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消防法はすべての建物に適用される法律で、事務所も例外ではありません。建物の管理者には消防設備と定期点検が義務付けられているため、もしも要件を満たしていなければ重大な法律違反になってしまうのです。
本記事では、事務所に置ける消防法の要件と義務付けられている設備や規定について解説します。
<この記事で紹介する4つのポイント>
目次
消防法とは、火災や地震などの災害を予防し、被災した場合には被害を最小限に留めるために定められている法律です。乗り物や山林、建築物や工作物が消防法の主な対象となるので、事務所やオフィスは消防法規定に則った消防法の手続きが必要になります。
消防法では消防・防火設備の設置と対策が法律で義務付けられているので、不備があった場合には命令違反として重大な罰則が科せられるリスクがあるのです。万一火事などの災害が発生した場合、十分な消防・防火対策がなされていないと罰金・科料、重大な過失には拘留・逮捕などの刑罰にまで発展する恐れがあります。
消防法には設備点検や報告の義務があり、事務所の消防・防火設備が消防法令に適合しているかが厳重にチェックされます。消防法の点検報告の主な概要は、以下のとおりです。
機器点検 | 6ヶ月に1回、設備機器の正常な稼働、適切な配置、損傷を点検 |
総合点検 | 1年に1回、消防用設備等を作動・使用し、総合的な機能を確認 |
点検実施者 | 消防設備士または消防設備点検有資格者 |
報告 | 防火対象物の点検結果を維持台帳に記録し、特定防火対象物を1年に2回、 それ以外を3年に1回管轄の消防署で消防署長または消防長に報告する |
その他 | 特殊消防用設備等は設備等設備維持計画に定める結果についての報告を 報告の期間ごとに行う |
消防設備の点検は、有資格者が建物内の全ての階で行われます。無資格者による点検や事実と異なる報告を行った場合、消防法の規定に基づいた命令違反の罰則が適用されるので、ルールを絶対に覚えておいてください。
消防法では、家屋や建物に消防設備の設置が義務づけられており、規定に沿って消防・防災用の設備と物品を事務所に設置する必要があります。事務所やオフィスで、設置が必要となる基本設備をチェックしていきましょう。
建物に消防用設備等を設置した際は、設置から4日以内に管轄消防署に届出する必要があります。
消防設備とは、火災発生の際に消火活動に必要な設備や施設と消防法令で分類されています。主な消防設備を紹介していきましょう。
消火器は代表的な消防設備として広く認知されており、火元に消火剤を振りかけて消火活動を行う器具です。消火剤の種類は粉末と化学薬品を用いたものがあり、取扱いが手軽な粉末消火器が一般的に普及しています。
消防法による消火器の設置義務は、建物の構造で異なります。事務所だと延べ面積が300㎡以上で設置義務が発生し、消火器の消火能力を算定する能力単位算定面積で計算された数値に従って設置本数を決定しなければならないのです。
能力単位算定面積は、消防設備設置基準によって定められた計算式で、建物が耐火構造か非耐火構造かによって数値が変化します。消火器は火災の種類によって適応火災を分類しており、主に普通火災、油火災、電気火災の3種類に分けられ、消火能力単位は消火器の種別によって数値が決まっているのです。
スプリンクラーは、火災を感知すると自動的にノズルから放水されて消火活動を行う消防設備です。建物内では天井や屋根下部分に設置され、スプリンクラーの種類によって消火方法や機能性が違います。
スプリンクラーは、防火設備設置基準に基づいて設置義務が発生し、事務所の場合は必ずしも設置義務が発生するわけではありません。ただし、ビルなどの大きな建物全てに事務所がある場合は特定防火対象物に認定され、複数のテナントが入っている雑居ビルに事務所を構えている場合、複合用途防火対象物としてスプリンクラーの設置義務が発生します。
厳密には建物の構造や床面積、階数によって設置基準が変化するため、素人判断では消防法に抵触する恐れがあります。管轄の消防署や専門家に問い合わせ、要件を満たしているか確認しましょう。
警報設備は火災や火元の熱を感知した際、自動的に警報を発して周囲や建物内の人達に知らせる装置です。警報設備には様々な種類があるので、順を追って解説します。
火災で発生する熱や煙を感知し、自動的に警報を発する自動火災報知機の総称です。現在は熱だけではなく煙や炎を感知する以外に、火災信号を発して受信機に送信したり消防署に通報する多機能型も登場しています。
