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厚生年金とは?仕組みから受給額まで徹底解説

公開日:2024.11.22  更新日:2024.11.27

厚生年金は、多くの会社員や公務員が加入する公的年金制度の一つです。しかし、その仕組みや受給額について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。将来の生活設計を考える上で、厚生年金の理解は欠かせません。そこで、この記事では、厚生年金の基本的な仕組みから受給額の計算方法まで、わかりやすく解説します。この情報を知ることで、あなたの将来の経済的な安定性を高め、より充実したライフプランを立てることができるでしょう。老後の生活に不安を感じている方も、具体的な対策を立てる手がかりにしてみてください。

<この記事で紹介する3つのポイント>

  • 厚生年金の基本的な仕組みと加入条件
  • 厚生年金の保険料と給付内容
  • 厚生年金の受給額の計算方法と受給開始年齢

厚生年金の基本概念

厚生年金は、日本の公的年金制度の中核を担う重要な仕組みです。その特徴や仕組みを理解することで、将来の生活設計に役立てることができます。

厚生年金の基本概念を押さえておきましょう。

厚生年金の定義と目的

厚生年金の目的は、勤労者とその家族の生活を長期にわたって支えることです。具体的には、老後の所得保障や障害を負った際の生活保障、さらには遺族の生活保障を提供します

厚生年金は、民間企業の従業員や公務員を対象とし、国民年金(基礎年金)に上乗せする形で給付されます。この制度により、現役時代の所得に応じた年金額が保証され、退職後も一定の生活水準を維持することが可能です。

また、厚生年金は現役世代が納付している保険料を現在の高齢者の年金給付に充てる「世代間扶養の原則」にも基づいています。この連帯精神により、社会全体で高齢者を支える体制となっているのです。

厚生年金の保険料は、事業主と被保険者が折半して負担しています。これにより、個人の負担を軽減しつつ、安定的な制度運営が可能となっています。

公的年金制度における厚生年金の位置づけ

公的年金制度は、国民の老後の生活を支える重要な社会保障制度です。その中で厚生年金は、民間企業や公務員として働く人々を対象としています。現役時代の生活水準をある程度維持しつつ、老後の生活を支える仕組みです。

日本の年金制度の中核を担う存在として、老後の生活を支える重要な役割を果たしています。

国民年金との違い

厚生年金は、主に会社員や公務員を対象とした制度で、国民年金の上乗せ部分として機能します。一方、国民年金はすべての国民が加入する基礎的な年金制度です。

厚生年金の最大の特徴は、報酬比例部分があることです。これにより、現役時代の収入に応じて将来の年金額が決まります。国民年金が定額制であるのに対し、厚生年金はより高い年金額を期待できる可能性があるのです。

また、保険料の負担方法も異なります。厚生年金の場合、労使折半で保険料を負担しますが、国民年金は加入者が全額を負担します。厚生年金加入者の実質的な負担は軽減されています。

さらに、厚生年金には障害や遺族に対する給付が充実しているという特徴もあります。国民年金にも同様の給付はありますが、厚生年金の方がより手厚い保障が提供されています。

厚生年金の加入条件と対象者

厚生年金の加入対象者は、一般的に会社員や公務員など、民間企業や官公庁で働く人々です。詳しい加入条件と対象者をチェックしてみましょう。

加入が義務付けられる事業所と従業員

厚生年金の加入対象となる事業所は、法人組織や常時5人以上の従業員を雇用する個人事業主です。これらの事業所で働く従業員は、原則として全員が厚生年金保険に加入します。ただし、アルバイトやパートタイマーなどの短時間労働者は、一定の条件を満たす場合のみ加入が必要です。

具体的な条件は、月額の賃金が8.8万円以上、1週間に20時間以上の所定労働時間があることです。1年以上の雇用期間が見込まれることや、学生でないことなども要件に含まれています。これらの条件を満たす従業員は、正社員と同様に厚生年金保険に加入する必要があるのです。

