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有効求人倍率とは、求職者一人あたりに対してどれだけの求人があるかを示す指標で、労働市場の需給バランスを理解するために不可欠です。厚生労働省が毎月発表するこのデータは、地域や職種ごとの雇用状況を把握するための重要な指標となります。本記事では、有効求人倍率の定義や計算方法、さらにはその変動要因や最新動向について詳しく解説します。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
有効求人倍率とは、特定の期間においてハローワークや職業紹介所に登録された「有効求人数」と「有効求職者数」の比率を指します。
この数値は、労働市場における求人と求職者のバランスを示しており、1.0を超える場合は求人の方が多いということを意味し、働き手にとって求人の選択肢が豊富な状況ということになります。逆に、1.0未満の場合は求職者の方が多く、就職活動が困難であることを意味します。有効求人倍率は、地域ごとや職種ごとに大きな差があるといわれています。
「有効求人数」とは、ハローワークや職業紹介所において、実際に求人が出されている職の数を指します。
言い換えれば、一定期間内で企業が必要とする労働力の総数を示すものであり、労働市場における需要の大きさを測る重要な指標の一つです。有効求人数は、労働市場の健康状態や経済活動の活発さを直接的に反映するものであり、毎月厚生労働省から発表される雇用統計の一環として、労働市場の動向を把握するための基礎データとして活用されています。
この数値は、企業が現在どれだけの労働力を求めているかを直接的に示しており、経済の活発さを反映する重要な指標となっています。有効求人数が増加するということは、企業が積極的に人材を募集していることを意味し、景気が良い傾向にあるといえます。一方で、有効求人数が減少している場合、企業の採用活動が停滞していることを意味し、景気の悪化が懸念されます。
有効求人数は月ごとに厚生労働省が発表しており、景気動向や業種別の雇用状況を把握する上で欠かせない情報となっています。また、有効求人数は地域によっても大きく異なり、地方よりも都市部で高い傾向が見られます。
「有効求職者数」とは、ハローワークや職業紹介所に登録されている求職者のうち、現在も仕事を探している「有効な」求職者の数を指します。
この数値は、労働市場における人材供給の状況を表しており、失業者の実態を把握する上で重要な指標です。有効求職者数が多い場合、労働市場において求職者が多く、仕事を見つけるのが難しい状況であるということが示されています。逆に、有効求職者数が少ない場合は、労働市場における競争が緩和されており、求職者が仕事を見つけやすい状況であるということを示しています。こちらの数値に関しては、失業率や完全失業率などの別の数値も影響を受けたり、地域や業種によっても大きく数値が変わるといわれています。
例えば、若年層(15歳〜24歳)や中高年層(45歳以上)では、それぞれ異なる傾向が見られます。若年層では、就職活動の初期段階で有効求職者数が多くなることがありますが、一方で、就職活動が活発になる春や秋の時期には減少することが一般的です。中高年層では、スキルのミスマッチや企業の求める労働条件と合致しないことが多く、有効求職者数が高くなりやすい傾向があります。また、事務職や販売職、製造業などの一般職では、有効求職者数が多いことが一般的です。これらの職種は応募者が多く、特定のスキルや資格を必要としないため、求職者が集まりやすいからです。
有効求職者数の変動には、季節的な要因も影響します。例えば、新卒採用の時期や年度末の退職・転職のピーク時には、有効求職者数が増加する傾向があります。特に、日本の労働市場では、4月に新年度が始まることから、3月末に退職や転職を決意する求職者が多く、結果として有効求職者数が増える傾向があります。このような季節的な要因を排除してより安定した労働市場の動向を把握するためには、季節調整値を活用することが重要です。
季節調整値とは、労働市場の動向をより正確に把握するために、季節的な変動要因を取り除いた統計値のことを指します。