事務所への設置は床面積によって基準が異なり、以下に該当する場合に設置義務が発生します。
建物の構造 | 床面積 |
---|---|
一般 | 1,000㎡以上 |
2階以上 | 200㎡ |
3階以上 | 300㎡ |
11階以上 | 床面積にかかわらず全箇所 |
通信機器室 | 500㎡ |
屋上部分 | 600㎡ |
その他 | 400㎡ |
火災報知器は、赤色の表示灯と配電盤のような受信機とセットでの設置が基本です。壁や天井への埋込型から露出型など種類があり、熱だけではなくガス漏れや漏電を知らせるなど多彩な数の警報機があります。
非常用警報器とは、火災を含む様々な災害や非常事態を知らせるための装置です。一般的には非常ベルと呼ばれている赤い音響装置が有名で、自動式サイレンや音声が流れる放送設備を指します。
非常用警報器にも設置基準が定められており、事務所の規模が50人以上か地階、無窓階で収容人員が20人以上に設置し、または11階以上か地下3階以上の建物なら全階に設置しなくてはなりません。
基本的に非常用警報器は自動操作なので火災報知器と同じように設置されていますが、放送設備は管理者が常時監視と操作を行っています。そのため、防災センターや放送室に設置されていることが多いです。
万一火災が発生した際、建物内にいる人達が安全を確保と避難のために設置される設備です。代表的な避難設備を紹介します。
誘導灯・誘導標識とは、緊急時に迅速かつ安全に避難経路に人を誘導するための標識です。事務所への設置基準は3階以上の階か収容人員100人以上と定められ、収容人数300人以内に必ず1つ、以降は300人ごとに1つ設置しなくてはなりません。
長方形で緑色の発光式標識が一般的に普及しており、一般的な建物内でも目にする機会が多いでしょう。誘導灯・誘導標識は常時点灯しており、非常口や避難通路の上部、天井や床などに表示板が設置されています。
救助袋とは筒状の袋の形をしており、主に高層階から地上まで中を通って避難するための避難設備です。救助袋は2種類の形状に分けられ、垂直に滑降する垂直式と斜めに滑降する斜降式があります。
高層から地上への避難を目的とした設備のため、事務所が地階であれば設置義務はほとんどのケースで必要とされていません。救助袋はサイズが厳密に設けられており、規定は以下のとおりです。
高さ・幅 | 0.6m 以上で入口金具を容易に操作で きる大きさであり、 使用の際は袋の展張状態を近くの開口部から確認できるもの |
操作面積 | 幅1.5m 以上、奥行1.5m以上で操作に支障のない範囲内なら 2.25㎡以上で変更可能 |
避難器具用ハッチに格納したもの | ハッチの開口部から降着面等までハッチの開口部の面積以上を 有する角柱形の範囲 |
避難空地 | 斜降式の場合、展張した袋本体の下端から前方2.5m、救助袋の 中心線から左右それぞれ1m以上の幅 |
高層階から地上に避難するための設備には、救助袋の他に避難はしご、緩降機、滑り台・滑り棒などがあります。事務所への設置は必ずしも義務というわけではなく、救助袋同様に各避難設備の設置基準が設けられています。
いずれの避難設備も開口部分や操作面積に規定のサイズがあり、当該器具の使用や操作に支障を来さない十分な面積が必要です。これらの避難設備は所定の場所に設置され、ハッチに格納されていたり吊り下げられていたりします。
排煙設備とは、火災と同時に発生した煙をダクトなどを通じて外部に誘導するための設備です。密閉された空間で発生した煙は一酸化炭素中毒や酸欠の原因となり、有害物質が燃えることによって有毒ガスの発生など、二次災害を引き起こす恐れがあります。
排煙設備の設置基準は消防法と建築基準法で取扱いが異なり、事務所の場合は防火対象物としてどちらも明確な基準が定まっていません。しかし、床面積や階数によって設置が義務づけられているので、建物の構造や安全面の観点から必須と言えるでしょう。
また、設置が義務付けられる要件を満たした場合でも、建物の構造上の理由で設置が難しいケースがあります。その場合、消防用設備等の特例基準が適用されることがあるので、自己判断せずに所轄消防署や専門家に問い合わせましょう。
事務所を開業した際、消防法や各自治体の条例に基づいて届出が必要になります。届出を怠ると消防法令違反で行政処分が下されたり、重い罰則を科せられたりするリスクがあるので必ず各種手続きを行いましょう。
