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マーケティング戦略を立案する上で欠かせないのが、セグメンテーションです。セグメンテーションとは、市場に存在する不特定多数の顧客を、ニーズや特性に応じて細分化するプロセスのことを指します。
消費者のニーズが多様化し、競争が激化する現代において、セグメンテーションは企業にとって必要不可欠な取り組みだといえるでしょう。効果的なマーケティング施策を打つためには、自社に適したターゲット層を明確にすることが求められるのです。
本記事では、セグメンテーションの基本的な概念から、具体的な分類方法、活用事例まで、幅広く解説していきます。以下の3つのポイントを押さえることで、セグメンテーションについての理解を深め、マーケティング戦略に生かすヒントが得られるはずです。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
セグメンテーション(Segmentation)とは、マーケティングの分野で用いられる用語で、市場に存在する不特定多数の顧客をニーズや特性に応じて細分化することを意味します。英語では「区分」「区分け」を意味しており、顧客をあらゆる切り口から細かく分類し、グループ化(セグメント化)するプロセスを指します。
セグメンテーションの目的は、現代の多様化する消費者ニーズに対応し、企業の利益を最大化することにあります。消費者の価値観や行動が多様化した現在、かつてのようなマスマーケティングでは効果を発揮しづらくなっています。そこで、セグメンテーションによって市場を細分化し、それぞれのニーズに応じたアプローチを取ることで、より効果的なマーケティングを実現します。
また、企業は顧客や市場を分類することにより、優位性を持つ分野に集中的にアプローチできます。そのため、無駄なコストを抑え、効率的に利益を最大化することが可能です。さらに、テクノロジーの進化により、消費者の嗜好や購買行動のデータが容易に取得できるようになり、これを活用してより精緻なセグメンテーションが可能となっています。こうした理由から、セグメンテーションは現代のマーケティングにおいて必要不可欠な手法となっているのです。
セグメンテーションと混同されやすいものに、ターゲティングやポジショニングというものがあります。マーケティングを成功させる上で、それぞれが重要な役割を担っているため、どのような違いがあるのか理解しておきましょう。ここからは、セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングの違いについて説明していきます。
セグメンテーションとよく混同されるのが、ターゲティングという用語です。ターゲティングとは、セグメンテーションの次の段階で行われるプロセスで、細分化されたセグメントの中から自社が狙うべき層を選定することを指します。
つまり、セグメンテーションが顧客を分類するプロセスであるのに対し、ターゲティングはその分類結果をもとにアプローチすべき、セグメントを特定する作業だといえます。例えば、ある製品を販売する際、顧客を年齢や性別、地域などでセグメンテーションした後、その中で最も収益が見込める層をターゲットに設定するのがターゲティングです。このように、セグメンテーションがあって初めてターゲティングが可能になるため、両者は密接に関係しつつも、明確に区別される概念なのです。
ターゲティングを適切に行うことで、限られたリソースを最適な領域に集中投下し、マーケティングの効率を高めることができます。セグメンテーションがあってターゲティングが成り立つことから、両者は切っても切れない関係にあるのです。セグメンテーションの質が高ければ高いほど、ターゲティングの精度も上がっていくといえるでしょう。
セグメンテーションとターゲティングに続くのが、ポジショニングというプロセスです。ポジショニングとは、ターゲットとして定めたセグメント内で自社製品・サービスがどのように認知されるべきかを明確にし、競合との差別化ポイントを打ち出すことを指します。
例えば、ポジショニングを行う際は、価格と品質の2軸で製品を位置付けることが一般的です。高価格帯の製品であれば、プレミアムなイメージを強調し、質の高さをアピールすることで競合製品との差別化を図ります。一方、低価格帯であれば、コストパフォーマンスの良さや使いやすさを強調することで、特定の層に訴求することが可能です。
