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TOBとは?用語の意味と実施の目的、メリットや注意点をわかりやすく解説

公開日:2024.11.14  更新日:2024.11.15

M&Aの手法には、市場に株式を公開して自社株の買付や他社の株式を取得するTOBがあります。TOBに参加することにより、経営の改善や事業拡大など様々なメリットを得られるのが特徴です。

本記事では、TOBの概要と目的やメリットと注意点について解説します。買手と売手でTOBのプロセスが異なるため、企業様は参考にしてください。

<この記事で紹介する3つのポイント>

  • TOBの意味と目的
  • TOBの種類
  • TOBのメリットとTOBの注意点

TOBとは?

TOBとは、株式の買付目的、買付価格、買付予定数、買付期間を官報や新聞紙面などに公告し、商品取引所を介さずに株式を買付する株式公開買付の手法です。

上場している対象会社の株式を獲得し、経営権や株主総会の特別決議の否決権を取得するために、TOBが実施されてきました。

金融商品取引法では、株式取得の数が1/3を超える場合には、TOBを実施すると定められているのが特徴です。大量の株式を取得する目的で、TOBが行われているといえます。

市場を通さない理由として、大量の株式取得による株価への影響や、取引の公平性を保つためなど、様々な理由があげられます。

持ち株比率が一定の割合数に達してしまうと、株式会社は買収されてしまうケースがあります。以下、株主総会における持ち株比率と行使できる権利の一例です。

持ち株比率権利
1株以上株主総会への出席と議決権
1%以上提案権
3%以上・監査請求権
・招集請求権
33.4%以上・拒否権
・取得請求権
50%以上普通決議の単独可決
66.7%以上普通決議と特別決議の単独可決
90%以上株主から株式強制取得(スクイーズアウト)

持ち株を1株以上でも持っていれば、株主総会への参加が可能になります。上表のように持ち株の保有率によって、株式総会での行使できる権利が付与されます。一定数を超えると、会社の経営権が取得できるようになるのです。

持ち株比率が33.4%以上、つまり3分の1以上になると、経営権を取得することが可能になります。50%以上で支配権、90%以上で株主の持ち株を全て強制取得することができます。

公開買付では、株券の下限設定が可能です。また、買付株数が想定数以下の場合は買付を中止することもできます。

TOBとM&Aの違い

TOBは、M&Aの手法の一つで株式公開買付の一種です。そして、M&Aは合併と買収という意味で、複数の企業を一つに合併・統合することを指します。TOBは、M&Aで株式取得の手法として使われるケースがあるという関係性です。

TOBは原則的に市場外での公開買付ですが、M&Aは目的に合わせて様々な取引方法を選ぶことができます。

M&Aでは、主に事業強化や市場参入・拡大など経営の強化を目的として実施されます。技術や人材の獲得など、外部からの経営資源の獲得が可能です。また、後継者不足の経営者が後継者候補に会社を引き継いでもらうなど、事業承継の手段としてもM&Aが用いられています。

TOBとM&Aは、どちらも大量の株式取得で共通しており、同じ意味で使われたり混同されることも多い投資用語です。金融商品取引法で株式の取得数が3分の1を超える場合に、株式取得のルールではTOBを実施すると定められています。

TOBとMBO・LBOとの違い

TOBとMBO・LBOは、主にM&Aを行うための手法で共通しています。3つの主な違いは、以下のとおりです。

手法目的方法
TOB企業の大量株式取得株式公開買付による市場外の株式取得
MBO経営陣による自社株式と企業買収SPC設立による自社の対象企業と合併
LBO借入金による企業買収借入金からの資金調達

TOBは大量の株式取得を行い、経営権を獲得することが主な狙いとされています。対してMBOは対象が自社株式、LBOは金融機関からの借入金など、それぞれのコンセプトは「株主」「自社」「借入金」で異なります。