季節的な変動要因には、天候の変化や年末年始、ゴールデンウィーク、夏休みなどの大型連休、企業の決算期、年度末の異動や転職などが含まれます。特に、観光業や農業などの産業では、季節ごとに求人や求職の状況が大きく変動することがあります。これをそのままの数値で分析すると、季節的な要因による一時的な変動と労働市場の一般的な動きが混同してしまう可能性があります。そのため、季節調整を行うことで、季節的な要因を除外したより正確な数値を出すことができます。厚生労働省が毎月発表する有効求人倍率のデータには、この季節調整も考慮されています。このように正確な労働市場の状況を把握するためには、この季節調整値を確認することが不可欠です。
一方で、季節調整値にもいくつかの課題があります。例えば、予期せぬ外部要因や突発的な出来事が発生した場合、その影響を完全に排除することは難しいということです。特に、パンデミックや自然災害、大規模な経済危機など、通常の季節的変動とは異なる要因が介入した場合、季節調整値だけで労働市場の正確な状況を把握するのは難しくなります。そのため、季節調整値はあくまでも参考値として用い、その他の経済指標や市場の動向を総合的に考えることが求められます。
ここまでは有効求人倍率を算出するのに必要な基本的な言葉や数値について解説してきました。では、実際に有効求人倍率はどのように計算することができるのでしょうか。
計算方法は以下の計算式より求めることができます。
有効求人倍率 = 有効求人数 ÷ 有効求職者数
例えば、ある地域で有効求人数が500件、有効求職者数が250人の場合、有効求人倍率は2.0となり、求職者1人あたりに2件の求人があることを示します。この場合、複数の求人から選ぶことができるため、求職者にとって有利な状況といえます。逆に、有効求人倍率が0.5であれば、求職者数が求人件数を上回っていることから、就職活動が困難であることを意味します。
有効求人倍率は、月ごとに厚生労働省が発表するデータを基に計算されており、地域や職種ごとに傾向が大きく異なります。有効求人倍率は、労働市場の需給バランスを示す基本的な指標であり、経済状況を理解する上で欠かせない要素です。
有効求人倍率は一般的に「有効求人倍率が高い」「有効求人倍率が低い」と表現されることがあります。では実際に有効求人倍率が高い、低いとはどのような状況のことなのでしょうか。順に説明していきます。
有効求人倍率が高いとは、求人の数が求職者の数を上回っている状態のことを指し、企業が労働力を確保するために積極的に求人を出しており、求職者は複数の選択肢から自分に合った仕事を選ぶことが可能な状態のことです。
一方企業側にとっては、有効求人倍率が高い場合には人材確保が難しくなるため、賃金や労働条件の改善を行い、他社との差別化を図る必要が出てきます。また、有効求人倍率が高すぎると、人手不足による生産性の低下やサービスの質の低下といったリスクが生じることもあります。そのため、企業は求人活動を通じて、いかにして必要な人材を確保し、業務を円滑に進めるかが課題となります。
有効求人倍率が低い状況では、求人の数が求職者を下回っている状態のことを指し、求職者にとっては就職活動が困難な状況であることが考えられます。特に、専門職以外の人やスキルや経験が不足している求職者にとっては、希望する職に就くことが難しくなってしまう可能性があります。
一方、企業側にとっては、人材を確保するためのコストが低く抑えられる反面、応募者の質や適性が課題となることがあります。また、地域や産業によっては、低い有効求人倍率が経済の停滞や特定産業の衰退に大きく影響するといわれているため、政府や地方自治体などはそのような可能性を十分理解した上で、地域経済の活性化への対策を行っていく必要があります。また、政府や地方自治体による雇用対策や職業訓練の強化などの支援を行うことも必要です。
有効求人倍率の推移は、経済状況や雇用市場の動向を把握するための重要な指標です。ここからはこれまでの有効求人倍率の推移と、地域別の有効求人倍率について解説していきます。
年度別に見る有効求人倍率の推移をみることで、経済や雇用市場の長期的な変動を理解することができます。特に政治や経済の大きな出来事があった時期には大きく変動するといえます。
特に2008年のリーマンショック以降は、有効求人倍率は急激に低下し、企業の採用活動が停滞しました。その後、2010年代に入ると景気回復に伴い有効求人倍率は徐々に上昇し、2013年以降は1.0を超える水準が続きました。その後は特にアベノミクスによる経済政策が影響を与え、企業の採用意欲が高まりました。2020年の新型コロナウイルスのパンデミックにより、再び有効求人倍率は低下しましたが、その後の経済回復に伴い再び上昇基調を取り戻しつつあります。
このように年度別の推移を分析することで、将来の労働市場の動向を予測する手がかりを得ることができます。
