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失業後の転職活動は、経済的な不安がつきものです。「早く次の仕事を見つけたいけれど、生活費が心配…」そんな悩みを抱える方の心強い味方となるのが「再就職手当」です。これは、雇用保険の失業手当(基本手当)を受け取れる方が、期間を早めに残して再就職が決まった際に支給されるお祝い金のような制度です。しかし、受給するためには8つの複雑な条件をすべて満たす必要があり、制度を正しく理解していないと、もらえるはずの手当を逃してしまう可能性もあります。
この記事では、再就職をサポートする専門家の視点から、再就職手当の詳しい受給条件から、計算方法、手続きの具体的な流れ、そしてよくある質問まで、どこよりも分かりやすく解説していきます。
<この記事で紹介する4つのポイント>
目次

再就職手当について詳しく見ていく前に、まずはこの制度がどのようなもので、混同されがちな「失業手当」とどう違うのかを正確に理解しておきましょう。この違いを知ることが、制度を賢く活用する第一歩となります。
このセクションでは、再就職手当の基本的な役割と、失業手当との根本的な目的の違いについて解説します。両方の制度を正しく理解し、ご自身の状況に合った最適な選択をするための基礎知識を身につけましょう。
再就職手当は、雇用保険の失業手当(正式名称:基本手当)の受給資格がある方が、所定給付日数を一定以上残して安定した職業に再就職した場合に、一時金として支給される手当のことです。ハローワークでは、この制度を「就職促進給付」の一つとして位置づけています。
その目的は、失業手当を満額受け取ることだけを考えるのではなく、一日でも早い再就職を促進することにあります。つまり、国が「早く就職活動を頑張って、新しい仕事が決まった方には、お祝い金として残りの手当の一部をまとめてプレゼントしますよ」というインセンティブを与えているのです。このため、転職活動を意欲的に行い、早期に社会復帰を果たした方へのご褒美のような側面を持っています。
再就職手当と失業手当(基本手当)は、支給される目的とタイミングが根本的に異なります。
失業手当は、その名の通り「失業している期間中」の生活の安定を図り、安心して求職活動に専念してもらうために支給されるものです。原則として、4週間に一度、失業の認定を受けることで、前回の認定日から次の認定日までの日数分の手当が分割で支払われます。
一方で、再就職手当は「再就職が決まった後」に、早期の社会復帰を祝う目的で、残りの手当の一部が一時金(一括)で支払われます。重要な注意点として、再就職手当を受け取ると、その時点で失業手当の受給資格は終了し、残りの日数分の失業手当は受け取れなくなります。この違いを理解しておくことが非常に重要です。
| 目的 | 失業中の生活を支える | 早期の再就職を促進する |
| 支給タイミング | 原則として失業している期間中 | 安定した職業に就職した後 |
| 支給方法 | 4週間に1度、分割で支給 | 1回でまとめて支給(一時金) |

再就職手当は、早期に再就職が決まった方にとって非常に魅力的な制度ですが、メリットばかりではありません。デメリットも正しく理解した上で、ご自身の転職プランにとって本当に有利かどうかを判断することが大切です。このセクションでは、再就職手当を受給する場合の具体的なメリットと、知っておくべきデメリットの両側面を詳しく解説します。良い点と注意点の両方を天秤にかけ、後悔のない選択をしましょう。
再就職手当の最大のメリットは、まとまった金額が一括で支給される点です。再就職が決まると、新しい勤務先での通勤に必要なスーツやカバンを新調したり、新しい生活の準備をしたりと、何かと出費がかさむものです。また、多くの会社では給料日は翌月払いが一般的なため、入社してから最初の給料を受け取るまで1か月以上の期間が空いてしまうことも少なくありません。
失業手当を分割で受け取る場合と比べて、再就職手当は一度に数十万円単位の現金が振り込まれるため、こうした就職直後の経済的な不安を大きく和らげてくれます。このまとまった給付金があることで、安心して新しい仕事のスタートを切ることができるでしょう。
再就職手当は、失業期間、いわゆるキャリアのブランクを短くすることへの強力なインセンティブになります。「どうせなら失業手当を最後までもらってから…」と考えるのではなく、「早く就職すればお祝い金がもらえる」という目標ができることで、求職活動へのモチベーションが高まります。
一般的に、離職期間が長引けば長引くほど、転職活動では不利になる傾向があります。企業側も、応募者の就業意欲や仕事への感覚が鈍っていないかを懸念するためです。再就職手当という制度をうまく活用することで、意欲的に転職活動に取り組み、結果としてキャリアの空白期間を最小限に抑えることができ、より有利な条件で次のキャリアへスムーズに移行できる可能性が高まります。
少し意外に思われるかもしれませんが、早期に再就職して再就職手当を受け取る方が、失業手当を最後まで受け取り切るよりも、結果的に手取りの総額が多くなるケースがあります。
なぜなら、失業手当の受給期間中は、当然ながら新しい会社からの給与は発生しません。しかし、早期に再就職すれば、「新しい会社の給与」と「再就職手当」の両方を得ることができます。特に、失業手当の支給残日数が多く残っている(3分の2以上)時点で再就職が決まれば、給付率が70%と高くなるため、この傾向はより顕著になります。もちろん、再就職先の給与額にもよりますが、経済合理性の観点からも、早期の再就職は賢い選択となり得るのです。

