2025年問題というと、社会保障制度の崩壊、年金の減額などの問題が取り上げられますが、最大の課題は、少子高齢化による労働力人口の減少です。労働力人口が減ると、人材の確保が難しくなり採用活動費用も増えるため、不安を感じている人事担当の方も少なくありません。2025年問題の概要から、業界別の課題、具体的な対策まで詳しく解説します。
<この記事で紹介する3つのポイント>
- 2025年問題が社会と企業に及ぼす影響
- 業界別の取り組むべき課題と対策
- 国と企業が講じている2025年問題対策
2025年問題とは何か?
2025年問題とは、2025年に「団塊の世代(1947~1949年生まれ)」の800万人が75歳以上、つまり後期高齢者となりさまざまな影響や問題が生じることを指します。
2022年内閣府が公表した「令和4年版高齢社会白書」によれば、2025年には75歳以上の後期高齢者の人口が2,180万人、65~74歳の前期高齢者の人口が1,497万人になると予測されています。これは、国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上になる計算です。
2025年問題と似た言葉に、「2025年の崖」と「2040年問題」があります。それらの言葉の違いを知り、さらに2025年問題の理解を深めましょう。
「2025年の崖」と呼ばれる問題が発生する可能性が指摘されたのは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」です。2025年の崖は、ITシステムに関する問題です。2025年の崖をより詳しく説明する前に、まずはDXについて解説します。
- DXとは
DXレポートのDXは、デジタルトランスフォーメーションのことで、企業がビッグデータやAI、IoTなどのデジタル技術を活用し、業務プロセスの改善にとどまらず、製品やサービス、ビジネスモデルそのものを変革することを意味します。DXは、企業が直面する課題のひとつであり、経済産業省が推進するDXレポートはその進捗と今後の方向性を示す重要な指針です。
- 2025年の崖とは
「2025年の崖」とは、経済産業省のDXレポートで指摘された、経済損失につながる課題を指します。
あらゆる産業でデジタル技術を活用したビジネス推進が求められています。しかし、多くの企業は複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを使用していて、DX推進を進めるためには、解決するべき課題が多く存在しているのが現状です。
経済産業省は、この問題を解決しなければ、2025年以降、経済損失を最大年間12兆円にまで及ぶ可能性があると指摘しています。
また、大手ERP(基幹業務システム)のサポート終了時期が2025年前後に集中していることも、2025年が重要視されている理由のひとつです。
「2040年問題」とは、日本の人口減少と少子高齢化が進むなかで、2040年に顕著に現れるさまざまな社会問題を指します。
超高齢化社会の進行と人口減少、労働力不足や経済成長の鈍化、医療や介護の負担増加などを問題としている点は2025年問題と共通していますが、このふたつの違いは、その問題の深刻さと社会への影響です。2025年は、まだ高齢者人口増加の過渡期に過ぎず、2040年はピークを迎え、2025年に生じた問題がさらに深刻化する可能性が高いと考えられています。また、2040年問題には、以下の問題も含まれます。
- インフラと公共施設の老朽化
2040年には、老朽化したインフラや公共施設が全国的に増加すると予測され、道路やトンネル、下水道管などの老朽化対策が必要になります。また、人口の減少により、水道供給にかかるコストが上昇し、全国的に水道料金が上がる可能性も否めません。
- 交通網の存続危機
地方での交通網の存続が難しくなる可能性もあります。その理由は、地方における交通網の主な利用者は高校生ですが、少子化が進むことで利用者が減少し、交通機関を運営する民間事業者の経営が悪化することが予想されるからです。全国的にバスや鉄道の廃止が増加するとの見通しもあり、公共交通の維持が地方における課題となっています。
2025年問題による社会への影響
超少子高齢化社会を迎え、日本の社会と企業はさまざまな問題に直面することになります。ここでは、2025年問題が社会に及ぼす影響と、企業に及ぼす影響を分けて詳しく解説します。
2025年問題が社会に及ぼす主な影響は、次の3つです。
- 社会保障費の負担が増える
社会保障費とは、国が社会制度に基づき支払う費用のことです。近年、社会保障費において、老齢年金や介護保険などが占める割合が非常に大きくなっています。国立社会保障・人口問題研究所のデータでは、2021年の高齢者向けの社会保障費は全体の60.1%でした。2025年には高齢者が急増することで、社会保障費の負担がますます重くなり支出もさらに増える見込みです。しかし、社会保障制度を支える現役世代の数は減少しているため、増加する社会保障費を減少する現役世代で支えなくてはならなくなる問題が生じます。
- 医療・介護の体制維持が難しくなる
後期高齢者と認知症高齢者の増加により介護や医療サービスの需要も増加しますが、これに対応するための介護・医療人材の確保が十分にできていません。厚生労働省のデータによると、2023年に必要とされた介護職員数は233万人でしたが、2025年には243万人に達するとされています。