都道府県別の有効求人倍率は、地域ごとの労働市場の違いを反映しており、地域ごとの経済状況や産業構造を理解するために重要です。
例えば、東京や大阪、愛知といった大都市圏では、常に高い有効求人倍率が維持されており、企業の採用活動が活発です。一方で、地方では人口減少や産業の衰退に伴い、有効求人倍率が低くなる傾向があります。特に、東北地方や四国地方などでは、求職者が多いにもかかわらず求人が少ないため、求職活動が困難な状況が続いています。また、観光業が主要産業となっている地域では、季節ごとの変動が大きく、一定の時期に有効求人倍率が上昇することがあります。
これらのデータを分析することで、地域ごとの課題や強みを把握し、地域経済の活性化に向けた施策を検討するための材料となります。
有効求人倍率が高い地域には、主に都市部や産業が集中している地域が多く見られます。例えば、東京都、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県などが挙げられます。
これらの地域では、経済活動が活発であり、企業が積極的に採用を行っているため、常に高い有効求人倍率が維持されています。特に、東京都や愛知県は自動車産業やIT産業など、複数の業種が集中しているため、求人の数が多く、求職者にとっては選択肢が豊富な状況です。また、福岡県や沖縄県では観光業の需要が高く、特定の時期に有効求人倍率が上昇する傾向があります。
有効求人倍率が低い地域には、地方部や過疎化が進む地域が多く見られます。例えば、青森県、秋田県、島根県、山形県、高知県などが挙げられます。
これらの地域では、人口減少や産業の衰退が進行しており、求人の数が少ないため、求職者が仕事を見つけるのが難しい状況です。また、農業や漁業が主要産業となっている地域では、産業構造が限定されているため、求人の種類も限られています。さらに、都市部と比較して賃金水準が低いため、若者の都市部への流出が進み、労働力の供給不足がさらに深刻化する可能性があるといわれており、地域振興や産業の多様化が求められています。
職種別の有効求人倍率は、各業界の雇用需要を把握するための重要な指標です。
例えば、ITエンジニアや医療関係の職種は、常に高い求人需要があり、有効求人倍率が高い傾向があります。これらの職種は、技術革新や高齢化社会の進展に伴い、労働力の需要が増加しているためです。一方で、事務職や販売職などの一般的な職種では、有効求人倍率が比較的低いことが多く、競争が激化しています。また、建設業や製造業など、季節や景気に左右されやすい業種でも、有効求人倍率に大きな変動が見られます。
有効求人倍率が高い職種には、専門的なスキルや資格が求められる業種が多く挙げられます。
例えば、医師や看護師、介護職、ITエンジニア、建設業の技術者などがその代表です。これらの職種は、人口の高齢化や技術革新に伴い、需要が高まり続けています。また、特定の資格を持つことが求められるため、供給が限られており、結果として有効求人倍率が高くなります。そのため、求職者にとって有利な市場環境が続いており、高い賃金や良好な労働条件が提示されることが多いといえます。
有効求人倍率が低い職種には、比較的一般的なスキルで就ける職種が多く挙げられます。
例えば、事務職や販売職、接客業、飲食業などがこれに該当します。これらの職種は、求職者の数が多く、求人がそれに対して不足しているため、倍率が低くなります。また、労働条件が厳しい職種や、低賃金が問題となっている職種でも有効求人倍率が低い傾向があります。
有効求人倍率を確認する際には、いくつかのポイントに注意することが重要です。
具体的なポイントは以下で詳しく解説をしていきます。
有効求人倍率のデータは、ハローワークに登録された求人情報を基にしているため、ハローワーク以外で募集されている求人は含まれていません。したがって、企業のウェブサイトや民間の求人サイトで募集されている求人情報は、この数値に反映されていないことを理解する必要があります。特に、ハイレベルな専門職や大手企業の採用活動は、ハローワークを通さずに行われることが多いため、実際の労働市場の状況を把握するには、これらの要素も考慮に入れる必要があります。したがって、ハローワーク以外の求人数を合わせて確認することで、より包括的な雇用状況を理解することができます。
