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企業には、従業員の健康診断が法的に義務づけられています。健康診断を定期的に実施すると、従業員の健康状態が把握でき、病気の早期発見や予防が可能です。健康診断の費用は企業が負担することになっているものの、適切な取り扱いや処理によって、経費として計上できます。
本記事では、企業が健康診断を実施する義務やその理由、具体的な検査項目や費用などについて解説します。従業員の健康を守りつつ、効率的に経営を進めるためにも、本記事を参考にしてください。
<この記事で紹介する3つのポイント>
目次
企業は従業員の健康を維持するために、健康診断を実施する義務を負っています。具体的には労働安全衛生法に基づき、企業は従業員に対して健康診断を実施し、その結果を適切に管理・記録しなければなりません。健康診断は、すべての従業員を対象とした「一般健康診断」と、特定のリスクを伴う作業に従事する従業員を対象とした「特殊健康診断」に分類されます。
もし企業が健康診断を怠った場合は、50万円以下の罰金が科されます。健康診断の実施により、従業員の健康状態が把握でき、疾病の早期発見や予防が可能です。従業員が健康な状態で安心して働ける環境が整うため、企業の生産性向上にもつなるでしょう。
健康診断は、企業の「健康経営」の一環としても重要視されています。健康経営とは、企業が従業員の健康維持・向上に取り組む活動を指し、業績アップや社会的評価の向上を目的とする経営手法です。企業が健康診断を実施し従業員の健康をサポートすると、長期的には企業全体の利益につながるといえます。
企業が健康診断を実施しなければならない理由は、法的義務のみでなく、従業員の健康状態を把握したり業務効率の向上を図ったりする目的があるためです。健康診断を通じて従業員が安心して働ける環境を整備すると、企業にとっての競争力強化にもつながるでしょう。
健康診断を実施する理由について、以下2点から解説します。
それぞれ見ていきましょう。
健康診断を行うと、企業は従業員の健康状態を定期的に把握できるため、疾病の早期発見ができます。たとえば生活習慣病の兆候を早期に見つけられると、重篤な病気を未然に防げます。従業員が健康を損なわずに業務に従事するためにも、健康診断の実施が重要です。
従業員が健康を維持できると、休業による損失や無駄な医療費を削減でき、業務効率が保たれます。結果として、企業の生産性にもよい影響を与えるでしょう。
健康診断は、企業が推進する健康経営の一環としても重要です。健康経営とは、従業員の健康維持によって業績向上を図ることです。健康経営に取り組むと、企業全体のパフォーマンスが向上します。
健康経営を行う企業は、従業員の健康維持を投資として捉え、以下のようにさまざまな施策を打ちます。
ある企業が実践した健康経営の取り組みを見てみると、生活習慣(運動・睡眠・食生活等)に関する従業員の課題に対して以下を実践し、一定の成果が得られました。
上記の取り組みによって、従業員の健康状態が改善されたのみでなく、エンゲージメントサーベイ(従業員の会社や仕事に対するポジティブな感情を数値化したもの)が高水準となりました。結果として、従業員のパフォーマンス向上につながっています。
健康経営は生産性の向上にもつながり、企業にとっても従業員にとっても大きなメリットとなるでしょう。
健康診断は「一般健康診断」と「特殊健康診断」に大別され、それぞれ検査項目が異なります。検査を通じて従業員の全体的な健康状態が把握でき、業務に従事するうえで必要な健康基準を満たしているかどうかを確認できます。以下で、二つの健康診断で行われる検査項目を見ていきましょう。
一般健康診断は年に1回実施され、職種や勤務時間に関係なくすべての従業員が対象となります。従業員の全体的な健康状態を把握し、疾病の早期発見と予防に役立ちます。各検査項目は以下のとおりです。
上記の検査により、企業は従業員が業務を行えるだけの十分な健康状態であるかどうかを把握できます。それぞれの検査項目について見ていきましょう。
従業員の過去の病歴や業務上の健康リスクを把握するための調査です。過去にどのような病気にかかっていたか、またどのような仕事に従事していたかを確認します。既往症や業務環境などによって、現在の健康状態や将来的なリスクがどのように影響するかを予測するために行います。
従業員自身が感じている健康上の異常(自覚症状)や、医師が診察で発見する異常(他覚症状)を確認します。早期の病気や異常の兆候を発見し、必要に応じて詳しい検査や治療を行うのが目的です。
身体測定や感覚機能(視力と聴力)の基本的な検査です。従業員の体格や感覚機能の異常を確認し、特に肥満や体重減少が原因となる生活習慣病のリスクを評価します。
視力と聴力は、従業員の生産性に直結する場合があります。
視力低下は、特に精密作業や長時間のデスクワークを行う従業員にとって問題になりやすく、矯正しないと生産性や仕事の質に悪影響を及ぼすでしょう。
聴力検査では、従業員が気づかない難聴が発見される場合もあるため、聴力の程度を把握しておくことが重要です。聴力が低下した状態で仕事を続けると、コミュニケーションのとりにくさや作業のミスが増え、けがや事故のリスクが高くなる可能性があります。
胸部のレントゲン撮影で肺や心臓の状態を確認し、喀痰(痰)の検査で肺や気管支の異常を調べます。肺炎、結核、肺がんなどの呼吸器系の疾患を早期に発見するために行います。
特に結核や肺がんは重大な疾患であるため、検査でその有無を確認することが大変重要です。心臓の状態においては、心肥大や心拡大などから心不全や心臓弁膜症の兆候も発見できます。