しかし、2019年から2022年にかけての3年間で約5万人の増加にとどまり、人材確保が追いついていません。現状のペースで推移すれば、2025年には約20万人の不足が見込まれ、介護体制の維持が困難になる恐れがあります。
- ビジネスケアラーが増加する
ビジネスケアラーとは、仕事と家族などの介護を両立している就労者のことです。2025年以降、超高齢化が本格化するに伴い、ビジネスケアラーの数も急増することが予想されています。
総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、ビジネスケアラーの人数は2012年には約291万人でしたが、2022年には約364万人に増加しており、この10年間で約70万人も増えました。これは、年間約7万人のペースで増加している計算になります。
2017年までの増加率と比較すれば鈍化しているものの、今後高齢化が進むことでビジネスケアラーの問題が大きな社会課題として浮上してくるでしょう。
また、経済産業省が発表した2023年3月の「新しい健康社会の実現」によれば、ビジネスケアラーが離職したり、労働生産性が低下したりすることによる経済的損失は、2030年には約9兆円になると推測しています。
2025年問題が社会に及ぼす主な影響は、次の3つです。
- 深刻な人材不足が起こる
超高齢化と人口急減に伴い、生産年齢人口の減少が進むことで、労働力の確保がますます難しくなると予想されます。このことは多くの業界で深刻な人手不足を引き起こし、企業の業績に直接的な影響を与える可能性があります。
- 事業承継が難しくなる
生産年齢人口が減ると、優秀な人材を確保することも困難になり、後継者不足によって、事業承継が難しくなる企業が増えることも予想されます。中小企業では後継者が見つからないケースも増え
ており、倒産してしまうケースもあるでしょう。
- 人的資本の成長率が鈍化する人的資本とは、企業の従業員が持つ知識、スキル、経験などの無形の資産のことです。近年、2025年問題によって企業の人材育成が困難になると、結果として人的資本の成長率が鈍化することも避けられません。
晩婚化や医療の進歩により出産年齢が上がる傾向が見られ、ビジネスケアラーだけでなく、育児と介護が同時期に発生するダブルケアの家庭が増加することも推測されています。また、10代から20代の若い世代でも、仕事と介護に忙しい親をサポートするヤングケアラーも増えるでしょう。
このような状況下では、従業員やその家族が介護や家事に追われ、仕事に集中することが困難になる可能性があります。特に、ヤングケアラーが家庭の介護負担により進学や就職の希望を諦めることは、人的資本の成長率が鈍化する大きな理由のひとつです。
【業界別】2025年問題の課題とは?
2025年を目前に控え、既に問題に直面している企業も少なくありません。ここでは、2025年問題が各業界にどのような影響を与えるのか、業界別に解説します。
建設業界の主な課題は、従事者の高齢化と次世代への技術継承です。
国土交通省の資料「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業界では、55歳以上の従事者が3割以上を占める一方で、29歳以下の若年層は約1割にとどまっています。現在、60歳以上のベテラン技術者が全体の約4分の1を占めていますが、その多くは今後10年以内に引退する見込みであり、問題は一層深刻化するでしょう。
高齢化が進むなか、次世代に技術を継承することが大きな課題となっています。若年層の人材確保と育成のためには、働き方改革や生産性向上を推進することが必要です。建設業界における2025年問題の具体的な対策としては、次のようなものもあります。
- 建設キャリアップシステムの導入
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者がその技能や経験に応じた適切な処遇を受けられる建設業界を目指して設計された仕組みです。技能者を雇用し育成する企業の成長を促進することが目的で、国土交通省と建設業団体が連携して普及・利用を進めています。
このシステムでは、技能者の資格や現場での就業履歴を登録・蓄積し、能力の評価に活用されます。若い世代の技能者がキャリアパスや将来的な処遇の見通しを持ちやすくなり、技能や経験に応じた給与の引き上げができるのも利点です。
- 時間外労働の上限規制が開始
2024年3月末で土木・建設業など一部事業・業務に与えられていた、改正労働基準法の施行の猶予期間が終了し、2024年4月1日から他の業界と同様、罰則付き時間外労働の上限規制が開始しました。
これにより、建設業でも時間外労働の上限は「45時間、年360時間」が原則となります。特別な事情がある場合でも、「年間720時間以内、複数月(2〜6カ月)で平均80時間、単月100時間未満」となっており、違反した場合は懲役または罰金が科せられます。
運送業界でもトラックドライバーの高齢化が進み、深刻な人材不足が懸念されています。
経済産業省・国土交通省・農林水産省が発表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(2022年9月2日)によると、道路貨物運送業に従事する40~54歳の割合は45%以上で、29歳以下はわずか10.1%にとどまっています。
