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アメリカの医療費は世界的に見ても非常に高額であり、特にニューヨークの医療費は群を抜いて高いと知られています。本記事では、アメリカ、特にニューヨークの医療費事情や病院の状況、高額な医療費の背景、そして医療費を抑えるための方法について詳しく解説します。また、アメリカ滞在中に必要な医療保険についても触れているので、渡航前の準備にお役立てください。
<この記事で紹介する3つのポイント>
最初に、アメリカ・ニューヨークの入院費および治療費について説明します。
アメリカの医療システムは、日本とは大きく異なります。特にニューヨークでは、高度な医療技術と高額な医療費が特徴的です。ニューヨークの医療機関は世界最高水準の技術を持つ一方で、その費用は患者にとって大きな負担となっています。ニューヨークの医療費の実際を見てみましょう。
ニューヨークの医療費は、アメリカ国内でも特に高額です。特にマンハッタン区の医療費は、同区外の2倍から3倍とも言われています。具体的な例は、以下のとおりです。
一般の初診料 | 150ドルから300ドル |
専門医の診察 | 200ドルから500ドル |
入院室料(1日) | 約2,000ドルから3,000ドル |
マンハッタン区の医療費金額は、ニューヨーク圏における中間給与所得者の1ヶ月分の月給(税込み)に相当する、あるいはそれ以上の金額です。さらに、具体的な治療例を見てみます。
急性虫垂炎で入院・手術(1日入院) | 10,000ドル以上 |
歯科治療(虫歯1本) | 約1,000ドル |
高額な医療費の背景には、アメリカの医療保険制度の二重構造があります。多くのアメリカ人が加入している管理型医療保険制度では、医療機関と保険会社との間で契約が交わされており、疾患ごとに定められた規定治療費用(定額)が保険会社から医療機関に支払われます。
たとえば、急性虫垂炎の腹腔鏡下手術(合併症なし、入院2日間)の場合の例は、以下のとおりです。
医療機関からの請求総額 | 10,000ドル以上 |
管理型医療保険加入者の場合の保険会社支払額 | 約4,500ドル |
患者の自己負担 | 数十ドル程度 |
この例で考えると非保険加入者(日本人旅行者など)は、医療機関に対して全額の14,500ドルを支払わなければなりません。二重構造の影響により、保険非加入者や外国人旅行者の医療費が非常に高額になるのです。
ニューヨークとその周辺地域では、いくつかの特徴的な疾患や感染症に注意が必要です。以下の病気に罹患した場合、高額な医療費がかかる可能性があります。
それぞれ説明します。
ライム病は、ボレリア菌に感染したマダニに咬まれてしまうと感染する疾患です。ニューヨーク州は、ライム病の発生率が高い地域の一つとされています。初期症状は発熱や倦怠感など風邪に似ていますが、進行すると関節炎や神経症状を引き起こす場合もあるでしょう。
ライム病の治療費は、診断の段階から高額になる傾向があります。血液検査およびその他の検査費用がかかるほか、症状によっては治療期間も異なります。
また、重症化して入院が必要となった場合にはさらに費用がかかるため、治療が長期化した場合は総額で数万ドルに達するのも珍しくありません。
ウエストナイル脳炎は、ウエストナイルウイルスに感染した蚊に刺されてしまい感染する疾患です。ニューヨーク市では、定期的にウエストナイルウイルスの監視が行われています。多くの感染者は無症状か軽症ですが、約1%の感染者が重症化し、脳炎や髄膜炎を発症するのも珍しくありません。
ウエストナイル脳炎の治療費は、症状の重症度によって大きく異なります。重症化して入院が必要となった場合は、より高額の医療費がかかでしょう。
狂犬病は、狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれてしまい感染する致命的な疾患です。ニューヨーク市内でも、毎年狂犬病に感染した野生動物が確認されています。
狂犬病の治療は、暴露後ワクチン(PEP)と免疫グロブリンの投与が中心です。暴露後ワクチンや免疫グロブリンは非常に高額なため、保険でカバーされないと高額な費用を請求されてしまいます。
また、狂犬病の症状が現れてからの治療は非常に困難で、集中治療室での長期入院が必要です。長期入院の場合、医療費はさらに高額となるでしょう。