事業主は、加入手続きを怠ると罰則の対象となる可能性があります。一方、従業員の側も加入を拒否することはできません。厚生年金保険は強制加入の制度であり、労使双方の合意があっても加入を回避することはできないのです。

なお、公務員や私立学校の教職員などは、厚生年金保険ではなくそれぞれ独自の年金制度に加入していましたが、2015年10月以降は厚生年金保険に統合されています。

厚生年金の加入年齢と期間

厚生年金の加入年齢に下限はなく、会社勤務している70歳未満が加入対象です。70歳に達すると自動的に資格はなくなります。加入期間が短い場合、年金額は比例して減少します。できるだけ長期間加入することが望ましいでしょう。

60歳以降も働き続けて70歳になるまで厚生年金に加入し続けた場合、将来の年金額増加につながります。ただし、65歳以降は在職老齢年金制度により、収入に応じて年金支給額が調整される場合があるため、注意が必要です。

任意加入のケース

厚生年金の加入は原則として強制ですが、特定の条件下では任意加入が可能です。例えば、70歳以上の被用者や、海外に居住する日本国籍を持つ人などです。70歳以上の被用者の場合、事業主と被保険者の合意があれば加入できます。この制度により、高齢者の就労意欲を支援し、長年の経験を活かす機会が提供されているのです。

海外居住者の任意加入は、グローバル化が進む現代社会において、海外で働く日本人の年金権を保護する重要な仕組みです。ただし、加入する際には日本国内の適用事業所に勤務していることをはじめとした一定の条件をクリアしている必要があり、手続きも必須です。

任意加入を選択する際は、将来の年金受給額への影響や、保険料負担などを慎重に検討しましょう。個々の状況に応じて、専門家のアドバイスを受けることもおすすめします。任意加入制度は、多様な働き方や生活様式に対応する厚生年金の柔軟性を示すものといえるのです。

厚生年金の保険料

厚生年金の保険料の計算方法と納付方法・期限、免除・猶予制度についてまとめました。

保険料の計算方法

厚生年金の保険料は、標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を乗じて算出されます。標準報酬月額は従業員の毎月の給与を一定の幅で区分した金額、標準賞与額は実際の賞与額を千円単位で切り捨てた額です。2024年9月現在の厚生年金保険料率は、18.3%です事業主と従業員で折半します。

保険料の上限は、標準報酬月額の上限である65万円に保険料率を乗じた額です。この仕組みにより、従業員の将来の年金受給権が確保されています。

保険料の納付方法と期限

厚生年金の保険料納付は、口座振替や納付書によって事業主が従業員分も含めて一括して行います。毎月の納付期限は、翌月の末日です。

口座振替は、手続きが簡単で納め忘れを防げる点がメリットです。納付書であれば、日本年金機構から送られる納付書により、コンビニエンスストアでも支払い可能となっています。

保険料の納付を怠ると、延滞金が課される可能性があります。長期間の未納は従業員の年金受給権に影響を与える可能性があるため、適切な管理が必要です。

なお、保険料の納付に関する詳細情報は、日本年金機構の公式ウェブサイトで確認できます。

保険料の免除・猶予制度

厚生年金の保険料納付が困難な場合、免除や猶予制度も利用可能です。これらの制度は、経済的な理由で保険料の支払いが難しい加入者を支援するために設けられています。免除制度に申請して承認されれば、保険料の全額または一部の免除が可能です。一方、猶予制度は50歳未満の方を対象として、保険料の納付を後回しできる仕組みです。

これらの制度を利用した場合には、将来の年金受給額に影響が出る可能性があります。ただし、10年以内に保険料を追納すれば、全額納付したものとみなされます。

免除や猶予の申請は、年金事務所や市区町村の窓口で手続き可能です。申請時には、所得状況や失業の証明書類などを持参する必要があります。経済状況が改善した際は、速やかに通常の保険料納付に戻ることが大切です。これらの制度は、一時的な困難を乗り越えるための支援策として活用しましょう。