再就職手当を受給する上で、最も理解しておくべき重要なデメリットがこれです。前述の通り、再就職手当は、本来受け取るはずだった失業手当(基本手当)の前倒し支給という側面を持っています。
したがって、一度この手当を受給すると、たとえ失業手当の支給日数が何日残っていたとしても、その権利は消滅します。例えば、失業手当の支給日数が50日残っている時点で再就職が決まり、再就職手当を受け取った後に、万が一新しい会社をすぐに辞めてしまったとしても、残りの50日分の失業手当を再び受け取ることはできません。この点は、後戻りできない重要なルールとして必ず覚えておきましょう。
再就職手当は、申請すれば誰でも簡単にもらえるわけではありません。後ほど詳しく解説しますが、受給するためには8つもの細かい要件をすべてクリアする必要があります。例えば、「失業手当の支給残日数が3分の1以上残っていること」や「過去3年以内に再就職手当を受け取っていないこと」など、一つでも満たせない要件があると不支給となります。
さらに、申請期限が「就職日の翌日から1か月以内」と非常に短く設定されており、この期限を過ぎてしまうと、たとえ他の条件をすべて満たしていても申請を受け付けてもらえません。必要書類の準備や就職先企業への記入依頼など、手続きも煩雑なため、計画的に進めないと権利を失ってしまうリスクがあります。
「早く再就職すれば手当がもらえる」というメリットは、裏を返せば「就職を焦る」という心理的なプレッシャーにつながる可能性があります。再就職手当の受給を主な目的としてしまい、本来最も重要であるはずの企業研究や自己分析が不十分なまま、安易に内定を受諾してしまうケースも少なくありません。
その結果、入社してから「思っていた仕事内容と違った」「社風が合わなかった」といったミスマッチが発覚し、早期離職につながってしまうリスクがあります。再就職手当はあくまで転職活動をサポートする制度の一つです。手当の受給に固執するあまり、ご自身のキャリアにとって最善の選択を見誤らないよう、冷静な判断を心がけることが大切です。

再就職手当を受給するためには、ハローワークが定める8つの要件をすべて満たす必要があります。この要件は非常に厳格で、一つでも当てはまらない項目があると、たとえ早期に再就職が決まったとしても手当は支給されません。そのため、ご自身が対象となるかどうかを事前にしっかりと確認しておくことが何よりも重要です。これから、その8つの要件を一つずつ具体的に解説していきますので、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
失業手当の受給手続きをハローワークで行った後、最初の7日間は「待機期間」と呼ばれます。この期間は、離職理由(自己都合・会社都合)にかかわらず、すべての人に一律で設けられています。この7日間は、失業の状態にあることを確認するための期間であり、失業手当は支給されません。
再就職手当を受給するための大前提として、この7日間の待機期間が満了した後の再就職である必要があります。例えば、退職後すぐにハローワークで手続きを行い、待機期間の5日目に新しい就職先が決定し働き始めた、というケースでは、他の条件をすべて満たしていても再就職手当の対象にはなりませんので注意が必要です。
再就職手当は早期の再就職を促す制度であるため、失業手当を受け取れる日数(所定給付日数)が、就職日の前日時点で一定以上残っている必要があります。具体的には、所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して再就職することが要件となります。
例えば、所定給付日数が90日の方であれば、30日以上の支給残日数が必要です。就職日の前日時点での残日数が29日以下になっている場合は、再就職手当の対象外となります。この残日数が多ければ多いほど、後述する計算式により支給額も多くなるため、できるだけ早い段階での再就職が有利になります。
再就職手当は、新たなキャリアへの一歩を応援する制度です。そのため、離職した前の会社に再び雇用される場合は、支給の対象とはなりません。これには、資本・資金・人事・取引面で密接な関わり合いがある関連会社への就職も含まれます。
例えば、退職したA社から、A社が100%出資している子会社のB社へ再就職するようなケースは、実質的に同一のグループ内での異動とみなされ、手当の対象外となる可能性が高いです。手当の不正受給を防ぐためのルールであり、全く新しい環境でキャリアを再スタートさせることが前提となっています。