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングという一連の流れは「STP分析」と呼ばれるマーケティングの基本的なフレームワークとして知られています。セグメンテーションは、STP分析の起点となる重要なプロセスであり、後続のターゲティングやポジショニングの方向性を大きく左右する役割を担っているのです。
この流れにおいて、ポジショニングは競合製品との差別化だけでなく、顧客の心に残るメッセージを発信するためにも重要です。適切なポジショニングが行われれば、ターゲット顧客に対して自社製品が唯一無二の選択肢であると感じさせることができ、ブランド価値を高められるのです。
セグメンテーションでは、顧客をどのような基準で分類するかがポイントです。
各セグメントには異なる特徴とニーズが存在するため、適切な分類方法を選ぶことがマーケティング戦略の成功に直結します。企業は、これらの分類を組み合わせて、より精緻なセグメンテーションを行うことで、最適なアプローチ方法を見つけ出すことができます。
一般的には、以下の5つの変数(属性)が用いられます。
分類 | 概要 |
---|---|
ジオグラフィックセグメンテーション | 地理的な要素に基づいて顧客を分類する居住地域や気候、人口密度などの変数が用いられる |
デモグラフィックセグメンテーション | 年齢や性別、職業、収入といった人口統計的な属性で顧客を分類する |
サイコグラフィックセグメンテーション | ライフスタイルや価値観、パーソナリティなど、消費者の心理的な特性に注目して分類する |
行動セグメンテーション | 実際の購買行動や製品の使用状況などに基づいて顧客を分類する利用頻度やロイヤルティの度合い、購入時の状況などの変数が用いられる |
ファーモグラフィックセグメンテーション | 企業を対象としたB2B市場に特化して分類する業種や企業規模、売上高などの変数を用いる |
ジオグラフィックセグメンテーション(Geographic Segmentation)は、地理的な要素に基づいて顧客を分類する方法です。居住地域や気候、人口密度などの変数が用いられます。
地域によって、気候や文化、ライフスタイル、購買力などは大きく異なります。そのため、地域特性を考慮したマーケティング戦略を立てることが不可欠です。ジオグラフィックセグメンテーションは、各地域の顧客ニーズを的確に把握し、それに合わせた製品開発、価格設定、プロモーション、流通チャネルの選択などを可能にします。画一的なアプローチではなく、地域に最適化された施策を打つことで、顧客満足度の向上と売上拡大につなげることができるのです。
例えば、飲料メーカーが暑い地域では清涼飲料水を強化し、寒冷地ではホットドリンクのプロモーションを行うように、地域の気候や文化に応じて製品を調整する必要があります。特定の地域において、季節ごとにプロモーションを切り替えることにより、需要を最大限に引き出すことができます。
デモグラフィックセグメンテーション(Demographic Segmentation)は、年齢や性別、職業、収入といった人口統計的な属性で顧客を分類する方法です。消費者の基本的な属性が購買行動に与える影響は大きいため、最も一般的に用いられるセグメンテーション手法の一つです。
年齢・性別・収入など、人口統計的な属性は、消費者の嗜好やニーズを大きく左右します。これらの違いを理解し、ターゲットを明確にすることにより、的確なマーケティング施策を打つことができます。
例えば、若年層と中高年層では求める商品の機能やデザインが異なることが多いことから、年代に合わせた製品開発やプロモーションを行うことが重要です。また、性別に基づくマーケティングも効果的です。例えば、男性向けと女性向けで異なる広告やメッセージを展開すると、購買意欲を高める効果が期待できます。
サイコグラフィックセグメンテーション(Psychographic Segmentation)は、ライフスタイルや価値観、パーソナリティなど、消費者の心理的な特性に注目した分類方法です。同じ属性の顧客でも、個人の考え方次第で購買行動は大きく異なるため、より深い洞察が得られる手法だといえます。
消費者の価値観やライフスタイルは、同じ属性の中でも個人差が大きいことが特徴です。マインドセットに訴求するサイコグラフィックセグメンテーションを行うことで、顧客の深層心理を理解し、共感を得るマーケティングが可能となります。