ニューヨークでの高額な医療費に備えるため、適切な医療保険への加入は非常に重要です。アメリカ滞在中の日本人には、主に以下の選択肢があります。
海外旅行保険 | 短期滞在者向けで、比較的安価に加入できます。ただし、補償期間や補償内容に制限があることに注意が必要です。 |
現地の民間医療保険 | 長期滞在者向けで、より包括的な補償を受けられますが、保険料が高額になる傾向があります。 |
雇用主提供の団体保険 | アメリカの企業に勤務する場合、雇用主を通じて加入できる保険です。 |
保険を選ぶ際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
適切な保険に加入すれば、高額な医療費のリスクを軽減し、必要な医療サービスを安心して受けられるでしょう。
グアムは、アメリカの準州であり、医療システムはアメリカ本土と類似しています。しかし、医療費はニューヨークほど高額ではありません。盲腸手術(急性虫垂炎の手術)を例に、グアムの医療費を見てみましょう。
グアムでの盲腸手術の治療費(入院3日) | 約400,000〜800,000円 |
日本での盲腸手術治療費(入院4日) | 約600,000円 |
同様の手術1日の入院で100万円以上かかるニューヨークと比べると若干安価ですが、日本の医療費と比較するとやはり高額です。
グアムの医療費が本土より安い理由としては、以下が考えられます。
ただし、グアムは小さな島であり、高度な医療設備や専門医の配置が充実している訳ではありません。複雑な症例や重症の場合、本土やハワイへの医療搬送が必要になるケースもあり、その場合は更に高額な費用がかかる可能性があります。
フロリダ州の医療費は、ニューヨークほど高額ではありませんが、それでも全米平均を上回る傾向です。フロリダ州の高齢者人口や観光客が多い特徴が医療費に影響を与えています。
【フロリダ州の一般的な医療費の例】
フロリダ州では、多くの医療機関が観光客向けのサービスを提供しており、英語が話せない患者にも対応できる体制を整えています。ただし、言語サービスに追加料金がかかる場合もあるため、注意が必要です。
また、フロリダ州は熱帯気候であるため、熱中症や日射病のリスクが高くなります。熱中症や日射病の治療には、点滴や入院が必要になる場合があり、数千ドルの医療費がかかる可能性もあるでしょう。
日本とアメリカの医療費を比較すると、その差は歴然としています。以下に、いくつかの一般的な医療サービスの費用比較を示します。
日本 | アメリカ | |
---|---|---|
一般的な外来診療 | 約3,000円〜 | 約15,000円〜 |
MRI検査 | 20,000円〜 | 約200,000円〜 |
アキレス腱断裂 | 約350,000円〜 | 約2,900,000円〜 |
虫垂炎手術 | 約300,000円〜 | 約2,000,000円〜 |
救急車利用 | 原則無料(一部地域で少額の負担金あり) | 約85,000円〜 |
上記の比較から、アメリカの医療費が日本の数倍から10倍以上必要なのがわかります。この大きな差の主な理由としては、以下が考えられます。
高額な医療費は、アメリカ国民にとっても大きな負担となっており、医療費が原因で経済的困難に陥る人々も少なくありません。
ニューヨークの高額な医療費に対処するため、以下の5つの方法を紹介します。これらの方法を活用することで、医療費を抑えつつ必要な医療サービスを受けることができます。
それぞれ説明します。
緊急ではない症状の場合、大病院の救急外来ではなく、地域のクリニックやアーバンヘルスケアセンターを利用すれば、医療費を大幅に抑えられるでしょう。クリニックやアーバンヘルスケアは、一般的な診療や軽度の怪我の治療に対応しており、大病院よりも安価です。
また、多くのクリニックやアーバンヘルスケアセンターでは、所得に応じた料金設定や支払いプランを提供しています。事前に料金体系を確認し、自身の経済状況に合った施設を選ぶことが重要です。
アメリカでは、医薬品が高額になる場合がありますが、ジェネリック医薬品(後発医薬品)を利用すれば、大幅に薬代を抑えられるでしょう。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を含み、同等の効果が期待できますが、価格は大幅に安くなっています。
医師や薬剤師に、処方された薬のジェネリック版があるかどうかの確認をするよいでしょう。多くの場合、同等の効果を得られるジェネリック医薬品が利用可能です。
