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日本の社会インフラを支える基幹産業である建設業は、今、深刻な人手不足という大きな課題に直面しています。採用活動を行う企業の担当者にとって、この問題は事業の継続性を左右する喫緊の経営課題です。需要は堅調であるにもかかわらず、それを支える担い手の確保が追いついていないのが実情といえます。この記事では、企業の採用活動をサポートする専門家の視点から、建設業が人手不足に陥っている現状と原因をデータに基づいて解説し、企業が取り組むべき10の具体的な対策から、今後の展望までを網羅的に紹介します。
<この記事で紹介する3つのポイント>

建設業の人手不足は、感覚的な問題ではなく、データによって裏付けられた深刻な事態です。就業者数はピーク時から大幅に減少し、有効求人倍率は高い水準で推移しています。特に、従業員の高齢化は顕著で、若手の入職者が少ないため、技術の承継も危ぶまれています。さらに、「2024年問題」と呼ばれる法改正が、この問題に拍車をかけると懸念されています。採用担当者は、これらの客観的なデータを正しく認識し、危機感を持って採用活動に取り組む必要があります。
建設業の就業者数は、1997年のピーク時には685万人でしたが、その後減少し、近年は500万人を割り込む水準で推移しています。これは約3割の減少であり、業界から多くの労働力が失われたことを示しています。
一方で、企業の採用意欲は高く、有効求人倍率は全産業の平均を大きく上回っています。例えば、建設躯体工事の職業では有効求人倍率が5倍を超えることもあり、1人の求職者に対して5社以上が競合する激しい人材獲得競争が起きています。このデータは、需要に対して供給が全く追いついていない現状を物語っています。
建設業の人手不足をより深刻にしているのが、従業員の年齢構成のゆがみです。全産業と比較して高齢化が著しく進行しており、技能労働者のうち55歳以上が約36%、60歳以上が約25%を占めています。
対照的に、将来の建設業を担うべき29歳以下の若手従業員は約12%にとどまっています。このことは、今後10年で多くの熟練技術者が大量に退職する一方で、その技術を受け継ぐ若手が圧倒的に不足しているという危機的な状況を示しています。技術承継が途絶えれば、建設業界全体の生産性や品質の低下に直結しかねない重大な問題です。
建設業の人手不足に追い打ちをかけるのが「2024年問題」です。これは、働き方改革関連法の施行により、2024年4月1日から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されることを指します。
具体的には、時間外労働が原則として月45時間・年360時間までとなり、特別な事情があっても年720時間が上限となります。これまで長時間労働によって工期を維持してきた企業にとっては、労働力が直接的に減少し、工期の遅延や売上の減少につながる可能性があります。また、規制に違反した場合には罰則が科されるリスクもあります。人手不足の解消は、この法改正に対応するためにも急務となっています。

建設業界が深刻な人手不足に陥っている背景には、複合的な原因が存在します。これらの問題を構造的に理解することが、効果的な対策を講じる第一歩となります。 主な原因として、「3K(きつい・汚い・危険)の労働環境」「他産業と比較して低い賃金水準」「長時間労働と少ない休日数」「若者の入職者減少と建設業離れ」「熟練技術者の高齢化と技術承継の課題」という5つの点が挙げられます。
建設業の人手不足を語る上で、いまだに根強く残るのが「3K(きつい・汚い・危険)」というネガティブなイメージです。肉体労働が多く、夏は炎天下、冬は寒風にさらされる過酷な労働環境は、若者や女性がこの業界を敬遠する大きな要因となっています。
実際に、建設現場では高所作業や重機操作など、常に危険が伴う作業が存在します。また、土埃や騒音といった職場環境も、快適とはいえません。こうした労働環境の実態が3Kのイメージを補強し、新規入職者の獲得を困難にしています。近年の技術革新で環境は改善されつつありますが、その事実が十分に伝わっていないことも課題の一つです。
業務の過酷さや専門性にもかかわらず、賃金水準が他産業に比べて低いことも、人手不足の大きな原因です。特に、キャリアの浅い若手従業員にとっては、給与の低さが職業選択の段階で大きなデメリットとなります。
建設業の賃金は、天候や工期に左右されやすく、不安定な側面も持ち合わせています。また、重層下請け構造の中で、下位の企業になるほど利益が圧迫され、従業員に十分な給与を支払えないという構造的な問題も指摘されています。魅力的な給与を提示する他産業に人材が流出するのを防ぐためには、業界全体での賃金水準の底上げが不可欠です。