例えば、健康志向の高い層には、オーガニックや無添加をアピールするなど、価値観に訴求する施策が有効です。定量的なデータだけでは把握しきれない顧客の内面を捉えることで、より効果的なマーケティングが可能となります。
行動セグメンテーション(Behavioral Segmentation)は、実際の購買行動や製品の使用状況などに基づいて顧客を分類する手法です。利用頻度やロイヤルティの高さ、購入時の状況などの変数が用いられます。
実際の購買行動やブランドとの接点は、消費者の態度を知る上で極めて重要な情報源です。利用頻度やチャネル、購入理由などのデータを分析し、行動セグメンテーションを行うことで、顧客の購買プロセスに合わせた最適なアプローチが可能になります。
例えば、ヘビーユーザーとライトユーザーでは求める情報量が異なります。そのため、それぞれに適したアプローチを取ることが重要です。また、まだ製品を使ったことがない潜在顧客に対しては、認知拡大に向けた施策を打つことが求められます。
ファーモグラフィックセグメンテーション(Firmographic Segmentation)は、企業を対象としたBtoB市場に特化した分類方法です。業種や企業規模、売上高などの変数を用いて、顧客となる企業をセグメント化します。
BtoBのマーケティングでは、対象となる企業の属性を理解することが非常に重要です。業種・企業規模・売上高・意思決定プロセスなど、企業ごとに課題やニーズ、購買行動が大きく異なるためです。ファーモグラフィックセグメンテーションを行うことで、企業の特性に合わせた戦略的なアプローチを取ることができます。製造業には在庫管理ソリューションを提案し、IT企業にはセキュリティサービスを訴求するなど、業種に特化したバリュー提案が可能です。
また、大企業向けには包括的なソリューションを提案し、規模に応じたカスタマイズを提供することが必要です。一方、中小企業向けにはシンプルでコストパフォーマンスに優れたサービスを訴求することが、効果的なアプローチとなります。
セグメンテーションにおいては、以下の4つの要素を意識することが重要です。
これらの要素を踏まえた上で、最も効果的なマーケティング施策を展開することが可能です。
4Rの1つ目は、Rank(優先順位)です。細分化したセグメントを、自社の経営戦略や強みと照らし合わせて優先順位付けすることで、効果的なターゲティングが可能になります。
例えば、高い購買力を持ち、自社製品への関心も高いセグメントには、重点的にリソースを投下します。一方で、購買可能性の低いセグメントには、アプローチの頻度を下げるといった施策が考えられます。メリハリのある施策を打つことで、限られたリソースを有効活用できるのです。
4Rの2つ目は、Realistic(規模の有効性)です。ターゲットとして選んだセグメントに十分な市場規模があるか、見極めることが重要です。
いくら自社に適していても、そのセグメントの規模が小さければ、リーチするためのコストが見合わなくなってしまいます。そのため、費用対効果を考慮し、現実的な売上や利益を確保できる見込みがあるかどうかを検証する必要があるのです。
4Rの3つ目は、Reach(到達可能性)です。ターゲットのセグメントに対して、 実際にプロモーションや製品・サービスを届けられるかどうかを確認する必要があります。
例えば、海外の富裕層をターゲットにしても、現地での営業活動や物流網が整っていなければ、ビジネスとして成立しません。現実的に到達可能なセグメントを選ぶことで、無駄なコストを削減し、収益性を高めることにつながるのです。
4Rの4つ目は、Response(反応の測定可能性)です。セグメンテーションの効果を測定し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。
ターゲットとしたセグメントからどのような反応があったのか、定量的なデータをもとに分析することで、施策の改善や新たな戦略の立案につなげることができます。他社が見落としているセグメントでポジションを確立すると、競合との差別化も図れるのです。
ここでは、セグメンテーションがどのように活用され、具体的にどのような成果を上げているか、2つの事例を紹介します。紹介する事例は、とあるデジタルデバイスメーカーとコーヒーチェーンです。以下の表で、それぞれの概要をまとめました。
概要 | |
---|---|