MBOは経営陣による自社の子会社や、一事業を買収して独立させることが主な目的です。経営陣が自社株式の取得によって対象会社を買収するため、他社に買収、あるいは売却するわけではありません。グループ企業や関連会社などが含まれることから、基本的に経営陣が維持されるケースは多いでしょう。

LBOとは「Leveraged Buyout」の略で、金融からの融資など借入金による資金調達で行う企業買収のことです。借入金で負担を軽減し、少ない資金での事業を買収することができます。借入金の高い利息が発生するため、事業展開後の安定したキャッシュフローの確保が必要です。高金利の返済など、状況によっては経営の圧迫につながるリスクがあることには注意が必要です。

M&Aでは経営者の目的により、それぞれの方法が使い分けられています。また、TOBは主に上場会社が対象会社であるのに対し、MBOとLBOは上場・非上場を問わず、あくまで自社の買収を目的としています。

TOBの目的

TOBは公開買付を公告し、証券取引所を通さずに株式の売買を行います。

上場会社が株式取得を行った際、株式取得後の持ち株比率が3分の1を超える場合、その株式取得をTOBで行うと金融商品取引法で定められているのです。つまり、持ち株比率が3分の1以上を超える株式取得においては、企業の買収が主な目的とされています。

TOBが用いられるのは主にM&Aですが、M&Aにも会社の経営強化や市場拡大、事業承継など様々です。買手側と売手側それぞれに目的があり、目的のためのM&A、その手法がTOBという順番になります。

TOBの流れ

TOBの基本的な流れを簡潔にまとめると、以下のとおりです。

1. TOBの提案者が公開買付開始の公告をする
2. 公開買付届出書と添付書類を提出
3. 意見表明報告書等の提出
4. 公開買付説明書の交付
5. 公開買付報告書の提出
6. 公開買付の実施
7. 公開買付結果の通知

TOBは、株式の買手側が提案をするのが一般的です。提案側は「買付期間」「買付価格」「買取株数」などを公告し、内閣総理大臣に上記の書類を提出します。

公開買付の提案後、公開買付への参加者(売手)は、公告から10日以内に公開買付に関する意見表明報告書などを提出する必要があります。買主と取引所には、意見表明報告書の写しの送付が必要です。

原則的に、公開買付開始公告を行った後は中止や撤回ができません。一方で、条件を満たした上で公開買付撤回届出書を提出すると、撤回できる場合があります。

公開買付開始後、売手側となる既存株主は公告で提示されている条件に対して、応じるか応じないかを選択可能です。

期間終了後に公開買付の結果が通知されます。売手側の選択次第で買手側は想定より株式を取得できない恐れがあり、必要に応じて追加手続きをするか終了するかを検討しましょう。

TOBのメリット

TOBには、買手側と売手側それぞれにメリットがあります。ここから、双方のメリットについて解説します。

買手のメリット

買手側の主なメリットは、株式取得の見通しが明るいことがあげられます。具体的なメリットについて解説します

短期間で大量の株式取得が可能

TOBでは、取得したい株式の価格と株数を設定できるため、想定する期間中での大量株式取得を狙えます。

20営業日から60営業日の間が公開買付の期間と決まっており、期間中に自ら提示した株式取得が可能です。公開市場での大量買付は、株価の上昇を引き起こすリスクがあります。

その点、TOBは市場外での売買のため、株価の影響を受けることなく、希望する株式取得の可能性が広がるといえます。

株価変動による影響が少ない

TOBの株式取得は、証券取引所を介さないため、特定の株式に集中しても株価が上昇するリスクが少ないのが特徴です。

上場している株式会社は、一般的に公開市場で株取引が行われています。公開市場で特定の株式を大量取得した場合、株価が上昇しやすいことから、取得費用の見通しが立たなくなりやすいといえます。