再就職手当は、安定した職業に就いたことが支給の条件となります。その基準として、契約期間の定めのない正社員での雇用はもちろん、契約期間がある場合でも1年を超えて雇用されることが確実であると認められる必要があります。
そのため、契約期間が1年未満の派遣社員や契約社員、あるいは数か月程度の短期アルバイトなどは、原則としてこの要件を満たさないと判断されます。ただし、契約社員であっても、契約更新の見込みがあり、長期的な雇用が期待できる場合は対象となる可能性もありますので、雇用契約書の内容などをハローワークの担当者によく確認することが重要です。
再就職先の新しい勤務先で、雇用保険に加入することも必須の条件です。雇用保険の加入要件は、原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」ことです。
このため、例えば新しい仕事がフリーランスとしての業務委託契約であったり、個人事業主として開業したりする場合、雇用保険には加入しないため、再就職手当の対象にはなりません(ただし、個人事業主の場合は要件を満たせば「就業手当」の対象になる可能性があります)。あくまで、企業に雇用され、雇用保険の被保険者となることが前提となります。
再就職手当は、頻繁に受給できるものではありません。今回の再就職日より過去3年以内に、再就職手当や、常用就職支度手当といった同様の就職促進給付を受け取っていないことが条件となります。
これは、短期間での入退社を繰り返して意図的に手当を受給することを防ぐための措置です。例えば、2年前に一度、再就職手当を受け取った経験がある方が、再び離職し、今回の転職活動で早期に再就職が決まったとしても、前回の受給から3年が経過していないため、今回は支給対象外となります。ご自身の過去の受給歴を正確に把握しておく必要があります。
これは少し分かりにくいですが、重要なポイントです。再就職手当は、あくまで失業手当の受給資格を持つ人が、その後の求職活動によって再就職した場合に支給されるものです。
したがって、退職後、ハローワークへ行って失業手当の受給資格が決定される日よりも前に、すでに新しい会社からの採用が内定していた場合は、支給対象となりません。例えば、在職中に転職活動を行い、退職前にすでに次の就職先の内定を得ているようなケースがこれに該当します。あくまで、ハローワークに求職の申し込みをした後の活動によって得た内定であることが必要です。
自己都合など、ご自身の判断で退職された方には、7日間の待機期間満了後、さらに原則として2か月間(過去5年間に2回以上の自己都合退職がある場合は3か月間)、失業手当が支給されない「給付制限」という期間が設けられています。
この給付制限期間中に再就職が決まった場合、再就職手当を受給するためには、追加の条件が課せられます。それは、待機期間が満了した後の最初の1か月間については、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者(例:転職エージェントなど)からの紹介によって就職したものであることが必要です。友人・知人の紹介や、ご自身で直接応募した求人(転職サイトなど)でこの期間内に就職した場合は、対象外となるため、自己都合退職の方は特に注意が必要です。
なお、給付制限期間の最初の1か月が経過した後は、ご自身で見つけた仕事でも対象となります。

ご自身が8つの要件を満たせそうだと分かったら、次に気になるのは「一体いくらもらえるのか?」ということでしょう。再就職手当の支給額は、以下の計算式によって決まります。
支給額 = 基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率
例えば、基本手当日額が5,000円、所定給付日数が90日の方が、支給日数を70日残して(残日数2/3以上)再就職した場合、
5,000円 × 70日 × 70% = 245,000円
245,000円が支給されることになります。早く再就職するほど、支給残日数が多くなり、給付率も高くなるため、もらえる金額が大きくなる仕組みです。
再就職手当は、申請してすぐに振り込まれるわけではありません。申請書類を提出してから、審査を経て実際に口座に振り込まれるまでには、ある程度の時間がかかります。
一般的な目安として、ハローワークに申請書類を提出してから、約1か月から2か月程度で支給されることが多いようです。ただし、これはあくまで目安であり、書類に不備があった場合や、ハローワークの繁忙期などには、さらに時間がかかることもあります。
審査の過程で、ハローワークは新しい就職先に電話などで在籍確認を行うことがあります。この確認がスムーズに進むかどうかも、支給までの期間に影響します。新しい職場の総務や人事の担当者には、事前にハローワークから在籍確認の連絡が来る可能性があることを伝えておくと、手続きが円滑に進むでしょう。就職後すぐの生活費として期待している方は、このタイムラグを考慮に入れておくことが大切です。
再就職手当を受け取るためには、正しい手順に沿って、期限内に手続きを完了させる必要があります。流れをしっかり把握し、スムーズに申請を進めましょう。