厚生年金の給付内容

厚生年金の主な給付内容は、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の3つです。それぞれの詳しい給付内容を確認してみましょう。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、長年にわたり保険料を納付してきた被保険者が高齢になった際の生活を支える制度です。受給資格は、原則として65歳に達しているかつ、10年以上の加入期間を有していることです。

支給額は、加入期間や保険料納付額に応じて計算されます。基本的には、加入期間が長く、保険料納付額が多いほど、受け取る年金額も増加します。ただし、在職中の場合は賃金と年金の合計額に応じて支給額が調整される場合があるため、注意が必要です。

近年、制度改正により支給開始年齢の段階的な引き上げが行われています。これは、平均寿命の延伸や少子高齢化に対応するための措置です。一方、個人の事情に応じて繰上げ支給や繰下げ支給を選択することもできます。

障害厚生年金

障害厚生年金は、厚生年金保険の被保険者が病気やけがにより一定の障害状態になった場合に支給される年金です

受給資格を得るための条件は、初診日に厚生年金保険へ加入していることです。または、資格喪失後の一定期間内であることです。障害の程度に応じて1級から3級までの等級が設けられており、支給額はこの等級によって異なります。

障害認定日以降に請求することで年金が支給されますが、症状が固定せず治療を継続している場合は、65歳になるまで請求を待つことも可能です。これは事後重症制度と呼ばれ、より有利な等級で認定されるための制度となっています。

なお、障害厚生年金の受給中でも、一定の範囲内であれば就労できます。ただし、収入が増えると年金額が調整される場合があるため、要注意です。

詳細な受給条件や手続きについては、日本年金機構のウェブサイトで確認できます。

(参考: 日本年金機構 「障害年金について」)

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、加入者や受給者が亡くなった際に、その遺族の生活を支えるための給付制度です。対象となる遺族は、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順で、一定の条件を満たす必要があります。

給付額は、亡くなった人が受け取る予定であった老齢厚生年金の4分の3ですただし、遺族の年齢や子どもの有無によって支給額や期間が変わることがある点は、要注意です。

例えば、子のいる配偶者や18歳未満の子には、中高齢寡婦加算や子の加算が付きます。また、55歳以上の配偶者には、60歳になるまでの間、特別支給の老齢厚生年金相当額が支給されることもあります。

遺族厚生年金の請求は、亡くなった日から5年以内に行う必要があります。手続きには、戸籍謄本や死亡診断書などの書類が必要となるため、早めに年金事務所に相談しておくと安心です。

厚生年金の受給条件と支給開始時期

厚生年金の受給条件と支給開始時期について解説しておきましょう。

受給資格期間

厚生年金の受給資格期間には、国民年金の保険料免除期間や合算対象期間も含まれます。合算対象期間には、学生時代や海外在住期間などが該当します。ただし、この期間は年金額の計算に反映されないため、注意が必要です。

厚生年金の加入期間が10年に満たない場合でも、国民年金の加入期間と合算して10年以上になれば受給資格を得られます。例えば、厚生年金に5年加入し、国民年金に5年加入していれば、合計10年で受給資格を満たすことになるため、受給資格を得られるのです。

この制度変更により、短期間の就労や転職が多い現代の労働環境にも対応し、より多くの人が年金を受け取れるようになりました。ただし、加入期間が短いと年金額も少なくなるため、可能な限り長期間の加入を心がけることが望ましいでしょう。

支給開始年齢の変更と経過措置

支給開始年齢は、1961年4月2日以降に生まれた男性であれば65歳。女性は1966年4月2日以降生まれの人が65歳支給の対象です。

この変更には経過措置が設けられており、一定の年齢層については段階的に支給開始年齢が引き上げられています。経過措置の対象となる世代は、生年月日によって支給開始年齢が異なるため、自身の支給開始年齢を正確に把握することが重要です。厚生労働省のウェブサイトでは、生年月日別の支給開始年齢を確認できる表が公開されています。

支給開始年齢の変更は、働き方や生活設計に大きな影響を与える可能性があります。そのため、自身の年金受給計画を立てる際には、この変更を考慮しておく必要があるでしょう。企業側も従業員の定年や再雇用制度の設計において、この変更を踏まえた対応が求められます。