有効求人倍率のデータには、正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、アルバイトなど、さまざまな雇用形態の求人が含まれています。したがって、この数値を解釈する際には、どのような雇用形態の求人が多いのかを確認することが重要です。例えば、非正規雇用の求人が多い場合、有効求人倍率が高くても、正社員の求人が少ないことが考えられます。特に、景気が不安定な時期には、企業が非正規雇用の労働者を積極的に採用する傾向が強まるため、有効求人倍率の数値だけで労働市場を判断するのは不十分です。雇用形態ごとの詳細なデータを確認し、全体の動向を把握することが求められます。
有効求人倍率を分析する際には、季節調整値を確認することが重要です。季節調整値は、季節的な要因による一時的な変動を除外し、より安定した労働市場の動向を把握するために用いられます。例えば、夏季や年末年始の時期には、特定の業種で求人が一時的に増加することがありますが、これは季節的な要因によるものです。このような変動をそのまま受け取ると、実際の労働市場のトレンドを見誤る可能性があります。したがって、季節調整値を用いて、長期的かつ安定した傾向を把握することで、より正確な判断が可能となります。労働市場を分析する際には、必ず季節調整値を確認し、その影響を考慮に入れることが重要です。
有効求人倍率と完全失業率は、労働市場の需給バランスを理解するために重要な指標といえます。有効求人率と完全失業率との関係性については以下で詳しく解説していきます。
完全失業率とは、労働力人口(15歳以上の働く意欲があり、かつ仕事を探している人々)に占める、仕事に就いていない失業者の割合を指します。
この指標は、国全体の経済活動や雇用状況を示す重要な経済指標の一つです。完全失業率が高い場合、それは多くの人々が職を探しているが、仕事を見つけられない状況を示しており、経済の停滞や不況を反映していることが多いです。逆に、完全失業率が低い場合、それは多くの人々が雇用されていることを示し、経済が活発であることを意味します。完全失業率は、国の経済政策や労働市場の状況を把握するために重要な指標であり、政府や企業が将来の雇用戦略を立てる際の基礎データとして利用されています。また、毎月総務省統計局から発表されており、景気動向や経済予測する際の重要な指標となっています。
有効求人倍率と完全失業率は、労働市場の健康状態を評価するために密接に関連している指標です。一般的に、有効求人倍率が上昇すると、労働市場において求職者に対する求人の数が増加し、失業者が職を得やすくなるため、完全失業率が低下する傾向があります。逆に、有効求人倍率が低下すると、求人が不足し、求職者が職を見つけるのが難しくなるため、完全失業率が上昇することが予想されます。しかし、これらの指標は必ずしも一対一で対応するわけではなく、例えば、有効求人倍率が高くても特定の職種や地域で求人が集中している場合、失業率が改善されないケースもあります。また、求職者のスキルや経験が求人の条件に合わない場合も、失業率が高止まりする可能性があります。したがって、労働市場の全体像を正確に把握するためには、有効求人倍率と完全失業率の両方を総合的に分析することが求められます。
近年の完全失業率の動向を見ると、世界的な経済状況や国内の景気変動が大きく影響していることが分かります。
例えば、2010年代初頭にはリーマンショックの影響が続き、日本国内でも完全失業率が高い水準にありました。しかし、その後のアベノミクスによる景気刺激策や経済成長に伴い、完全失業率は徐々に低下し、2019年には歴史的な低水準となりました。しかし、2020年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックにより、再び失業率が上昇しました。特に、サービス業や観光業、飲食業などが大きな打撃を受け、多くの労働者が職を失う事態となりました。これに対して、政府は緊急経済対策を講じ、雇用の維持を図るとともに、失業者への支援を強化しましたが、完全失業率の回復にはかなりの時間を要しました。2022年以降は、経済の回復に伴い失業率も再び低下傾向にありますが、依然としてパンデミック前の水準に戻っていない地域や業種もあります。
いかがでしたか。有効求人倍率は、労働市場の需給バランスを示す重要な指標であること、完全失業率など他の指標と有効求人倍率との関係性などについて解説してきました。
本記事により地域別、職種別の有効求人倍率をチェックし、自身のキャリア戦略を立てる際の参考にしていただけたら幸いです。
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