また、急激な株価の変動によって市場操作や敵対的買収を疑われると、既存の投資家によい印象を与えないことには注意が必要です。

市場外の場合一定の価格で株式を取得できるため、株価に影響を与えることなくスムーズな株式取得が可能です。

目標に達しなければキャンセルできる

TOBは株式の価格と取得数を決められることから、市場を混乱させる影響がないため、キャンセルできるのが特徴です。

逆に証券取引所の場合、市場参加者全員への影響が考慮されるため、原則的にキャンセルができません。

TOBは複数回に分けて応募申し込みができるため、希望に届かなければ追加で応募可能です。応募分の株数を減らしたい場合、応募を取り消して再応募するとキャンセルできます。

売手のメリット

TOBにおける売手側のメリットは、主に保有株式を相場より高く売れる可能性があることです。売手のメリットを具体的に解説します。

経営改善につながる可能性がある

TOBの売手側は自社株式を売却するため、子会社化や合併・統合の可能性があります。

一方で、株式を売却することによって、多額の資金を比較的短期間で手にすることができます。買手側の傘下に入ることで、市場に参入できるなど経営改善の可能性が高いのがメリットです。

特に資金繰りに苦戦して思うような経営ができなかった会社にとっては、事業再生の機会が訪れたといえるでしょう。

市場より高値で株式売却が可能

一般的なTOBの株式価格は、公開市場の時価にプレミアムが上乗せされています。

プレミアムとは、TOBやMBOの株式価格に上乗せされた価格のことです。市場より高値をつけることで買手側はより多くの株式を買い集めることができます。一方で、売手は相場より高値で売却することができるのが特徴です。

TOBのプレミアムは、市場価格から30%程度高値になるのが相場です。

TOBの種類

TOBの種類には、友好的TOBと敵対的TOBがあります。言葉通りの意味になりますが、具体的な内容を解説します

友好的TOB

友好的TOBとは、TOBの対象会社と買手・売手の全員が、合意の上でTOBを行う平和的な株式の譲渡です。

双方が合意の上で行われる契約なため、契約前後に波風が立たず、スムーズな子会社化が図れます。基本的にTOBは友好的TOBが中心です。後述する敵対的TOBは、対抗するための対策が必要です。

敵対的TOB

友好的TOBとは、経営陣や株主の合意がなく事前通知のない強行的なTOBのことです。

競合他社の買収を目的にしており、乗っ取りともいえる手法になります。敵対的TOBを仕掛けられた会社は、以下のような防衛策で相手企業の買収に備えているのです。

買収防衛策内容
パックマン・ディフェンス敵対的TOBを仕掛けられた対象会社が、相手に対して逆に仕掛ける
ポイズンピル既存の株主に対し、市場価格より安く、または無料で取得できる新株予約権を付与して市場に出回る株式数を増やす方法
クラウンジュエル対象会社が自社で価値の高い事業部門や経営資源などを第三者に譲渡したり、分社化することで自社の魅力を低下させる方法
ゴールデン・パラシュート買収によって対象会社の経営陣が解任されても、高額な退職金を支払う契約を締結することで買収コストを引き上げる方法
ホワイトナイト敵対的買収を仕掛けられた対象会社が、友好的な第三者に介入してもらう方法
マネジメント・バイアウト経営陣が自社の株式を買い取って非上場化する方法
黄金株株主総会や取締役会で、重要事項の議決を拒否する権利を付与された株式を発行する方法
事前警告型防衛策敵対的買収に対し、対抗措置を取ることを事前に警告告知する方法

TOBは経営権の取得が主な目的のため、敵対的TOBに対して上記の方法などで対抗します。国内ではあまり用いられない方法などもあり、経営陣は様々な種類の買収防衛策で自社の経営権を守っているのです。