特定防火対象物で収容人員30人以上、または非特定防火対象物で収容人員50人以上の建物には防火管理者資格取得者の選任が必要になります。雑居ビルに入っている事務所の場合、雑居ビルが特定防火対象物とみなされるケースがあるため、防火管理者資格取得者を選任する際は要確認です。
防火管理者とは、火災被害を防止する防火管理業務と計画を遂行する責任者のことで、消防法で対象となる建物には必ず選任しなくてはなりません。以下の要件を満たした者だけが、防火管理者に選任されます。
1は防火対象物における消防計画や避難訓練等を決定でき、一定の地位と権限を持って適切に遂行できる者を指します。
2は防火管理講習修了者や学識経験者などが該当し、防火管理講習を受けていなくても、消防職員または事務に従事して管理や監督を1年以上の経験など、特定の職や立場の経験者も防火管理者の有資格者として選任対象です。
消防計画は、所轄内の消防庁で配布されているフォーマットに従って作成します。各自治体の消防庁ホームページに消防計画の申請様式をダウンロードし、各項目欄に対象防火物に関する情報を記入していきましょう。ダウンロードページに記載例があるので、そちらを参考に作成してください。
消防計画書を提出する際、防火と防災をそれぞれ出す場合は防火・防災管理に係る消防計画作成(変更)届出書と消防計画書のセットで1部とし、消防署保管用と事業所様保管用を正本と副本で1部用意します。同じものをそれぞれ2部提出し、消防計画の手続き完了です。消防計画を変更する際も同様です。
作成した消防計画は、各自治体で定められている提出方法で行います。一部の地域ではマイナポータルから届出ができる場合があり、自治体ごとの申請方法を選びましょう。
ちなみに消防計画の提出を行う代行サービスもあるので、面倒な手続きを手早く済ませたい企業様は利用のご検討をしてみてはいかがでしょうか。
消防法令に基づいて設置された設備は、定期的な検査が法令で義務付けられています。点検検査の対象は、以下のように規定されているのでご参照ください。
消防用設備の種類 | 点検内容 | 点検周期 |
---|---|---|
消火器具、火災報知設備、 誘導灯、誘導標識など | 機器点検 | 半年 |
屋内消火栓設備、スプリンクラー、 自動火災報知設備など | 機器点検と総合点検 | 機器点検は半年、総合点検は1年 |
消防設備の配線など | 総合点検 | 1年 |
法定検査(点検)は、原則的に消防設備士か消防設備点検資格者が行います。点検記録は、消防用設備等点検結果報告書、消防用設備等資格者一覧表、必要な設備の点検票の3点の記録様式を用います。
点検の報告周期は建物用途によって規定されており、一般的な事務所は非特定防火対象物となるので、3年に1回の周期で所轄消防署に定期点検と法定検査の報告をしましょう。
消防法では、消防・防災の観点から建物のレイアウトに規定があります。ここでは、消防法要件を満たす事務所レイアウトについて解説しましょう。
防火区画とは、火災が発生した際の被害を最小限に抑えるための建物の区画制限のことです。防火区画の規定は消防法と建築基準法で指針が異なり、ここでは消防法に基づいた解説をします。
消防法では、消防法施行令による防火対象物の設置基準が規定され、エリアごとに火災による被害拡大を防ぐための防火区画の設計が義務付けられているのです。防火区画の面積は、以下の4種類に分けられます。
防火区画の種類 | 概要 |
---|---|
面積区画 | 水平方向への火災拡大を防ぐため、一定の面積ごとに区切る区画 |
高層階区画 | 1階以上の高層建築物に適用され、はしご車による消火活動が困難な区画 |
竪穴区画 | 吹き抜けやエレベーターなど、構造上の理由で縦に空間が広がって 炎や煙が階を跨いで広がりやすい区画 |
異種用途区画 | 集合住宅や雑居ビルなど1つの建物に複数の用途部分が混在する複合施設 に設けられる区画 |
建物は構造ごとに区画面積が制限されており、耐火構造や準耐火構造で構築され、特定防火設備などによる一定の耐火性が必要です。防火区画の対象となるエリアには、防火扉やシャッターなど、炎や煙が広がらないための設計を施さなければなりません。
また、消防法では消防法施行令第8条に規定されている防火区画を「令8区画」と呼び、防火対象物が開口部のない耐火構造の壁や床で区画されている場合、消防法施行令第8条に準じているとみなされ別の防火対象物として扱われます。つまり、事務所であれば令8区画が適用されることを条件に、特例として規制緩和や対象区画に応じた消防法が適用される可能性があるのです。
