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アメリカの病院でかかる医療費は、世界からみても非常に高額です。この記事では、アメリカの医療費が高額な理由や具体的な事例、都市別の医療費事情、そして海外旅行保険の重要性を詳しく解説します。また、他の国や地域の医療費事情も紹介します。アメリカへの旅行や長期滞在を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
アメリカの医療費が高額な理由は複数存在します。ここでは、主な要因と具体的な事例を詳しくみていきます。
日本とは異なり、アメリカの救急車は有料です。救急車を呼んだ場合、基本料金に加えて、走行距離や使用した医療機器、投与した薬剤などに応じて料金が加算されます。
以下に、ニューヨーク消防局による搬送を受けた場合の費用例を紹介します。
患者搬送(救命士なし) | 84,000円 |
救急搬送①(救命士乗車) | 143,000円~155,000円 |
距離に応じた料金 | 約1,000円/Km |
酸素投与 | 約7,000円 |
(1ドル120円での計算)
日本の救急体制では、救急車に医療従事者や救命救急士が乗車し、搬送中から適切な処置を施します。しかしアメリカでは、距離や体制によって料金は大きく異なります。結果として、短距離の搬送でも1,000ドル(約110,000円)以上の請求書が届くことは珍しくありません。
そのため、軽度の症状であっても救急車を呼ぶべきか迷い、場合によっては不適切と知りながらタクシーや配車サービスを利用するケースも見られます。高額な救急車料金はアメリカの医療システムの課題の一つといえるでしょう。
アメリカの多くの病院は予約が必要で、予約なしで受診できる施設は限られています。予約なしで受診できる医療機関は、救急救命室以外に「ウォークインクリニック」や「アージェントケア」などがあります。両者は救命救急室ほどではないものの、費用はやや高額です。また、対応できる処置は限られ、待ち時間は長い傾向があるのも覚えておきましょう。
世界最高水準のアメリカの医療技術は、病院が医療費を自由に設定できます。つまり、高度な医療技術を用いた治療ほど費用も高額です。
病気やケガなどで1度入院すると、医療費が数百万円になるケースも珍しくありません。
例えば、虫垂炎(「盲腸」と呼ばれる、強い腹痛が起こる炎症)で入院した場合、日本とアメリカでは以下のような費用差があります。
日本 | 約31万円~ |
アメリカ公立病院 | 約209万円以上 |
アメリカ私立病院 | 約599.5~816.5万円 |
(出典:日本医師会・東京海上日動火災保険株式会社「世界の医療と安全」・医科点数表)
公立病院・私立病院で異なりますが、いずれにせよ日本よりも膨大な医療費がかかるとわかります。
アメリカの医療システムは、医療機関どうしの競争を促進し、医療技術の発展を加速させています。しかし、同時に医療費の高騰を招き、患者の経済的負担を増大させているのです。特に保険でカバーされない治療や高額な自己負担がある場合、患者は治療を受けるか金銭的な破綻を招くかの選択を迫られることもあります。
アメリカでは、高額な医療費の支払いが原因で自己破産に至るケースが少なくありません。学術雑誌 American Journal of Public Healthによると、2019年の自己破産の 66.5%は医療費の支払いが原因とされています。
例えば、重度の病気や怪我で長期入院した場合、保険でカバーされない部分の医療費が数十万ドル(数千万円)に達することもあります。このような高額な医療費を支払えず、最終的に破産を選択せざるを得ない状況になる人が多いのです。
医療費支払いによる自己破産の問題は、低所得者向けの公的医療保険(メディケア・メディケイド)の対象にならない中間所得層に大きな影響を与えています。
なぜなら、勤務先の企業が民間医療保険を用意するケースが多い中、中小企業は保険を用意しないケースもあるからです。企業が保険を用意しない場合、人々は高額な民間保険に自腹で入る必要があります。