血圧測定は特に中高年層において、慢性疾患を予防する意味で大変重要です。たとえば高血圧を放置すると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなります。高血圧は自覚症状がない場合があり、健康診断で指摘されても放置してしまう方もいます。
血液中の血色素量や赤血球数を測定し、貧血の有無を調べます。貧血によって酸素供給能力が低下していないかどうかを評価します。貧血は、業務中の疲労感や立ちくらみなどにつながり、従業員の業務効率に影響を与えやすいものです。
血液中の特定の酵素を測定し、肝臓の働きを評価します。肝臓の障害や炎症、過剰なアルコール摂取の影響を早期に発見するのが目的です。肝臓は障害があっても症状を自覚しない場合が多いため、健康診断によって数値を確認しておくことが重要です。
血液中の脂質の量を測定し、動脈硬化によるリスクを評価します。動脈硬化は、脳血管疾患や心疾患のリスクを高めるため、早期に異常を発見することが大切です。動脈硬化であると判断されると、生活習慣の改善が必要になります。
血糖値を測定し、血液中のブドウ糖濃度を測定します。主に糖尿病のリスクを評価し、血糖値の管理が必要であるのかを判断します。糖尿病は生活習慣病のひとつであり、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあるため、生活習慣の改善が重要です。
尿を検査して、糖分や蛋白質が含まれているかを確認します。糖尿病や腎臓病の早期発見を目的としています。
不整脈や心筋梗塞のリスクを発見できます。心筋梗塞は突然死のリスクをもつ重篤な病気です。運動後や業務中に胸痛や息切れがある従業員には、心電図検査で虚血性心疾患の兆候が見つかる場合もあります。
特殊健康診断は、人体に有害なストレスを与える業務に従事する方が受ける検査です。原則として雇入れ時、配置替え、6か月以内ごとに1回行います。特殊健康診断の対象となる業務は以下のとおりです。
特殊健康診断の目的は、有害業務を担当する方が、化学物質などによる健康被害を受けていないかどうかを確認することです。それぞれの業務における検査項目を見ていきましょう。
潜水作業やトンネル工事などの従事者が受ける検査です。
エックス線装置の使用、原子炉の運転業務などの従事者が受ける検査です。
東日本大震災で生じた放射性物質によって汚染された土壌等を除染する業務の従事者が受ける検査です。
塩素化ビフェニル(PCB)、クロム酸や塩、アンモニア等の特定化学物質の製造や取り扱いに関する業務の従事者が受ける検査です。取り扱う化学物質によって検査項目が異なります。
例として、ベンジジンとその塩の取り扱いを行う方が受ける項目を見てみましょう。
石綿の製造や、石綿の粉じんを発散する場所での業務に従事する方、過去に従事していた方などが受ける検査です。
はんだ付けの業務、鉛や合金、化合物などの製造や取り扱いに関する業務に従事する方が受ける検査です。
四アルキル鉛の製造や研究、除染などの業務に従事する方が受ける検査です。
有機溶剤の製造や塗付、その含有物を用いて行う印刷業務などに従事する方が受ける検査です。
前述したとおり、企業は従業員の健康診断を実施することが義務づけられているため、その費用についても企業が負担するのが一般的です。そのため健康診断の実施にあたっては、その費用相場や、福利厚生費としての処理方法を理解しておくのがポイントです。ここからは、以下の2点について解説します。
それぞれ見ていきましょう。
健康診断の費用相場は自由診療である場合が多いため、実施する検査の種類や規模によって異なります。一般健康診断は、従業員1人につき10,000~15,000円程度であるところが多いと言われています。
ただし、健康保険組合の補助を受けて費用をまかなうことが可能です。助成上限額は組合によって異なりますが、8,000~11,000円程度となっています。
特殊健康診断では、特定のリスクを把握するため専門的な検査が必要です。費用は業務内容によって多少幅があるものの、3,000~7,000円程度の場合が多くなっています。企業は健康診断の費用を確認し、必要な予算を把握しましょう。
健康診断の費用は企業の福利厚生費として処理できるものの、適切な手続きと記録が必要です。費用が従業員一人ひとりにどのように割り当てられたのかを正確に記録し、福利厚生費としての妥当性を証明しなければなりません。
以下では、健康診断の費用を福利厚生費として処理するために必要な3つの要件を解説します。
企業は、すべての従業員が一般的な健康診断を受けられるようにしなければなりません。健康診断は、全従業員に対して平等に提供されるべきです。福利厚生費として計上するためには、特定の従業員のみ優先的に受けられる状況をつくらないようにしましょう。
ただし、従業員の年齢や職務に応じた診断内容の変更は差し支えありません。
健康診断の費用は、企業が直接医療機関に支払わなければなりません。従業員が費用を立て替えたり、後日企業がその費用を従業員に支給したりする場合は、費用が給与とみなされる可能性があるためです。
費用は常識的な範囲内に抑えましょう。過度に高額な検査費用や、特定の従業員のみが高額な検査を受ける場合、その費用は福利厚生費ではなく賞与の扱いになる可能性があるためです。
企業内の役職者のみ費用が高額になるような場合も、福利厚生費として計上できません。従業員間で費用に大きな差が出ないようにしましょう。
企業には、従業員の健康診断を実施することが法律で定められています。健康診断は、従業員の健康状態を把握し、病気の早期発見や予防のために重要です。従業員の健康は、企業全体の生産性向上やリスク管理にもつながります。
本記事を通じて企業が健康診断の重要性を理解し、従業員の健康を守るための一助となれば幸いです。
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