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システム開発会社のM&A完全ガイド|IT業界の動向や成功のポイントを徹底解説

公開日:2025.11.07  更新日:2025.11.07

デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が社会全体に広がる中、その中核を担うシステム開発業界では、M&A(企業の合併・買収)がこれまでになく活発化しています。IT人材の獲得競争、後継者問題、そして大手企業による事業領域の拡大など、さまざまな要因が絡み合い、M&Aは企業が持続的に成長するための重要な経営戦略として位置づけられるようになりました。

しかし、システム開発企業のM&Aは、製造業や小売業とは異なる、IT業界特有の価値評価や注意点が存在します。

この記事を読めば、活発化するIT業界のM&Aの最新動向から、売り手・買い手双方のメリット・デメリット、そしてM&Aを成功に導くための具体的な手順と専門家の選び方までを体系的に理解できます。

 これからM&Aを検討しているシステム開発企業の経営者様や担当者様にとって、不確実性の高い時代を乗り越え、企業の未来を切り拓くための羅針盤となるでしょう。

<この記事で紹介する3つのポイント>

  • IT・システム開発業界でM&Aが活発化している背景と市場の将来性
  • 売り手・買い手それぞれの立場から見たM&Aのメリットと潜在的なリスク
  • M&Aの準備から統合後までの具体的な流れと、成功の鍵を握る専門家の選び方

活発化するIT・システム開発業界のM&A動向

近年、IT・システム開発業界におけるM&Aの件数は著しく増加しています。その背景には、業界特有の課題や、社会全体のデジタル化への要請があります。ここでは、なぜM&Aが急増しているのか、そして今後の市場がどのように変化していくのかを解説します。

IT業界でM&Aが急増する4つの背景

IT業界でM&Aがこれほどまでに活発化しているのには、主に4つの背景が存在します。 第一に、深刻なIT人材不足です。多くの企業がDXを推進する中で、優秀なエンジニアやプロジェクトマネージャーの獲得競争が激化しています。M&Aは、即戦力となる技術者チームをまとめて確保するための、最も効果的で迅速な手段の一つです。

第二に、中小のシステム開発企業に多い後継者問題です。経営者が高齢化し、親族や社内に適切な後継者が見つからない場合、M&Aによる第三者への事業承継が、従業員の雇用と培ってきた技術を守るための有力な選択肢となります。

第三に、大手企業や異業種による事業領域の拡大です。既存事業とITを組み合わせた新たなサービスを展開するため、あるいは自社のDXを内製化するために、専門的な技術を持つ開発企業を買収する動きが加速しています。

最後に、スタートアップ企業によるイグジット戦略の一環としてのM&Aです。革新的な技術やサービスを開発したスタートアップが、大手企業の傘下に入ることで、資金力や販売網を活用し、事業のさらなる成長を目指すケースも増えています。

システム開発・受託開発の市場規模と将来性

システム開発業界の市場は、今後も継続的な成長が見込まれています。その最大の牽引役は、あらゆる産業で不可欠となっているデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進です。企業の基幹システムの刷新やクラウド化、AI・IoTといった先端技術の導入、そしてサイバーセキュリティ対策の強化など、システム開発への需要は尽きることがありません。

特に、特定の業務や業界に特化したノウハウを持つ受託開発企業は、高い専門性を武器に安定した市場を築いています。経済産業省の調査でも、情報サービス産業は堅調な成長を続けており、この大きな潮流の中で、M&Aは業界の再編と成長をさらに加速させる重要なドライバーとして機能し続けるでしょう。

技術力のある企業にとっては、M&A市場において自社の価値を高く評価してもらえるチャンスが広がっていると言えます。

【売却・買収別】IT・システム開発業界のM&Aのメリット・デメリット

M&Aは、売り手と買い手の双方に大きなメリットをもたらす可能性がある一方で、見過ごせないデメリットやリスクも存在します。それぞれの立場から、どのような点を考慮すべきかを詳しく見ていきましょう。

【売り手側】のメリットとデメリット

システム開発企業が自社を売却する場合、主に以下のようなメリットが期待できます。 最大のメリットは、後継者問題の解決と創業者利益の獲得です。経営者は、従業員の雇用と取引先との関係を維持したまま、安心して引退することができ、同時にこれまで築き上げてきた企業の価値を現金として手にすることができます。

また、大手企業の傘下に入ることで、経営基盤が安定し、従業員の待遇改善や福利厚生の充実が図れるケースも少なくありません。自社単独では難しかった大規模なプロジェクトへの参画や、最新技術への投資も可能になり、事業のさらなる成長が期待できます。