医療費による破産は、個人だけでなく、社会全体への影響も絶大です。また、医療費の支払いを恐れて必要な治療を受けない人が増えると、公衆衛生上の問題も生じます。
このような医療保険の状況を改善するため、医療保険制度の改革や医療費の透明化、医療費の削減策など、さまざまな取り組みが行われていますが、多くの課題が残るのが現状です。
高額な医療費は、個人だけでなく国家や州の財政にも大きな影響を与えています。
メディケア(高齢者や障がい者向け公的医療保険)やメディケイド(低所得者向け公的医療保険)などの公的医療保険制度の支出は年々増加しており、政府の財政を圧迫しています。
2020年の統計によると、アメリカの医療費支出は約4兆1,240億ドルで、前年と比べて9.7%増加しました。1人あたりの医療費は1万2,530ドル、GDPに占める国民医療費の割合は19.7%と、他の先進国と比較して非常に高い割合でした。この高額な医療費支出が、連邦政府や州政府の財政赤字の一因となっています。
2020年の医療費増額は、新型コロナウイルス感染症への対応が大きな要因でしたが、高齢化社会の進展や医療技術の高度化などにより、更なる医療費の増大が見込まれます。特に、メディケアやメディケイドへの政府支出が、今後10年間で73%増加するとの予測もあり、今後の大きな問題となるでしょう。
また、医薬品の価格高騰も大きな問題となっています。アメリカでは、製薬会社が薬価を自由に設定できるため、一部の薬剤価格は非常に高額です。高額薬剤の使用増加も、公的医療保険の支出を押し上げる一因です。
医療費の増加は、他の重要な政策分野への予算配分にも影響を与えます。教育、インフラ整備、環境保護など、他の分野への投資が制限されると、国家の長期的な競争力にも影響を及ぼす可能性があるのです。
アメリカでは、多くの人が民間医療保険に加入していますが、その保険料も非常に高額です。雇用主が提供する団体保険でさえ、従業員の負担が大きいのが現状です。
たとえばある年の企業提供保険プランの平均保険料は、単身者で1ヶ月あたり約650ドル、家族プランでは約2,000ドルになるといわれています。企業と従業員の負担割合は各企業で異なるため、場合によっては従業員が多額の保険料を負担するケースもあるのです。
高額な保険料は、多くのアメリカ人にとって大きな経済的負担となっています。一部の人々は、保険料を支払うか、食費や住居費など他の生活必需品を削るかの選択を迫られることもあります。また、保険料が高すぎて医療保険に加入できない「無保険者」の問題も深刻です。
保険料が高額になる背景には、医療費の高騰、保険会社の利益確保、リスクの高い被保険者の増加などがあります。また、アメリカの医療保険システムは複雑で、管理コストが高いことも要因の一つです。
高額な保険料は、雇用にも影響を与えています。多くの企業にとって、従業員の医療保険は大きなコスト要因となっており、このことが賃金の抑制や雇用の抑制につながっているという指摘もあります。
アメリカの医療費は都市によっても大きく異なります。ここでは、主要都市の医療費事情と具体的な事例をみていきます。
ニューヨークは、アメリカの中でも特に医療費が高額な都市です。高度な医療技術と高い生活コストが、医療費の高騰に拍車をかけています。
ニューヨークの医療費が高額である理由は、以下のとおりです。
特に以下に紹介するマンハッタン区の医療費は、他の区の2倍から3倍ともいわれています。
一般の初診料 | 150ドル~300ドル |
専門医を受診した場合 | 200ドル~500ドル |
入院した場合の室料 | 2,000~3,000ドル/日 |
急性虫垂炎での入院・手術(1日入院) | 10,000ドル以上 |
1日の入院室料だけで、ニューヨーク圏中間給与所職者の1ヵ月分以上の費用を請求されるケースもあります。
ライム病とは、野生のマダニに噛まれることでかかる細菌性の感染症です。初期はカゼのような症状ですが、細菌が全身に拡散すると発疹や心疾患、関節炎などの症状があらわれます。