TOBの注意点

敵対的TOB以外にも、TOBには注意点がいくつかあります。TOBの注意点について解説します。

買手の場合

資金面での注意点が多い買手ですが、もちろんそれだけではありません。TOBにおける買手の注意点について解説します。

市場より買付価格が高値

TOBは、より多くの株を取得するのが目的のため、プレミアムを上乗せした価格で市場より高値になるのが一般的です。売手側は市場より高値で売却したいため、相場より安値の場合は想定株数に至らないか、応募者が集まらないことがあります。

TOBでの買付価格は、市場より30%、場合によっては40%程度プレミアムを上乗せするケースがあります。

通常よりも資金が必要になるため、十分な資金調達を行ってからTOBを実施する必要がありるでしょう。

買付情報を開示する必要がある

品取引法上の開示規制に基づくものです。株主・投資家に対して平等な売買機会・検討時間・情報を提供し、売買機会の不平等が発生することを避けるために行われています。

もしも手続きに漏れや過失があった場合、損害賠償や課徴金納付、刑事罰などの罰則を受ける可能性があります。

TOBで最も重要なのが、公開買付届出書です。公開買付者に提出する義務があり、買付目的、買付期間、買付予定数量、買付価格などを公告と共に行います。少数株主保護の目的から、条件面や開示面での規制が強化されているためです。

敵対的TOBの成功率は低い

そもそも敵対的TOBは、買収側が警戒されているため成功率は高くありません。

海外では比較的見られる経営戦略ですが、国内では敵対的買収のイメージがよくないために賛同が得られにくいといえます。対策を講じている企業が多いため、そのほとんどが買収を進めても、買収側のメリットが薄いというのが理由といえるでしょう。

一応成功事例もありますが、TOBの実施数に比べほとんどありません。

敵対的TOBはライバル会社が仕掛けるもののみではなく、協力関係にある企業に対して行われるケースがあります。

対象企業に想定より資産価値がない場合や、経営状況の改善が見られないなど、見切りをつけられて敵対的TOBを仕掛けられるという事例もあるのです。

売手の場合

想定より株式が売れないというケースが売手側によくあることですが、それ以外にも気をつけるべき点はあります。

会社経営に大きな痛手を負わせるリスクがあることから、チェックしておくのがポイントです。ここから、TOBにおける売手の注意点を解説します。

経営権を失う

会社法では、買収側は対象企業の持ち株比率が3分の1を超えると、株主総会の特別決議拒否権を得ることができ、50%以上で経営権の取得が可能です。

金融商品取引法では、3分の1以上超える株式取得にTOBの実施が義務付けられています。参加した売手側は、経営権を失う可能性が極めて高くなるのが特徴です。

TOBが行われる目的のほとんどが経営権の取得のため、売手側は経営権を失うことを前提として参加しなくてはなりません。

敵対的TOBで莫大な損失が出るケースがある

TOBは市場相場より高値で取引されるため、一般的には売手側に大きな利益をもたらします。しかしながら、敵対的TOBが発生した場合には、買収防衛策のためにコストがかりやすいでしょう。

例えば、買収側の買収リスクを増やすために、逆買収を仕掛けたり非上場化したりなど多額の費用を必要とする手段があります。買収側が魅力的に感じている資産を第三者に売却したり、それによって主要事業を失い、企業の価値低下によって負債を背負ったりケースがあるのです。

敵対的TOBへの対抗策は、買収側と防衛側の双方に莫大な損失を抱える恐れがあります。このことも含め、敵対的TOBの事例や成功事例が少ない理由のひとつです。

まとめ

本記事では、TOBの概要と種類、企業のメリット、実施の流れや注意点について解説してきました。

TOBは、証券取引所を介さずに株式の売買を行うM&Aの一種です。会社の経営権の取得を目的とした経営戦略のため、買手側と売手側のそれぞれにメリットとデメリットがあります。

成功すると買手は経営資源を獲得し、売手側は多額の資金を獲得することが可能です。仕組み自体はシンプルであるものの、取引の特性を理解した上で活用しなければ会社に損害を与える要因になりかねません。

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「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。

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