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医療法人の譲渡(M&A)完全ガイド|手続き・スキーム・メリットまで徹底解説

公開日:2026.02.09  更新日:2026.02.09

医療法人の譲渡は、後継者不在や経営課題を解決する有効な手段として注目されています。本記事では、出資持分の有無によって異なる譲渡スキームや具体的な手続きの流れ、メリット・デメリットまで、医療法人M&Aの全体像を解説します。後継者問題に悩む理事長や経営者の方が、自院に最適な承継方法を選択するための実践的な知識が得られる内容となっています。

<この記事で紹介する3つのポイント>

  • 医療法人特有のM&Aスキーム(出資持分譲渡・事業譲渡・合併)の違いと選び方
  • 持分あり・持分なし医療法人それぞれの譲渡方法と税務上の注意点
  • 譲渡を成功させるための具体的な手続きと専門家選びのポイント

医療法人のM&A(譲渡・売却)とは

医療法人のM&Aとは、病院やクリニックを運営する医療法人の経営権を第三者に譲渡することを指します。

後継者不在を解決する事業承継の選択肢

医療法人の後継者不在率は65.3%に達しており、多くの医療機関が事業承継の課題を抱えています。親族内に後継者がいない場合や、子どもが医師の道を選ばなかった場合でも、M&Aを活用することで地域医療を維持しながら事業を承継できます

黒字経営であっても後継者不足により廃業を余儀なくされる医療法人が増加する中、M&Aは経営者の引退後も患者様への医療提供を継続し、従業員の雇用を守る現実的な解決策となっています。内部昇格や外部の医療法人との統合を通じて、安定した事業承継を実現することが可能です。

非営利性が求められる医療法人の特殊性

医療法人は株式会社とは根本的に異なる法人形態であり、非営利性が強く求められる点が最大の特徴となります。株式会社では株主に対して利益に応じた配当金の支払いが認められていますが、医療法人では配当金の支払いが法律で禁止されています

資金調達の方法も異なり、株式会社が株式を発行するのに対し、医療法人は出資持分や基金によって資金を集める仕組みです。このため、医療法人のM&Aでは株式譲渡という手法が使えず、出資持分譲渡や事業譲渡、合併といった独自のスキームを選択する必要があります。

また、地域医療を維持する社会的責任が大きく、行政への許認可申請や地域医療構想調整会議での承認など、一般企業のM&Aにはない手続きを経なければなりません。

医療法人M&Aの主要スキーム

医療法人のM&Aには、法人の形態や目的に応じて複数のスキームが存在します。

出資持分譲渡(持分あり医療法人)

出資持分譲渡は、医療法人設立時に出資した者が持つ出資持分を第三者に譲渡することで経営権を移転させる方法です。出資持分には議決権と財産権が含まれており、これを譲渡することで法人運営への関与権限が新たな出資者へ移ります。このスキームは2007年の医療法改正以前に設立された「持分あり医療法人」でのみ利用可能であり、現在も社団医療法人の約7割がこの形態に該当します。

法人格はそのまま維持されるため、許認可や従業員の雇用契約、取引先との契約などを包括的に引き継ぐことができ、手続きが比較的スムーズに進む点が特徴です。場合によっては1~2カ月程度で手続きを完了できることもあります。

事業譲渡(クリニック・病院単位の売却)

事業譲渡は、医療法人が運営する病院やクリニックなどの事業の一部または全部を他の法人へ売却する手法です。譲渡する資産・負債を個別に選択できるため、買い手は簿外債務などを引き継ぐリスクを限定できるメリットがあります。譲渡法人は理事会決議を経て、重要な財産の処分として社員総会決議が必要となるケースが多くなります。

譲受法人も同様の内部手続きが求められ、譲り受けた病院または診療所の管理者を理事に選任する必要があります。ただし、保健所への開設許可や各種許認可を新たに取得しなければならず、従業員との雇用契約も再度結び直すなど、手続きが煩雑になる傾向があり、通常は半年以上の期間を要します。

社員総会決議による役員の入退社

医療法人の経営権を移転する際、社員および役員の構成を変更する手続きが必要となります。社団医療法人では、重要事項について社員総会の決議を経ることが定款で定められているケースが多く、理事長を含む役員の選任・解任も社員総会の決議事項です。