一方で、デメリットとしては、買い手企業の文化とのカルチャーフィットの問題が挙げられます。開発の進め方や意思決定のスピード、評価制度などが大きく変わり、従業員が戸惑いや不満を感じる可能性があります。また、M&Aの交渉過程で、必ずしも希望通りの価格や条件で売却できるとは限らないという現実もあります。

【買い手側】のメリットとデメリット

企業がシステム開発企業を買収する場合、その目的は明確です。

最も大きなメリットは、優秀なIT人材・技術者チームを迅速に確保できることです。自社で一から採用・育成するには多大な時間とコストがかかりますが、M&Aであれば、すでにチームとして機能している開発組織を即座に手に入れることができます。

また、新規事業へのスピーディーな参入や、既存事業のDX推進も可能になります。特定の技術やノウハウを持つ企業を買収することで、開発期間を大幅に短縮し、市場での競争優位性を確立できます。さらに、買収した企業が持つ顧客基盤や取引先ネットワークを引き継ぐことで、新たな販路を獲得できるというメリットもあります。

しかし、デメリットとして、買収後にキーパーソンとなるエンジニアが離職してしまうリスクが常に伴います。また、M&Aの価格算定の基礎となった事業計画が想定通りに進まず、投資を回収できない「のれんの減損リスク」や、事前の調査(デューデリジェンス)では発見できなかった偶発債務や法務リスクが後から発覚する可能性も考慮しなければなりません。

M&Aの準備から完了までの全7ステップ

M&Aは、非常に専門的で複雑な手続きを伴います。そのプロセスは、一般的に7つのステップに分けることができます。ここでは、各ステップの概要とポイントを解説します。

ステップ1:M&A戦略の策定と専門家への相談

M&Aを成功させるための最初のステップは、「なぜM&Aを行うのか」という目的を明確にし、自社の経営戦略の中に位置づけることです。売り手であれば「事業承継のためか、さらなる成長のためか」、買い手であれば「人材獲得か、新規事業参入か」といった目的を明確にします。

この段階で、M&Aの知見が豊富なM&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)といった専門家に相談することが非常に重要です。専門家は、M&Aの全体像を客観的に示し、戦略の策定から相手探し、交渉に至るまで、一貫してサポートしてくれます。特にIT業界に精通した専門家を選ぶことが、成功の鍵となります。

ステップ2:売却・買収先の選定(マッチング)

M&A戦略が固まったら、次はその戦略に合致する相手企業を探します。M&A仲介会社は、独自のネットワークを駆使して、売り手と買い手の双方にとって最適なパートナー候補をリストアップします。

この際、企業の概要を匿名でまとめた「ノンネームシート」で打診を行い、関心を示した企業との間で秘密保持契約(NDA)を締結した上で、より詳細な企業情報(企業概要書)を開示するという手順が一般的です。システム開発企業のM&Aでは、単なる事業規模だけでなく、技術的な強みや企業文化の親和性といった、定性的な要素も重要なマッチングの判断基準となります。

ステップ3:トップ面談と基本合意書の締結

候補企業とのマッチングが進むと、次に行われるのが経営者同士の「トップ面談」です。ここでは、事業内容や財務状況といった書面上の情報だけでは分からない、経営理念やビジョン、企業文化、そしてお互いの人柄などを確認し、共に未来を築いていけるパートナーであるかを見極めます。

このトップ面談を経て、双方がM&Aに前向きな意思を確認できれば、独占交渉権の付与や、大まかな譲渡価格、今後のスケジュールなどを定めた「基本合意書(LOI)」を締結します。これは法的な拘束力を持たない場合が多いですが、その後の交渉の基礎となる重要な文書です。

ステップ4:デューデリジェンス(買収監査)の実施

基本合意書を締結した後、買い手側が売り手企業の価値やリスクを詳細に調査する「デューデリジェンス(DD)」が行われます。これは、M&Aのプロセスにおいて最も重要なステップの一つです。

公認会計士や弁護士といった専門家がチームを組み、財務・税務、法務、人事、そしてシステム開発企業の場合は特に重要なIT・ビジネスの側面から、売り手企業の実態を徹底的に調査します。例えば、会計帳簿の正確性、契約書の法的な問題点、キーパーソンとなるエンジニアの処遇、そして開発したシステムの技術的な価値や脆弱性などが精査されます。

このDDの結果、重大な問題が発見された場合は、取引価格の見直しや、最悪の場合はM&Aの中止に至ることもあります。

ステップ5:最終条件の交渉と最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、M&Aの最終的な条件交渉が行われます。DDで発見されたリスクなどを基に、基本合意書で定めた譲渡価格の調整や、役員の処遇、従業員の雇用条件といった、細部にわたる条件を詰めていきます。