このまま対応がなければ、2028年度には約27.8万人のドライバーが不足すると予測されており、未来の担い手を確保するためには、ドライバーの賃金引き上げや長時間労働の解消、再配達削減による物流効率化が不可欠です。
運送業界における2025年問題の具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- 時間外労働時間の上限規制の開始
2025年問題の対策として、運送業界でも2024年4月1日より時間外労働の上限が設けられました。ただし、他の業種や働き方と比較して、実情に即した緩やかな基準が設けられています。
- 既存システム更新の検討
必要に応じて、システムの変更やリプレースを検討することも重要です。例えば、クラウドベースの倉庫管理システム(WMS)や運行管理システム(TMS)を導入すれば、データの一元化やリアルタイムでの管理が可能になります。
超高齢化社会の進行により、医療・介護業界におけるニーズが急増し、同業界には大きな影響がもたらされています。
厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によると、2021年時点で462万人と推計された認知症高齢者は、2025年には約700万人に増加する見込みです。これは、高齢者の約5人に1人が認知症となることを意味します。
その一方で、労働力人口の減少により、医療・介護業界でも人材確保や医療体制の維持が困難になることが予想されます。高齢化による、医療費や介護費の増加も避けられません。
医療・介護業界における2025年問題の具体的な対策は、次のとおりです。
- ・地域包括ケアシステムの構築
2005年の介護保険法改正により、「地域包括ケアシステム」の構築が始まりました。このシステムは、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供し、要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい生活の実現することを目指しています。
各市町村には、窓口として「地域包括支援センター」が設置され、近隣の医療機関や訪問看護事業所、介護事業所との連携を強化しています。
- 生産性向上・業務効率化
医療や介護現場でのロボット導入より、手術時間が短縮し身体的負担も軽減しました。さらにAIやICTを活用すれば、事務作業の自動化や簡略化も可能です。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、電子カルテやオンライン診療、オンライン服薬指導の普及も急速に進んでいます。
保険業界もまた、少子高齢化の影響を大きく受けています。保険業界では、後期高齢者の増加に伴い、医療費や介護費、そして保険金の支払い額も増加しており、それに伴う保険料の値上げが避けられない状況です。
また、高齢者の増加と若年層の減少が同時に進行しているため、新規契約者の減少と保険金支払いの増加が予測されており、2025年問題の影響で保険業界の売上が大幅に減少する可能性が高まっています。少子化により保険契約者数が減少して、競争も激化するでしょう。
保険業界における2025年問題の具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- 高齢化に伴う新たな取り組み
高齢化の進行に伴い、医療保険や介護保険の需要が増加しています。保険業界は、高齢者のニーズに対応する商品展開を進めるだけでなく、高齢者の生活支援や健康管理にも積極的に取り組む必要があります。
- デジタル技術の導入
保険業界では、顧客の多様なニーズに応えるため、デジタル技術の導入が積極的に進められています。AIや機械学習を活用した保険商品や、オンライン保険などがその一例です。今後は、デジタル化をさらに加速させ、顧客ニーズに対して迅速かつ的確に対応できるようにすることが必要になるでしょう。
IT・情報サービス業界でも、高齢化による人材不足が深刻な問題となっています。経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」によれば、2025年にはIT人材が約43万人不足する見込みです。
さらに、IT・情報サービス業界は「2025年の崖」による影響も深刻です。システムの老朽化により、維持管理コストの増大や保守運用の担い手不足によるセキュリティリスクの高まりなど、さまざまな課題が生じる可能性があります。
IT・情報サービス業界における2025年問題の具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- レガシーシステムのリプレース
レガシーシステムの減少が問題の影響を軽減すると考えられるため、2025年問題の解決には、レガシーシステムのリプレースが重要です。しかし、現時点で既にIT人材不足が深刻で、新たなシステム開発や、スピーディーなリプレース対応が難しく、費用負担も大きな課題となっています。
- IT人材の育成
