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「会社の業績が悪化した」
「債務の返済に困難が生じている」
このような場合に会社を立て直すために企業再生をするのですが、その内容は非常に難解でわかりづらいです。
そこで本記事では、企業再生とはどのようなものなのか、基本的な事項やメリット、手続きなどをわかりやすくお伝えします。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
企業再生とはどのようなものなのでしょうか。
企業再生とは、企業が経営危機に陥っている場合に、その原因を排除して経営再建を図ることをいいます。
特に法律でこのように定義されているわけではありません。
会社は債務超過を起こしていることや赤字が継続していることが原因で、継続が危ぶまれることがあります。
このような場合には、会社を畳んでしまうか、会社を存続させるかの選択を迫られることになります。
会社を存続させる場合には、会社が経営危機となっている原因を排除する必要があり、そのために行われるのが企業再生です。
企業再生の成功事例や失敗事例を知っておきましょう。
日本航空株式会社は、企業再生に成功した事例です。
JALの通称で親しまれる日本航空株式会社は、2008年のリーマンショックを引き金に約2兆3,000億円もの負債を抱えます。
そのため、2010年に企業再生方法である会社更生手続きの適用を申請しました。そして、経営陣の刷新、大型機材の売却による中型機を主体とする機材編成への転換、不採算路線の減便などによるコスト削減、人員削減、給与の削減などによって経営を再建させます。
2011年3月28日に会社更正手続きが終了し、経営再建を成功させました。
参考:更生手続の終結決定について|日本航空株式会社(URL:https://www.jal.co.jp/other/info2011_0328_02.html)
民事再生に成功した例として、スカイマーク株式会社が挙げられます。
1986年から始まった航空輸送における規制緩和によって、航空業界に参入したスカイマーク株式会社は、普通運賃が他の航空会社の半額程度に抑えられたことから80%の搭乗率の確保をするなどしました。
しかし他社も平均運賃を引き下げるなどの措置を取り、乗車率は60%を切るようになり、苦しい経営を強いられます。
その後2012年に格安航空会社が相次いで参入するとともに、円安の加速による燃料費負担が増加することになり、経営赤字が膨らみます。
2014年JAL、ANAに支援要請を行いながら、2015年に民事再生法の適用を申請します。
その後、2016年3月28日に民事再生手続きが終結しました。
参考:民事再生手続の終結のお知らせ|スカイマーク株式会社(URL:https://www.skymark.co.jp/ja/company/press/160328_press.pdf)
旧カネボウ株式会社の事例も、企業再生の成功事例です。
旧カネボウ株式会社は、従来の化粧品のみならず、多角化路線へと進みました。
その結果過剰債務状態に陥り、これを隠すために粉飾決算を繰り返し、ついには600億円を超える超過債務を抱えることになりました。
かつて存在した産業再生機構主導により事業の切り離しがされ、化粧品部門は花王グループの傘下として株式会社カネボウ化粧品に、繊維部門はセーレン株式会社に事業譲渡され、日用品・薬品・食品事業は「クラシエ」に社名を変更し、現在まで引き継がれています。
参考:カネボウ株式会社等に対する支援決定について|産業再生機構(URL: https://www8.cao.go.jp/sangyo/ircj/ja/pdf/shien_kanebo_2004031001.pdf)
一方で、株式会社レナウンは企業再生の失敗事例として挙げられます。
老舗アパレル会社レナウンは、バブル崩壊後の高価格帯の衣料品の販売不振によって経営状態が悪化します。
Eコマースへの対応の遅れに、コロナ禍が追い打ちをかけ、ついに親会社からの売掛金の回収ができなくなったことが決定打となり、2020年5月15日に民事再生手続き開始決定を受けます。
一部事業は事業譲渡されるものの、業績回復の見通しを立てられず、民事再生手続き廃止決定ののちに破産開始決定が下され、2021年に清算業務が終了しました。