ここでは、再就職手当に関して多くの方が疑問に思う点や、よくある質問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。「自己都合退職でももらえるの?」「パートやアルバイトの場合は?」「もしすぐ辞めたら返金は必要?」など、具体的なケースについての疑問を解消し、より深く制度を理解するためにお役立てください。
はい、自己都合で退職された方でも、8つの受給要件をすべて満たせば再就職手当を受け取ることができます。
ただし、最も注意が必要なのが、前述の要件8にある「給付制限」期間中の再就職に関するルールです。自己都合退職の場合、7日間の待機期間満了後、原則2か月の給付制限期間があります。この給付制限期間のうち、最初の1か月間に再就職する場合は、その就職先がハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介によるものである必要があります。この点さえクリアすれば、自己都合退職であることが理由で不支給になることはありません。
パートやアルバイトといった雇用形態であっても、受給要件を満たせば再就職手当の対象となります。
重要なのは雇用形態の名称ではなく、その実態が「安定した職業」であるかどうかです。具体的には、要件4「1年以上の安定した雇用が見込まれること」と、要件5「雇用保険の被保険者であること(週の所定労働時間が20時間以上など)」を満たす必要があります。したがって、長期契約で週20時間以上勤務するパートやアルバイトであれば、支給対象となる可能性は十分にあります。雇用契約書の内容をよく確認し、不明な点はハローワークに相談しましょう。
原則として、再就職手当を受け取った後に、ご自身の都合で新しい会社を短期間で退職してしまった場合でも、手当を返金する必要はありません。再就職手当は、あくまで「安定した職業に就いた」という事実に対して一度だけ支給されるものだからです。
ただし、これは正当な手続きを経て受給した場合に限ります。もし、採用当初から短期間で辞める意図があったにもかかわらず、それを隠して申請した場合や、申請内容に虚偽があった場合は「不正受給」とみなされ、受け取った手当の全額返還はもちろん、厳しい罰則が科される可能性があります。誠実な申請を心がけましょう。
再就職手当の申請期限は「就職日の翌日から1か月以内」と厳密に定められており、原則として、この期限を過ぎてしまうと申請を受け付けてもらえません。
たとえ他の8つの要件をすべて満たしていても、期限内に申請しなかったという理由だけで、数十万円の給付を受け取る権利を失ってしまうことになります。新しい仕事が始まると何かと忙しくなり、手続きを後回しにしがちですが、申請書類の準備や会社への記入依頼には思った以上に時間がかかることもあります。就職が決まったら、最優先で手続きを進めるという意識を持つことが非常に重要です。
就業促進定着手当は、再就職手当を受給した人が、同じ会社で6か月以上継続して雇用され、かつ、その6か月間の賃金が離職前の賃金よりも低い場合に支給される追加の手当です。
つまり、再就職手当が「早期就職のお祝い金」であるのに対し、就業促進定着手当は「再就職後の定着を応援し、収入の減少分を補う」という目的を持っています。再就職手当を受け取ることが、この就業促進定着手当の受給の前提条件となります。再就職先の給与が前職より下がってしまった場合に、さらなるサポートが受けられる制度として覚えておくとよいでしょう。
再就職手当は、早期の再就職を目指す求職者にとって、経済的な安心と活動への意欲をもたらす非常に有益な制度です。失業中の生活を支える失業手当とは異なり、新しいキャリアのスタートを力強く後押ししてくれる「お祝い金」としての性格を持っています。 複雑な受給条件や手続きを正しく理解し、計画的に行動することが、この制度を最大限に活用する鍵となります。本記事で解説したポイントを参考に、ご自身の状況が要件に当てはまるかを確認し、後悔のない転職活動を進めてください。
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「世界で一番社会を変える会社を創る」というビジョンのもと、WEB事業、人材事業、医療事業を中心に多角的に事業を展開し、世界で一番社会貢献のできる会社を目指しています。時代の変化に合わせた新規事業を生み出しながら世界中を変革できる「世界を代表するメガベンチャー」を目指し、日々奮闘しています。