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新入社員の「雇い入れ時健康診断」とは?検査内容や定期健診との違いも解説

公開日:2024.11.19  更新日:2025.02.14

雇い入れ時健康診断は、新しく入職する労働者の健康管理と職場への適切な配置を目的とした重要な制度です

本記事では、この健康診断の概要や役割、手続き、留意点についてくわしく解説します。人事・労務担当者や新たに就職を控えている方にとって、安心して職場生活をスタートするために知っておくべきポイントをわかりやすくお伝えします。

<この記事で紹介する3つのポイント>

  • 雇い入れ時健康診断の法的根拠と実施の重要性
  • 健康診断の具体的な手続きと必要な検査項目
  • 雇い入れ時健康診断に関する留意点と効果的な実施方法

雇い入れ時健康診断とは?

雇い入れ時健康診断とは、労働者を雇用する際に事業者が実施する健康診断です。労働安全衛生規則第43条で、事業者の義務として定められています。具体的な実施時期は、入社前3か月以内が目安です。

雇い入れ時健康診断の目的は、新たに雇用される労働者の健康状態を把握し、適切な職場配置や健康管理に役立てることです。

具体的な検査項目は、労働安全衛生規則第43条に詳細が記載されています。雇い入れ時健康診断で実施すべき検査項目が明確に示されており、事業者はこれらの項目を漏れなく実施しなければなりません。

雇い入れ時健康診断の役割と意義

雇い入れ時健康診断は、労働者の健康保護と企業のリスク管理の両面で重要な役割を果たしています。おもな役割と意義は以下のとおりです。

  • 適切な職場配置
  • 労働災害の予防
  • 法令遵守の姿勢の示唆
  • 労働者の健康状態の把握
  • 健康管理の基礎データ収集

これらの役割を果たすことで、労働者の健康と安全を守りつつ、企業の生産性向上にもよい効果を示すでしょう。

また、雇い入れ時健康診断は、労働契約法とも密接に関連しています。労働契約法第5条では「使用者は労働者の生命や安全を確保できるよう配慮する」と定められています。雇い入れ時健康診断は、この安全配慮義務を果たすための重要な手段の一つといえるでしょう。

事業者が雇い入れ時健康診断を適切に実施し、その結果に基づいて労働者の健康管理をおこなうことは、労働契約法の目的にも一致しています。労働者の健康状態を把握し、適切な職場環境を提供することは、事業者の重要な責務なのです。

雇い入れ時健康診断の手続き

雇い入れ時健康診断の手続きは、労働安全衛生規則に基づいておこなわれる事業者の重要な義務です。この健康診断を適切に実施することで、新たに雇用された労働者の健康状態を把握し、適切な職場配置や健康管理につなげられます。

  • 対象者
  • 必要な検査項目
  • 結果通知までの時間
  • 定期健康診断との比較

上記の点について、ここからくわしく解説します。

対象者

雇い入れ時健康診断の対象となる労働者は、以下の条件を満たす者です。

  • 契約期間の定めがない労働者(正社員)
  • 契約期間が1年以上の労働者
  • 契約更新などで1年以上使用される予定の労働者
  • 1週間の労働時間が同種業務に従事する通常の労働者の4分の3以上の者

これらの条件は、雇用形態に関わらず適用されます。つまり、パートタイムやアルバイト労働者であっても、上記の条件を満たす場合は雇い入れ時健康診断の対象です。

とくに注意したいのは「契約期間が1年未満であっても、更新により1年以上の雇用が見込まれる場合」が対象となる点です。たとえば、6ヶ月の契約で雇用されたパートタイム労働者が、契約更新により1年以上勤務する可能性がある場合は、雇い入れ時健康診断の対象となります。

また「1週間の労働時間が通常の労働者の4分の3以上」という条件も重要です。具体的にいうと、正社員の所定労働時間が週40時間の場合、週30時間以上勤務するパートタイム労働者は対象となります。