高額な医療費を避ける最も効果的な方法は、病気にならないことです。健康的な生活習慣を維持し、定期的な健康診断を受ければ、多くの疾患を予防したり、病気を早期に発見したりできるでしょう。
健康維持のためのポイントは以下の通りです。
また、予防接種や定期健康診断は、長期的に見れば医療費の節約につながります。多くの保険プランでは、予防医療サービスが無料または低額で提供されているので活用するとよいでしょう。
長期滞在者の場合、自身のニーズに合った最適な健康保険プランの選択が重要です。保険プランによって、補償内容や自己負担額が大きく異なります。
保険プランの選択をする際のポイントは以下のとおりです。
たとえば、若くて健康な方の場合、月々の保険料は安く、自己負担額が高いプランを選択すれば、万が一の高額医療費に備えられます。一方、持病がある方や頻繁に医療サービスを利用する方の場合、月々の保険料は高く、自己負担額の低いプランの方が総合的に見て有利になる可能性があるでしょう。
毎年、オープンエンロールメント期間(通常11月〜12月)に自身の医療ニーズを再評価し、必要に応じて保険プランの変更をおすすめします。
多くの病院や医療機関には、医療費に関する相談窓口があります。高額な医療費請求を受けた場合、これらの窓口を利用して交渉すれば、請求額を減額できる可能性があります。
医療費相談窓口での交渉ポイントは以下のとおりです。
また、非営利団体や地域のコミュニティセンターなどでも、医療費に関する相談や支援を受けられます。経済的に困難な状況にある場合、非営利団体や地域のコミュニティセンターに相談すれば、支援プログラムや割引制度などの情報を得られるかもしれません。
アメリカの医療費は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も高額です。2020年のデータによると、アメリカの医療費支出はGDPの約19%を占めており、これは他の先進国の平均を大きく上回っています。この高額な医療費の背景には、以下の要因があります。
それぞれ説明します。
アメリカでは、救急車の利用が有料です。救急車を呼んで病院まで搬送されるだけで、数百ドルから数千ドルの請求が発生します。
たとえば、ニューヨーク市の場合は以下のとおりです。
患者搬送(救命士なし) | 84,000円 |
救急搬送①(救命士乗車) | 143,000円~155,000円 |
距離に応じた料金 | 約1,000円/Km |
酸素投与 | 約7,000円 |
高額な救急車料金は、多くのアメリカ人にとっても大きな負担となっており、軽症の場合にタクシーやライドシェアサービスを利用して病院に向かう人も少なくありません。
アメリカでは、日本のように予約なしで気軽に医療機関を受診するのが難しい状況です。多くの医療機関では事前予約が必要であり、予約なしで受診できる「ウォークイン・クリニック」や「アージェントケア・センター」は限られています。
予約制度は、医療機関の効率的な運営を目的としていますが、急な体調不良や怪我の際に迅速な対応が難しくなる原因にもなっているといえるでしょう。予約が取れない場合や、営業時間外の場合、多くの患者は選択肢として高額な救急外来を利用せざるを得なくなります。
アメリカの医療技術は世界最高水準にあり、最先端の治療法や医療機器が導入されています。しかし、高度な医療技術は、アメリカにおける医療費高騰の原因にもなっているのです。アメリカでは自由診療制度が採用されており、病院や医師が独自に医療費を設定することができます。
たとえば、MRIやCTスキャンなどの高度な画像診断の費用は、日本の数倍から10倍以上になる場合があります。
高額な医療費は、最新の医療技術や設備の導入・維持コスト、高度な専門性を持つ医療従事者の人件費、医療訴訟リスクに対する保険料などが反映されているのです。
アメリカでは、高額な医療費が原因で自己破産に至るケースが少なくありません。ある調査によると、自己破産の65%以上が医療費関連の債務が原因とされています。
適切な医療保険に加入していても、保険の補償限度額を超えた場合や、保険でカバーされない治療を受けた場合に高額な医療費が発生する可能性があるのです。
高額な医療費は、個人だけでなく、アメリカの国家財政や州の財政にも大きな影響を与えています。アメリカの医療費支出は、GDPの約19%を占めており、他の先進国と比べて非常に高い割合です。
