Page Top
アルムナイ採用が企業の人材戦略として注目を集めています。アルムナイ採用とは、過去に自社で働いた経験のある元従業員を指し、再雇用を通じて即戦力の確保や組織の活性化を図る手法です。労働市場の流動化や人材獲得競争の激化を背景に、多くの企業がアルムナイ採用を採用し始めています。
本記事では、アルムナイ採用の意味やメリット、デメリット、効果的な導入方法について詳しく解説します。人事担当者や経営者に役立つ実践的な情報をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
<この記事で紹介する3つのポイント>
アルムナイ採用は、一度退職した元従業員を再雇用する仕組みです。近年、人材確保が難しくなるなかで、即戦力となる人材を獲得する手段として注目されています。
それぞれ説明します。
アルムナイ(alumni)は、ラテン語を語源とする言葉で、本来は「卒業生」や「同窓生」を意味します。企業の人事分野では、アルムナイという言葉が転用され、退職した元従業員を指す用語として使用されるようになりました。
アルムナイという概念は、主に欧米の企業文化から発展しました。日本では比較的新しい概念ですが、グローバル化や人材獲得競争の激化に伴い、多くの企業が導入を検討し始めています。
退職した従業員を再雇用する仕組み
アルムナイ採用は、過去に自社で働いた経験のある人材を再び雇用する制度です。アルムナイ採用の核心は、退職者との関係性を継続的に維持し、必要に応じて再雇用を行うことにあります。
アルムナイ採用の主な特徴として、退職者との継続的な関係が構築できる点や、再雇用の機会を提供することで企業と退職者にメリットをもたらす点があります。さらに、正社員や契約社員、副業など、多様な雇用形態を用意することで、柔軟な人材活用を可能にできるのです。
アルムナイ採用は、単なる再雇用制度ではありません。退職者とのネットワークを戦略的に維持・活用し、企業の競争力向上につなげる長期的な人材戦略といえます。アルムナイ採用を通じて、企業は人材の多様性を高め、イノベーションを促進する可能性を秘めています。
アルムナイ採用は、近年多くの企業で注目を集めています。背景には、日本の労働市場や企業を取り巻く環境の変化があります。主な要因は以下の4つです。
それぞれ説明します。
労働人口の減少により、企業の人材確保が困難になっています。日本の生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年をピークに減少を続けており、2020年には7,406万人まで落ち込んでいます。さらに、内閣府の報告によると、2040年には5,978万人にまで減少すると予測されています。
企業の人材確保が難しくなったのは、日本で少子高齢化が急速に進行し、出生率の低下と平均寿命の延伸により人口構造が大きく変化しているからです。少子高齢化が進んでいるなかで企業は限られた人材プールの中で優秀な人材を獲得する必要があり、アルムナイ採用はその有効な手段となっています。
厚生労働省の調査によると、2021年の有効求人倍率は平均1.16倍で、求職者よりも求人数が多い状況が続いています。特に、IT業界や介護・医療分野などでは人材不足が深刻で、即戦力となるアルムナイ人材の価値が高まっているのです。
日本の労働市場では、転職が一般的になってきました。終身雇用の概念が薄れ、キャリアアップや自己実現のために転職を選択する人が増加しています。特に若い世代を中心に、複数の企業で経験を積むことが当たり前になりつつあります。
個人のキャリア観は大きく変化し、一つの会社に留まるよりもさまざまな経験を積むことを重視する傾向が強まってるのです。企業側も中途採用を積極的に行うようになり、転職市場が活性化しています。
厚生労働省の調査によると、2024年4〜6月の転職者数は約326万人で、長期的に増加傾向にあります。転職者数が増えているなかで、アルムナイ採用は企業と個人にとって魅力的な選択肢です。転職経験者の知見や外部での経験を活かせる点が、企業にとっても大きなメリットとなっています。