2025年問題の原因とされる労働人口の減少に対処するため、IT人材の育成が急務です。IT人材育成の環境が整いつつありますが、2025年までに実践的なスキルを持つエンジニアを十分に育成することは難しいとされています。それでも、業界の持続的な発展にはIT人材の育成が不可欠なため、実現に向けた取り組みが求められます。
宿泊・飲食業界では人材不足が慢性化して、長時間労働も常態化しています。2025年問題により、この問題がさらに深刻化する可能性があります。
宿泊・飲食業界における2025年問題の具体的な対策としては、以下のようなものがあります。
- 労働環境の改善
人手不足を解消するためには、長く働いてもらう環境を整え現従業員の満足度を高め、離職を防ぐことが重要です。具体的には、賃金の見直し、キャリアパスの明確化、健康管理やメンタルヘルス対策、良好な人間関係の構築などがあります。さらに、業務のIT化や自動化により、従業員の負担を軽減すことも効果的です。
- 外国人労働者の雇用
外国人労働者の雇用は、宿泊・飲食業界において人手不足解消の有力な手段とされています。特定技能制度を活用すれば、即戦力となる外国人を受け入れ、客室清掃やフロント業務などに従事させることが可能です。異なる文化や言語を持つ人材の採用により、サービスの質向上や市場開拓も期待できます。
2025年問題に対する国の取り組み
少子化は、国の存続にかかわる重大な問題であり、日本の社会保障持続と経済成長を確かなものとするためには国の取り組みが不可欠です。2025年問題の解決に向けた国の取り組みとしては、社会保障の見直し策、介護人材の確保策、DX推進策が挙げられます。
後期高齢者の医療費は、公費と現役世代の負担によって賄われています。そのため、2025年問題で医療費がさらに増加すると、現役世代の負担が一層大きくなる可能性があります。超高齢化に伴う社会保障費の増大に対応するため、社会保障制度の見直しが進められています。
具体的な見直し策には、以下のとおりです。
- 窓口負担割合の引き上げ
2022年10月1日から、75歳以上の後期高齢者の窓口負担割合が一部引き上げられました。一定以上の所得がある場合は1割から2割に、現役並みの所得がある場合は3割負担となっています。
- 就労の促進
2021年4月1日から施行された改正高年齢者雇用安定法により、企業は高齢者が70歳まで働けるような環境を整える努力義務が課されました。これにより、高齢者も社会保障制度の担い手として貢献し、現役世代の負担を軽減することが期待されています。
超高齢化社会の進展に伴い、要介護高齢者の増加が見込まれるなかで、介護人材の確保は喫緊の課題です。そのため、国は介護人材を確保するため以下のような取り組みを行っています。
- 処遇の改善
2025年に向け、人材不足を解消するために、医療・介護職の処遇改善が行われました。介護職の賃金は、2010年から2019年にかけて約14%の賃上げが行われ、さらに2022年と2023年には補助金や診療報酬・介護報酬によって1~3%の賃上げが実施されています。
- 介護業界への参入促進
介護業界への参入を促進するために、求人と求職のマッチング支援として、全国の主要なハローワークには人材確保対策コーナー、各都道府県には福祉人材センター(一部の市には福祉人材バンク)が設置されました。人材確保対策コーナーでは、人材不足に悩む分野への就職を希望する求職者に対し、きめ細やかな職業相談や職業紹介を行い、福祉人材センターでは福祉分野に特化した無料職業紹介、相談援助などを実施しています。また、介護業界への参入促進を目的としたイベントも開催されています。
- 労働環境の改善
厚生労働省は、介護職員の待遇を持続的に改善することを目的として「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」を策定しました。これにより、各事業者の経営が改善し、それに伴い生産性も向上することが期待されています。
近年、あらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されています。DXは、デジタル技術や機器を活用して業務のデジタル化を進めることで、ビジネスを根本から変革し、市場での優位性を確保しようとする取り組みです。
DXは2025年問題の解決にも役立つと考えられ、国はDXを推進するために以下のことを行っています。
- デジタル庁の新設
2021年9月に設立されたデジタル庁は、デジタル社会の推進を担う組織です。官民のインフラを5年間で整備することを目指し、国の情報システムの一元化やマイナンバーカードの普及、国や地方自治体のデジタル化を進めています。
- デジタル・ガバメント実行計画による行政改革
デジタル・ガバメント実行計画は2020年12月に閣議決定されもので、デジタル社会実現に向けた基本方針を示すものです。この実行計画に沿って施策が順調に進めば、アナログ主体の行政手続きが短期間でデジタル化される見込みです。
- 自治体DX推進計画によるGov-Cloudの普及
総務省が主導するこの計画は、地方自治体のデジタル化を促進する取り組みで、中心となるのが「Gov-Cloud(ガバメントクラウド)」です。このプラットフォームを利用することで、地方自治体はクラウド上で住基アプリケーションや地方税アプリケーションを運用できるようになり、これまで必要だったサーバーやハードウェアが不要になります。
企業が取るべき2025年問題への対策とは?