参考:破産手続開始決定(東京地方裁判所)|レナウン株式会社(URL:https://www.renown-kanzai.com//files/libs/168//202112021653165767.pdf)
企業再生には次のようなメリットがあります。
企業再生には企業が存続するというメリットがあります。
会社を精算する場合、企業は存続できず、代表者などの役員の収入が途絶えることになってしまいます。
債務の返済はできなくなり、黒字の事業があっても存続できず、会社が持っているノウハウも消滅することになってしいます。
企業再生によって企業が存続すれば、収益性の高い事業が存続して、ノウハウが維持でき、代表者などの収入も手続きによっては確保しつつ、債務の返済をすることが可能です。
従業員の雇用を確保できるというメリットもあります。
会社を精算する場合、その会社は法人格を失うことになるので、雇用されている従業員は解雇されることになります。
会社の精算をすると、従業員やその家族の生活を守ることができません。
企業再生をすれば、一部の従業員については解雇せざるを得ない場合があっても、基本的には従業員の雇用を維持することができます。
企業再生ができる条件としては次のようなものが挙げられます。
企業再生をするための条件の一つとして、債権者の協力は欠かせません。
経営状態の悪化によって、債務をスケジュール通りに返済できなくなる可能性が高まります。
このような場合に債権者が我先にと債権回収を急ぐようになると、会社の返済能力が著しく悪化してしまい、事業再生ができなくなります。
また、民事再生・会社更生にあたっては、債権者の同意がなければ手続きを行うことができません。
メインバンク・サブバンクなどの金融機関や、主要取引先など、主だった債権者の協力が不可欠となります。
悪化している資金繰りを正常化できることが条件の一つです。
経営状態が悪化すると、債務・負債が積み重なり、その返済のために資金繰りが悪化します。
企業再生ができる条件としては、この資金繰りの正常化が必要です。
すでにある債務・負債については、金融機関からの債務免除や民事再生手続き・会社更正再生手続きの利用、スポンサー企業による資金注入などによって圧縮・消滅させることが考えられます。
また、不採算部門や重複している部門の整理、人件費などの削減によるコストカットも、資金繰りの正常化に役立ちます。
事業の継続が可能であることが必要です。
たとえば、単一の商品のみを取り扱っている会社があるとします。しかし、その商品よりもコスト・耐久性などが優れた商品が他社により次々と開発されて、その商品の需要がなくなっていました。
このような場合には、どんなに債権放棄をしてもらいかつコストカットを行っても、以後需要が高まる可能性がなければ、その事業で収益を上げることはできません。
売上の拡大やコストカットなどで収益性の改善ができ、事業の継続が可能である場合にしか、企業再生はできません。
最後に、経営者や従業員に企業再生の意思があることも必要です。
事業再生にあたって、経営者には事業の立て直しの他に、債権者との粘り強い交渉、従業員への説明・交渉なども必要となり、非常に強い意思が必要となります。
また従業員にも、事業の立て直しや新しい環境でも会社を継続していく支えとなる意思が必要です。
ここまで企業再生についてお伝えしましたが、企業再生とよく似た用語に「事業再生」があります。
企業再生と事業再生はどのような違いがあるのでしょうか。
事業再生とは、経営不振となっている事業について、収益性を高めて再生をすることをいいます。
言葉の上では、企業単位で再生をする企業再生なのか、事業単位で再生をする事業再生なのか、という違いがあります。
しかし、企業再生も事業再生も法律的な用語ではなく、それぞれが経営不振からの脱却を意味するものです。そのため、あまり厳密な使い分けをされているわけではなく、事実上同じ意味であるといっても良いでしょう。
では、企業再生の具体的な手法について見てみましょう。
まず企業再生には、法的手段によって企業再生を目指す法的再生と、交渉によって再建を目指す私的再生があります。
法的再生とは、法的手段によって企業再生を行うことをいいます。
企業再生をするにあたって、会社の債務を圧縮することができる手続きが法律で用意されています。これらを用いることで債務・負債の圧縮を行い、企業再生をすることを法的再生といいます。
具体的な手続きには、民事再生と会社更生の2つがあります。