事業者は、これらの条件を十分に理解し、対象者には漏れなく雇い入れ時健康診断をおこないましょう。

必要な検査項目

雇い入れ時健康診断の検査項目は、労働安全衛生規則第43条に定められています。おもな項目は、以下のとおりです。

  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長
  • 体重
  • 腹囲
  • 視力および聴力の検査
  • 胸部エックス線検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

これらの項目は、労働者の全般的な健康状態を把握するために設定されています。雇い入れ時健康診断では、定期健康診断と異なり、医師の判断による項目の省略が認められていません。
そのため、全ての項目を漏れなく実施する必要があります。

また、業務の内容によっては、上記の項目にくわえて特殊健康診断をおこなう場合があります。たとえば、有機溶剤を使用する業務や放射線業務などに従事する労働者には、それぞれの有害因子に応じた特殊健康診断を実施しなければなりません。

これらの検査項目を確実に実施できる医療機関を選定し、適切な健康診断を実施することが、事業者に求められます。

結果通知までの時間

健康診断の結果は、労働安全衛生規則第51条4項に基づき、遅滞なく労働者に通知する必要があります。法律では明確な期限が定められていませんが、一般的には健康診断をおこなった2〜3週間後に結果が通知されることが多いです。

結果通知の方法については、個人情報保護の観点から慎重におこなわなければなりません。封書で直接労働者に渡すか、あるいは個別面談の形で結果を説明することが望ましいです。また、結果通知と同時に、事後措置の必要性についても労働者に説明することが重要です。

たとえば、再検査や精密検査が必要な場合、その旨を明確に伝え、適切な医療機関の受診を促すことが事業者に求められます。事業者は、健康診断の結果を単に通知するのみでなく、労働者の健康管理に活用するという視点を持つことが重要です。

必要に応じて就業上の措置を講じたり、保健指導をおこなったりすることで、労働者の健康保持につなげられるでしょう。

定期健康診断との比較

雇い入れ時健康診断と定期健康診断は、検査項目はほぼ同じですが、実施時期と目的に違いがあります。

    雇い入れ時健康診断定期健康診断
実施時期労働者を雇い入れるとき(入社前3か月以内が目安)1年以内ごとに1回
目的新しい労働者の健康状態の把握と適切な職場配置継続的な健康管理と経年変化の把握

雇い入れ時健康診断は、新しく雇用された労働者の健康状態をはじめて把握する機会であり、その結果は適切な職場配置や業務内容の決定に活用されます。

一方、定期健康診断の目的は、労働者の健康状態の経年変化を追跡し、継続的な健康管理をおこなうためです。また、定期健康診断では、前回の健康診断結果と比較でき、健康状態の変化を把握しやすいという特徴があります。

これに対し、雇い入れ時健康診断では、労働者の過去の健康状態に関する情報が限られているため、現在の健康状態を正確に把握することに重点が置かれるのです。さらに、定期健康診断では、医師の判断により一部の検査項目を省略できますが、雇い入れ時健康診断では全ての項目を実施する必要があります。

事業者は、雇い入れ時健康診断と定期健康診断の違いを理解した上で適切に実施し、労働者の健康管理に配慮しなければなりません。

雇い入れ時健康診断の留意点

雇い入れ時健康診断を実施する際には、以下の点に留意しなければなりません。

  • 費用負担
  • 受診の義務
  • 採用への影響

これらの点を正しく理解し、適切に対応することで、法令遵守と労働者の健康管理を図れるでしょう。それぞれくわしく解説します。

費用負担は誰がおこなう?

雇い入れ時健康診断の費用は、事業者が負担することが原則とされています。これは、事業者が労働者の健康管理を適切におこない、安全な職場環境を維持するための責任を負っているからです。法的には事業者が費用を負担する義務は明確に規定されていません。

しかし、厚生労働省は「事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、事業者が費用を負担することが当然」としています。

ただし、再検査やオプション検査を個人が選択する場合、それは事業者の義務ではないため、追加費用は個人負担となることがあります。それでも、会社が業務上の必要性から再検査や精密検査を求める場合には、事業者が負担することが妥当でしょう。

なお、健康診断の費用は医療機関によって異なりますが、一般的な雇い入れ時健康診断の費用は10,000円前後とされています。事業者は、適切な医療機関を選定し、必要な検査項目を確実に実施しつつ、コスト面に留意した健康診断の実施を心がけましょう。

必ず受診しなければいけない?

