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アライアンスは企業が成長するうえで、非常に有効な事業戦略の一つです。その手法の特徴からM&Aと混同されたり、自社の経営方針にはマッチしなかったりするケースがあります。
本記事では、アライアンスの特徴と目的から、メリットとデメリットについて解説します。M&Aとの違いやアライアンス締結の流れも紹介しているため、最後まで読めば会社運営に役立てられるでしょう。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
アライアンスとは、同盟や連携を意味する単語で、ビジネスシーンでは業務提携などを指して使われることが多い言葉です。
主に企業同士が双方の利益を生み出すために共同開発を行ったり、同じ目的のために人材や技術など、リソースを共有したりするときに使われています。
単独企業では達成が難しい目的や目標がある場合や、市場の拡大や競争力を高めるための経営戦略として用いられる協力関係のことです。
アライアンスは、複数の企業が協力関係を築きながら、それぞれが独立した企業として維持することが可能です。経営権を移転することなく、独自性を保ちながら協業関係を結べるのがアライアンスの特徴と言えます。
アライアンス関係にある企業同士はお互いが経営リソースを共有し、少ないコストで利益を享受することができます。また、リアライアンス企業同士でリスク分担をしているため、損失の軽減が可能です。
アライアンスの使い分けは、以下の特徴を踏まえるのがポイントです。
ビジネス用語では似た意味の言葉が多く、混同されやすいのもアライアンスの特徴と言えるでしょう。
複数企業とのパートナーシップであるアライアンスには様々な種類があり、主に5つに分類されています。各アライアンスの種類について、概要と特徴を解説します。
業務提携とは、複数の企業が協力体制を築いて協働する取組みのことです。協働関係の企業同士がお互いの技術や人材、知的財産などのリソースの提供・共有を行うことでシナジー効果を生み出し、市場拡大や企業経営の強化、目的達成を目指します。
経営権が移転せず企業間に優劣を持たない関係性であり、アライアンスは業務提携を示す意味で用いられることが多いのが特徴です。
資本提携とは、複数の企業間で資金や株式など資本の移動を伴う提携関係のことです。提携関係の企業同士でお互いの株式の売買を行い、収益増を目的とした財務面での強化を目指したパートナーシップになります。
株式の交換や資金出資などにより、提携先の経営への影響力を持ったり、資本の移動による協力関係の構築を強化したりするのが特徴です。
資本提携は提携企業への影響が大きいことから、株式を取得・譲渡するときは3分の1未満に抑えるのが一般的とされています。持ち株比率が3分の1を超えると、株主総会の特別決議への単独否決が可能になるためです。相手企業の経営面への配慮を理由に、持ち株比率が決定される傾向にあります。
技術提携とは、複数の企業間で保有する技術の共有や協働による研究開発など技術分野での提携関係のことです。提携企業同士によるお互いの技術を提供し合い、商品の開発や新技術の獲得などの技術分野の強みを生かした提携を指します。
技術提携は主に2種類の形態があり、1つ目は企業や研究機関と共同で研究開発を行う「共同研究開発契約」です。2つ目はライセンス料を支払うことで、企業や研究機関が保有する技術や特許などを使用する「ライセンス契約」があります。
技術やノウハウを提携企業同士が提供し合うことで、開発・生産にかかるコストやリスクの低減を実現できます。技術提携によるシナジー効果で、技術力の強化や生産力の向上が見込めるのです。
産学連携とは、企業が大学や研究機関、研究者と連携して技術やノウハウ、研究成果などに活かすことを目的とした協力体制のことです。他の提携と異なり、資本ではなく知識や技術を重視し、大学や民間との協力関係で目的達成を目指す「連携」である点が特徴と言えます。
自社の経営資源のみでは研究開発が困難な状況の場合、産学連携によって解決できるケースがあります。大学や研究機関との共同開発により、技術的知見に優れた人材の獲得と、新技術の開発を低コストで行うことができるためです。
産学連携に行政が加わった「産学官連携」という呼び名もあります。大学と連携することで助成金が受けられるなど、アライアンスの中でも、産学連携は特異な形態と言えるでしょう。
オープンイノベーションとは、組織内部へのイノベーション促進を目的とするものです。社内外の知識や情報を活用し、製品開発や新技術の獲得、市場機会の増加、イノベーション創出を目指すのが特徴です。2003年にアメリカの教授が提唱した概念で、外部のリソースを活用してイノベーションを促進させることを示します。