働き方の多様化も、アルムナイ採用が注目される要因の一つです。フリーランスやギグワーカーの増加、副業・兼業の普及など、従来の正社員中心の雇用形態から多様な働き方へと変化しています。テレワークの普及も相まって、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能になっています。
働き方が多様化するようになったのは、個人のライフスタイルやキャリアニーズが多様化し、企業側が柔軟な雇用形態を提供する必要が出てきたためです。ワークライフバランスの重視や、複数の仕事を掛け持ちする「パラレルキャリア」の概念も広まっています。
総務省の調査によると、2022年時点で副業を持つ人(非農林業従事者)は約305万人に上り、5年前と比べて約60万人増加しています。アルムナイ採用は、多様な働き方のニーズに応える手段として注目されており、企業にとっては多様な経験を持つアルムナイを柔軟な形態で活用できる点が魅力です。
企業の競争力の源泉として、人材の価値がますます重要視されています。特に、高度なスキルや専門知識を持つ人材の獲得が企業の成長に直結すると考えられています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、技術系人材の需要が高まっているのも特徴的です。
技術革新やグローバル化が急速に進むなかで、企業の競争力を左右するのは人材の質だと認識されています。単なる労働力ではなく、イノベーションを生み出す源泉として人材を捉える見方が強まっているのです。
経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」では、人的資本への投資が企業の中長期的な価値創造につながると指摘されています。アルムナイ採用は、即戦力となる高度人材を確保する手段として、重要性を増しているのです。さらに、アルムナイが持つ外部での経験や新しい視点は、イノベーション創出にも寄与すると期待されています。
アルムナイ採用には、企業にとって多くのメリットがあります。主なメリットは以下の5つです。
それぞれ説明します。
アルムナイ採用の最大のメリットは、即戦力となる人材を獲得できる点です。多くの企業が人材確保に苦心するなかで、非常に魅力的な選択肢となります。
アルムナイは過去に自社で働いた経験があるため、業務内容や企業文化をすでに理解しています。新入社員と比較して、短期間で高いパフォーマンスを発揮することが期待できるでしょう。自社の強みや弱みも把握しているため、効果的な貢献が可能です。
アルムナイは自社のシステムや業務フローに精通しているため、入社後すぐに生産性の高い仕事ができます。さらに、過去の経験を活かして効率的な業務改善を提案することも可能です。以前の在籍時に抱えていた課題に対して、新しい解決策も提示できるかもしれません。
アルムナイ採用は、通常の中途採用と比べて採用コストと教育コストを大幅に削減できる点で、企業にとって非常に魅力的です。アルムナイとは既に関係性があるため、採用プロセスを簡略化できます。アルムナイは業務内容を熟知しているため、長期間の研修も不要となるでしょう。
転職エージェントや求人媒体を利用せずに直接アプローチできるため、採用にかかる費用を抑えられます。オンボーディング期間も短縮できるため、教育コストの削減にもつながります。通常の中途採用では数週間かかる研修期間を、アルムナイ採用では数日程度に短縮できる可能性もあるのです。
アルムナイは自社のシステムやツールにも慣れているため、ITリテラシーの教育にかかる時間とコストも削減できます。デジタル化が進む現代のビジネス環境において特に重要です。
アルムナイ採用では、新しい環境への適応がスムーズになるため、企業文化に馴染みやすい人材を確保できます。アルムナイは過去に自社で働いた経験があるため、企業の価値観や組織風土を理解しています。
新しい環境への適応ストレスが少なくなり、職場への溶け込みも容易です。アルムナイは社内の暗黙のルールや慣習を知っているため、チームワークを乱すことなく円滑に業務を進められます。高い適合性から長期的な定着も期待できるでしょう。
アルムナイ採用は、職後に他社で得た経験が活かされるため、新たな知識や人脈を企業にもたらす機会となります。