譲渡にあたっては、譲渡側の社員および役員を退社させ、譲受側から新たな社員および役員を選任する必要があります。特に出資持分譲渡のスキームでは、医療法人の社員および役員を全て変更することで、実質的な経営権の移転を実現します。この手続きは定款や寄附行為に基づいて適切に履践する必要があり、議事録の作成や登記変更などの事務手続きも伴います。

合併(他の医療法人との統合)

合併は、2つ以上の医療法人を契約によって1つの法人格に統合する手法です。新しく医療法人を設立する「新設合併」と、存続する医療法人に消滅する医療法人を引き継ぐ「吸収合併」がありますが、実務上は吸収合併が一般的に用いられます。

医療法人が合併する場合、社団医療法人は社団医療法人と、財団医療法人は財団医療法人と合併する必要があり、持分の有無によっても合併後の法人類型が変わります。組織を一体化させることで経営資源の集約やスケールメリットによる経営効率化が期待でき、同一医療圏内であれば病床の移動も可能となります。

しかし、都道府県知事の認可が必要であり、医療審議会への諮問や債権者保護手続きなど、手続きが最も複雑で時間を要し、通常は行政への事前相談から1年ほどの期間を予定しておく必要があります。

持分あり・なしによる譲渡方法の違い

医療法人のM&Aスキームは、出資持分の有無によって選択できる手法や手続きが大きく異なります。2006年の医療法改正を境に、それ以前に設立された「持分あり医療法人」と、改正後に設立された「持分なし医療法人」では、譲渡時の対価の受け取り方や税務上の取り扱いが変わってくるため、自院がどちらに該当するかを正確に把握することが重要です。

持分あり医療法人の譲渡と注意点

持分あり医療法人は、出資者が法人の解散時などに出資額に応じて払い戻しを受けられる財産権を有しています。

出資持分譲渡と譲渡所得税の課税

出資持分譲渡では、出資者が持つ出資持分を第三者に譲渡することで対価を受け取ります。この譲渡益に対しては譲渡所得税が課税され、税率は所得税と住民税を合わせて約20%となります譲渡価格は医療法人の純資産額や将来の収益性を基に算定されますが、長年運営してきた医療法人では含み益が大きくなっている場合があり、想定以上の税負担が発生する可能性があります。出資持分の譲渡者が理事長だけでない場合には、売り手である理事長がその持分を買い取ってからでないと譲渡の手続きが進められないため、事前に他の出資者との調整が必要です。

経過措置型医療法人のM&A

2007年の医療法改正以降、出資持分のある医療法人は新設できなくなりましたが、改正前に設立された医療法人は経過措置として現在も持分ありの形態で存続しています。これらの医療法人は現在も全体の約7割を占めており、M&A市場において主要な対象となっています。経過措置型医療法人のM&Aでは、出資持分譲渡という手法が活用できるため、手続きが比較的簡素化され、短期間での成約が可能です。ただし、医療法人そのものを譲渡する形となるため、潜在的な債務や医療事故などの訴訟リスク、労働関係の訴訟リスクなどもそのまま引き継ぐことになり、デューデリジェンスを徹底して実施することが不可欠です。

持分なし医療法人の譲渡と注意点

持分なし医療法人は、出資者に対する財産権が認められておらず、解散時の払い戻しを受けられません。

役員の入退社と資産譲渡の手続き

持分なし医療法人では出資持分譲渡というスキームが使えないため、事業譲渡や合併、法人格の売買といった手法が用いられます。事業譲渡を選択する場合、譲渡法人は理事会決議と評議員会の意見聴取を経る必要があり、定款で定められている場合は社員総会または評議員会の決議も必要となります。譲受法人も同様の内部手続きを履践し、譲り受けた病院または診療所の管理者を理事に選任する手続きを行います。また、譲渡法人は都道府県知事宛てに廃止届を提出し、厚生局に保険医療機関の廃止届を提出する一方、譲受法人は開設許可を得て保険医療機関の指定申請をする必要があり、行政上の手続きに数か月かかる場合があります。

譲渡対価とみなされないための退職金設計

持分なし医療法人の場合、法人の清算時に残余財産の分配を受ける権利がないため、売り手側の理事長は譲渡後に基金または退職金として対価を受け取る形となります。退職金として受け取る場合、適正な金額であれば税制上有利な取り扱いを受けられますが、不当に高額な退職金は税務署から否認され、追徴課税を受ける可能性があります。退職金の適正額は、在任期間や報酬額、功績倍率などを総合的に考慮して算定する必要があり、同業他社の事例や過去の判例を参考にしながら慎重に設計することが重要です。また、営業権や生命保険の解約金なども予想以上の税金が発生する場合があるため、税理士などの専門家と相談しながら進めましょう。