民事再生とは、民事再生法に基づく手続き、経済的な危機に陥っている債務者について、
債権者の多数の同意と裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどによって、債務者・債権者との間の権利関係を適切に調整して行う企業再生方法です。
法的再生として一般的に用いられる手続きであり、経営者などがそのまま経営・事業に携わることができることが特徴となっています。
かつて和議法という法律で規定された和議手続きを、現在の会社経営を巡る状況に合わせたもので、2000年4月1日に施行されました。
上述したように、法的再生として一般的に利用されますが、上述したそごうの企業再生のような大きな手続きでも利用できるようになっています。
個人の債務整理について個人再生という手続きがありますが、これは民事再生法の中にある個人が利用することを前提とする章によるもので、民事再生は会社・企業が利用するものです。
民事再生を用いるメリットとしては、次のようなものがあります。
後述する会社更正では経営陣は退任することとなっているので、そのまま経営に携わることができることが民事再生の特徴であるといえるでしょう。
一方で、民事再生を用いるデメリットとしては、次のようなものがあります。
民事再生をすると官報に公告されたり、場合によっては報道で報じられたりと、企業の信用・イメージに影響することがあります。
民事再生手続きは一般的には「倒産」という表現をされ、顧客の購買意欲に水を差す可能性は否定できません。
また民事再生では、担保権を持っている債権者が担保権を実行することを防ぐことはできません。
自社の商品を精算するのに不可欠な工場の機械のようなものが担保に入っている場合、その債権者が担保権を行使することで、企業再生ができなくなってしまうことがあります。
また民事再生は、支払う義務のある債務の免除を内容とするもので、債権者に著しい不利益を強いるものです。そのため、手続きは非常に複雑かつ厳格であり、法務・税務の知識が不可欠となり、負担を強いることになります。
会社更正とは、会社更生法に基づく手続きで、窮境にある株式会社について、会社債権者などの利害関係者の多数の同意の下に更生計画を定め、これを遂行することで、利害関係者の利害を適切に調整して行う企業再生方法です。
法的再生の中でも株式会社のみが利用することができ、大規模な株式会社が手続きを利用することが前提となったものです。
上述したように、過去には日本航空の他、吉野家・ウィルコムといった手続きの利用例があります。
参考:
吉野家の歴史 倒産から再生へ 1980年〜|吉野家(URL:https://www.yoshinoya.com/history/history-03/)
株式会社ウィルコムの会社更生手続終結に伴う連結子会社化に関するお知らせ|株式会社ソフトバンク(URL:https://group.softbank/news/press/20130701)
次の民事再生におけるメリットはそのまま、会社更生にも当てはまります。
その他に会社更生を利用することの特徴的なメリットには次のものがあります。
会社更正では、民事再生と異なり、担保権がある債権者についても手続きの中で処理をすることになります。
そのため、企業再生に不可欠な、重要な資産の散逸を防ぐことができます。
また、株主の権利を変更することができるなど、企業再生において強力な手続きができるという恩恵が用意されており、これらは裁判所から選任される更生管財人によって主導されます。
これらの強力な手段を用いることで、確実な企業再生を行うことが可能となります。
また、通常行うには手続き的負担が大きい組織再編行為ですが、会社更生手続きの中であれば簡易に行うことができるというメリットもあります。
一方で、民事再生における次のようなデメリットは会社更生にも当てはまります。
また、会社更生に特有のデメリットとして次の3つが挙げられます。
まず、会社更生は株式会社しか利用できないので、個人事業主や合同会社(LLC)など他の形態の会社は利用できません。
また、現在の経営陣は全員退陣する必要があります。
さらに、利害関係人が多く関与する厳格な手続きになるので、手続きに費用・時間がかかることになります。
私的再生とは、法的手段によらずに、交渉などによって企業再生を目指す方法です。
任意整理・内整理とも呼ばれることがあります。