企業が取るべき2025年問題への対策としては、多様な働き方の推進策、ビジネスケアラーへの対応強化策、社内のDX推進、事業継承の施策を打つことが挙げられます。
2025年問題では、ほぼすべての業界で人材不足が深刻な問題となります。企業が十分な労働力を確保するためには、多様な働き方の推進が必要です。
従来の画一的な雇用形態に代わり、柔軟な働き方を提供することで、ビジネスケアラーを含む幅広い労働者が働き続けやすい環境を整えられます。多様な働き方を推進することで、シニア世代の人材を確保しやすくなり、深刻な人材不足を解決する効果を期待できるでしょう。
働き方には、よく知られているフレックスタイム制度、テレワーク以外に、以下のようなものもあります。
- 副業・兼業
副業や兼業を許容することで、従業員の所得が増えるだけでなく、離職を防ぐ効果や人脈の拡大が期待できます。また、副業で得たスキルや知識を本業に活かすことで、相乗効果を生まれるのも利点です。
- ジョブ型雇用
仕事の内容に基づいて人材を配置するシステムです。従業員のスキルや専門性に応じて業務内容や報酬が明確に定義されます。日本では、外資系企業を中心に導入が進んでいます。
- 業務委託
業務ごとに契約を結ぶ働き方で、委任契約や請負契約も含まれます。スキルの高い労働者は自由な働き方ができ、企業にとっては人材育成コストを削減できるメリットがあります。
ビジネスケアラーとは、仕事と家族の介護を両立する就労者のことです。超高齢化が本格化する2025年以降、ビジネスケアラーの数も急増することが予想されます。このような状況において、企業にはビジネスケアラーへの適切な対策が求められています。
主な対策は、次のふたつです。
- 介護支援の拡充
ビジネスケアラーへの配慮として、介護支援の拡充が非常に重要です。前項でも述べたように、ビジネスケアラーの増加による最大の問題は、仕事と介護の両立による労働生産性の低下です。こうした状況において、介護支援を手厚くすることは労働生産性を向上させ企業の競争力を高めるのにも役立ちます。
- 介護に必要な知識や情報の共有
介護の情報に触れる機会がない人は、突然家族の介護が必要になった際に戸惑うことも少なくありません。そのため、企業は従業員が介護に関する知識を日常的に得られるような環境を整えることが求められます。
DX推進は、2025年問題および2025年の崖の解決策として有効です。企業が社内のDX化を進める具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
- DX推進ガイドラインを活用した現状の把握
DX推進ガイドラインは、経済産業省が公開した資料で、経営者が押さえるべきポイントがまとめられています。DX推進ガイドラインを活用することで、現状の把握ができ明白な目標を設定できます。
- ITシステムの刷新と最新技術への対応
コスト削減を実現させるためには、不要な機能を廃棄しITシステムを刷新する必要があります。また、競争力を維持するためには、最新のデジタル技術に対応することも肝心です。
- 外部のノウハウの活用
DX推進には、課題を客観的に捉え実現していくことが重要です。そのためには、社外のパートナーと協力し、外部のノウハウを活用することも大切です。
高齢化が進む企業では、円滑な事業承継が求められます。具体的な事業継承の施策としては、以下のようなものが考えられます。
- 国の支援策を活用2025年問題に対応するため、国は事業承継・引継ぎ支援センター、事業承継・引継ぎ補助金など事業承継に関するさまざまな支援策を提供しています。これらを積極的に活用することで、よりスムーズな事業承継が図れます。
- M&Aによる第三者承継の検討
親族や役員、従業員のなかに適切な後継者が見つからない場合は、M&Aによる第三者承継も有効です。M&Aに不安を感じる企業も多く存在しますが、M&A後でも約8割のケースで従業員の雇用が維持されているという調査結果があり、M&A件数も増加傾向にあります。
まとめ
2025年問題は、団塊世代が後期高齢者となることで生じるさまざまな問題のことですが、日本の社会保障制度と企業の事業承継に深刻な影響を与える可能性があります。課題は業界によって異なり、多岐にわたりますが、少子高齢化による人材不足はすべての業界に共通する課題です。
今後は優秀な人材を確保することは難しくなるため、適切な対策を講じることが急務です。2025年問題に取り組むことは、事業継承に役立ち、日本経済の持続的な発展にも寄与します。
2025年問題に向けて、さらなる人材の採用や育成の促進をお考えでしたら、DYMへご相談ください。
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