オープンイノベーションの対義語に、クローズドイノベーションがあります。こちらは社内のリソースのみでイノベーションを起こすことを意味する対極の言葉です。他業種を含めた社外の協力を得ることで、新たな知見や技術を獲得し、事業促進を目指します。オープンイノベーションは、欧米諸国では一般的なビジネスモデルです。近年では、日本国内でもオープンイノベーションを実施し、事業推進を図る企業が増加しています。
企業同士が同じ立場で協力関係にあるのがアライアンスの特徴です。一方、M&Aは会社の買収・合併のため、買手と売手に分かれた立場になります。
双方は協力関係という意味では共通するため、混同されやすい用語です。ここから、アライアンスとM&Aの違いを解説します。
支配権とは、会社の経営権や株主総会特別決議の可決権限など、文字通り会社を支配する権利のことです。アライアンスは、提携企業同士が平等の立場になるため、企業間の優劣がありません。対してM&Aは企業の買収や合併を指し、会社の意思決定をする支配権が買収側にあります。
特別決議の可決権限を得るには、株式を3分の1以上取得して、議決権数を満たすことが条件のため、3分の2以上の株式を所有している状態なのです。定款や社名の変更、会社の合併や株式移転など、行使できる被買収側の支配権を獲得しているのがM&Aになります。
アライアンスとM&Aは、どちらも市場拡大や利益獲得が目的です。
アライアンスは提携や連携といった協力関係を構築し、企業の成長促進が主な目的です。M&Aは買手と売手の関係性が前提で、買手側は支配権の獲得によるシナジーの創出などを目的とします。一方、売手側は後継者不足解消の事業承継や、売却益による経営資源の獲得を目的としています。
利益と協力関係という点で共通する双方ですが、目的の戦略性や規模は決定的に異なるのが特徴です。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
アライアンス | ・提携企業同士の独自性を維持できる ・経営リソースやリスクを共有するため、 コスト効率とリスク分散の両立ができる ・企業同士で協力関係の解消や契約の変更が容易 | ・目標不一致による機能低下 ・情報漏洩のリスク |
M&A(買手) | ・支配権の獲得による急速なシェアの拡大 ・経営資源の流出リスクが少ない | ・高コストや失敗時の損失 ・リスクのれんの減損リスク |
M&A(売手) | ・資本回収の時間短縮 ・従業員の雇用を継続 | ・従業員の理解を得られない場合がある ・情報漏洩のリスク |
アライアンスとM&Aは、目的達成のために企業が実施する経営戦略です。それぞれにメリットとデメリットが存在し、いずれを選んでも事業展開に影響があります。
アライアンスのメリットとデメリットを改めて解説します。メリットとデメリットを把握しておくと、アライアンスを実施すべきか、判断を下しやすくなるでしょう。
まず、アライアンスのメリットを解説します。アライアンスのメリットは多岐に渡っており、事業を展開するうえで効果的な戦略の一つだと言えるでしょう。
アライアンスは支配権が移転せず、提携する企業同士でお互いの経営資源を共有できます。リソースを共有することにより、自社になかった技術やノウハウの獲得、株式・資本の移動による利益の分配、市場開拓など広範な目的への対応が可能です。
また、提携によるシナジー効果を得られる環境を作り、事業や組織に対して高いパフォーマンスを発揮できる相乗効果が期待できます。
提携企業のシェアを活用することで、本来発生するはずの時間とコストを大幅に削減したうえで、市場への参入が可能です。アライアンスはリソース共有が可能で、提携企業が参入している市場の経営資源を有効に活用できるためです。
既存の市場は競合他社が参入しており、新規開拓や顧客の獲得が困難な状況が少なくありません。新規参入は一から資金や人材などを構築し、時間をかける必要があります。既存市場で事業展開を行っている企業との提携を結べば、それらを短縮して時間やコストをかけずに新規事業を起こすことができるのです。
新規事業の立ち上げは単独企業では困難な場合がありますが、アライアンスによって少ないリスクで市場への参入ができます。
アライアンスは費用や時間的コストを一社が全て負担するのではなく、提携企業同士で分担できるのがメリットです。アライアンスによって、失敗時のリスク低減ができるでしょう。
協力関係にある提携企業同士は、共通の目的のために新規市場の開拓や新製品・新技術の開発を共同で行っている協働関係にあります。プロジェクトを失敗した場合でも、本来抱えるはずのリスク全てを背負う必要はありません。複数の他社と共有分担して、リスクの低減化が可能です。
目標や経営方針の違いなど、提携関係のメリットや必要性がなくなった場合、関係の解消を容易に行えるのがメリットです。アライアンスはそれぞれの企業が独立した提携契約であるため、M&Aに比べて手続きの手間をかけずに契約関係を解消できます。
