには、経営陣と既存株主の交渉を慎重に進め、対立が発生しない契約と状況の構築が重要です。
MBOは子会社やグループ企業の株式を取得するため、基本的に経営陣は関連会社を含めた内部の人間のみになります。経営陣や経営方針が現状維持になりやすいため、経営に変革が起こりにくく、変化への対応が難しくなる場合があるのです。
経営体質が変わりにくいために、改善すべきところが放置されたり、新しい文化や外部の知識が流入しにくかったりします。結果として、変化に乏しく長期的に成長しにくい点は注意が必要です。
本記事では、MBOについてメリットとデメリットやMBOの種類、実施の流れと注意点について解説しました。
MBOは経営陣の集中で組織全体の活性化を図り、中長期的な会社経営を目指す経営戦略の手法です。企業買収という特徴からM&Aと呼ばれることもありますが、MBOは対象企業が子会社や自社の一事業部門などの自社を対象にしています。
会社を長期的に安定化する有効な手法とされていますが、実施には専門家を通さなければ成功は困難でしょう。
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