繰上げ支給と繰下げ支給のメリット・デメリット

厚生年金の受給開始時期には、通常の支給開始年齢以外に、繰上げ支給と繰下げ支給という選択肢があります。

繰上げ支給を選択すると、60歳から年金を受け取ることが可能です。経済的な理由で早く年金が必要な場合に有効です。しかし、減額された年金額が生涯続くため、長期的には不利になる可能性があります。

一方、繰下げ支給を選択すると、70歳まで受給開始を遅らせることが可能です。長寿の場合や十分な収入がある間は、年金を受け取らずに増額を狙ってみてもいいでしょう。ただし、繰下げ期間中に亡くなった場合、増額分を受け取れないリスクがあります。

選択にあたっては、健康状態、家族構成、他の収入源などを総合的に考慮することが重要です。また、一度選択すると変更できないため、慎重な判断が求められます。厚生労働省のウェブサイトでは、詳細な情報や試算ツールが提供されているため、参考にしてみてください。

厚生年金の年金額計算方法

厚生年金の年金額の計算方法をチェックしてみましょう。

基本的な年金額の計算式

老齢厚生年金の額は、加入期間や平均標準報酬月額などに基づいて計算されます。基本的な計算式は以下の通りです。

老齢厚生年金の額 = 報酬比例部分 + 定額部分

報酬比例部分は、平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × 被保険者期間の月数で算出します。定額部分は、1,626円に被保険者期間の月数を乗じた額です。ただし、この定額部分は2003年4月以降廃止されており、それ以前の期間にのみ適用されます。厚生労働省は毎年年金額改定を行っているため、最新の情報を確認することが重要です。

年金額の計算は複雑で個人差が大きいため、正確な受給額を知りたいときには、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」サービスの利用がおすすめです。このサービスでは、自身の加入履歴や将来の年金見込額を確認できます。

在職老齢年金制度と支給調整

在職老齢年金制度は、年金受給者が働きながら年金を受け取る場合に適用されます。60歳以上の方であれば、賃金と年金の合計額が47万円を超えると、超過分に応じて年金が減額されていきます。支給調整の仕組みは、賃金の増加に伴って年金額が段階的に減少するよう設計されています。これにより、働く意欲を維持しつつ、年金財政の安定化が図られているのです。

働いた期間に応じて年金額が増額される仕組みであり、長く働いた方がより多くの年金を受け取れるよう配慮されています。

なお、この制度の詳細や最新の基準額については、日本年金機構のウェブサイトで確認可能です。制度の内容は随時見直されることがあるため、最新の情報を参考にしましょう。

(参考: 日本年金機構 「在職老齢年金について」 )

年金額に影響を与える要因

厚生年金の年金額に影響を与える主な要因としては、加入期間や標準報酬月額、物価変動、賃金変動が挙げられます。

加入期間が長いほど、年金額は増額します。一方、加入期間が短い場合は、年金額が比例して減少します。標準報酬月額は、給与や賞与などの報酬を一定の幅で区分したものです。高い標準報酬月額で長期間加入すると、年金額も高くなります。

また、物価変動や賃金変動も年金額に影響を与える要因です。物価スライド制により、物価の上昇に応じて年金額が調整されます。現役世代の賃金変動や平均余命の伸びなども年金額の決定に影響を与えている要因です。

さらに、在職中の年金受給や繰上げ・繰下げ受給の選択も年金額に影響します。在職中は収入に応じて年金が調整され、繰上げ受給では減額、繰下げ受給では増額されるのです。

これらの要因を理解し、自身の状況に応じた選択をすることで、将来の年金額をより適切に管理できます。

厚生年金と企業年金の関係

厚生年金と企業年金は、従業員の老後の生活を支える重要な制度です。厚生年金が公的年金として基礎的な保障を提供する一方、企業年金は従業員の福利厚生の一環として、より充実した老後の生活設計をサポートします。この組み合わせにより、退職後の所得保障がより強固なものとなっています。