ニューヨーク周辺ではライム病の発生率が高く、その治療費も高額です。ニューヨーク州を含む4つの州(コネチカット州・メリーランド州・ミネソタ州・ニューヨーク州)におけるライム病治療にかかる平均コストは、約1,200ドル~2,000ドルだったという調査結果があります。ただし、症状が体の全身に出てしまうと、症状が体の一部のみで済んだ人の約2倍のコストがかかりました。
ライム病の治療が高額になる理由は、初期段階を過ぎると長期の抗生物質投与が必要になるからです。初期症状が他の疾患と似ているため、正確な診断のために複数の検査が必要となることもあります。慢性化した場合は、長期にわたる抗生物質治療や症状管理が必要となり、医療費が膨らんでいきます。
また、ニューヨークでは専門医の診察料が高額なことも、ライム病の治療費を押し上げる要因といえるでしょう。
ウエストナイル脳炎などの蚊媒介感染症の治療も、高額です。ウエストナイル脳炎の治療費が高額になる主な理由は、診断のための高度な検査と集中治療の必要性です。確定診断のためには、血液検査やPCR、脳脊髄液検査などの高額な検査が必要となります。また、重症化した場合は集中治療室(ICU)での管理が必要です。
さらに、後遺症が残る場合は、長期的なリハビリテーションが必要となり、さらに医療費が膨らむ可能性があります。
狂犬病は、発病するとほぼ100%が死亡する病気です。ニューヨーク市内では狂犬病に感染した野生生物が確認されることもあるため、野生生物に噛まれたりひっかかれたりした場合は適切な治療が必要です。狂犬病に感染したリスクがある場合、迅速なワクチン摂取や、必要に応じて免疫グロブリンの投与を行います。ワクチンや免疫グロブリンは非常に高額ですが、保険でカバーされずに全額自費になる場合もあります。
ロサンゼルスも医療費が高額な都市の一つです。特に、専門医の診察料や高度な医療技術を用いた治療が高額になる傾向があります。
ロサンゼルスの医療費が高額なのは、以下のようにいくつかの要因があります。
救急車を利用すると、数百ドルから一千ドル以上になる場合があります。ロサンゼルスに滞在する際も、医療保険への加入をおすすめします。
高齢者の移住先として人気のフロリダも、医療費は高額です。
フロリダの医療費が高額な原因を、いくつか紹介します。
温暖で過ごしやすいのがフロリダの特徴ですが、フロリダの医療費はアメリカ国内でも高額です。医療保険の有無によって受けられる医療に差が生じるため、フロリダに行く際は事前の保険加入を忘れないようにしましょう。
ワイとグアムはどちらも人気の観光地ですが、医療費には大きな違いがあります。
ハワイの医療費は、アメリカ本土同様に高額です。
ハワイの医療費が比較的高額な理由は、いくつかの要因があります。
水の事故や蚊が媒介する感染症などのリスクが高いため、ハワイに行く際は念入りな準備を行いましょう。
一方、グアムの医療費はハワイよりも安価といわれています。なぜなら、グアムの医療サービス水準はハワイよりも低いためです。ただし、グアムの医療設備は限られており、高度な治療が必要な場合はハワイや日本へ医療搬送されるケースもあります。
ハワイとグアムの比較から、地理的条件や経済規模、医療体制の違いが医療費に大きく影響するとわかります。ハワイやグアムに行く際は、医療費や医療体制の違いを理解したうえで適切な海外旅行保険に加入するとよいでしょう。
実際のアメリカでの医療費支払い事例を、いくつか紹介します。
(出典:損保ジャパン)
アメリカでの医療費がいかに高額であるか、そして海外旅行保険の重要性が理解できる内容です。特に注目すべきなのは、比較的軽症と思われる症状でも、入院すると急激に費用が膨らむ点です。
ここからは、アメリカでの医療費と保険の必要性について以下の内容を説明します。
日本とアメリカは保険制度が大きく異なるため、しっかりと理解しておきましょう。
日本の健康保険がアメリカでも使えると誤解する人がいますが、実は日本の健康保険は、原則として海外では適用されません。
例外として「海外療養費」という、日本の健康保険で治療を受けた場合と同等の金額が後日払い戻される制度はあります。
ただし、払い戻されるのはあくまでも日本の診療報酬に基づいた金額で、アメリカの高額な医療費に対してはごくわずかな金額にしかならないのが現状です。