連邦政府レベルでは、メディケア(高齢者向け公的医療保険)とメディケイド(低所得者向け公的医療保険)の支出が年々増加傾向です。2019年度の連邦政府の医療費支出は約1.2兆ドル(約132兆円)で、これは連邦予算全体の約29%を占めています。
州レベルでも、メディケイドの州負担分や州独自の医療プログラムの費用が財政を圧迫しています。たとえば、ニューヨーク州の2021年度予算では、医療関連支出が約800億ドル(約8.8兆円)で、州予算全体の約36%を占めているのです。
高額な医療費支出は、他の重要な分野(教育、インフラ整備など)への予算配分を制限する要因となっており、長期的には国や州の財政健全性に大きな影響を与える可能性があるでしょう。
アメリカでは、多くの人々が民間の医療保険に加入していますが、その保険料(掛金)は非常に高額です。雇用主提供の団体保険でも、従業員負担分が高額になることがあります。
カイザー・ファミリー財団の2020年の調査では以下のようになっています。
民間医療保険の高額な支払いは、多くのアメリカ人にとって簡単ではありません。特に、雇用主提供の保険に加入できない自営業者や、パートタイム労働者などは、さらに高額な個人向け保険に加入せざるを得ない状況にあります。
また、高額な保険料を支払っても、多くの保険プランでは自己負担額(デダクティブル)や共同保険額が設定されており、実際に医療サービスを利用する際には追加の支払いが必要になってしまうのです。
アメリカでの医療費と保険の必要性について考えていきましょう。
日本の公的健康保険(国民健康保険や社会保険)は、原則として海外での医療費はカバーしません。しかし、例外的に「海外療養費制度」を利用できる場合があります。
海外療養費制度の概要は以下のとおりです。
ただし、この制度には以下のような制限があります。
たとえば、アメリカで10,000ドル(約110万円)の治療を受けた場合、日本国内での同等の治療費が3,000ドル(約33万円)相当だとすると、払い戻し額は約2,100ドル(約23万円、7割)にとどまります。残りの7,900ドル(約87万円)は自己負担です。
海外療養費制度は限定的な補償にとどまるため、アメリカ滞在中は別途、十分な補償額の海外旅行保険に加入したほうが得策といえるでしょう。
海外旅行保険は、アメリカの高額な医療費に対応するための重要な手段です。多くの海外旅行保険は、以下のような補償を提供しています。
特に治療・救援費用の補償額が重要で、アメリカ滞在の場合は5,000万円以上、できれば無制限の補償が望ましいとされています。
海外旅行保険の利点は以下のとおりです。
ただし、海外旅行保険にも以下の注意点があります。
長期滞在の場合や、より包括的な補償が必要な場合は、現地の医療保険や国際医療保険への加入を検討する必要があります。
海外旅行保険を選ぶ際は以下のポイントを押さえましょう。
適切な海外旅行保険に加入すれば、アメリカの高額な医療費に対する不安を軽減し、安心して滞在を楽しめるでしょう。ただし、保険に加入していても、健康管理には十分注意を払い、不必要なリスクの回避が大切です。
アメリカ、特にニューヨークの医療費は世界的に見ても非常に高額であり、適切な対策を講じなければ大きな経済的リスクとなります。この高額な医療費の背景には、以下6つが主な要因です。
長期滞在の場合は、現地の医療保険や国際医療保険への加入も検討する必要があります。また、アメリカの医療システムや保険制度について事前に十分な知識を得ておくとよいでしょう。
最後に、どんなに十分な保険に加入していても、健康管理と予防が最も重要であることを忘れないでください。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、基本的な健康習慣を心がけるれば、病気や怪我のリスクを軽減し、結果として高額な医療費を回避できます。
アメリカ、特にニューヨークでの滞在を安全で快適なものにするためには、医療費に関する十分な準備と知識が不可欠です。本記事の情報を参考に、適切な対策を講じて、安心してアメリカ滞在を楽しんでください。
DYMは医療事業としてアメリカ・ニューヨークでクリニックを開業しています。日本人医師による外来診察、日本と同じように受診できる人間ドックなどの豊富なメニューを取り揃えています。
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