上述の法的整理は、法律に基づく手続きで、厳格な手続きによって行われます。そのため、柔軟に考えたり、スムーズに手続きを行ったりすることが難しいです。
私的整理は債務者と債権者が交渉をして、債権放棄をする・支払期日などの条件の変更をすることで、柔軟かつスムーズに企業再生を行うとするものです。
私的整理には次のようなメリットがあります。
まず、私的整理は法的整理のような、官報に公告されるものではありません。
そのため、手続きを行っていることが公になりにくく、法的整理に比べると会社の信頼・イメージの低下を防ぐことができる可能性があります。
また、法的整理のように法令で画一的に定められているものではないため、債権者ごとに債権放棄の額や割合、支払内容を変えることも可能です。
また、裁判所を利用する手続きではないため、かかるコストを大きく抑えることができます。
一方で、私的整理には次のようなデメリットもあります。
まず、手続きを公にせずに債権者との話し合いで進めることができることは、反面手続きが不透明であるというデメリットとなります。
そのため、一部の債権者が不利益を受けるような、公正ではない取り扱いがされることもあります。
また、法的整理は反対する債権者がいる場合でも、それぞれの法律の要件を満たせば手続きを進めることができますが、私的整理は対象となるすべての債権者が同意しなければならない点もデメリットでしょう。
実際には、手続きを公正に行うなどの観点から、私的整理に関するガイドラインに基づく私的整理を行う・事業再生ADRを利用する・整理回収機構(RCC)による企業再生を行う、といった方法が取られます。
企業再生を行うためのポイントや注意点として、次のようなものが挙げられます。
企業再生を行う際に、収益の採算性を上げるための方法に、リストラを検討することは多いです。
リストラというと整理解雇が代表的ですが、不採算部門にいる人を採算部門に配置転換することや、報酬体系や福利厚生を見直し人件費の削減を行うこともこれに含まれます。
特に解雇については、いわゆる整理解雇の4要件を満たしているかを慎重に見極めながら行うようにしましょう。
もし整理解雇の要件を満たさずに解雇を行った場合には、不当解雇となり、解決金の支払いなどのリーガルリスクを抱えることになります。それが企業再生の障害となることがあります。
不利益待遇についても同様で、残業代の支払いをなくしたが、現実には残業させているような場合、未払い残業代請求というリスクを抱えることになります。
従業員の解雇・不利益待遇については、要件の具備を慎重に検討しましょう。
企業再生を行う場合には、なるべく早い段階から専門家に相談してみましょう。
本記事では法的整理・私的整理といったものを取り扱いましたが、もっと早い段階から着手すれば、事業譲渡・M&Aなどで対応することもできる場合があります。
つまり、早い段階から企業再生を検討すれば、打つべき選択肢は大幅に増えるといえます。
一方で、企業再生への取り組みが遅れれば遅れるほど次のような弊害が生じ、企業再生のために打てる手段も少なくなってしまいます。
なるべく早い段階から専門家に相談をしましょう。
法的再生やガイドラインに基づく私的整理などの手続きを利用する場合には、弁護士に相談する必要があります。しかし、早い段階から企業再生を行う可能性を検討しつつ、事業譲渡やM&Aも検討したい場合には、M&Aコンサルタントに相談することをおすすめします。
本記事では企業再生のポイントや注意点について、基礎的な事項をお伝えしました。
会社を立て直すために行う企業再生は、民事再生や私的整理などの手続きを経て行われます。
企業再生には経験と知識が必要になるため、専門家に相談をしながら行うことになります。
DYMグループは、5,000社以上のオーナー経営者様への直接的な支援をしており、これらのネットワークを有効に活用したM&Aコンサルティングサービスを提供しております。
本当に企業再生が必要なのか、どのような手段が最適か、様々な観点からアドバイスをすることが可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。
「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。
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