アルムナイは外部で新たなスキルや知見を身につけていることが多いため、自社への還元が期待できます。他社で学んだ最新技術やビジネスモデルを導入することで、自社の競争力向上につながるでしょう。
さらに、アルムナイの外部ネットワークを活用することで、新たなビジネスチャンスを創出する可能性もあり、自社の成長戦略にも寄与します。
アルムナイ採用を積極的に行うことで、企業のブランドイメージが向上します。アルムナイを受け入れる姿勢は企業の柔軟性やふところの深さを示すのです。
一度退職した社員が戻ってくるという事実は、企業が魅力的であることの証明にもなります。アルムナイ採用の実績を公表すると、「働きやすい企業」や「キャリアアップ支援企業」というポジティブなイメージもつくられるでしょう。
結果として優秀な人材の獲得につながり、既存社員のエンゲージメント向上にもつながります。アルムナイ採用はブランド価値が向上して、人材確保だけでなく市場競争力にもプラスになります。
アルムナイ採用には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。主なデメリットは以下の5つです。
それぞれ説明します。
アルムナイ採用は、現在勤務している社員のモチベーションを低下させる可能性があります。
アルムナイが好条件で再雇用されると、継続して勤務している社員が不公平感を抱くケースがあるからです。
特に、アルムナイが以前よりも高い地位や待遇で戻ってきた場合、既存社員の不満が高まる恐れがあります。アルムナイが外部で得た経験やスキルが過度に評価されると、社内での昇進や報酬体系にゆがみが生じる可能性もあるでしょう。
「一度退職した人が優遇されている」という認識が広まると、長年勤務している社員の士気が下がり、生産性の低下につながる可能性があります。「自分も退職して戻ってきた方が良いのでは」という考えが広まり、優秀な人材の流出を招く恐れもあります。
アルムナイ採用制度の存在が、社員の退職を促進させる可能性があります。「退職しても戻れる」という安心感が、安易な退職決断につながる可能性があるからです。
結果として、企業の人材流出が加速する恐れがあります。この認識が広まると、社員の会社に対するコミットメントや忠誠心が低下し、長期的な人材育成や組織の安定性に悪影響を与える可能性もあります。
キャリアアップや新しい経験を求めて退職する社員が増加し、短期的な人材不足や業務の停滞を招くケースもあるでしょう。頻繁な人材の出入りは、組織の安定性や長期的な成長に悪影響を及ぼすかもしれません。
アルムナイ採用には、一度退職した社員が再び企業の機密情報にアクセスすることになるため、情報セキュリティ上のリスクが伴います。退職中に競合他社で働いていた場合、意図せず情報漏洩が起こる可能性があるのです。
アルムナイが退職中に得た他社の機密情報を、無意識のうちに自社の業務に持ち込んでしまう可能性があります。アルムナイを通じて自社の機密情報が外部に漏れるリスクも考慮する必要もあるでしょう。
情報セキュリティ上のリスクを軽減するためには、厳格な情報管理体制や、アルムナイに対する特別なセキュリティトレーニングが必要になる可能性があります。
アルムナイ採用では、再雇用時にアルムナイが期待してる条件とのミスマッチが発生するケースがあります。退職期間中に企業やアルムナイが変化している可能性があるからです。
企業の方針や文化が変わっていたり、アルムナイ自身のキャリア観が変化していたりする場合、再び適応できない場合があります。アルムナイが退職中に身につけたスキルや経験が、現在の企業のニーズと合致しない場合もあるのです。
アルムナイが以前の職場環境を期待して戻ってきたものの、実際には大きく変化していてなかなか馴染めないケースもあります。企業側もアルムナイの成長を過大評価することによって、期待通りのパフォーマンスが得られないこともあります。企業とアルムナイのミスマッチを防ぐためには、綿密な事前のコミュニケーションや、双方の期待値のすり合わせが重要です。
アルムナイ制度を効果的に運用するには、一定のコストがかかります。アルムナイとの関係性を維持し、適切なタイミングで再雇用するには、専門の人員や仕組みが必要になるからです。アルムナイネットワークの構築や維持にも費用がかかります。