企業年金の概要と厚生年金に与える影響をまとめました。

厚生年金基金制度の概要

厚生年金基金制度は、公的年金制度の一部を国に代わって運営する仕組みとして1966年に制定されました。企業や業界団体が設立する独立した法人である厚生年金基金が、厚生年金の報酬比例部分の一部を国に代わって支給していました。さらに、独自の上乗せ給付を行うことで、従業員の老後の所得保障を充実させる役割を担っていました。

しかし、運用環境の悪化や積立不足問題などにより、2014年には厚生年金基金制度の見直しが行われ、新規設立を禁止しました。現在は、特例的に存続が認められた一部の基金を除き、多くの厚生年金基金が他の制度へ移行または解散となっています。

厚生年金基金制度に代わる企業年金制度が、確定給付企業年金と確定拠出年金です。これらの制度は、厚生年金基金とは異なり、公的年金の代行部分を含まない純粋な企業年金として機能しています。企業は従業員の老後の生活保障を考慮しつつ、自社に適した企業年金制度を選択し導入することが大切です。

確定給付企業年金と確定拠出年金

確定給付企業年金と確定拠出年金は、厚生年金を補完する重要な企業年金制度。確定給付企業年金は、退職時に受け取る年金額が固定されている制度であり、企業が運用リスクを負い、約束した給付を確実に行う責任があります。一方、確定拠出年金は、毎月の掛金が決まっており、従業員自身が運用方法を選択する制度です。運用結果によって将来の年金額が変動するため、従業員が運用リスクを負います。

これらの制度は、従業員の老後の生活保障を強化する役割を果たしています。確定給付企業年金は安定性が高く、確定拠出年金は自己責任での資産形成が可能です。企業は、自社の状況や従業員のニーズに応じて、適切な制度を選択することが重要です。これらの企業年金は厚生年金と併用することで、より充実した老後の生活設計が可能となります。

企業年金制度の導入は、従業員の福利厚生の向上や人材確保・定着にも寄与します。ただし、制度の運営には専門知識が必要であり、適切な管理体制の構築が求められます。企業は、従業員への制度説明や運用教育にも注力する必要があるでしょう。

企業年金が厚生年金に与える影響

企業年金は、厚生年金を補完する役割を果たし、従業員の老後の生活保障を強化します。企業年金の導入は、少子高齢化の進行によって公的年金の給付水準の維持が難しくなった場合の不足分を補う役割も担っているのです。厚生年金だけでは十分な老後資金を確保できない場合でも、企業年金があることでより安定した生活を送ることができるでしょう。

一方で、企業年金の運用状況や給付水準は、厚生年金の受給額に影響を与える可能性があります。特に、在職老齢年金制度では、厚生年金の受給額が賃金と年金の合計額に応じて調整されるため、企業年金の受給が厚生年金の給付額に影響を及ぼすことがあるため、注意しておかなければなりません。

厚生年金の将来と課題

厚生年金制度は、少子高齢化の進行により大きな課題に直面しています。
厚生年金の将来と課題について押さえておきましょう。

少子高齢化による影響

少子高齢化の進行は、厚生年金制度に大きな影響を与えています。高齢者人口の増加と現役世代の減少により、年金の支え手が減少する一方で、受給者は増加しています。これにより、年金財政の持続可能性が課題となっているのです。

厚生労働省の統計によると、2065年には現役世代1.3人で1人の高齢者を支える計算になると予測されています。この状況下で、現行の給付水準を維持することは困難になるでしょう。

また、少子高齢化は労働力不足にもつながり、経済成長の鈍化や保険料収入の減少をもたらす可能性があります。これらの要因が重なり、年金制度の安定性に対する不安が高まっているのです。
引用元:高齢化の現状と将来像|令和2年版高齢社会白書(全体版)内閣府

年金制度の持続可能性

厚生年金制度の持続可能性は、日本の社会保障制度の根幹を支える重要な課題です。少子高齢化が進む中、現役世代の負担増加や給付水準の調整が避けられない状況となっています。