建設業は、全産業平均と比較して労働時間が長く、休日が少ない業界です。工期を守るというプレッシャーから、慢性的な長時間労働が常態化している企業も少なくありません。
国土交通省の調査によると、建設業の年間総実労働時間は全産業平均よりも100時間以上長く、特に週休2日制の導入が他の産業に比べて遅れています。プライベートの時間を重視する現代の若者の価値観とは相容れず、これが若者離れを加速させる一因となっています。働き方改革の推進は、人材を確保する上での最低条件ともいえるでしょう。
前述の3Kイメージや厳しい労働条件が複合的に影響し、若者の建設業離れが深刻化しています。新規学卒者のうち建設業に入職する割合は低く、たとえ入職しても早期に離職してしまうケースが後を絶ちません。
若者が建設業に魅力を感じられない理由として、キャリアパスの不透明さや、旧態依然とした業界の体質を挙げる声もあります。デジタル化の遅れや、徒弟制度のような教育方法が、現代の若者には受け入れられにくくなっています。将来の担い手である若者を惹きつけるためには、業界全体のイメージアップと、働きがいのある近代的な職場環境の構築が急務です。
建設業が直面するもう一つの深刻な問題が、熟練技術者の高齢化と、それに伴う技術承継の課題です。長年の経験によって培われた高度な技術やノウハウは、建設の品質を支える上で不可欠なものです。
しかし、現在その多くを担っているのは55歳以上のベテラン層であり、彼らが今後10年で大量に退職期を迎えます。一方で、その技術を受け継ぐべき若手の入職者は少なく、技術承継がスムーズに進んでいません。これまで個人の経験や勘に頼ってきた技術を、いかにして若手に伝え、組織の知識として蓄積していくか。この課題への対応が、企業の将来を左右するといっても過言ではありません。

深刻な人手不足を乗り越えるためには、企業が主体的に行動を起こすことが不可欠です。旧来の慣習を見直し、現代の価値観に合った魅力的な職場環境を創出することが求められます。
対策は、「労働環境・待遇の改善」「採用・育成の見直し」といったソフト面と、「建設DX」による生産性向上というハード面の両方からアプローチすることが重要です。
人手不足対策の第一歩は、長時間労働と休日の少なさを改善することです。特に、週休2日制の導入は、求職者が企業を選ぶ上での重要な判断基準となっています。
工期や天候に左右される建設業で週休2日を実現するためには、適切な工程管理や生産性向上の取り組みが不可欠です。また、ICTツールを活用して業務を効率化し、無駄な残業を徹底的に削減する努力も求められます。こうした取り組みは、従業員の心身の健康を守り、ワークライフバランスを重視する若手人材を惹きつけるための基本中の基本といえます。
他産業に見劣りしない給与水準の確保と、福利厚生の充実は、人材を確保し定着させる上で極めて重要です。明確で公平な評価制度に基づいた給与テーブルを作成し、従業員が将来の収入を見通せるようにすることが求められます。
また、社会保険の完備はもちろんのこと、退職金制度や家賃補助、資格手当の充実など、独自の福利厚生を設けることで、他社との差別化を図ることができます。従業員の生活を支え、安心して長く働ける環境を提供しているという企業の姿勢が、求職者にとって大きな魅力となるでしょう。
企業の魅力や働きやすさを、社外に向けて積極的に発信することも重要な対策です。自社のウェブサイトやSNSを活用し、3Kのイメージを払拭するような、クリーンで近代的な職場環境や、従業員が生き生きと働く姿を発信します。
例えば、若手従業員のインタビュー記事や、最新技術を導入している現場の動画などを公開することで、求職者に具体的な働くイメージを持ってもらいます。企業のビジョンや社会貢献性を伝えることも、共感を呼び、応募意欲を高める上で効果的です。待ちの姿勢ではなく、攻めの情報発信で企業のブランドイメージを構築していくことが求められます。
若手の日本人男性という従来のターゲットに固執せず、多様な人材に門戸を広げることが、人手不足解消の鍵となります。例えば、女性が働きやすいように、更衣室やトイレなどの設備を整備したり、育児と両立できるような柔軟な勤務制度を導入したりします。
また、経験豊富なシニア人材の再雇用や、意欲のある外国人材の積極的な受け入れも有効な手段です。多様な背景を持つ人材がそれぞれの能力を発揮できるインクルーシブな職場環境を整えることで、企業は新たな活力を得るとともに、採用の間口を大きく広げることができます。
入社後のキャリアパスを明確にし、従業員が成長を実感できる仕組みを整えることは、定着率の向上に直結します。OJT(現場研修)だけに頼るのではなく、階層別の研修プログラムや、専門技術を学ぶための座学など、体系的な人材育成制度を構築します。