例えば、アメリカで10,000ドル(約110万円)の医療費がかかった場合、日本の健康保険による払い戻しは数万円程度にしかならないケースもあります。これは、日本とアメリカの医療費の差が非常に大きいためです。
また、海外療養費の支給を受けるためには、帰国後に複雑な手続きが必要です。現地の医療機関から詳細な診断書や領収書を入手し、日本語に翻訳する必要があります。さらに、審査に時間がかかるため、支給されるまで数ヶ月かかることもあるのです。
そのため、アメリカ旅行の際は日本の健康保険だけでなく、十分な補償額の海外旅行保険への加入を強くおすすめします。
海外旅行保険は、診療や入院費の支払い以外に、緊急時の医療搬送費用もカバーできます。そのため、アメリカのように医療費が高額な国への旅行では、海外旅行保険が重要な役割を果たします。
海外旅行保険の主な補償内容は、以下のとおりです。
海外旅行保険にはさまざまなプランがあり、補償内容や補償限度額が異なります。
適切な海外旅行保険に加入することで、万が一の高額医療費に対する備えができ、アメリカ旅行を安心して楽しめるようになります。
ただし、医療費の一時立て替えが必要な場合もあるため、クレジットカードの利用限度額を確認しておくと安心です。
ここでは、以下の地域における医療費事情を紹介します。
他の国の事情もわかれば、海外滞在の安心度が高まります。順番に説明します。
ヨーロッパの多くの国は、医療保険制度が充実しており、医療費はアメリカほど高額ではありません。しかし、外国人旅行者の場合は高額な費用がかかることがあるため、注意が必要です。
イギリスを例に取ると、公的医療サービスである「国民保健サービス(NHS)」と民間の医療機関によるプライベート医療サービスの2つがあります。旅行者や6か月未満の短期滞在者はNHSが利用できないため、民間の医療サービスを利用せざるを得ません。
民間医療サービスを利用した場合の外来治療の初診費は15,000円~30,000程度、入院した場合の1日あたりの部屋代は135,000〜200,000円程度です。
アジア・オセアニア・ミクロネシアの医療費は、国や地域によって大きく異なります。
例えば、タイ(バンコク)で外来診療を受ける際の初診料は3,000~4,500円程度、虫垂炎で手術をして3日入院した際の費用は480,000円程度です。
また、オーストラリア(ゴールドコースト)の初診料は12,000円程度、虫垂炎で手術と3日入院した際の費用は800,000円程度です。地域によって受けられる医療水準も大きく異なるため、事前の下調べを欠かさないようにしましょう。
カナダ(バンクーバー)での初診費の目安は12,000円前後、虫垂炎で手術をして2日入院した際の治療費は800,000円程度です。
中南米諸国の医療費は、国や地域、医療機関によって大きく異なります。ブラジル(リオデジャネイロ)の初診費の目安は19,000円、虫垂炎手術での治療費は480,000円程度となっています。
ただし、今回紹介した金額はあくまでも目安です。該当地域に足を運ぶ際は、最新の状況を確認するようにしてください。
海外での医療費は予想以上に高額になる可能性があります。特にアメリカでは、軽症でも数十万円、重症の場合は数千万円以上の医療費がかかることもあります。このような高額な医療費は、個人の財政を大きく圧迫し、最悪の場合は破産につながる可能性さえあるのです。
しかし、適切な準備と予防策を講じれば、想定外の医療費によるリスクは軽減可能です。渡航する際は十分な補償額の海外旅行保険に加入するようにしましょう。
DYMはアメリカニューヨークにて、ジャパニーズメディカルケアというクリニックを運営しています。内科、小児科、婦人科から健康診断まで行っており、オンライン診療も可能です。
クリニックの詳細は、以下をご覧ください。
「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。
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