制度の持続可能性を高めるため、政府はマクロ経済スライドの実施や支給開始年齢の引き上げなどの施策を導入しました。また、被用者保険の適用拡大や保険料の引き上げなど、収入面での対策も進めています。

年金制度の持続可能性を高めるためには、経済成長と労働参加率の向上が不可欠です。女性や高齢者の就労促進、生産性向上による賃金上昇など、社会全体での取り組みが必要となります。また、私的年金の普及や資産形成支援など、公的年金を補完する仕組みの充実も重要なポイントとなるでしょう。

今後の制度改革の方向性

厚生年金制度の持続可能性を高めるためには、少子高齢化に対応した保険料率の見直しが重要です。現行の上限を維持しつつ、世代間の公平性を考慮した調整が求められます。

年金受給開始年齢の引き上げは、検討課題の一つです。平均寿命の伸びに合わせて段階的に引き上げることで、給付と負担のバランスを保つことができるかもしれません。

また、マクロ経済スライドの見直しも重要なポイントです。経済状況や人口動態の変化に柔軟に対応できるよう、調整幅や適用期間の再検討が望まれます。

さらに、パートタイム労働者や非正規雇用者への適用拡大も大切です。これにより、より多くの人々が年金制度の恩恵を受けられるようになるでしょう。

年金制度の理解促進と情報提供の充実も欠かせません。国民一人ひとりが自身の年金について正しく理解し、将来設計に活かせるよう、わかりやすい情報発信が求められます。これらの改革を通じて、厚生年金制度の安定性と持続可能性を高めていくことが重要です。

厚生年金に関する手続きと注意点

厚生年金に関する手続きと注意点を確認しておきましょう。

加入・脱退時の手続き

厚生年金の加入手続きは、従業員を雇用した際に事業主が「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を日本年金機構に届け出ることで完了します。脱退手続きは、従業員が退職する際に事業主が「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出することで完了します。

これらの手続きは、年金事務所で行われるケースが多いですが、電子申請システム「e-Gov」でも可能です。手続きの期限は、加入の場合は従業員の入社日から5日以内、脱退の場合は退職日から5日以内となっています。

年金請求の方法と必要書類

厚生年金の請求手続きは、原則として受給権が発生する前の誕生日の3か月前から可能です。請求には、年金事務所や年金相談センターへの来所が必要となります。日本年金機構のウェブサイトから事前予約するとスムーズでしょう。

必要書類は、年金手帳・基礎年金番号通知書・本人確認書類・振込先の金融機関の通帳やキャッシュカードが基本です。婚姻歴や子の有無によっては、住民票や戸籍謄本なども求められるケースがあります。

複数の年金を受け取る権利がある場合は、併給調整の対象となることも。不明点は、窓口で相談しながら進めましょう。

なお、海外に居住している場合は、在外公館を通じて請求することも可能です。ただし、必要書類や手続きの流れが異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

年金受給中の諸手続き

年金受給が始まっても、住所変更や氏名変更、受取口座の変更などは、速やかに日本年金機構に届け出ることが重要です在職中に年金を受給する場合は、毎年の収入状況を報告する必要があります。

また、海外に居住する場合には、現況届の提出が必要です。これは、年金受給者の生存確認のためのもので、毎年提出が必要となります。提出を怠ると、年金の支給が一時停止されることがあるため注意が必要です。

年金額の改定や支給停止に関する通知が届いた際は、内容をよく確認し、不明点があれば日本年金機構に問い合わせることをおすすめします。年金証書を紛失した場合は、再交付手続きが必要です。
これらの手続きは、年金事務所や街角の年金相談センターで行うことができます。一部の手続きは、マイナポータルによる自宅からの手続きも可能です。

まとめ

厚生年金制度について、その仕組みから受給額まで幅広く解説しました。加入条件や保険料、給付内容、受給条件、年金額計算方法など、重要なポイントを網羅していれば、年金にまつわる将来の課題や手続きについての不安も軽減できるでしょう。より詳細な情報や個別の相談については、年金制度に精通した専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。

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「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。

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