特に、業務に必要な資格の取得を企業が全面的にバックアップする「資格取得支援制度」は、従業員のスキルアップ意欲を高める上で効果的です。従業員の成長に投資する企業の姿勢は、エンゲージメントを高め、長期的な活躍を促すことにつながります。

建設DXとは、デジタル技術を活用して、建設業の業務プロセス全体を変革し、生産性を向上させる取り組みのことです。人手不足が深刻化する中、限られた人材でより多くの業務をこなすためには、建設DXの推進が不可欠です。
具体的には、後述するBIM/CIMやドローン、ICT建機、施工管理アプリなどを導入し、設計から施工、維持管理に至るまでの各段階を効率化します。これにより、労働時間の短縮、コスト削減、品質向上といった多くのメリットが期待できます。建設DXは、人手不足を補うだけでなく、建設業をよりスマートで魅力的な産業へと変革する可能性を秘めています。
BIM/CIM(ビム/シム)は、建設DXの中核をなす技術です。これは、コンピューター上に3次元の建物モデルを作成し、設計、施工、維持管理の各段階で情報を一元管理・活用する仕組みです。
BIM/CIMを導入することで、設計段階で図面の不整合や干渉を事前に発見でき、手戻りを防げます。また、3Dモデルから正確な数量を自動で算出できるため、積算業務の効率化にもつながります。関係者全員が同じ3Dモデルを共有することで、円滑な合意形成が可能となり、プロジェクト全体の生産性を飛躍的に向上させることができます。
現場作業の省人化・効率化に直接貢献するのが、ドローンやICT建機、建設ロボットです。ドローンを使えば、これまで人が行っていた危険な高所の測量や、広大な現場の進捗確認を、安全かつ短時間で行えます。
ICT建機は、GPSやセンサーで制御され、設計データに基づいて自動で掘削などを行える建設機械です。これにより、熟練のオペレーターでなくても高精度な施工が可能になります。また、溶接や資材運搬などを自動で行う建設ロボットの導入も進んでおり、従業員の身体的負担を大幅に軽減します。
現場監督や職人間の情報共有を円滑にし、業務効率を向上させるために、施工管理アプリやコミュニケーションツールの導入が有効です。
スマートフォンやタブレットで図面の確認、写真の共有、工程の管理、日報の作成などを一元的に行える施工管理アプリを導入すれば、現場と事務所間の移動や、電話・FAXでのやり取りといった手間を大幅に削減できます。これにより、現場監督は本来の業務である品質・安全管理に集中できるようになり、生産性の向上につながります。
熟練技術者のノウハウを若手に継承するための仕組み作りは、企業の持続的な成長に不可欠です。個人の経験や勘に頼るのではなく、組織の知識(ナレッジ)として共有できる形にすることが重要です。
例えば、ベテランの作業を動画で撮影してマニュアル化したり、過去の施工事例や失敗談をデータベース化して誰もが閲覧できるようにしたりします。また、定期的な勉強会や、ベテランと若手がペアを組むメンター制度なども有効です。技術を体系的に学び、共有できる環境を整えることで、若手従業員の早期戦力化と、組織全体の技術力向上を図ることができます。

建設業の人手不足は、個々の企業の努力だけで解決できる問題ではなく、国や行政もさまざまな支援策を推進しています。これらの施策は、企業の取り組みを後押しし、業界全体の構造改革を促すことを目的としています。
具体的には、「2024年問題」のきっかけとなった働き方改革関連法による時間外労働の上限規制や、技能者の公正な評価を目指す「建設キャリアアップシステム(CCUS)」、ICT活用を推進する「i-Construction」などがあります。また、企業の負担を軽減するための補助金・助成金も用意されています。
国が進める働き方改革の一環として、建設業にも2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されました。これは、長時間労働の是正を通じて、従業員の健康確保とワークライフバランスの実現を目指すものです。
この規制は、企業にとっては労働力の制約となる一方で、業界の労働環境を健全化し、若者や女性にとって魅力的な産業へと転換させるための大きなきっかけともなります。企業は、この法規制を遵守するため、生産性向上や業務効率化に本腰を入れて取り組むことが求められており、国もそのための支援策を講じています。
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、国土交通省が推進する、技能者一人ひとりの就業履歴や保有資格、研修歴などを業界統一のルールで登録・蓄積する仕組みです。