アルムナイデータベースの構築・管理、定期的な情報発信、イベントの開催などに人的・金銭的リソースを割く必要があります。小規模な企業にとっては、これらのコストが負担になる可能性もあるでしょう。
アルムナイ制度の効果を測定し、継続的に改善していくためのデータ分析や評価システムの構築にも費用がかかる可能性があります。アルムナイ制度を取り入れるときは、運用するために必要なコストに見合う効果が得られるか慎重に検討する必要があります。
アルムナイ採用を成功させるには、適切な導入方法が不可欠です。効果的な制度運用のために、以下の4つのポイントに注目しましょう。
それぞれ説明します。
アルムナイ採用を導入する際、まず復職の条件を明確に定める必要があります。
条件が曖昧だと適切な人材を選定できず、制度の効果が薄れてしまいます。明確な基準があることで、公平性を保ち、既存社員の理解も得やすくなるでしょう。
以下のような条件を設定する必要があります。
復職の条件を明確にすることで、質の高いアルムナイ採用が可能になります。
アルムナイを円滑に受け入れるための態勢づくりは非常に重要です。
適切な受け入れ態勢がないと、アルムナイが職場に馴染めず、再び離職する可能性があるからです。既存社員との軋轢(あつれき)を防ぐためにも必要な準備になります。
以下のような取り組みを行うと効果的です。
受け入れ体制を準備することで、アルムナイと既存社員にとって働きやすい環境が整えられます。
アルムナイとの良好な関係を維持することは、アルムナイ採用の成功に不可欠です。
退職後も企業とのつながりを感じられる環境があれば、将来的な再雇用の可能性が高まります。アルムナイが企業の良き理解者となり、口コミで企業の評判を高めてくれる可能性もあります。
以下のような取り組みが効果的です。
施策を行うことでアルムナイとの関係を継続的に維持し、将来的な人材確保につなげられます。
アルムナイ制度を社内外に広く周知することは、制度の効果を最大化するために重要です。
制度の存在を知らなければ、アルムナイも再雇用の機会を逃してしまうからです。社内に周知することで、既存社員の理解と協力も得やすくなります。
以下のような方法で周知を図れます。
社内外にアルムナイ制度の認知度を高めることにより、より多くの優秀な人材の再雇用につなげられます。
本記事では、アルムナイ採用の概要、メリット・デメリット、そして導入のポイントについて解説しました。
アルムナイ採用は、企業にとって即戦力となる人材を確保する有効な手段です。アルムナイ採用には、即戦力となる人材を採用できたり、企業のブランドイメージが向上したりするメリットがあります。一方、デメリットとして既存の社員のモチベーション低下や情報漏洩のリスクなどが挙げられます。
メリットを最大化し、デメリットを最小化するには、適切な導入方法が不可欠です。復職の条件を明確化したり、受け入れ体制を整理したりして、自社の状況に合わせて制度を設計・運用することが重要になります。
アルムナイ採用は、人材確保が困難な現代において、企業の競争力を高める有効な戦略の一つとなります。しかし、単に制度を導入するだけでなく、継続的な改善と運用の工夫が必要です。自社の状況や目的に合わせて、適切なアルムナイ採用の形を探っていくことが成功への鍵となるでしょう。
アルムナイ採用以外にも、企業の人材戦略にはさまざまな選択肢があります。株式会社DYMでは、新卒紹介サービスや第二新卒・既卒・中途紹介、ハイクラス転職支援など、幅広い人材サービスを提供しています。DYMの人材サービスを活用することで、企業は多様な人材ニーズに対応し、競争力を高められるでしょう。自社に最適な人材戦略を検討する際は、アルムナイ採用と併せて、ぜひDYMの人材サービスも選択肢に入れてみてください。
—————————————————
—————————————————
「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。
SNS広告
(Instagram、Facebook、Twitter、LINE、TikTok)
SNSアカウント運用代行
(Instagram・Facebook・Twitter・LINE・TikTok・Youtube)