アライアンスは目的を同じくするパートナーシップであることから、必ずしも持続しなくてはいけないルールがありません。自社にとって有利になる別の会社に変更し、新たにアライアンスを結ぶことも可能です。
提携会社の独自技術や市場資源を活用することで、シナジー効果を生み出し、競合他社との差別化や優位性の構築につながります。
アライアンスは他社と提携契約を結ぶことで、お互いのリソースを共有し合い弱点をカバーしながら経営強化が図れる経営戦略です。複数社が共同して目的達成を目指す関係性であるため、市場での影響力やブランド展開、競合力を高めることが可能になります。
次にアライアンスのデメリットを解説します。メリットに比べるとデメリットは少ないものの、正確に把握しておくのがポイントです。
他社との提携契約において、自社の情報が外部に漏洩するリスクもあることはデメリットの一つです。例えば、提携他社との共同プロジェクトを発足したときなど、自社の情報を他社に共有する必要があります。そのときに、プロジェクトの開発データや成果などが流出してしまい、外部に機密情報の漏えいに発展してしまう恐れがあります。
その他にも、企業間でのセキュリティ意識や対策レベルの不一致、契約内容の不備が原因での情報漏洩がないとは限りません。
アライアンスでの情報漏洩を防ぐには、以下のようなセキュリティ対策が効果的です。
・セキュリティレベルの強化 ・機密保持契約(NDA) ・情報共有の制限 ・定期的なセキュリティ監査の実施 ・セキュリティポリシーの策定 |
情報漏洩のリスクを低減するうえでは、なるべく多くの施策を実施するのが望ましいです。
アライアンスによる目的達成や成果は、成功が約束されているものではありません。期待されているシナジーを生み出せず、想定よりも効果が薄いことがあるのです。
アライアンスの主な失敗要因として、以下の理由があげられます。
・アライアンスの目的不一致 ・提携企業との信頼関係の期待薄 ・企業文化の相違 ・不明確なアクションプランの策定 ・プロジェクトチームのコミュニケーション不全 ・専門家の不採用 |
上記の失敗例は、株式会社NTTデータ経営研究所が2015年10月1日に報告した「企業間アライアンスの成功と失敗を分ける分水嶺とは?」から一部を引用しました。
アライアンスは他社との相互協力が前提のため、お互いの目的や理解にズレがあると失敗確率があがります。プロジェクトを成功に導くためには、提携先の選定と専門家目線での適切なプランが重要です。
ここでは、アライアンスの発足から契約締結までのプロセスを解説します。各ステップの流れを確認し、成功に結び付けてください。
まずは、提携する企業の候補リストを作成し、自社の目的と目標を確認する流れです。アライアンス戦略の成功実現に向け、メリットやリスクなども明確にしておきましょう。
アライアンスの提携候補との交渉では、ベネフィットやリスクの説明が必須です。この段階で目標と協力の範囲を明確にし、自社に適合した提携先を選定を行うのがポイントです。
専門コンサルティングへの相談も検討し、アライアンスの成功実現に向けて慎重にパートナーの選定を行ってください。
リストアップした候補の中から提携先企業が決まったあとは、交渉前のデューデリジェンスを実施します。お互いの組織や財務状況などを相互評価し、自社に適合する会社であるのかを判断するうえで、デューデリジェンスは必須です。候補企業のリスクを特定した場合、対処の可否次第で提携先の再検討をするとよいでしょう。
提携先が決まったあとは、実際に交渉に入る流れです。アライアンス参加企業間の目標や共有する経営資源の内容、協働と責任の範囲、契約期間、機密保持契約などを具体的に定めます。
提携先との交渉に成功したあとは、契約書を作成したうえで、最終合意を得る流れです。ドラフトを作成して契約内容に不備や問題点がないか、企業の法務部や弁護士、アライアンスの専門家による契約書レビューを実施します。
内容に法的整合性と有効性、リスク確認などの契約条項のチェックのために、契約書レビューは必要なプロセスです。自社の不利益や当事者間トラブル対策のため、法的な視点でのチェックが行われます。契約書の条項と条件の最終確認を終え、当事者間の合意のうえで署名と捺印が完了すると、契約締結です。提携企業同士の署名と捺印により、契約書に法的効力が発生します
アライアンスは、企業が業務提携することで経営資源と利益・リスクを共有し、目標達成と会社の成長促進を目指すための経営戦略です。企業同士の強みと弱みを相互で補完し、自社のみでは困難な新技術の獲得や市場拡大の実現に十分な期待が持てます。
ただし、アライアンス契約は成功が保証されているわけではありません。提携先との信頼関係の構築、自社の目的や目標に合致するパートナー選びが重要です。
DYMでは、経営目標の達成や経営課題の解決、シナジー効果が期待できるマッチングなど、様々な要望を支援しています。
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