このシステムにより、技能者は自身の経験やスキルを客観的に証明できるようになり、それに見合った公正な評価や処遇を受けやすくなります。企業にとっては、従業員の能力を正確に把握し、適切な人員配置や育成計画に役立てることができます。CCUSの普及は、建設業のキャリアパスを明確化し、技能者が安心して長く働ける環境を整える上で重要な役割を果たします。
i-Construction(アイ・コンストラクション)は、国土交通省が主導する、建設現場の生産性向上を目指す取り組みです。ICT技術を測量、設計、施工、検査、維持管理といった全てのプロセスに導入することを柱としています。
具体的には、ドローンによる3次元測量や、BIM/CIMによる設計、ICT建機による施工などを活用し、現場作業の自動化・省人化を進めます。これにより、人手不足を補うだけでなく、工期の短縮や安全性の向上も実現します。i-Constructionの推進は、建設業を「きつい・危険」な労働集約型産業から、先進技術を駆使するスマートな産業へと変革させることを目指しています。
国や自治体は、建設業の人材確保・育成を支援するため、さまざまな補助金や助成金を用意しています。これらを活用することで、企業の財務的な負担を軽減しながら、人手不足対策を進めることができます。
例えば、従業員のスキルアップのための研修費用を助成する「人材開発支援助成金」や、若手の採用・育成に特化した助成金、あるいはICTツールや建機の導入費用の一部を補助する制度などがあります。どのような制度が利用できるかは、地域や時期によって異なるため、厚生労働省や各自治体のウェブサイトなどで最新の情報を確認することが重要です。

深刻な人手不足という課題を抱える一方で、建設業界の今後の展望は決して暗いものではありません。社会インフラの維持・更新や、防災・減災対策、都市の再開発など、建設投資の需要は今後も底堅く推移すると予測されています。
課題解決の鍵を握るのは、テクノロジーの活用による生産性革命です。建設DXが進むことで、建設業は従来の3Kのイメージを払拭し、より安全で、創造的で、魅力的な産業へと生まれ変わる可能性を秘めています。企業の採用担当者は、こうした未来への展望を語り、求職者に希望を示すことが重要です。
建設業界の市場は、今後も安定した需要が見込まれます。高度経済成長期に建設された橋やトンネル、公共施設などの多くが更新時期を迎えており、老朽化対策のための維持・修繕工事は増加の一途をたどります。
また、頻発する自然災害に対応するための防災・減災対策や、国土強靭化計画に基づくインフラ整備も継続的に行われます。さらに、都市部では大規模な再開発プロジェクトが目白押しであり、リニア中央新幹線のような国家的なプロジェクトも控えています。このように、建設業が社会で果たすべき役割は大きく、市場としての将来性は高いといえるでしょう。
テクノロジーの進化は、未来の建設現場の姿を大きく変えていきます。BIM/CIMによって、全ての作業が3Dモデル上でシミュレーションされ、ロボットが自動で施工を行う。現場監督は、遠隔地のオフィスから複数の現場をリアルタイムで管理する。そのような未来が、すでに現実のものとなりつつあります。
AIが工程管理や安全管理を最適化し、ドローンが資材を運搬する。従業員は、危険な肉体労働から解放され、より創造的で高度な判断が求められる業務に集中できるようになります。こうしたテクノロジーの導入は、生産性を向上させるだけでなく、建設の仕事をより安全で知的なものへと変え、若者や女性にとっても魅力的な職業にする力を持っています。
かつての「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージは、業界全体の努力によって過去のものとなりつつあります。これからの建設業が目指すのは、「給与が良い・休暇が取れる・希望が持てる」という「新3K」です。
建設DXによる生産性向上が実現すれば、少ない労働時間で高い付加価値を生み出すことが可能となり、従業員の給与水準も向上します。また、計画的な施工管理によって週休2日制が定着し、しっかりと休暇を取れるようになります。そして、テクノロジーを駆使して社会に貢献するというやりがいは、従業員に大きな希望を与えます。新3Kの実現は、人手不足を解消し、建設業を持続可能な産業にするための明確な目標です。
建設業の人手不足は、高齢化や労働環境など複数の要因が絡む深刻な課題ですが、決して未来が暗いわけではありません。むしろ、業界全体が大きな変革期を迎えていると捉えることができます。労働環境の改善や待遇の見直し、建設DXの推進といった主体的な取り組みは、企業の競争力を高める絶好の機会です。人手不足の現状と原因を正しく理解し、効果的な対策を講じることが、今後の事業運営を成功させるための突破口となります。
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