不燃材料とは、高い防火性能を持つ建築基準法で指定されている建築材料のことです。消防法では建物の材料に不燃材料の使用が義務付けられており、建築基準法の施行令によって技術基準が定められています。国土交通大臣に不燃材料認定を受けた、または建設省告示第1400号で定められた建築材料のみが不燃材料として公的に認められているのです。
不燃材料は防火性能に応じ、以下の3つに分類されています。
不燃材料 | 加熱から20分間燃焼しない建築材料 |
準不燃材料 | 加熱から10分間燃焼しない建築材料 |
難燃材料 | 加熱から5分間燃焼しない建築材料 |
一般的にはコンクリートやレンガ、鉄鋼、金属、陶磁器といった石材や金属などの素材が不燃材料として用いられています。
前述の材料のように容易に燃焼しないことを前提に、防火上有害な変型、溶融、き裂その他の損傷を生じないもの、避難上有害な煙又はガスを発生しないものが上記3つに分類されるのです。一部の防火材料には厚みの規定もあり、該当する建築材料を総じて「防火材料」と呼んでいます。
基本的に不燃材料は特定防火対象物に対し用いられ、事務所は一般的に非特定防火対象物に分類されるので建物の構造によって防火基準が異なります。
火災時の避難経路確保という理由で、建物内の廊下幅は建築基準法で厳密に規定があります。しかし、消防法では特に廊下幅に規定は設けられておらず、避難の妨げになる物件を放置してはならないとされているのです。
主に廊下や非常口、扉、階段などの避難施設が機能しなくならないように、通路などの避難経路に物を置くことが禁じられています。十分な廊下幅を確保し、スムーズに避難経路を使用できるのであれば特に注意されることはないでしょう。
建築基準法の規定を例に挙げれば、通路幅は1.2~2.3m確保する必要があります。通路幅は建物の用途や居室の有無によって規定が異なり、床面積に応じて全ての廊下幅を1.2m以上確保しないといけないケースがあります。事務所に限らず、火災時の避難がスムーズに行える廊下幅を確保しておくべきでしょう。
事務所に適用される法令には、消防法以外にも複数あるのでそれらを遵守しなくてはなりません。消防法に関する主な法令について解説します。
消防施行令とは、内閣府によって1961年3月25日に制定された消防法施行のための政令です。政府が消防用設備に関する技術基準、消防設備に関する検査、救急業務などが定められています。
消防法は政府が定めた「法律」であるのに対し、消防施行令は政府委任によって法律を実施するために制定される「法令」です。つまり、消防法は消防に関する法律の枠組みを定める「抽象的」な消防法であるのに対し、消防法施行令は技術的な基準などを決める「具体的」に消防法のルールを決めた政府の命令という違いになります。
建築基準法とは、1950年11月23日に施行された日本国内における建築物に関する最低基準を定めた法律です。国民が安全に生活できることを目的に、建築物、敷地、設備、構造、用途など最低限のルールを明確に定めています。
全ての建築物は建築基準法に準拠した設計を義務付けられており、消防法などの様々な法律が関わります。建築基準法は全ての建築物に適用され、適格建築物とみなされなければ違反建築物として罰則を受ける恐れがあるのです。
火災予防条例とは、各自治体によって制定された火災の予防対策に関する規定です。消防法や消防法施行令が法律・政令に対し、火災予防条例は地方自治体が定める条例となり、自治体が規定の上乗せや自己解釈をした消防法の一体系になります。
基本的に消防法からの委任に基づいて技術基準などのルールが定められており、各市町村で規定や罰則が異なるものです。既存の消防法に加え、地域特有の消防法が加えられた法律のひとつと言えるでしょう。
消防法は適用対象となる建築物と規定が制定された法律で、ルールに則った設計や消防設備の設置が義務付けられています。事務所は一般的に非特定防火物に分類されており、特定防火物に指定された建物より規定が若干曖昧です。
基本的に火事や災害による被害を最小限に抑えることを目的としてるため、消防設備の設置や管理者の選任、設備点検と検査を定期的な実施と報告義務が課せられています。消防法は人命に関わる重要な法律であるため、違反をした場合には行政指導や停止命令などの重い処罰を受けてしまうリスクがあるのです。
建物には消防法以外に複数の法律が関連するため、事務所を運営される方は守るべき法律を把握することが経営者の義務と言えるでしょう。
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