医療法人譲渡の具体的な手続きと流れ

医療法人の譲渡は、個々の事例によって異なる部分もありますが、おおむね以下のような手順で遂行されます。

M&A専門家への相談と秘密保持契約

医療法人のM&Aは、株式会社の場合とは異なる部分が多く、地域医療を維持する社会的責任も大きいため、M&A仲介会社などの専門家に相談することが効率的です。特に医療・介護・薬局を専門に取り扱っている仲介会社に依頼すれば、成功率を高められます。相談後は秘密保持契約を締結し、情報漏えいを防ぐための体制を整えます。秘密保持契約書には、保持する情報の範囲や保持義務を負う人物、契約内容を破った場合の損害賠償の有無などが記載されます。後のトラブルを避けるためにも、専門家のサポートを受けながら作成することが望ましいでしょう。

企業価値評価と譲渡先の探索

秘密保持契約を締結したら、売却する医療法人の価値を評価します。評価方法には、簿価または時価の純資産から算定するコストアプローチ、将来得られる利益に着目するインカムアプローチ、他の事例を参考にするマーケットアプローチの3つがあります。売却価格が定まったら、条件に合う譲渡先をできるだけ多く洗い出し、その中から最も適した相手を絞り込んでいきます。この段階では経営者と一部の役員以外には譲渡の事実を公開せず、情報開示は慎重なタイミングで行う必要があります。譲渡先候補が決まったら、双方の経営者が面談して本格的な交渉に入ります。

基本合意書の締結とデューデリジェンス

交渉により基本的な譲渡内容に合意が得られたら、基本合意書を締結して現時点での合意内容を書面にします。基本合意書には取引形態や譲渡価格、今後のスケジュールなどが記載され、買い手側に独占交渉権を付与するのが一般的です。基本合意書を締結した段階では、買い手はまだ売り手の医療法人の詳細を把握していないため、デューデリジェンスを実施して詳しい内容を調査します。法務デューデリジェンス、財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンスなどに分けられ、専門の会計士や弁護士などに依頼するのが一般的です。医療法人に詳しい専門家のもとで慎重に行う必要があります。

最終契約の締結と都道府県への許認可申請

デューデリジェンスを実施して問題がないとわかったら、最終契約の締結に向けて交渉をまとめます。最終契約書は基本合意書の内容をベースに、デューデリジェンスの結果を加味して作成され、選択したスキームによって「事業譲渡契約書」や「出資持分譲渡契約書」といった名称になります。最終契約書は法的な拘束力があり、契約を破棄した場合は損害賠償を請求される可能性があるため注意が必要です。事業譲渡の場合は、譲渡法人が都道府県知事宛てに廃止届を提出し、厚生局に保険医療機関の廃止届を提出する一方、譲受法人は開設許可を得て保険医療機関の指定申請をします。これらの行政上の手続きは数か月かかる場合もあるため、事前に窓口で相談しておくことが重要です。

クロージング(経営権の移転完了)

最終契約に基づき、実際に譲渡の手続きを実行します。不動産や医療設備といった資産の移転手続きや、従業員の退職手続きと新たな雇用手続きなどの必要な手続きを進めます。全ての承認・引き継ぎ作業が終了すると、譲渡が成立します。しかし、ここで終わりではなく、統合プロセス(PMI)の作業が必要です。新しい職場で従業員が戸惑わずに働くための業務プロセスの統合、経営理念や風土の統合などが行われ、譲渡先の医療法人の運営がスムーズに進むためのすり合わせを行います。

医療法人M&Aのメリット・デメリット

医療法人のM&Aには、さまざまなメリットとデメリットが存在します。

売り手のメリット

医療法人を譲渡する売り手側には、経済的利益と社会的責任の両面でメリットがあります。

創業者利益の獲得と個人保証の解除

医療法人の譲渡により、創業者である理事長は長年の経営努力に対する対価を獲得できます。出資持分譲渡の場合は譲渡対価を、持分なし医療法人の場合は退職金や基金として資金を受け取ることが可能です。これにより、引退後の生活資金を確保でき、セカンドライフの設計がしやすくなります。