この交渉は、M&Aの成否を分ける非常にタフなものになることも少なくありません。売り手と買い手の双方が納得できる着地点を見出すために、M&Aの専門家が間に入り、交渉をサポートします。そして、全ての条件について合意に至れば、法的な拘束力を持つ「最終契約書(DA)」を締結します。

ステップ6:クロージング(決済・株式譲渡)

最終契約書の締結後、契約内容を履行するための手続きが「クロージング」です。具体的には、買い手から売り手へ譲渡代金の決済(支払い)が行われ、同時に売り手から買い手へ会社の株式や事業が譲渡されます。

このクロージングをもって、M&Aの取引自体は完了し、会社の経営権が買い手に移ります。株主名簿の書き換えや、役員の変更登記といった法的な手続きも、この段階で並行して行われます。

ステップ7:PMI(M&A後の統合プロセス)

M&Aは、クロージングで終わりではありません。むしろ、ここからが本当のスタートです。買収した企業と自社の経営方針や業務プロセス、人事制度、そして企業文化などをすり合わせ、一つの組織として円滑に機能させるための一連の作業が「PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)」です。

特にシステム開発企業のM&Aでは、キーパーソンであるエンジニアのモチベーションを維持し、離職を防ぐための丁寧なコミュニケーションが不可欠です。異なる開発環境や文化を持つチームをいかにして融合させ、M&Aの目的であったシナジー効果を創出できるか。このPMIの成否が、M&Aの最終的な成功を決定づけると言っても過言ではありません。

IT業界に強いM&A専門家を選ぶ3つのポイント

システム開発企業のM&Aを成功させるためには、業界への深い知見を持つ専門家のサポートが不可欠です。どのM&A仲介会社やFAに依頼するかを選ぶ際には、以下の3つのポイントを確認することが重要です。

ポイント1:システム開発業界での豊富な実績と専門知識

まず最も重要なのが、システム開発業界におけるM&Aの仲介実績が豊富であるかどうかです。IT業界は技術のトレンドが速く、ビジネスモデルも多様です。受託開発、SES、自社サービス開発といった事業モデルごとの特性や、業界特有の商慣行、そしてどのような企業同士の組み合わせでシナジーが生まれやすいかを熟知している専門家でなければ、最適なマッチングは実現できません。

過去の成功事例や、担当者がIT業界出身であるかなどを確認し、表面的な財務数値だけでなく、事業の本質を理解してくれるパートナーを選びましょう。

ポイント2:技術価値を正確に評価できる企業査定能力

システム開発企業の本当の価値は、貸借対照表に現れる有形の資産だけではありません。優秀なエンジニアチームという「人的資産」や、自社開発したソフトウェア、独自の開発ノウハウといった「無形の技術資産」こそが、その企業価値の源泉です。

IT業界に強いM&A専門家は、これらの無形資産を正しく評価するための独自のノウハウを持っています。エンジニアの技術レベルや、開発されたシステムの将来性、拡張性などを評価し、それを企業価値(株価)に適切に反映させる能力があるかどうかが、特に売り手にとっては、納得のいく売却を実現するための重要なポイントとなります。

ポイント3:IT企業とのネットワークと統合後サポート体制

優れたM&A専門家は、幅広いIT企業との独自のネットワークを持っています。このネットワークの広さと深さが、自社の戦略に最も合致した、最適なパートナー候補を見つけ出せるかどうかに直結します。

また、契約を成立させるだけでなく、その後のPMI(M&A後の統合プロセス)までをサポートしてくれる体制が整っているかも重要です。特に、異なる文化を持つエンジニア組織の融合は、非常にデリケートで難しい課題です。人事制度のすり合わせや、キーパーソンの離職防止策など、統合後の課題解決までを視野に入れたサポートを提供してくれる専門家を選ぶことが、M&Aを真の成功に導くための鍵となります。

まとめ

デジタルトランスフォーメーションが加速する現代において、システム開発企業のM&Aは、IT人材不足や後継者問題といった課題を解決し、企業がさらなる成長を遂げるための極めて有効な経営戦略です。売り手にとっては創業者利益の獲得と事業の継続性を、買い手にとっては開発体制の強化と事業拡大のスピードをもたらします。

M&Aを成功させるためには、その複雑なプロセスをナビゲートし、IT業界特有の価値を正しく評価してくれる専門家のサポートが不可欠です。自社の未来を託す重要な決断だからこそ、業界への深い知見と豊富な実績を持つ、信頼できるパートナーを選ぶことが何よりも重要です。

もし、貴社のM&A戦略について具体的な相談をご希望でしたら、ぜひDYMにご相談ください。DYMでは、IT業界に精通した専門家チームが、最適なマッチングから交渉、そしてM&A後のPMIに至るまで、ワンストップで貴社の成長戦略を強力にサポートいたします。

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「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。

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