デジタルデバイスメーカーの事例 | とあるデジタルデバイスメーカーはPC事業の存続危機に直面しましたが、外回り営業に特化したセグメンテーション戦略を導入しました。必要な機能を絞り込み、他社とのスペック競争を避けた結果、2013年には国内モバイルPC市場で40%のシェアを獲得しています。 |
コーヒーチェーンの事例 | あるコーヒーチェーンは、年齢、職業、地域などで細かく顧客をセグメント化し、大都市のオフィスワーカーを主要ターゲットに設定しました。ターゲットに居心地の良い空間と質の高い接客を提供することで、他のカフェチェーンとの差別化に成功し、グローバルブランドへと成長を遂げています。 |
各企業は、自社のターゲット顧客を詳細に分類し、それぞれのニーズに合った製品やサービスを提供しています。このことで、顧客に最適な価値を届け、競争優位を築いているのです。ここからは、それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。
とあるデジタルデバイスメーカーでは、2000年代半ばにPC事業が存続するか、撤退するかの岐路に立たされていました。当時、コンシューマ向けPC市場では、VAIOなどのブランド力のあるメーカーが強く、一方でビジネス分野では、海外勢のコスト競争力が脅威となっていたのです。
そこで、単なるスペック競争や価格競争に乗るのではなく、ビジネス分野でも「外回りの営業」にターゲットを絞ってセグメンテーションを行いました。外回り営業に必要な機能やスペックにこだわり、その代わりに不要な機能は思い切って割愛したのです。
具体的には「軽さを追求するために、薄さを捨てる」「バッテリーの持ち・高輝度モニター・防水性・セキュリティを重視する一方で、拡張性・バランスの悪さには目をつぶる」などの戦略を取りました。
このセグメンテーションを起点に、ターゲティングやポジショニングを設計し、オペレーションまで一貫して事業を組み立てた結果、そのPCは大ヒットとなりました。2013年には、国内モバイルPCシェアで40%を超えるまでになったのです。
過剰な競争環境の中、セグメンテーションを的確に行い、独自のポジションを確立したデジタルデバイスメーカーは、セグメンテーション戦略の成功例として高く評価されています。
とあるコーヒーチェーンは、世界最大のコーヒーチェーンとしてセグメンテーション戦略を巧みに活用し、多様な顧客層のニーズに応えています。まず、顧客を年齢・職業・居住地・経済状況などで細かくセグメント化し、それぞれに適したサービスを提供しています。年齢層で言うと10代後半から70代まで、職業では学生からオフィスワーカー、リタイアした高齢者に至るまで、幅広くカバーしています。
その上で、このコーヒーチェーンは「大都市で一定水準以上の収入を得ているオフィスワーカー」を主要ターゲットに設定しました。この層のニーズをつかみ、高級感のあるコーヒーの体験を提供することに注力したのです。
また、時間帯によってもターゲットを変えています。朝は出勤前の会社員、昼間は主婦層、夕方以降は仕事帰りの会社員など、きめ細やかなセグメンテーションを行っているのが特徴です。
こうしたセグメンテーションをもとに、コーヒーチェーンは「サードプレイス」というポジショニングを確立しました。オフィスでも家でもない、くつろげる第三の居場所を提供するという価値を打ち出したのです。
具体的には、居心地のよい空間づくり、SNS映えするメニュー、質の高い接客など、ターゲット層のニーズを的確に捉えた施策を展開しました。セグメンテーションに基づいた戦略的なマーケティングにより、コーヒーチェーンは他のカフェチェーンとの差別化に成功し、グローバルブランドへと成長を遂げたのです。
セグメンテーションとは、市場に存在する顧客を細分化し、グループ化するプロセスのことを指します。ジオグラフィック・デモグラフィック・サイコグラフィック・行動・ファーモグラフィックの5つの変数を用いて分類することで、自社に適したターゲット像を明確にできます。
また、4Rの原則に基づいてセグメントを評価し、効果的なターゲティングやポジショニングにつなげることが重要です。デジタルデバイスメーカーやコーヒーチェーンの事例からも分かるように、適切なセグメンテーションは競合との差別化や新たな市場の開拓に役立ちます。
マーケティング戦略の根幹をなすセグメンテーションについて理解を深め、自社の事業に生かしていくことが重要です。顧客のニーズを的確に把握し、最適なアプローチを行い、ビジネスの成功につなげていきましょう。
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