また、医療法人の借入金に対して理事長個人が連帯保証人となっているケースが多くありますが、M&Aによって経営権を譲渡することで、この個人保証から解放されます長年背負ってきた経済的リスクから解放され、精神的な負担も軽減されるでしょう。

地域医療と従業員の雇用維持

後継者不在により廃業を選択すると、地域の患者様は医療サービスを受けられなくなり、従業員も職を失うことになります。M&Aを活用することで、地域医療を維持しながら従業員の雇用も守れます。

特に地方の医療機関では、廃業が地域医療に与える影響が大きく、社会的責任を果たすという観点からもM&Aは有効な選択肢です。長年培ってきた患者様との信頼関係や、従業員との絆を次の世代に引き継ぐことができ、創業者として満足のいく引退を迎えられるでしょう。

売り手のデメリットとリスク

医療法人の譲渡には注意すべき点もいくつか存在します。

希望条件での譲渡先が見つからない可能性

医療法人のM&A市場は活発化していますが、必ずしも希望する条件で譲渡先が見つかるとは限りません。地域性や診療科目、経営状態などによっては、買い手候補が見つからない場合や、想定よりも低い価格での譲渡を余儀なくされるケースもあります。

また、買い手との条件交渉において、従業員の処遇や診療方針の継続など、譲れない条件が多すぎると交渉が難航する可能性があります。適切な妥協点を模索しながら、お互いが納得できる条件を見つけることが重要です。

情報漏洩による経営への影響

M&Aの交渉過程で情報が外部に漏れると、従業員の動揺や離職、患者様の不安、取引先との関係悪化など、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に職員への説明会のタイミングを誤ると、優秀な人材が流出してしまい、譲渡後の経営に支障をきたすこともあります。

適切なタイミングで関係者に情報を共有し、不必要な混乱を避ける誠実な対応が求められます。秘密保持契約を徹底し、情報開示の順序やタイミングを慎重に計画することが、M&Aを成功させるための重要なポイントとなります。

成功に導くM&A仲介会社の選び方

医療法人のM&Aを成功させるためには、適切な仲介会社を選ぶことが不可欠です。

医療業界に特化した実績と専門性

医療法人のM&Aは、一般企業のM&Aとは異なる法的規制や行政手続きが存在するため、医療業界に特化した実績と専門知識を持つ仲介会社を選ぶことが重要です。医療・介護・薬局を専門に取り扱っている仲介会社であれば、医療法人特有の課題に精通しており、都道府県への許認可申請や地域医療構想調整会議での対応などもスムーズに進められます。

過去の成約実績や担当アドバイザーの経歴を確認し、医療法人のM&Aにおける豊富な経験を有しているかを見極めましょう。また、税理士や弁護士などの専門家とのネットワークを持ち、複雑な税務・法務上の課題にも対応できる体制が整っているかも確認すべきポイントです。

料金体系と契約内容の透明性

M&A仲介会社の料金体系は、着手金・中間金・成功報酬など、会社によってさまざまな形態があります。譲渡企業様完全成功報酬制を採用している仲介会社であれば、成約するまで費用が発生しないため、リスクを抑えてM&Aに取り組めます。

また、契約内容が明確で透明性が高いことも重要な判断基準です。独占交渉権の期間や途中解約の条件、追加費用が発生する場合の基準などを事前に確認し、納得した上で契約を結ぶようにしましょう。無料相談を受け付けている仲介会社も多いため、まずは複数の会社に相談して比較検討することをおすすめします。

まとめ

医療法人の譲渡は、後継者不在や経営課題を解決する有効な手段です。出資持分の有無によって選択できるスキームが異なり、持分あり医療法人では出資持分譲渡が、持分なし医療法人では事業譲渡や合併が主に用いられます。譲渡の手続きは複雑で、専門家への相談から企業価値評価、デューデリジェンス、最終契約、行政手続きまで、通常は半年から1年以上の期間を要します。

売り手のメリットとしては、創業者利益の獲得や個人保証の解除、地域医療と従業員の雇用維持が挙げられる一方、希望条件での譲渡先が見つからない可能性や情報漏洩のリスクといったデメリットも存在します。M&Aを成功させるためには、医療業界に特化した実績と専門性を持つ仲介会社を選び、早期から計画的に準備を進めることが重要です。

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「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。

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