労働者は、事業者がおこなう健康診断を受けなければなりません。労働者の受診義務が、労働安全衛生法第66条5項で定められているためです。健康診断の受診が労働者の義務であるのは、労働者自身の健康管理のみでなく、職場全体の安全衛生を確保することにもあります。

一人の労働者の健康状態がほかの労働者や業務全体に影響を与える可能性があるため、全ての労働者が健康診断を受けることが重要です。

ただし、同等の健康診断を入社3か月以内に受けており、その結果を提出できる場合は、雇い入れ時健康診断を省略できます。この場合、健康診断の項目が雇い入れ時健康診断で必要とされる項目を満たしていることが条件です。また、結果の提出にあたっては、労働者のプライバシーに配慮し、必要最小限の情報のみを提供するよう労働者に喚起しましょう。

健康診断の受診を拒否する労働者に対しては、健康診断の重要性を丁寧に説明し、理解を求めることが大切です。それでも受診を拒否する場合、事業者は労働者に対して懲戒処分をおこなう可能性があるものの、このような措置は慎重におこなわなければならず、労働者の人権やプライバシーに十分配慮することが求められます。

採用に影響する可能性は?

雇い入れ時健康診断の結果を採用の判断材料として使用することは、労働者の健康状態による差別につながる可能性があるため、厳に慎むべきとされています。

そもそも健康診断の目的は、労働者の健康管理と適切な職場配置であり、採用選考のためではありません。

ただし、健康診断の結果、特定の業務に就くことが労働者の健康に重大な影響を及ぼす可能性がある場合は、その業務への配置を避ける配慮が必要です。このような場合でも、可能な限りほかの適切な職場や業務への配置を検討し、労働者の雇用機会を確保することが求められます。

また、健康診断の結果は個人情報保護法に基づき適切に管理し、必要最小限の関係者以外には開示しないよう注意しましょう。健康情報の取り扱いについては、社内規定を整備し、関係者に周知徹底することが重要です。

雇い入れ時健康診断を漏れなく実施するには

雇い入れ時健康診断を漏れなく実施するためには、組織全体での計画的なアプローチが必要です。

まず、労働者の入社手続きの一環として、健康診断を必須のステップに組み込みましょう。採用プロセスの早い段階で、診断の必要性を明確に伝え、診断日程を調整します。人事担当者や管理職が、診断の実施状況を定期的に確認し、漏れがないかチェックする仕組みを整え、全員が診断を受けられるよう管理します。

それにくわえて、雇い入れ時健康診断の受診が完了するまで、ほかの手続きが進められないようにすると、受診漏れを防げるでしょう。

まとめ

雇い入れ時健康診断は、労働者の健康管理と適切な職場配置を目的とした重要な制度です。事業者は法令に基づいて確実に実施し、その結果を労働者の健康管理に活用することが求められます。健康診断の結果は、労働者の健康状態に応じた適切な配慮をおこなうために使用されるべきであり、採用の可否の判断に用いることは適切ではありません。

労働者の健康状態に配慮しつつ、公平な雇用機会を提供することが重要です。雇い入れ時健康診断を効果的に実施し活用することで、労働者の健康保護と企業のリスク管理の両立が可能となるでしょう。人事・労務担当者は、この制度の意義を十分に理解し、適切な運用に努めましょう。

事業者のみでなく、労働者も雇い入れ時健康診断の重要性を理解しなければなりません。労働者自身が健康状態を把握し、適切な職場環境で働くことは、長期的なキャリア形成においても重要な要素となります。

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「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。

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